ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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感想欄でオススメして頂いた今期のヒロアカのアニメのオープニングを見ました!とてもカッコよかったです!
レディ・ナガンの登場には心が踊りますね!
今から楽しみです!

今後について参考にさせていただきたいので、アンケートを実施しようと思います。
お答え頂けると嬉しいです。
よろしくお願い致します。m(_ _)m

いつの間にか50話です!これからも皆様の暇潰しになれば幸いです。(^^)




個性『ギロチン』⑤

油断した。言い訳など出来ない。海に浮かぶ足場での戦闘という場を整える事で、私は死柄木弔の個性『崩壊』を封じ込めた気になっていた。

自力で空を飛ぶ個性(チカラ)を持たない以上、足場が無くなれば海に投げ出されるのは必定。

根津校長から受け取った情報は、今の死柄木弔の中にはオール・フォー・ワンの人格も存在する可能性を示唆していた。

個性『ハイスペック』を持つ根津校長の予想は、十中八九、確定だと個人的には思っている。

だからこそ、()()()()()なオール・フォー・ワンの人格が、投身自殺に繋がる行為を選ぶとは思わなかったのだ。

 

いや、それも()()()()

 

私は失敗に汗を滲ませながら、“伝播する崩壊”から逃れる為に甲板から飛び降り、上空でのオール・フォー・ワンとスターアンドストライプの戦いで荒れる海に身を投げる。

片腕を失った状態での寒中水泳の経験は、残念ながらに私には無い。

ともすれば此所で溺れ死ぬかも知れなかった私を救ってくれたのは、やはり彼女だった。

 

個性『崩壊』により瓦礫となり崩れていく駆逐艦から、一台の水上バイクが飛び出してくる。

米国海兵隊正式採用武装水上バイク-“ブルー・トリトン”。それを操るのは艦内で私のサポートをしてくれていたレディ・ナガン。ほぼ全自動で動くように改造されていた旧帝国海軍の駆逐艦だが、流石に私一人では動かせなかった。

だから、「仕方が無いね」と笑いながらに言い協力してくれていた彼女の表情を見るのが、今は怖い。

私は海面に落ちる瞬間に足に形成したギロチンの刃を海面に叩きつけ跳ぶことで、レディ・ナガンの操る水上バイクの後部座席まで跳ぶ。

 

海難を逃れた私を待っていたのは、案の定、レディ・ナガンからの叱咤だった。

 

「なにをやっているのさ!どうして直ぐに死柄木を殺さなかった⁉」

 

「言い訳のしようがありませんねえ」

 

「以前までのあんたなら、終わらせられていた!問答無用で首を斬れていた!」

 

「個性の覚醒が(あだ)となりました。“血の追憶”、それが私に死柄木弔と泣いている子供を二重(ダブ)らせた」

 

「言い訳しない!」

 

「誠にごめんなさい」

 

レディ・ナガンの叱咤が骨身に染みる。死柄木弔の事を嘲笑えない。

私もまた以前、犯した失敗を繰り返してしまっていた。

それに対する反省は大切だ。だが、反省ばかりでは前に進めない。

私は復讐()()遂げる(進む)為、海に浮かぶ瓦礫の上に立ち笑っている死柄木弔を見る。

後部座席から立ち上がる私に対して、レディ・ナガンは死柄木弔から視線を外さず、振り返らないまま問いかける。

 

「・・・左腕、大丈夫よね」

 

「ええ、なんの問題もありません」

 

「勝ちなよ。ムーンビースト」

 

「勿論ですよ。レディ・ナガン」

 

視線を交わさないままのやり取りで私たちには十分だった。私は水上バイクから跳躍し、海に()()()()。足が水に沈む前に次の一歩を踏み出せば沈まない。それは常識だ。私はそれに更に足に形成したギロチンの刃を落とす反動を加え、海面を跳ねる様に跳ぶ。

