ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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年内最後の挨拶をする為、急いで書き上げました。
来年度も皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




個性『剛翼』②

 

 

私が蛇腔市でレディ・ナガンと合流してから、三日の時が経っていた。

その間に私がした事と言えば蛇腔市近郊にもあった支援者(パトロン)の別荘の扉を蹴破り、家主が逮捕された事で空家となった其処を有効活用する為に掃除した位の事で、残る細事(さいじ)の殆どをレディ・ナガンが引き受けてくれた。

細事とは壊滅していた灰色勢力の信奉者(シンパ)達をかき集めて、現在進行形で起きている事態の情報収集。

そして、私の逮捕以降、地下に潜り逃亡を続けていたオーバーホールとも連絡を取り合い、互いの無事を確認しつつ合流を図ること。

その二つの難題をこなしながら、刑務所の食事で痩せ細った私に栄養を取らせる為にダイニングキッチンで料理をしてくれているレディ・ナガンには感謝しかない。

 

私は料理をしているレディ・ナガンの背後から抱きつきながら、眼に眩しい程に美しい髪に顔を埋める。

 

「・・・ねえ、邪魔なんだけど」

 

「あと三分だけ」

 

「ハァ、怪我しても知らないよ」

 

私という邪魔が入りながらも、まな板の上でキャベツを手際よく千切りにしていくレディ・ナガンの技術に感心しながら、私に残された至福の時間である三分を有効活用する為、考えを巡らせる。

嗅覚神経と直結する脳細胞を活性化させながら、考えるのは死柄木弔の事だった。

 

“未曾有の大災害”。

ネットに流れる彼の姿。その個性(チカラ)は人の範疇を超えていた。

触れるだけで全てを崩壊させる個性は伝播するよう進化を遂げ、肉体の強度は全盛期のオールマイトに匹敵するレベルにまで引き上げられ、オール・フォー・ワンから与えられた複数の『個性』を扱う姿は、確かに“魔王”と呼ぶに相応しい様相だった。

 

恐らく彼は私と同じく何度かの個性の“覚醒”を迎えている。

しかし、それでも尚、私の眼には彼が脅威に映らない。

例え、その肉体が全盛期のオールマイトに匹敵する強度を持とうとも死柄木弔はオールマイトではない。

私の個性『ギロチン』が、オールマイトの肉体を斬ることに四苦八苦したのは、彼が完璧なヒーローだったからだ。

恐らく世界中を見渡しても彼の様なヒーローは只一人だろう。

 

只一人の人も殺すこと無くNo.1(トップ)となったヒーロー、偉大なる脅威(オールマイト)

 

トップヒーローに成るほど、対する(ヴィラン)の危険度は増す。時には殺害も“やむなし”な事もあるだろう。

しかし、オールマイトは、日本国内はおろか(ヴィラン)の本場であるアメリカへの留学時代ですら、只の一人も殺していない。

相手が人を殺した数だけ切れ味を増す私の個性『ギロチン』との相性の悪さは言うまでも無く、故に私は彼を偉大なる脅威と恐れ尊敬し続けてきた。

 

しかし、死柄木弔はそうでは無い。彼は数え切れない人数を殺している。

ならば私の個性『ギロチン』は彼を敵とした時、比喩で無く月すら両断する切れ味となるだろう。

一刀で首を落とせるのなら、複数の『個性』など恐れる必要も無い。

林間合宿にてオール・フォー・ワンと接敵した時には、私の迷いが原因でギロチンを振るう事が出来なかったが、もう迷わない。

私のギロチンは一切の矛盾無く、あの二人を殺すだろう。

 

しかし、そう強がってみた所で私には機動力という問題が残る。

複数の『個性』で自在に空中戦を繰り広げるオール・フォー・ワンと死柄木弔を前にした時、私の四肢に形成したギロチンの刃を落とした衝撃で空を()()という戦法では、若干の不安が残るのも確かだった。

