スプラトゥーン3をやっていたら時間が消滅しました。
スプラトゥーン3の京分の一くらいに、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
m(_ _)m
『雄英ヒーロー科1年の林間合宿において発生した
生徒39名の内、
無傷で済んだ生徒は、僅か14名。
プロヒーロー6名の内、
1名が大量の血痕を残し、行方不明。(ヒーロー名-ラグドール)。
内、1名は敵名-マスキュラー。本名、
他、2名の本名は不明。今後、調査を続行予定。
不明
不明
他、重要報告事項。
同じ現場にて灰色勢力に攫われていた雄英ヒーロー科生徒1名を保護。その際、元プロヒーロー、ヒーロー名-ミルコと雄英ヒーロー科1年B組教師(ヒーロー名-ブラドキング)との接触あり。ミルコより、生徒保護の打診と共に『重要証拠物件』の提出あり。
『重要証拠物件』については別紙参照。
『重要証拠物件』
①
② 灰色勢力
殺害された灰色勢力の
以上。
林間合宿の翌日。雄英高校本校舎。職員会議室。
休校日に行われた緊急の職員会議は、早朝五時から行われていた。
議題は勿論、前日に起きてしまったヒーロー科1年の林間合宿での
革張りの椅子の上に立ちながら、小さな身体で会議室に集まった教職員達を見渡す根津校長は深いため息を長く吐いた後、頭を下げた。
「今回の件、ムーンビーストの出現は予想が出来ても
教職員達から「頭を上げてください」と口々に声が上がる。
今回の件、確かに責任の一端は根津校長にあった。しかし、それは『ハイスペック』と言う個性を持ちながら
根津校長は「君たちの心遣いに感謝するのさ」と言いながら、椅子に座り小さな手をテーブルに置く。そして、次に果たすべき責任について話し合いを始めた。
「USJでの襲撃以降、僕らは“強い姿勢”を見せる事で学校を守ろうとした。しかし、今回の件でそれは失敗だったと言わざるを得ない。それについて、僕はこの後に記者会見を開き世間への説明責任を果たすつもりさ」
根津校長の言葉に挙手をしたのはイレイザーヘッドだった。
「それについては我々も同席させてください。引率の教職員として、我々も説明責任を果たさなければいけない。同席するのが合理的です」
イレイザーヘッドの隣でブラドキングも頷いていた。
根津校長も頷き了承をした。
「そうして貰えると助かるのさ。世間のバッシングは強いだろうけど、よろしく頼むよ。次に・・・とある生徒の処遇を決めなければ、ならないね」
根津校長が隣に立っていたミッドナイトへ目配せをする。ミッドナイトは静かに頷きながら、ホワイトボードに一人の生徒の顔写真を貼った。
それは爆豪勝己の写真だった。
「この件に関しては、担任の相澤先生から説明をして貰えるかな」
「はい。校長」
イレイザーヘッドが立ち上がり、眉間を揉みながら深いため息と共に口にしたのは林間合宿における爆豪勝己の背反行為についてだった。
「数名の生徒から、爆豪がムーンビーストへ協力を申し出ていたとの報告がありました。爆豪は、入試当初からムーンビーストへの傾向を疑われていた生徒です。まず、間違いは無いでしょう」
切島鋭児朗。轟焦凍。常闇踏陰。障子目蔵の4名が目撃したムーンビーストと爆豪勝己の会話。その内、切島鋭児朗は「ナニカの誤解だ!」と訴え続けていたが、残る3名の客観的な意見から爆豪勝己が
「公安からの協力要請によりムーンビーストと繋がっていた蛙吹とは違う。本物のムーンビーストの
静かに言い切るイレイザーヘッドが言葉に込めた思いを推し量りつつ、彼の旧友であるプレゼント・マイクは「こいつあ、シヴィー」と口にする。
「雄英体育祭1位が
「今、個人の感想はどうでもいい。重要なのは爆豪をこのままヒーロー科に在籍させておく訳にはいかないと言うことだ」
爆豪勝己は除籍が妥当。
そんなイレイザーヘッドの重い言葉に会議室が静まりかえる中、ミッドナイトは爆豪勝己の置かれている現状について補足する。
「現在、学校側としては彼に自宅謹慎を命じています。一度、ムーンビーストと共に姿を消した彼ですが、その後に何もせず戻ってきました。警察から取り調べは受けていますが、直ぐに釈放されています。状況が状況でしたから、前科はつかないとのことです」
「だとしても、爆豪をこのまま在籍させるわけにはいかない」
