ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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前回の『手紙』と個性『オール・フォー・ワン』②での内容にズレがあるとの指摘をいくつか頂きました。
皆様には細かいことは気にせずに楽しんで頂けると嬉しいな!(半ギレ)
実は伏線があったりなかったり!(ガチギレ)

嘘です。申し訳ございません。
ただの私の力不足です。

ガバガバな文章ですが、皆様の暇つぶしに成れば幸いです。(^^)/




個性『新秩序』

 

 

時として善意は人を破滅に向かわせる。

それが好意に満ちたモノであると理解できるからこそ()(がた)い。

許すとか、許さないという単純な答えではなく、胸に滲む感情が“灰色”であるからこそ吐き気を覚える。

久図草太郎からの『手紙』を読み終えた私は、レディ・ナガンの膝を涙で濡らしていた。

いい大人が膝枕の上で泣いている。レディ・ナガンから私の姿はさぞ滑稽に映っているだろうに、優しい彼女は何も言わない。只、優しく頭を撫でてくれていた。

やめてくれと思った。

その行為は、今の私には効きすぎる。

目頭を押さえても止まらない悔し涙が、止めどなく流れる。

 

「・・・下手な嘘も見抜けないで、それの何処が正義だというのでしょう。()()()ッ、その一言でッ、許されるのならッ‼()()()()()()()()ッ、言うのならッ‼」

 

それはもう脅迫だ。

そんなものが正義である筈もない。

 

理解している。香山先生も根津校長も私に更生してほしいだけなのだ。

正しい道を歩むのなら、理不尽は呑み込まなければならない。許すことの大切さを尊重しなければならない。たとえ自分の心を殺してでも社会に迎合することが、大人になるということだ。

 

この『手紙』の受け取り方次第で私の未来は大きく変わる。

“迎合”か“反発”か。

“誠意と取る”か“嫌悪する”か。

“許す”のか、”許さなければならない“のか。

 

いや、最初から答えは出ていた。

そんなことを考える時点で私は“大人”にはなれない。

緑谷出久やトガヒミコの前でどれだけ大人ぶったところで私の本質は満月(あの日)の夜から、何一つ変わっていない。

 

「ねえ、火伊那(かいな)

 

弱気になった私は思わず彼女の名を呼んでいた。

 

「私のやってきたことは、無意味だったのでしょうか。…“象徴”に成りたかった。血に塗れた私の姿を恐れた誰かが、殺人を踏みとどまれるのなら、それが救済であると信じた。私は知って欲しかった。どんな理由があれ、人は人を殺してはならない」

 

それなのに世間は言う。

“罪を憎んで人を憎まず”。

許す心の大切さを説く。

 

「まずは(そこ)から間違えていることを、どうして誰も指摘しないのか。それが私には理解できない。だから、逆十字を“象徴”として掲げ、私は訴え続けてきた。―――罪を犯すのが人ならばッ、憎むべきは“罪人”であるとッ!“罪人”を裁く(ギロチン)こそが、“正義”ではないのかとッ‼それのみが唯一、人が人を殺す“正義(理由)”足りえるとッ!それなのに、それなのに、それなのに…」

 

香山先生や根津校長には、何一つ私の気持ちなど伝わってはいなかった。

もし伝わっていたのなら、私にこんな残酷な仕打ちはしない。

久図草太郎からの『手紙』の内容を香山先生は知らなかったのだろう。

だが、個性『ハイスペック』を持つ根津校長が『手紙』の内容を考察しなかったとは考えられない。

根津校長は『手紙』の内容をある程度は予想した上で、香山先生の意志を尊重し、私に渡すことを選んだ。

それが私の心を抉ると知った上で、“大人に(許して)なれ(やれ)”と言っていた。

 

声を殺し泣く私は、レディ・ナガンが添えた手によって顔を上に向けさせられる。

 

「あんたは、あの女に出逢う前に、私に出逢っていれば良かったのさ。そうすれば、こんなに苦しまずに済んだ。…正義(まさよし)がやってきたことは、無駄なんかじゃない。頑張ってきたじゃないか。被害者遺族(誰か)の為に成りますようにと、掲げ続けた逆十字(正義)が多くの奴らの心を救ったよ」

 

見上げるレディ・ナガンの顔は悲しみを堪えるように歪んでいた。

 