“飛ぶ斬撃”では、ギロチンの鋭さは十全に発揮されない。精々がビルを両断する程度の切れ味であり、惑星に匹敵する強度の全盛期オールマイトには届かないだろう。

それに触れれば首を落とせるとしても、触れれば勝てるのは個性『崩壊』を持つ彼方も同じことだ。

ならば、後はどちらが先に触れるかと言う機動力の戦いになる。

そうなった場合、私の誇る最終形態-逆襲鬼(アベンジ・ザ・ブルー)を用いたとしても()(わる)い。

無論、じゃんけん(クソゲー)の押し付け合いに成るだろう戦いで、無敵チョキ(出すべき手)が無いわけじゃないが、それは最終形態(ファイナルフォーム)を超えた形態。

安易に切れる手ではないし、周りへの被害を鑑みれば練習の場など無いぶっつけ本番になるだろう。

 

しかし、たぶん、それでいい。そうであるべきなのだろうと前向きに考える。

戦いの中での成長は“正義”の味方の特権。

私はきっとそうあるべきなのだと、結論を出した所でレディ・ナガンから、声をかけられる。

 

「おい、…固いのが尻に当たってんだけど」

 

「・・・・・・・・・失礼。戦いに思いを馳せ、昂ぶりました」

 

「夜までお預けだからな」

 

「わん」

 

年上美人に手綱を握られているという事実に興奮しない私では無く、レディ・ナガンの言いつけを素直に聞く事に否は無い。

約束の三分が過ぎたので、レディ・ナガンの料理の邪魔をするのを止めて、彼女の手料理を楽しみにしながらリビングのテーブルを拭くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

レディ・ナガン手製の生姜焼きでキャベツの千切りを巻き、それを口に運びつつ私はテレビに釘付けになっていた。

これから始まるのは現スリートップヒーロー達の会見。

内容はオールマイト引退後、№1となったエンデヴァーの家庭環境が大半を占めるのだろう。

驚くべき事に(ヴィラン)連合の荼毘(だび)という(ヴィラン)が、エンデヴァーの死んだ筈の長男だったらしい。

荼毘は林間合宿での雄英襲撃に参加していたらしいが、私は出会っていないのでよく知らない。

彼の顔を見たのはネットに流れていた荼毘自身によるエンデヴァーの家庭内暴力(DV)を告発する動画が初めてだった。

言われて見れば顔が似ている様な気がしなくも無いが、継ぎ接ぎだらけの荼毘の顔は表情が引きつり血の繋がりが確信できるほど似てはいなかった。

 

動画内で荼毘は言った。

 

大量殺人犯()を産んだのはエンデヴァーの過ちだと。

 

私は否だと思う。

確かにエンデヴァーの家庭内での態度がヤバいという情報を、私は得ていた。

ステイン奪還作戦にてエンデヴァーと対峙した際、私にエンデヴァーの肉体には熱がこもり続けるという弱点を教えてくれたのは善意の第三者(匿名の誰)かだったが、情報の裏付けのために調べれば、それはエンデヴァーの次男だった。

 

次男のそれは若さ故の過ちだと思うが、(ヴィラン)に情報を流されるほどに息子に嫌われているというエンデヴァーの家庭には、確かに問題はあったのだろう。

 

しかし、彼もまたオールマイトと同じく人を殺す事無くトップヒーローにまで上り詰めた男だ。

オールマイトさえいなければ、もっと早くこの国の№1になれた男。

その執着は確かに歪んでいたのかも知れないが、それでエンデヴァーのヒーローとしての実績が消える訳じゃない。

 

何より私は犯した殺人を他人の所為にする輩が大嫌いだ。

殺すのならステインのように己の信念で殺せと思う。

いや、どのような信念であれ人殺しを正当化する私では無いが、それでも他人に責任を押しつける輩よりステインのような(ヴィラン)の方が百億万倍マシだろうという話だ。

しかし、まあ、結局、私は荼毘のような輩もステインのような男も正義執行(殺害)するのだから、これは好き嫌いの話だ。

 

私は荼毘が好きでは無い。

それだけの話だったので、エンデヴァーが会見で家族の(おぞ)ましい過去を滔々(とうとう)と語り頭を下げた事で、私の中でこの件は終わった。

 

私は他人の家庭の問題に首を突っ込む気は無い。

それはお節介なヒーローの領分であり、私のような(ヴィラン)の領分では無かった。

 

だから、私が衝撃を受けたのは次いで明らかになったホークスが(ヴィラン)連合の(ヴィラン)(ヴィラン)名-トゥワイス。本名、分倍河原(ぶばいがわら)(じん)の殺害を認めた事の方だった。

荼毘の告発動画にて、それらしき場面が映ってはいたが、ホークスの自白により罪は確定した。

 