「それは、彼を見捨てることにならないかしら。過ちから立ち直させるのも、教師の役目の筈よ」
「普通科なら、そうでしょう。けれど、ヒーロー科は本質が違う。多くのヒーローを志す生徒を
「なら、普通科に編入させてのメンタルケアの検討を・・・」
「そんなことを爆豪自身が望むと思いますか?」
イレイザーヘッドに返す言葉がミッドナイトには無かった。
「脅されて無理矢理に協力をさせられていた訳じゃない。いや、事態はそのケースより深刻だ。子供がオールマイトに憧れるように、ムーンビーストに憧れてしまっているのなら、ヒーローへの適性が無いと言わざるを得ない。無論、それを見抜けなかった我々にこそ最も重い責任があると承知の上で言わせて貰う。爆豪勝己はもう、
言い切るイレイザーヘッドに「けれど・・・」と言いよどむミッドナイト。
根津校長はミッドナイトから続く言葉が出ないことを見届けてから、イレイザーヘッドに最後の確認をする。
「・・・相澤先生。それが担任としての判断であると、思っていいんだね?」
「はい」
「なら、僕は君の判断を支持するのさ。彼を一番近くで見てきた教師は君だからね。三者面談の
上がった手は二つ。一つはミッドナイトのモノ。
もう一つはオールマイトのモノだった。
「香山先生だけでなく君も反対か。理由と対応を聞かせて貰ってもいいかな?」
「会議一つで彼の未来を決定づけてしまうのは、その、
「確かに。しかし、長引かせて良い問題ではないのさ。時間を要するからと言って会議が踊っては意味が無い。反対理由には共感するけど、対応としては“待ち”が君の意見なのかな?」
「んぐっ」
痛い所を突かれるオールマイトの顔が笑顔のまま固まる。ヒーローとしては百戦錬磨だが、新人教師である彼にこれ以上の理屈による反論は出来なかった。
しかし、ならば感情論でオールマイトは爆豪勝己の未来を守ろうとする。
「彼は素晴らしいヒーローに成れるッ‼」
“でも”、“だって”を繰り返した後の言葉にイレイザーヘッドはため息を吐き、プレゼント・マイクはニヤリと笑い、ミッドナイトはオールマイトの援護に身を乗り出す。
それが雄英教師陣の内、七割の考えだった。既にムーンビーストという
そして、残りの三割は爆豪勝己という逸材を見捨てて良いのかという思い。確かにオールマイトの言うように爆豪勝己にはトップヒーローに成れるだけの素質があることは雄英体育祭で証明されていた。
学校長としての立場から常識的な判断を優先する根津校長は会議室にいる教員全ての声に耳を傾けながら、イレイザーヘッドに視線を送る。
その視線に気がついたイレイザーヘッドは小さく頷いた。
「そこまでなのさ」
紛糾しようとする会議を小さな片手で制しながら、根津校長はイレイザーヘッドに発言を促す。
「相澤先生。爆豪君の除籍以降のケアについては、勿論、考えがあるよね?それを皆に発表して欲しいのさ」
「除籍後の・・・ケア?」
オールマイトが疑問形で呟く。プレゼント・マイクのニヤニヤは留まらない。ミッドナイトは縋るような視線でイレイザーヘッドを見た。
昨年、担当したクラスの全員を除籍したという逸話を持つイレイザーヘッドだが、無論、その行動には裏があり結果として全員が立派なヒーローに成るための成長を遂げている。
その信頼があるからこそ根津校長はイレイザーヘッドの意見を支持したのだ。
「爆豪は雄英にいるべきじゃない。これは本心です。ムーンビーストに憧れたアイツに、俺たち教師の言葉は恐らく届かない。アイツの教育に最適な人材に心当たりがあります。彼にアイツを預けて見てはどうかと、考えています」
イレイザーヘッドが爆豪勝己を見捨てるつもりでは無かったことに笑顔を取り戻したオールマイトが興奮した様子で声を上げる。
「相澤君!信じていたさ!それで、それは誰なんだい!教育というと、ベストジーニストかなッ!そういえば彼は爆豪君をドラフト指名していた!」
「外部のトップヒーローの手を煩わせる事は合理性に欠ける。それに其処までの特別扱いをするべきじゃない。爆豪は
ジロリと睨まれたオールマイトは萎縮する。
「・・・俺が推す人物は、日本ではなく、
イレイザーヘッドから出た意外な提案に参加していた教師達がザワついた。