向かって行く私に対して、死柄木弔は両手を突き出した迎撃(カウンター)の形を見せる。

それは先ほどまでの焼き増しだ。同じ道筋を辿るなら、私の勝利は揺るぎない。

だが、死柄木弔の表情が、どこか穏やかに見えた。

 

瞬間、身を襲う殺気に足が止まりそうになる。

死柄木弔の背後に十本の触手を持つ巨大な怪物(烏賊)が居た。

死柄木弔は微笑みながらに言う。

 

「“海流を操作する個性”+“傀儡”。海戦なら、まあ、この辺の個性は用意してるよな」

 

「海生軟体動物を使役した程度でッ、粋がるのならッ、海王類くらいは使役して頂きたいッ‼」

 

殺気を跳ね飛ばし、足を踏み出す。襲い来る十本の触手を恐れる必要はない。

死柄木弔の後ろに怪物がいるというのなら、私の背には女神がついている。

レディ・ナガンの操る武装水上バイクの小型ミサイルが、私を襲う海流の触手を弾き飛ばす。

爆音の中で聞こえもしないだろうに感謝の言葉を述べながら、私は死柄木弔に接近する。

そして、ギロチンの射程圏内。

私は体勢を低くした状態から、死柄木弔を見上げるように睨み付ける。

 

「なあ、ムーンビース―――

 

「正義、執行!」

 

―――と」

 

次はもう失敗しない。言葉を交わすからおかしくなる。

正義の柱(ギロチン)”は、言葉無く罪人の首を刎ねるだけの存在で良かったのだ。

 

死柄木弔の首が飛ぶ。

 

「やった!」

 

背後で勝利を喜ぶレディ・ナガンの可愛らしい声が聞こえる。

しかし、違う。

 

「まだです!」

 

振るったギロチンには豆腐を斬る程度の手応えも無かった。

切り飛ばした死柄木弔の首は、空中でクルクルと回りながらに笑みを浮かべている。

そして、私を見ながらに、その口が開いた。

 

自切(じせつ)。お前の真似さ。俺は感動したんだ。だから俺も“覚悟”した。脳さえ無事なら、“超回復”で再生できる。理論上は()()だが、やろうとは思ってなかったんだぜ」

 

死柄木弔はギロチンの刃で首を刈られる前に自ら首を胴体から切り離していた。

それを以前、私は動画で見たことがあった。オールマイト引退後にNo.1となったエンデヴァーと戦った“ハイエンド”と呼称される脳無がとった戦法。

同じ“改人(かいじん)”であればこそ、死柄木弔にも同じ事ができる事くらい、予想して然るべきだった。

 

「ならばその覚悟ごとッ、無塵と化して消えなさいッ!厳粛なる死刑執行(ジャスティス・オブ・ジャッチメント)ッ‼」

 

空間を削る飛ぶ斬撃。

その追撃はしかし、死柄木弔の首を拾い、空を飛ぶ個性を持つ者に避けられる。

オール・フォー・ワンが、死柄木弔の首を持ち空中に浮いていた。

気がつけば遙か上空(高度1万メートル)で鳴り響いていた戦闘音が消えていた。

空から降りてくるオール・フォー・ワンの姿は滅茶苦茶だ。

着ていた高級スーツは見る影も無く襤褸切れとなり、頭を覆っていたヘルメットも三分の一以上が欠損している。加えて腹部に風穴が空いていた。

 

「酷い姿だな。先生」

 

「君ほどじゃないさ。弔」

 

どう考えても致命傷だというのにオール・フォー・ワンはそこに居る。

首だけの状態でオール・フォー・ワンに軽口を叩く死柄木弔と、そんな死柄木弔に壊れたヘルメットから笑顔を覗かせるオール・フォー・ワンに対して抱く感情は嫌悪だ。

憎まれっ子世にはばかる。私は人間の嫌な生命力をまざまざと見せつけられている。

 

海に浮かぶ瓦礫の上に立ちながら、周囲を見渡す。

そこにスターアンドストライプの姿はない。

 