「・・・ホークスは素晴らしいヒーローだと、梅雨さんから聞いていたのですがねえ。残念です。レディ・ナガン。どうやら、私は貴方の後輩を殺さねばならない」

 

私の向かいで一緒に食事を取っていたレディ・ナガンは箸を止める事無く言う。

 

「私と同じ穴の(むじな)さ。元々、公安にろくでもない事を沢山させられてきただろうさ。神野で捕まった時に顔合わせているだろ?その時に“濃い血の匂い”とやらで、気がつかなかったのかい?」

 

逮捕(あの)時は、鼻腔内を香山先生の匂い・・・いえ、ミッドナイトの『個性』で支配されていましたからねえ。血の匂いは掻き消されていたのでしょう」

 

香山先生の名前を出したら、レディ・ナガンに睨まれた。

彼女は意外と嫉妬深いようだ。

 

テレビの中のホークスは言う。

 

《彼に“個性”を発動されていれば、被害想定は今の比じゃありませんでした》

 

それにレディ・ナガンは相槌をうつ。

 

「被害を最小限に抑える為の殺害。(ヴィラン)一人の命と大勢の市民の命を天秤にかけて後者を選んだ。ヒーローとして正しい姿勢だって、私は思うけどな」

 

「私の前に正しさなど意味はありません。ただ“正義”があるだけです。人を殺した人間は人に殺されねばならない。トゥワイスは(ヴィラン)でしたが、もしかしたら気の良い奴だったかも知れませんし、そんな彼を兄のように慕う少女がいたかも知れません。ならば私は、どこかにいるかも知れない少女を思いホークスに正義執行いたしましょう。例え素晴らしいヒーローであろうと、正義の前に例外はないのです」

 

「知っているよ。全部終わったら、あんたは私のことも殺すんだもんな」

 

「・・・ええ、例外はないのです。愛しくても、殺す。故に正義とは、言葉では語り得ぬものなのです」

 

「相変わらずイカレてる。けど、その狂気もあんたの一部だ」

 

幸せな食卓だという実感がある。

目の前で笑うレディ・ナガンを可愛らしいと思うし、愛おしいと思う。今の私はきっと香山先生(初恋の人)より、レディ・ナガンを愛しているのだろう。

彼女と歩む将来を考えれば幸せだ。

しかし、それでもオール・フォー・ワンの打倒後、レディ・ナガンを殺害すると私は決めている。その決定に揺らぎは無い。何故なら、彼女も人殺しだからだ。

平和の維持のために彼女に殺された被害者達のため、私は復讐という正義を成す義務がある。

“正義”は“愛”に勝るという答えを既に出し終えてしまった私は、危険思想を持つイカレた(ヴィラン)なんだろう。

それでいい。

そんな(ヴィラン)で無ければ紡げぬ物語があると私は信じる。

 

 

会見は続く。

記者から出る質問の内容の殆どがヒーロー達を責める声だった。

その中でも今後の活躍で社会の不安を取り除くと言い切ったエンデヴァーの姿には胸を打たれた。

オールマイト引退(なき)(あと)、この国で私と伍するヒーローは、やはり彼だろう。

オールマイトと同じく人を殺したことがなく、個性『ヘルフレイム』と私の個性『ギロチン』の相性の悪さは最早、説明する必要も無い。

やはり彼は私にとって英雄的暴力(エンデヴァー)たり得ている。

それを嬉しく思う。

 

エンデヴァーの決意表明の後、№3ベストジーニストから雄英をはじめとした広大な敷地と十分なセキュリティを持つヒーロー科の学校を指定避難所として開放するという説明が成された。

そして、説明も終わりそろそろ会見も終わりかと思った時、一人の記者が手を上げた。

 

質問の時間は既に終わっていて、タイミングが悪いこと、この上なかったが、その記者は持参したマイクを持ち立ち上がった。

 

《皆さん。大事な質問を一つ忘れて無いっスか》

 

金髪オールバックの記者は、前振りした後に名乗る。

 

《どーも、ネットメディア【NNNサービス】の(もん)です。ウチの独自取材で得た情報、でもなんでもないんですけどね。神野の悪夢をTVで見てた奴らなら、誰でも知ってることですが・・・今回の“未曾有の大災害”。ムーンビーストが予見してましたよね?》