「日本よりも自警意識に高いかの国には、表だってムーンビーストを支持する著名人もいる。その環境下で爆豪自身に本当にムーンビーストの主張が正しいのかを考えさせる機会になればと思っています」
教師達は新作映画の宣伝のために来日した有名俳優がムーンビーストに対してコメントを出していたことを思い出した。
根津校長は小さく頷きながら、「良い考えかも知れないのさ」と笑った。
「環境が変われば視野が広がる。直情型の彼にはきっと良い経験さ。それに彼自身を守る事にも繋がるね」
「・・・守る?」
疑問符を浮かべるオールマイトに説明するために、イレイザーヘッドは言葉を重ねた。
「元々、体育祭で態度について爆豪へのクレームが学校にいくつか来ていた。それに加えて今回の件が何処かから漏れれば、マスコミはこぞってアイツを叩く。だが、国外ならその心配は減るんですよ」
「なるほどッ、流石は相澤君!」
オールマイトの
「・・・どーも」
「しかし、そのヒーローは協力してくれるかな?私にも経験があるが、アメリカでのヒーロー業は激務。断られはしないかな?」
オールマイトの言葉にイレイザーはニヤリと笑う。
「大丈夫でしょう。
こうして爆豪勝己の処遇は決定した。
そして、最後の議題。
それは職員会議終了後、根津校長とミッドナイトの二人だけで話し合われる。
根津校長が懐からとりだしたのは、元雄英在籍生徒-久図草太郎の写真だった。
「これと同じモノが現場に落ちていたそうなのさ。それが意味するところは、
根津校長の言葉がミッドナイトの顔に影を作る。噛んだ唇からは血が滲んでいた。
「どのようなルートかは、わからない。けれどムーンビーストは、彼はかつて僕らが隠蔽した事実を知ってしまった」
「・・・久図草太郎の、安否は?」
「一ヶ月以上前に家族から失踪届が出されていたのさ。おそらくはもう、この世にはいないだろうね」
根津校長は小さな背丈からは高い場所にある窓から、青空を見上げながらに思う。
「あの時の判断は決して間違ってはいなかった筈なのさ。首台正義という生徒を一番近くで見ていた君が、彼が真実に耐えられないと判断して、僕もそれを支持したのだからね。僕らは、彼の心が真実に耐えられる様に成った時、彼が立派なヒーローに成れた時に、真実を伝えるつもりだった。・・・結末は最悪だけれど、それは結果論なのさ。だから、あまり自分を責めてはいけないよ」
「・・・ええ、わかっています。きっと、正義君の方が、ずっと苦しんでいる筈ですから・・・」
「そうだね。きっと彼は君に裏切られたと思っている筈なのさ」
校長として部下に優しい言葉をかけながら、根津校長のハイスペックな頭脳は最悪に近しい未来を予想する。
根津校長はミッドナイトの顔を見ながらに真剣な顔で言う。
「かわいさ余って憎さ百倍。彼は君を殺しに来るかも知れない。今日から君には公安の護衛が秘密裏に付く事になった。これは君を守るためなのさ。受け入れてくれるね?」
「・・・はい。では、私はこれで失礼します」
「うん」
ミッドナイトが退席し、一人残された根津校長は再び青空へと視線を戻す。
“個性”道徳教育の分野で偉人として称えられる彼であっても答えの出せない問題というモノは存在する。
かつてミッドナイトが選択した事を彼は今でも支持している。
しかし、その愛は首台正義が香山眠へと抱く一方的なものだった。
『茶化さないで。私と彼は教師と生徒なんだから』
結局はその言葉に帰結する。だから、プレゼント・マイクが言った言葉はイレイザーヘッドがため息を吐く必要も無い程にわかりやすい冗談で、ミッドナイトの顔が赤いのも酒の所為でしかなかったのだ。
首台正義は香山眠を異性として愛したが、香山眠は彼を生徒として愛していた。
そうで無ければ首台正義に久図草太郎のことを伝えるという選択肢も確かに存在した。
しかし、ミッドナイトに取っては久図草太郎もまた守るべき生徒だった。
教師としてのミッドナイトの選択を根津校長は支持する。
「しかし、ヒーローとしては・・・どうするべきだったのだろうね。今更、そんなことを考えてもきっと答えなんて、でないのさ。だから、僕は香山先生の選択を支持し続けるよ。ムーンビースト、君に僕の部下を傷つけさせる訳にはいかないのさ」
個性『ハイスペック』。
人間を超越した小さな獣は、ムーンビーストへの決意を新たにした。