「・・・スターアンドストライプは、貴方に敗れたのですかねえ?オール・フォー・ワン」

 

「いいや。引き分けさ。彼女は気を失い海に落ちたが、個性も命も奪えなかったぜ。僕はオールマイトと同じ場所に穴を開けられた。痛いなんてもんじゃないよなあ、師弟の絆って奴はさ!」

 

「それは、よかった。流石に片腕で万全な貴方たちを相手できると思い上がる程に私は愚かではありませんからねえ。しかし、首だけの死柄木弔と満身創痍の貴方なら、どうとでもなるでしょう」

 

「よく言うぜ。君はどんな状態であれ、僕らを前に退く事なんてしないだろうに」

 

オール・フォー・ワンはそう言いながら、死柄木弔の首を持っていない方の右手を私に向ける。

 

「君が現れた時点で僕らの計画はご破算だった。『新秩序(ニューオーダー)』が獲れない以上、僕らが此所に長居するメリットは無いんだが、戦うというなら受けて立つよ。何せ僕は君のファンだ」

 

「おい、待て、先生。どういう意味だ?」

 

「勘違いするなよ。弔。彼は間違いなく僕らの敵さ。しかし、個人的には思うところがある。超常黎明期以降、唯一オールマイト(あの男)と僕以外で真正面から戦った男!痺れたぜ。できれば、君とは仲良くしたかった。その為の手土産はあげただろうに、残念だ」

 

オール・フォー・ワンが言っているのは林間合宿での事だろう。

確かに彼が齎した情報は私の人生を一歩進ませたが、それだけだ。

湧き上がる“正義の心”を押さえる蓋にはならない。

 

「・・・」

 

「おいおい、寂しいな。無視かい」

 

「・・・反省をしましてね。貴方たちと無駄に言葉を交わすつもりはないのですよ」

 

「そうかい。それならそれでいいが、僕から最後の忠告はさせて貰うよ。今、此所で君と僕らが戦えば後ろにいる彼女が巻き込まれるが、それでも戦うのかい?」

 

オール・フォー・ワンは私の後ろにいるレディ・ナガンを指しながらに言う。

確かに戦闘が始まれば私に彼女を気にかける余裕は無い。

水上バイクでの速度より速く動ける私たちの戦いから、逃げ出す足をレディ・ナガンは持ち得ない。

だが、しかし、()()()()()()()私は()()()

 

それはきっとレディ・ナガンとて同じだろう。顔を見なくても私はオール・フォー・ワンを小馬鹿にする彼女の表情を完璧に想像できた。

 

「彼女が私の枷になると考えているのなら、滑稽ですねえ。“レディ・ナガン”は人質には、なりません。“灰色勢力”は貴方を討つために集ったのです。戦いで命を落とす覚悟も無く此所にいると思うこと自体が彼女への侮辱だ」

 

「それが“筒美火伊那”でも?彼女は君にとって特別な女性だろう」

 

「それは、私への侮辱だ。私は既に答えを出している。“正義”は“愛”に勝るのですよ」

 

私の答えに対して二人の(ヴィラン)の笑い声が響いた。

オール・フォー・ワンと死柄木弔が声を合せて私の事を笑っていた。

 

「流石だぜ!ムーンビースト!そのイカれた思想ッ、君は紛れもない本物の(ヴィラン)だ!」

「ああ、糞ッ、お前、俺の船に乗れよ!そうすれば最高に愉快な事になる気がする!」

 

「・・・“正義”を嗤うな。(ヴィラン)ども」

 

私は嫌悪感を全身に押し出しながら、右腕と両足にギロチンの刃を形成する。

それに対してオール・フォー・ワンが首を横に振る。

 

「褒めているのだから、怒らないでくれよ。ああ、しかし、そうか。君の“正義”に(のっと)れば“麗しきレディ・ナガン”でさえ罪人だ。例えそれが社会秩序の為であったとしても!人殺しは許さない!差別無き正義の体現者が君だ!けど、よく見た方が良いぜ。君は本当に“筒美火伊那”を見捨てていいのか?」