 

それはヒーロー達を非難する質問をしていた記者達すら、一種の禁忌(タブー)としていた質問だったのだろう。

【NNNサービス】の記者の質問を止めるため、警備員が彼の元へ向かって行くのが画面に映されていた。しかし、なんだか何処かで見たことのある気がする双子のボディーガードによって警備員達は足止めされていた。

 

その間に【NNNサービス】の記者は質問を続ける。

 

《あの時、ムーンビーストはオール・フォー・ワンを殺さなきゃ“とんでもない事”が起こると言っていましたよね。まあ、厳密に蛇腔市を襲ったのは死柄木弔達、(ヴィラン)連合だったから、あの場でオール・フォー・ワンをムーンビーストが殺していても、“未曾有の大災害”は防げなかったかも知れませんが、その後のタルタロスの陥落と刑務所の襲撃はオール・フォー・ワン主導だったンでしょう?なら、あの場でムーンビーストがオール・フォー・ワンを殺していたらッ、今よりずっとマシだったんじゃないですかぁ‼》

 

【NNNサービス】の記者の怒声のような質問にエンデヴァー達が答える義務は無い。

既に質問の時間は終わっている。

しかし、それでも真摯に答えようとしたエンデヴァーを片手で制しながら、口を開いたのはホークスだった。

 

《確かに結果論で言えばそうなりますね。しかし、あの時点でオール・フォー・ワンはオールマイトにより無力化されていました。それなのに(ヴィラン)の言葉を鵜呑みにして、殺人を見過ごすなんて真似が出来るはずがありませんよ》

 

《被害を抑える為に(ヴィラン)を殺したアンタがそれを言いますかッ!ムーンビーストがやろうとした事もアンタと同じでしょうッ!いや、被害を抑えるってなら、ムーンビーストの行動の方がずっと正しかったんじゃあ、ないですかぁ‼》

 

《ムーンビーストは(ヴィラン)だ。ヒーローじゃない》

 

ヒーロー(アンタ)達が正しいことが何一つ出来ないからッ、この状況なんでしょうが!あの時ッ、ムーンビーストを止めたのが正しかったと言うのならッ、ヒーロー(アンタ)達は勝たなきゃいけなかったッ!泣いて頼む男の“正義”を邪魔をしておいてッ、負けてごめんじゃあ、無いでしょうにッ‼》

 

《・・・負けたことに、言い訳をする気はありません。けれど、あの時の選択を失敗だったと言うことは、ヒーローには出来ない》

 

《・・・結局、それがヒーローの限界なんスよ》

 

双子のボディーガードを突破した警備員が【NNNサービス】の記者を取り囲む。

連行されていく彼は最後にホークスに向けて嘘か本当かも分からない爆弾を落としていく。

 

《これはウチが独自取材で得た情報なんですがね、あの時、アンタが手を撃ち抜いた警官。二日前に自殺したそうですよ。同僚の話じゃ、人一倍正義感の強い人だったそうで、あの時、アンタに撃たれても手を止めなければ“未曾有の大災害”を防げたんじゃ無いかって、ずっと自分を責めていたそうですよ》

 

 

《アンタ、それでもヒーローかよ》

 

 

会見は後味の悪さを残して終わった。

後味の悪さを味噌汁で消しながら、私はレディ・ナガンに問いかける。

 

「アレは貴女の仕込みでは、ないですよねえ?」

 

「違うよ。其処まで出来るほど、まだ灰色勢力は再構築できちゃいない。あれはあんたの信奉者(シンパ)の暴走。【NNNサービス】って、最初期からアンタ寄りの報道を繰り返していた古参だろ。まったく面倒な真似をしてくれたね」

 

「ええ、アレはまずい。市民達の間にヒーロー達への不信感が更に積もってしまう。いや、彼があの場で神野区の件を出さずともネットでは既に回っていた話題ではありました。批判は避けられぬ話題です。故にホークスはエンデヴァーを遮り、エンデヴァーへこれ以上の批判を向けぬ為に矢面に立ったのでしょうが・・・記者の口が無駄に達者でしたねえ」

 