「あんたと出逢えたから、私はあの夜、子供を殺さずに済んだ。その正義に救われた」

 

その顔を見て、私は上体を起こし、膝枕(甘え)を止める。

私が無様に泣くのはいい。

けれど、麗しき彼女を泣かせるなんて真似が許される筈もなく、私は泣きそうな表情をしているレディ・ナガンを抱きしめる。

 

「ねえ、私じゃあんたの初恋(はじめて)には成れなかったけど、私じゃ代わりに、成れないのか…?」

 

私はレディ・ナガンに何を言わせているのだろうか。

自己嫌悪を超えて自殺衝動を覚える。

 

久図草太郎の自己保身と自分が気持ちよくなりたいだけの謝罪に塗れた『手紙』を受け取り、香山先生が面会に来なかった理由を知り、根津校長に大人になれと言われたことで、私は絶望し立ち止まりそうになってしまった

その態度が麗しき彼女を悲しませて、とんでもないことを口走らせている。

 

「貴女が…香山先生の代わりに成れるのかと、聞いているのですか?」

 

「…ああ」

 

「代わりになど、成れるはずがない」

 

抱きしめるレディ・ナガンの身体が震えた。

そうではないと更に彼女を強く抱きしめながらに言う。

 

「貴女は既に私にとって掛け替えのない人だ。貴女がいなければ今の私はないのだから、誰かの代わりである筈がない」

 

「…その言葉、信じて、いい?」

 

「ええ、私はもう止まらない。貴女を失望させなどしない。走り切って見せましょう。貴女が信じてくれた正義に殉じてみせる。私は、ムーンビーストだ」

 

「…そういう意味じゃないけど」

 

「…え?」

 

「フフッ、けど、いいさ。あんたらしい。ねえ、ムーンビースト。走り終えた先で、あんたはまだ私を殺すつもり?」

 

「何を言っているのですかねえ。当然です」

 

「その時、あんたは泣くのかな?」

 

「…当然ですねえ。私はこんなにも、貴女を愛しているのですから」

 

「なら、私はその時にあんたの“初めて”に成れるね」

 

何故、レディ・ナガンは笑っているのだろう。

殺されるとわかっているのに何故、彼女は私を愛してくれたのだろう。

いずれは殺さなければならないとわかっているのに何故、私は彼女を愛してしまったのだろう。

 

「私は正義が初めて殺す、愛した女だね」

 

笑顔の彼女の首をギロチンの刃で刎ねる時、私はそれが理解できるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の領空。高度約1万メートルの雲の上をアメリカ合衆国のステルス戦闘機10機が編隊を組んで飛んでいた

その内の一機の()()で腕を組み仁王立ちする女性こそが、アメリカの№1ヒーロー‐スターアンドストライプ。

彼女は自身を支援するための米国軍特殊部隊(チーム)と共に自由すぎる独断先行で日本を救うため、アメリカから文字通り飛んできていた。

日本のヒーローと他国のヒーローの協力。

いや、緑谷出久がオールマイトから受け継いだ個性『ワン・フォー・オール』とスターアンドストライプの個性『新秩序(ニューオーダー)』の結託は、オール・フォー・ワンにとって警戒するべきことだった。

“力の塊”と“秩序の力”を同時に相手にできると楽観視するほど、オール・フォー・ワンは愚かではない。

 

敵連合が行った公安停止とオール・フォー・ワンの友人たちによる海外への妨害工作。

その目的は世界中のヒーローが日本に集結するのを遅延させ、オール・フォー・ワンにとって新たな身体()となる死柄木弔の身体を完成させ、個性『ワン・フォー・オール』を奪った上で、個性『新秩序(ニューオーダー)』を相手取ることだった。

しかし、その目論見もスターアンドストライプの自由すぎる独断先行により頓挫した。

ならば、オール・フォー・ワンが次に取る手段はわかり切っていた。

 

スターアンドストライプの日本への上陸を阻止すること。

 

スターアンドストライプと編隊を組んで飛ぶステルス戦闘機の前に飛行型脳無の背に乗った死柄木弔が現れた。

 

「出迎えが過ぎるね…自由な奴。お前がAFO(オールフォーワン)って(ヴィラン)かい?」

 