 

聞くに堪えない戯れ言に返す言葉は無い。

言葉を交わすつもりもない。

反省は生かすべきだ。

私のすべきことは、彼らが殺めた人々の思いを込めて個性『ギロチン』を振るうことだけ。

此所が私の最終章。私が死のうとレディ・ナガンが死のうと最早関係がない。

ただ目の前の二人を殺せればそれでいいのだ。

 

「筒美火伊那を見捨てると言うことは―――

 

正義、執行。

 

―――身籠もった無垢な命も見殺しにすることになるんだぜ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

 

 

「感覚機能をほとんど失ってから、僕は“振動”や“赤外線”・・・いくつもの感知“個性”を手に入れ、僕の認識能力は人のソレよりも遙かに高い。だから、わかる。彼女、妊娠しているぜ。君の子だろう」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにを言っているのか、理解ができない。

子供?誰と誰の?私と彼女の?ありえない。そんな事があるはずが無い。

()()()()()()()

当然だ。子供は親を選べない。“正義”に殉じる私といずれ殺すと決めた彼女に未来はないのだから、無責任な事をするつもりは絶対になかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、まて。まさか。

たった一度だぞ。はじめての一度だけだぞ。

それで、その一度のタイミングで出来ていたというのなら。

 

「―――ッ、嘘だッ‼」

 

私は彼女がオール・フォー・ワンのセクハラ発言に激怒している顔を想像しながらに振り返る

しかし、そこには私の想像した表情は無く。

レディ・ナガンは腹部に右手を添えながら、私から目を逸らしていた。

 

それが、運命の赤い糸だというのなら―――やはりこの世界に神はいない。

人を弄ぶ悪魔がいるだけだ。

 

私は振り返りその名を呼ぶ。

 

「オール・フォー・ワンッ‼」

 

「ここだ♪」

 

その瞬間、オール・フォー・ワンの五指から伸びる“鋲”によって私の脇腹は(えぐ)り獲られる。

 

「駄目だ!止まるなッ、ムーンビースト!」

 

レディ・ナガンの悲鳴が聞こえた。

 

「おいおい、彼を責めるなよ!どうせ君の方から誘った癖に!こういう事態を防ぐのは、姉さん女房の君の役目だっただろう‼」

 

そんな彼女をオール・フォー・ワンが嗤っている。

 

止めどなく流れる血が海を赤く染めるが、気にはならない。

オール・フォー・ワンが私に止めを刺すために動き出していた。

絶体絶命のピンチ。

 

その中で私は断頭台(ギロチン)を幻視する。

 

木の枠組みに剥き出しの刃を縄で吊した質素な作り。罪人の罪悪を苦痛なく(そそ)ぐ為に作られた装置は人に“恐怖”と“安心”を与える。

そういうものに私はなりたい。被害者遺族の憎悪(思い)の代行者となることでそうなりたいと願った。

 

その結末が、コレか。

 

捨てるべきだったのだろう。

真に“正義”を冠するのなら、全てを捨てるべきだったのだろう。

(あか)も。(あお)も。仲間(きいろ)も。憎悪(くろ)すら、捨ててようやく“正義(しろ)”に、たどり着けたのだろう。

 

ソレが出来なかったから、私は此所で不様に負けるのだろう。

多くの人々の嘆きを知りながら、多くの人々の助力を得ておきながら、目の前にいる二人の(ヴィラン)を殺す事すら出来ない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()すら守れずに、私は此所で死ぬのだろう。

 

それでいいのか?

