久しぶりの投稿です。皆様の暇つぶしになれば幸いです。m(__)m
保須市。私の活動拠点である余子浜市から少し離れた場所にあるその場所のフードコートでステインと鉢合わせたのは偶然では無かった。
「やあ、ステイン。偶然ですねえ」
テーブル席でたらこスパゲッティを啜っていたオフ姿のステインの前に、私が冷やし麻婆麺を片手に現れた時、ステインは食事の手を止めて訝し気な視線で私の事を睨みつけていた。
やはり此の鉢合わせが偶然ではないことは、ステインにもバレバレだったようだ。
しかし、私は気にする素振りを見せない様にしながら、ステインの前に座る。
ニコニコ笑顔で冷やし麻婆麺を食べ始めた私を睨んでいたステインだったが、しばらくすると諦めた様に溜息を吐いて食事を再開した。
私はステインとの食事と会話を楽しむ。
「今日はいい天気ですねえ」
「…ハァ…何の用だ?」
「曇りだというツッコミは無しですか。いえ、用などありませんよ。私は只、街を歩いていたら貴方が食事をしていたのが見えたので、ご一緒しようと思っただけです」
「…おまえは、直ぐに嘘を吐く。それも人の神経を逆撫でする嘘を簡単に。…目的はなんだ?」
「心外ですねえ。私は嘘など、数えるほどしか吐いたことがありませんよ?」
「それが嘘だ」
ステインの鋭い視線が私に突き刺さる。
私にステインを苛立たせる気など欠片も無かったのだが、ステインは私を煩わしく思っているらしい。人間関係というものは本当に難しい。
私は彼が好きなのに、彼は私を決して仲間だと認めてはくれない。
正直に言うと寂しくはある。しかし、その頑なさもまた彼の魅力だとしっている私は、笑いながらに話を進めることにした。
「アハハ、貴方は流石です。私の事をよく理解している。では、私の好きなモノもまた知っていますよね?この保須市には、私が好きなヒーローが居たんです。…ターボヒーロー、インゲニウム。彼は、素晴らしいヒーローでした」
ステインは何も言わずに私の言葉を聞いている。
「誠実であり、堅実であり、事実としてヒーロー像を確立していた。私一押しの若手ヒーローであるシンリンカムイに及ばぬまでに、期待していたのですよ。…しかし、彼のヒーロー生命は貴方の手によって絶たれてしまった。哀しいことです」
”ヒーロー殺し”ステイン。
私は彼が好きだが、彼の活動には否定的だ。
彼はオールマイトの様な本物の
それは理解している。
しかし、世にはオールマイトには及ばぬまでも素晴らしいヒーローは沢山いる。
いや、そもそもとして英雄足りえないという理由だけで人を殺すのはやり過ぎだと思う。
確かに”愛”は”正義”と同じく人を殺す理由足りえている。
しかし、インゲニウムは素晴らしいヒーローだった。
「彼に、何が足りなかったのですか?」
「………力なきヒーローに、存在意義は無い」
「それは違うのでは?無力は悪ではありません。問題は、そこに恥を覚えるか否か。地に伏した時、立ち上がれる者はヒーローです。そして、インゲニウムは貴方が足を奪わなければ、それが出来たと私は考えます」
「…ハァ…お前は、あいつの何を知っている?」
「なにもかも。無論、嘘ですがね」
「…ハァ、本当に…今日は、苛立たせるな!」
ステインがナイフを抜いた。私はそれを右腕に形成したギロチンで受け止める。
店内に金属音がぶつかり合う音が響き、人々が刃物を持つ私達の姿を目撃する。
悲鳴が響き、店内は騒然となる。
それを意に介さずにステインは血走った眼で私を睨みつけながら、舌を出して言う。
「…おまえはやはり人を見る眼がない。俺やオーバーホール、レディ・ナガンなどを仲間などと呼ぶおまえが好きなヒーロー?…ハァ、真っ当である筈もなく、取り繕おうとも”偽者”だ。”英雄”を歪ませる社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ」
「チッ、この意地っ張りッ!どうして人の話に耳を傾けられないのですかッ!私はッ、只ッ、貴方に出来れば人を殺して欲しくないだけなのに!」
「………おまえがそれを言うなッ!」
ステインに思いっきり頭を殴られた。ナイフだったら死んでいた。
頭を抱えて蹲る私の頭上から、ステインの心底呆れた様子の溜息が聞こえた。
「…ハァ…俺には俺の”信念”があり、おまえにはおまえの”正義”があった。それは…社会に、誰かに迎合する為のモノではない。…俺たちは互いに影響を与えあい…ハァァ、その関係は…決して仲間などという生温いものではない」
「…突然、難しい事と哀しい事を同時に言わないで頂きたい」