スターアンドストライプからの質問に対し、スーツ姿の上から襤褸切れを纏った死柄木弔は気取った態度で返す。

 

「さあ?()って何なんだろ?変な感じだ。()は死柄木弔だと断言できる。同時に()である事も疑いようがない。目が覚めてから、ずっとこうだ」

 

今の死柄木弔は、次の“AFO()”として完成に近づいている。

オール・フォー・ワンが長年に渡り集め続けて来た数々の個性と個性『オール・フォー・ワン』を受け継ぎ、オール・フォー・ワンの精神を植え付けられてもいる。

今の死柄木弔は次代の魔王の器。新たなる覚醒者。

不気味にほほ笑む死柄木弔に対して、スターアンドストライプを機上に乗せるステルス戦闘機のパイロットが彼女に問う。

 

《ありゃAFOじゃねぇ。トムラ‐シガラキだ。スター、一応聞く!迎撃か?回避か?》

 

それに対するアメリカ№1ヒーローの答えは決まっていた。

 

「勿論、SMASH(スマッシュ)!」

 

《オーケイ、スター。一機くらいは無事に着陸できるといいな》

 

「陣形展開‼さあ、(ヴィラン)退治だ‼おまえ達の死体は必ず親族の元に返してやる!」

 

これより始まるアメリカ№1(現役最強ヒーロー)次代の魔王(最悪のヴィラン)の互いに死を覚悟した戦い。

 

その戦いに無粋にも横槍は入れられた。

 

スターアンドストライプと死柄木弔がぶつかり合おうとした瞬間、両者の間の空間が突如として歪み、()()()

 

SHIT(シット)⁉なんだ、今のは!奴は今、何をした!」

 

《違うッ!スター!トムラ‐シガラキも吹き飛んでいる!第三者の介入…、ッ⁉()()ッ、スター!次が来るぞッ!》

 

パイロットに促されスターアンドストライプが地上(した)に視線を向ける。

目を凝らせば半透明なナニカが、飛んできているのが見えた。

 

《爆弾の類かッ!》

 

パイロットの一人が言う。

スターアンドストライプは爆弾(それ)以上のナニカであることを感じ取る。

 

「全機ッ、私より上を飛べッ‼」

 

飛んでくるナニカに対してスターアンドストライプは個性を使った全力での迎撃を決める。

 

スターアンドストライプの個性『新秩序(ニューオーダー)』。

それは対象に触れた後、名を呼ぶことで対象に新たなルールを設定できる世界最強の概念系(ぶっこわれ)個性である。

 

「『大気』は()の100倍の大きさで固まるッ!」

 

スターアンドストライプの背後にスターアンドストライプの姿をした大気の巨人が現れる。

不可解な攻撃(ナニカ)に対する不可視の迎撃。

振り上げられた大気の巨人の拳が、ナニカを殴りつける。

拮抗はしない。大気の巨人の肘から先が、削り取られたかのように消し飛んだ。

 

「ッ⁉防げる類の攻撃じゃ、ないって訳か!各機、アレに当たるなよ!回避優先!」

 

スターアンドストライプの指示に従いステルス戦闘機が散開する。

高高度での急速旋回の最中、目まぐるしく回る視界でスターアンドストライプは自身と同じように地上から放たれているナニカを必死に回避している死柄木弔の姿を見た。

スターアンドストライプは考える。

 

(どちらの味方でもない第三の敵。だが、これほどの『個性』を持った奴が今の日本にいるなんて。ヒーローでも(ヴィラン)連合でもない何者か…、まさかッ!)

 

スターアンドストライプが遥か下を睨みつける。

第三勢力は確かに其処に存在していた。

 

 

 

日本領海。高度1万メートルを見上げる男は、戦艦(ふね)の上に立っていた。

金蔵財閥総裁、カネクラ私蔵の骨とう品(アンティーク)

旧大日本帝国海軍、睦月型駆逐艦の甲板に立つ男の右腕には月明かりを放ちながら、青白く輝くギロチンの刃が生えていた。

 

「最終を終え、最強へ。“逆襲鬼(アベンジ・ザ・ブルー)”を超え、“逆襲月鬼(アベンジ・ザ・ブルー・ムーン)”となった私のギロチンを、少年時代に夢中になった漫画で一番好きだった(ヴィラン)のセリフをパクリ、もといオマージュさせていただき、言わせてもらいましょうかねえ!」

