短いですがキリが良いので投降させていただきます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。(_ _)
「赫灼ッ熱拳ッ‼ジェットバーンッ‼」
熱エネルギーを推進力に変えて迫りくるエンデヴァーに合わせて両足にギロチンを形成し、地面へと刃を落とす。その衝撃により空中へと逃れた私を追ってエンデヴァーの軌道が変わる。
そして、次の瞬間には私はエンデヴァーの右の拳で顎を撃ち抜かれていた。
「かッはッ!?。…く、くは、アハハ!」
飛びそうになる意識を必死に堪えて右腕に形成したギロチンを振り下ろす。
エンデヴァーは今の一撃で私の意識を刈り取れなかったことに悔しさを滲ませながら、振り下ろされたギロチンの刃を横から殴りつけ防ぐと、地面へと逃れた。
私も遅れて地面へと落ちる。
「やりますねえ。エンデヴァー」
「声が震えているぞ。ムーンビースト」
余裕の態度を演じていることが秒でバレた。エンデヴァーは笑っている。私の膝も笑っている。
一度の衝突、それで格付けは済んでしまった。
やはり素の私ではエンデヴァーに勝ち目はない。無論、個性の強制的な覚醒と呼ぶべき私の
素晴らしき
しかし、それは得策ではない。必殺技とは安易に切るべきものではない。それはヒーローも
安易に使えば対策を練られる危険性がある。例えば―――こんな風に。
「今日は、暑いですねえ」
「フッ、当然だ。貴様を捕える為に俺の拳が燃えているのだからな」
私は余裕を見せるエンデヴァーに向けて、笑いながらに言う。
「熱が、籠ってしまいそうだ」
エンデヴァーの顔から余裕が消えて、眼が細められる。”何故それを知っている”のだと、言葉にされなくても言いたいことは分かる。
しかし、私は答えない。エンデヴァーが私の言葉の意味を考えている。この瞬間の時間こそが値千金。私の勝利に向けて、黄金に等しい価値を持つ三秒なのだ。
「貴様、何を言って―――
私はエンデヴァーの言葉を遮りながら、牧師服の下に隠していた
エンデヴァーの顔から余裕が完全に消えた。
「貴様ッ、俺の『個性』の、何故それを知っているッ‼」
「アハハ!フレイムヒーローに炎を送る。一見、悪手ですが、これでよいのでしょう?貴方の身体は熱をため込むと聞いていますからねえ‼」
個性『ヘルフレイム』は高い攻撃力と広い射程範囲を持った強力な個性だ。しかし、どんな個性にも弱点はある。エンデヴァーの身体は”赫灼”を使う度に熱をため込み、それに伴い身体機能が低下していく。
なら、もっと熱くしてしまえばいいと私は考え、周囲を熱帯に変えた。無論、ヒーロースーツの機能によりその弱点はある程度はカバーされているだろうが、この状況では、その機能も焼石に水だろう。
エンデヴァーがこの暑さの中で冷や汗をかいている。
私はそれをあえて
「気になりますか?何故、私がファンサイトにも載っていない貴方の弱点を知っているのか?それは…私は何でも知っているからです。無論、嘘ですがねえ!アハハ!」
「おのれ
エンデヴァーが炎の中を駆けてくる。自身に籠った熱と周囲の炎で身体機能が落ちきる前に私を倒そうとする意思には鬼気迫るものがあった。
エンデヴァーが吠えた。
「やられる前にやればいいのだろうッ‼」
「なるほど、そう来ますか。真理ですねえ‼」
ミルコからステインの護送の護衛としてエンデヴァーが居ると聞いていた時から考えていた私の対エンデヴァー対策は、脳筋思考により覆されようとしている。
「赫灼熱拳ッ、ジェットバーン‼」
迫りくる”赫灼”を周囲の炎を纏わせたギロチンの刃で相殺する。
「
炎を纏うギロチン。無論、こんなものは付け焼刃の戦型に過ぎない。炎のギロチンは”赫灼”とぶつかり合い溶けた。一見すれば無意味な行為だが、しかし、多少なりともエンデヴァーの身体に熱を与える効果はある。
私は溶けたギロチンの代わりの刃を直ぐに形成し、エンデヴァーの懐に迫る。勝負を急ぐエンデヴァーが
距離を離されて炎を連打されていたら負けていた。しかし、
既に身体に熱がこもり身体機能が幾分かは落ちているだろうに、私の全力を未だに少し凌駕し続けている。