「”信念”の元に、俺は征く。全ては正しき社会の為に、本物の英雄を取り戻す為にッ、例え、おまえでも邪魔はさせない」
そう言ってステインは店から出て行ってしまった。
これから駆けつけてくるだろう警察とヒーローの相手を私に押し付けて、言いたいことだけを言って去っていった彼は酷い奴だと思う。
しかし、私はそれに文句を言うことなく大の字で倒れながら、少しだけ考えてみることにした。
「”全ては正しき社会の為に”、やはり貴方はカッコいいですねえ。自我を信念とまで言えるほど、研ぎ澄ませることの出来る者が、どれほど居るか。やはり私は貴方が好きだ。…しかし、”人を殺した人間は、人に殺されねばならない”。それが私の信念なのですよ」
彼に殺されたヒーロー達の復讐の為に、私は何時の日かステインを殺さなければならない。
それを哀しく思うのは弱さだろうか。
私はそうは思わない。心臓に突き刺さる痛みは、決して苦しみではない。それこそが正義とは言葉では語り尽くせないものだという証明なのだ。
中世、ギロチンによる処刑は一種のショーに成っていたが、時代は其処を間違えた。
ギロチンは決して歓声と共に落とされるべきではない。
「やはり人は、人を殺すべきではないのでしょうねえ」
それでも人は人を殺すから、私が人を殺すのだ。
”復讐”という名の正義。掲げた逆十字の象徴が、抑止力となる日はきっと近い。そう信じる。
そして、絶やすべき巨悪はもう直ぐそこだと個性『ギロチン』が伝えてくる。
「それまでに、ステインとはもう少し話がしたいものです。彼は私を仲間とは認めてくれませんが、友人なのですから」
しかし、私の願いは叶わなかった。
『臨時ニュースをお伝えします。本日未明、保須市にて”ヒーロー殺し”の異名を持つ
≪贋物…正さねば―――…誰かが…血に染まらねば…!≫
≪”
≪来い。来てみろ。贋物どもッ、俺を殺していいのは、
スマホの画面に流れる、最近、
ステインが逮捕されたという報道を知った時、私は馴染みの中国料理店で麻婆豆腐を楽しんでいた。
私が舌で刺激を楽しんでいる間に、ステインは実に刺激的な戦いに勤しんでいたらしい。
私はそれが悲しかった。私は度々、私の戦いにステインを巻き込んだというのに、彼は私を巻き込んではくれなかった。
ステインはエンデヴァーという屈指のヒーローに一人で挑み、敗北し、世に己の信念を示した。
この国の犯罪史に名を遺すだろう
それを世に示す為に、彼は己の身を血で染めた。
私はステインの言いたいことがわかる。その意思に敬服もする。
しかし、それでも私は彼に言いたい。
「貴方が自己を犠牲にすることを、悲しむ人が此処に居るのですよ」
吐き出した言葉がタバコの煙と共に消えた。独り言に意味などない。世を動かすのは常に誰かに向けた言葉だけだ。なればこそ、私はこの悲しみを世に示さなければならない。
私は悲しみ、怒っているのだ。
ステインは巨悪を討つ為に、私の正義を執行する為に、必要な人だったのだから。
それに続く第四位は他とは少し毛色が違った。十八歳で事務所を立ち上げ、その年の下半期にはトップ
人は彼を速すぎる男と呼ぶ。その名は、”ホークス”。
そんなホークスは現在、世間一般のイメージとは異なった神妙な表情で頭を抱えていた。背中に生える個性『
その原因は最近、巷でバズっている”ヒーロー殺し”の動画が原因だった。無論、ホークスとしても神出鬼没の
問題は”ヒーロー殺し”が逮捕された後に起こるだろう事態。
”ヒーロー殺し”の信念は多くの
その熱の向かう先の一つは先日、雄英高校襲撃事件を起こし名を上げた『
”ヒーロー殺し”が逮捕された保須市にて
そして、もう一つ。既にステインとは切っても切り離せない存在と成っていた
雄英襲撃事件にてぶつかり合い互いに敵対関係にあったと思われていた二つの勢力が”ヒーロー殺し”を介して繋がりを持ったと言う考えが警察内部で話し合われた時、人々は冗談ではなく社会秩序の崩壊を想像した。
直ぐに両陣営を”殲滅”するべきという強硬論が出された時、ホークスが冷静で要られたのは彼が独自のルートから出た情報で”それはない”と確信できたからだ。
「何故ッ、君はそんなに冷静でいられるんだッ‼」
その際、警察関係者の偉い人からの怒号にホークスは飄々とした態度で答えた。
「
ホークスは二つの顔を持つ。一つはウイングヒーロー・ホークス。二つ目は公安委員会直属のヒーロー。
レディ・ナガンが去った後、彼女の後釜として訓練を受けたのがホークスだった。
「………その内通者は、信用に足る人物なのかね?」
「はい。それは間違いありません。公安は