 

ムーンビーストは笑う。

 

「今の私のギロチンは、斬るのではなく、空間ごと削る」

 

切れ味などという次元の話ではなくなった。振るわれたギロチンの刃に当たった物体はどこか消失する。それを飛ぶ斬撃とすることで、削り取られた空間が収縮し爆発する。

自身に宿ったゆでたまご(トンデモ)理論にムーンビーストは理解を放棄した。

使えればいい。悪を断てればソレでいい。

周囲への影響を考慮しなければ振るうことすらできないチカラも海上でなら存分に使えると、ムーンビーストは“正義執行対象たち”に対して認識外から攻撃を仕掛け続ける。

 

しばらくして上空(そら)からスターアンドストライプと死柄木弔が下りて来た。

 

「なんっ、なんだ!お前だったのかッ、ムーンビーストッ!なん、だよ!なんでお前は俺の邪魔ばかりをするんだ‼アアッ‼」

 

「好き放題にやってくれたな。私らごと、トムラ‐シガラキを消すつもりだったのか?」

 

飛行型脳無の上でキレている死柄木弔とステルス戦闘機の上で腕を組み見下ろしてくるスターアンドストライプに対して、ムーンビーストは大仰に両腕を広げながらに言う。

 

「私には空へ跳べても、空を飛ぶ術はありませんからねえ。あなた達には降りてきて欲しかった。それとスターアンドストライプ、私のことを蔑むのは止めて頂きたい。ガッカリしているのは私の方だ。オールマイトを師と仰いでいるという貴女なら、もしやと期待したのですが…。流石にアメリカで№1を張る貴女が(ヴィラン)を殺していない筈がありませんでしたねえ」

 

「…」

 

「お国柄だ。仕方がないのでしょう。しかし、ならば、貴女の仲間である職業軍人(人殺し)と同じく貴女も正義執行対象だ。死柄木弔と変わらない。私の敵だ」

 

「…イカレた思想の(ヴィラン)とは聞いていたが、筋金入りだな」

 

「そんなに褒めないでいただきたいッ!」

 

大笑するムーンビーストに対し、苛立つ死柄木弔。

二人を前にしても余裕を保つスターアンドストライプ。

三つ巴となるかに思われた戦いに、さらなる参入者がやってくる。

 

死柄木弔の口から、黒いヘドロのような物体があふれ出た。

 

「オエェェっ…なんだよ、先生。俺に任せるんじゃなかったのか?」

 

死柄木弔の身体を通じて空間移動の個性で現れたのは、言うまでもなくオール・フォー・ワンの本体。

 

「ムーンビーストさえ現れなければ、君に任せたさ。しかし、どうあれ彼はスターアンドストライプより君の殺害を優先する。そうなれば二対一だ。分が悪いだろう」

 

オール・フォー・ワンはそう言って死柄木弔を宥めた後、顔を覆うマスクの下の目も鼻も耳もない顔で笑う。

 

「これで二対二だね」

 

「一対一対二の間違いですねえ」

 

「ヒーロー対(ヴィラン)の間違いだ」

 

「…もういいから、殺しあおうぜ」

 

ムーンビースト対スターアンドストライプ対オール・フォー・ワン&死柄木弔。

 

此処に、日本の命運を決める戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、大阪市、砂倉田(さくらだ)区。

 

「俺と壊理の施術を受ければ、確かにあんたは全盛期の力を取り戻せる。だが、それなりの代償はいただくぞ」

 

「かまわないよ。自分の死に場所を決められるようになるならね」

 

ヒーローは、まだ来ない。

 

 





大阪のでお話。

雄英ビッグ3がオーバーホールと壊理を発見

なんだかんだ壊理と雄英ビッグ3が仲良くなる

なんだかんだサー・ナイトアイとオーバーホールが出会う。

サー・ナイトアイがオーバーホールと壊理の個性なら、オールマイトの身体を治せるのではと考え、オールマイトを大阪に呼び寄せる。

現在。

となっています。
本来なら、作中でするべき説明なのですが、話の流れをぶった切ってまで大阪視点に戻りたくなかったので簡単に書かせていただきました。
その内、作中での説明が入る予定です。…たぶん。
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