私は楽しくなってきてしまった。全力でエンデヴァーを迎え撃つ。
「流石はッ、ナンバー2ッ‼流石はッ、エンデヴァーッ‼事前準備がなければ私は負けていたでしょうッ‼しかし、―――この場は勝たせて頂きたいッ‼」
「黙れッ、
「出来ますかねえ、貴方にッ‼
「俺以外の誰に超えられると言うッ‼赫灼熱拳ッ、マシンガンブローッ‼」
ギロチンと熱拳が幾度も交差する。此処まで互角。否、最後の一発で私が押し切られてしまった。
「かッ、しまった!?」
「終わりだ‼」
会心の一撃と呼ぶにはあまりにも軽い殴打。しかし、それで私のバランスは崩され地面に倒される。エンデヴァーを見上げながら振り下ろされる拳をよける術はない。この一撃で私は戦闘不能になるだろう。
そう確信したからこそ、私は最後まで使うか迷っていた
「エンデヴァーッ‼私に貴方の弱点を教えたのはッ、何を隠そう貴方の―――
「知らんッ‼」
―――ガッハッ!?………話を、聞いても、くれませんか」
「フンッ、誰が
「流石は…
完全に切り札を切るタイミングを間違えた私は渾身の一撃を受けて吹き飛び、気を失い倒れた。
ムーンビーストはエンデヴァーと戦い敗れた。ヒーロー達や警察側はエンデヴァーの勝利に沸いている。それを見ながら、ミルコは頬を掻き苦笑いを浮かべつつ、ぼろ雑巾の様になりながら吹き飛んできたムーンビーストを見下ろす。
ムーンビーストのトレードマークである赤い眼鏡は何処かへ吹き飛び、鬱陶しい程に長い金髪の所々が焦げている。完全に気を失っている様は完全敗北の四文字がふさわしい。そんな無様をみようともミルコにはムーンビーストに対する失望が一切なかった。
何故なら、ムーンビーストは始めからこの敗北を予見していた。どれほどに事前準備をしようと自分は”
―――”なら、使えばいいじゃん”。
その話を聞いた時、ミルコが言った至極当然の言葉にムーンビーストは困った様に笑いながら、こう言った。
―――”エンデヴァーとの戦では、まだ使う訳にはいかないのです”。
―――”だから、私が敗れた後は貴女にお願いしたい。私は何とかエンデヴァーを消耗させますので、貴女には私とステインを抱えて逃げて頂きたい。エンデヴァーを除けば貴女を追えるヒーローは、いないのですからねえ”。
ステイン奪還作戦において、ミルコが裏切った時点でムーンビーストにとって障害と呼べる者はエンデヴァーだけになった。ならば、エンデヴァーとの戦いでムーンビーストが勝利する必要はない。よければ相打ち、最悪でもエンデヴァーを消耗させることさえできれば、後はミルコというエンデヴァーに並ぶヒーローが味方に付いている。
その状況を作り出した時点で、ムーンビーストは勝っていた。
「私を
ミルコは笑いながら、ぼろ雑巾の様なムーンビーストとまだ意識を取り戻さないステインを抱えて逃走を開始する。無論、それをただ見ているだけのヒーロー達や警察ではない。
この場で唯一、ミルコに並べるヒーローであるエンデヴァーはムーンビーストとの戦いで消耗しきっており、背を向けて逃げるミルコに向けて怒声を発することしかできなかった。
「ミルコおオオオオオオッ‼待てええええええッ‼」
「おー、こわ。悪りーな、エンデヴァー。待てねーや」
勝ち気なバニーはそうして逃走を開始した。それを追える者はいない。
―――否。居た。逃走するミルコをジッと見据える影が遥か上空200mの位置にあった。
ステインの移送の為の最終防衛ラインとして彼はずっと其処に居て、ミルコの裏切りも、ムーンビーストとエンデヴァーの戦いもずっと見ていた。
ステインの身柄を守るヒーロー達にも秘匿されていた公安委員会の最終防衛ライン、ウイングヒーロー”ホークス”は上空から静かにミルコの追跡を開始するのだった。
『
ムーンビーストの言ってるだけ必殺技シリーズの一つ。スピリタスをぶっかけたギロチンの刃に炎を宿す。使用時、彼は熱いのをとても我慢している。
『私に貴方の弱点を教えたのはッ、何を隠そう貴方の―――』
ムーンビーストが切れなかった対エンデヴァーの
ある日、ムーンビースト当てに封書が届いた。そこにはエンデヴァーの『個性』について詳細な情報が記されていた。