信頼に足る内通者からの情報により公安委員会は『敵連合』と『灰色勢力』の結びつきは決してないと判断していた。
公安委員会の働きにより両陣営の結びつきが否定され、警察関係者の偉い人が安堵したことでその会議は終結した。
ホークスからすれば悠長なと言いたくなる会議だったが、警察の会議とは往々にしてそういうものだ。参加者の制服に付く星の数が多くなる程、会議は鈍重になる。
ホークスは見切りをつけて軽やかに飛び去った。
そして、現在。
神妙な表情のホークスの前にいるのは大きな瞳と長い黒髪、少しの猫背が特徴的な可愛らしい少女、蛙吹梅雨だった。
彼女こそが内通者。ムーンビーストと個人的なやり取りが可能であり、その気になれば『灰色勢力』のどんな情報も得られるだろう、公安委員会にとっての
そんな蛙吹梅雨はホークスの前で大きな瞳を不安げに揺らしていた。
その原因はやはり”ヒーロー殺し”の逮捕にあった。
「ねえ、ホークスさん。公安委員会は、本当に”約束”を守ってくれるのかしら」
中学時代、『灰色勢力』を築き上げる前のムーンビーストと繋がりがあった蛙吹梅雨。そんな彼女の存在に公安委員会が目を付けるのは当然だった。
蛙吹梅雨の雄英高校への入学が決まった時、公安委員会は中学時代に自分を救ったヒーローの一人、”ジャスティスマン”の正体を伝えて蛙吹梅雨に
その事実に衝撃を受けた蛙吹梅雨だったが、彼女はその事実を受け止めて”正しいこと”が出来る程に強かった。
そこまで公安委員会は計算していた。
一つ、計算違いがあったとすればそれは蛙吹梅雨が公安委員会へ協力する事を条件に”お願い”をしてきたことだった。
それはムーンビースト、レディ・ナガン、ステインの減刑。
彼女は中学時代、自分と友人を助けてくれた三人の命を救うことを条件に公安委員会へ協力している。
そして、遂にその三人の一人であるステインが逮捕された。
蛙吹梅雨は公安委員会が本当に”約束”を守ってくれるか不安に思っている。
その不安に対して彼女の直属の上司になっているホークスは神妙な顔で頭を抱えた後、吐き出すように言った。
「…公安は君に”勿論だ”と言うだろうけど、俺は君を信頼して本当の事を話すよ。ステインとムーンビーストの減刑は、無理だよ」
蛙吹梅雨はショックを受けつつ俯いた。
「ケロ、…そう、よね。…うん、わかっていたわ」
「ステインは”オールマイト”以降、単独犯罪者では最多の殺人数の殺人犯で、ムーンビーストはその記録を塗り替えた。終身刑が無いこの国では、二人はタルタロスへの投獄の後、秘密裏に極刑に処する他にない」
「公安委員会は最初から、私を騙すつもりだったのかしら」
「
ホークスは俯いた蛙吹梅雨が顔を上げるのを待つ。
そして、涙を滲ませる大きな瞳を真っ直ぐに見つめながら、嘘偽りのない言葉をかける。
「俺の理想については前に話したよね。”ヒーローが暇を持て余す社会”。その為に君の様なヒーローが必要だ。
ホークスは蛙吹梅雨をヒーロー名で呼んだ。
「…ケロ、ありがとう。ホークスさん。………ねえ、
「レディ・ナガンの殺人は、記録上、一度しか無かったことになっている。彼女の罪は前公安委員長の殺害だけだ。助けられる筈だ」
「…うん。わかったわ。なら、私は―――
蛙吹梅雨のスマホにメッセージが届いたのは、そんな時だった。
件名は『心優しい貴女へ』。その内容は以下通り。
≪心優しい貴女はきっとステインの逮捕に心を痛めていることでしょう。しかし、心配はありません。私が彼を救ってみせます。だから貴女は動かぬように≫
「………やはり、動くか、ムーンビースト」
「………ケロ、お兄さん」
そのメッセージはムーンビーストから蛙吹梅雨へと向けられた一方的で絶対的な信頼だった。
それを見たホークスは目を細めながら思案して、直ぐに動き出す。
「ムーンビーストがステインの奪還に動いていることを俺は報告してくるよ。フロッピーは、何もしないでいてくれ。君はこれからも俺に情報を伝えるだけでいい」
「…ええ、…わかっているわ」
蛙吹梅雨を部屋に残してホークスは公安本部の廊下を歩く。そして、先ほど自分が吐いた言葉に顔を歪めた。
「”君の様なヒーローが必要だ”、か。馬鹿だな。高校生に、なんて重荷を背負わせているんだ」
それでもホークスの足は止まらない。
「ヒーローが暇を持て余す社会。必ず手に入れてやる。俺に出せる最高速度で」
目指すべき未来がある。
ELDEN RINGがようやくクリアできました!
これから二週目に入ります!一週目は信仰戦士だったので、次は脳筋でクリアする予定です!
なので次の投稿は遅くなると思います。m(__)m