神野区で私が予見した“とんでもない事”。

TV越しに見ていた視聴者が、“あの時に”と考えるのは当然だ。

確かにあの時、私がオール・フォー・ワンの殺害に成功していれば事態は今より深刻では無かっただろう。

しかし、この件ばかりは私はホークスの肩を持つ。

それは結果論だ。

私には、あの場でオール・フォー・ワンを殺すだけの実力が無かった。それだけの話。

後悔はある。しかし、時間が巻き戻らない以上、過ぎたことをグチグチと言う気は無い。

レディ・ナガンがそう思える様にしてくれた。

 

「世間がするべきはヒーロー達を責めるのではなく、団結すること。ヒーロー達と市民が別たれた混沌(カオス)こそ、オール・フォー・ワンが望むものの筈です」

 

「まあ、混乱に乗じて嬉々として力を蓄えるだろうね。でも、正直、あんたの熱心な信奉者(シンパ)の暴走を止める方法は無いよ。それこそあんたが直接言って聞かせた所で、止まるかどうかなんてわからない。“逆十字(象徴)”は、既にあんた無しで意味を持ち始めている。“復讐という正義”が()()()()()()()()()()を肯定している以上は、ね」

 

「・・・これだから、私には信奉者(シンパ)など要らないと、最初から言ってきたのですがねえ」

 

「憧れるなと言うには眩し過ぎたのさ。自分のカリスマを恨みなよ」

 

「冷たいですねえ」

 

「私は面倒とは思うけど、状況自体は良いと思っているよ。其処まで悪い方向に暴走しないと思っている。なら、それは灰色勢力が勢力を拡大するチャンスさ」

 

「私は私の戦いにあまり人を巻き込みたくはないのですがねえ」

 

「私は外野を巻き込んででも、あんたに勝って欲しいと思っているよ」

 

「・・・レディ・ナガン。貴女、いつからそんなに私が大好きに成ったのです?」

 

「さあ?もしかしたら、一目惚れだったかも」

 

真面目に取り合う気がないレディ・ナガンから視線を外して溜息を吐く。

ともかくとして事態の収拾にレディ・ナガンの助力は得られないようだ。

ならば、私は暴走する自称信奉者(シンパ)達の掌握を諦めるしかない。

 

どうしようも無い事は見て見ぬ振りをする私だ。

レディ・ナガンも大丈夫だろうと言っているのだから、大丈夫だろう。

「ヨシッ‼」と工事現場で見かけたことのある安全ヘルメットを被った猫のポスターを見習い、目の前の問題から目を逸らして、次の問題に目を向ける。

 

「オーバーホールの居る大阪へはどうやって行きましょうかねえ。新幹線も飛行機も動いて無いですし、ワン・フォー・オール達の捜索のために引かれた幾つもの検問で長距離の移動は困難を極める」

 

「それだけどさ、私、面白い話を聞いたよ。なんでも今の雄英高校と士傑高校はリニアシステムを使って地下で繋がっているらしいよ。ロボットアニメみたいにね」

 

「ロボットアニメみたいにッ⁉それは凄い」

 

士傑高校とは雄英高校と並ぶヒーロー科を持つ名門校。

そして、“東の雄英。西の士傑”。という言葉があるとおり、関西にある名門校だ。

もしそのリニアシステムを利用できたなら、大阪にいるらしいオーバーホールとの合流も簡単だろう。

 

「しかし、平時ならまだしも現在の雄英に忍び込むのは不可能でしょうし、絵に描いた餅ではないですかねえ」

 

「こっちから行くのは無理だろうね。でも、向こうからは来られるかも知れないし、とりあえず連絡してみるよ」

 

「ありがとうございます」

 

結局、この問題もレディ・ナガンに任せる事になってしまった。

やることの無い私は今日の夜にでも外に出て正義執行に勤しむ事に決めたのだった。

 

 

 





よいお年をお迎えください。



”エンデヴァーの次男”。
夏君。父親に非道のバチが少しでも当たれば良いと思ってムーンビーストに匿名で弱点を漏らしたが、その後に後悔に苛まれ最近できた彼女に心配されていた。
ムーンビーストが人殺し以外は殺さないヴィランだと知っていたので、其処まで酷い事にはならないという軽い考えだった。


”なんか見たことのある双子のボディーガード”
ムーンビーストのパトロンであるカネクラを余子浜スタジオで守っていたボディーガード。
カネクラの逮捕後も、カネクラの命令に忠実にムーンビーストの信奉者達のために働いているらしい。



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