 

「・・・・・・ふざ、け、るな」

 

良い筈がないだろう。

 

「ムーンビースト!君の全盛期は余子浜であの男と戦った時だった!ミッドナイトとの初恋に敗れ正義に純化した君は美しかったぜ!けれど、レディ・ナガンと馴れ合い君は愛を知ってしまった‼その結末がコレだぜ!不様だよなあ、ムーンビースト!そういう(しがらみ)から逃れる為に、君は(ヴィラン)になったのに、レディ・ナガンという存在が台無しにしたのさ‼」

 

流石に血を失い過ぎている。

虚ろな目で右腕を複数の個性を込めて巨大化させるオール・フォー・ワンを見る。

それに対して右腕にギロチンの刃を形成するが、目の焦点が定まらずオール・フォー・ワンの姿が三重に見える。

 

「ヒーローでは守れないものを守る為に!ヒーローでは討てない(かたき)を討つために!君は獣に堕ちてまで叫んだ筈なのになあ!」

 

ああ、そうだ。その通りだ。

 

(ヴィラン)による!正義執行をッ‼」

 

ここから先は、その理想では戦えない。

私の“正義”は汚れてしまった。

レディ・ナガンを、彼女を殺したくないと思ってしまっている。

純化した“個性(ギロチン)”が身から剥げていく。

 

“血の追憶”が失われる。“空間を削る斬撃”は放てないだろう。“飛ぶ斬撃”も、もう無理だ。

“正義の象徴”になりたいと思った。差別無く振るわれる断罪で居たかった。

曰く正義ではない。完全なる正義を振るうモノになりたかった。

復讐という絶対の“正義”。

 

人を害した全ての者に、(ヴィラン)による正義執行を。

 

そう願うからこそ覚醒を続けていた個性『ギロチン』が、()()()()()

 

右腕に形成したギロチンの刃に赤錆(あかさび)が浮かぶ。

それを見てオール・フォー・ワンは笑い。

レディ・ナガンが泣いていた。

 

「大丈夫、ですよ。レディ・ナガン」

 

「大丈夫に見えないよ!」

 

普段のレディ・ナガンからは想像できないような悲痛な声が聞こえた。

オール・フォー・ワンを前に再び隙を見せる愚かな事はしない。

私は振り返らぬままにレディ・ナガンの独白を聞く。

 

「・・・迷っていた。・・・ずっと、悩んでいた。ごめんなさい。ごめんなさい。私が、決断しなきゃいけなかったのに・・・。せめて、あんたに相談するべきだった」

 

そこにはきっとヒーローでも(ヴィラン)でもない。

一人の女性としてのレディ・ナガンが其処に居た。

 

「あんたとの子を、無かったことには、出来なかった・・・」

 

「大丈夫。ええ、だから、大丈夫ですよ。レディ・ナガン」

 

「・・・でも‼あんたの個性がッ‼」

 

()()()()()

 

「・・・・・・・・・え?」

 

「私から、再び家族を奪わないでくれて、ありがとう」

 

「―――ッ⁉」

 

思い出せ。私の復讐(オリジン)。更にその先にあった筈のモノをチカラに変えろ。

“正義”を失って尚も此所に立ち続けられる理由を探せ。

私は何のために復讐という名の正義を掲げた。

なにが許せなかった。

なにが守れなかった。

なにが私を復讐に駆り立てた。

()が戦う理由は何処かにある。

()が守りたかったモノは何だ。

 

 

 

復讐(オリジン)の底には、()()()()()

父と。母と。弟が居た。

ある日、理不尽に奪われた日常。大切な命。それが許せなかった。

許せと言われても許したくなかった。

許してしまえば家族の命が、謝られたら許せる程度の価値に落ちてしまうと思うから。

 

そして、なにも知らない第三者が家族(大事)()(もの)を嘲笑う。

 

テレビで流れた難家羽香出(コメンテーター)の言葉。

 

『殺される理由が有ったのでは?だって親戚だったんでしょう?なら―――“殺されても仕方なかったと思いますよ”』

 

それが私を復讐に駆り立てた。

 

「ハハッ、レディ・ナガン!君が泣くなよ!ムーンビーストの弱体化は君の責任だろう!僕が嫌いな女の特徴のひとつだぜ!泣けば許されると思っている!」

 

その姿がオール・フォー・ワンと重なって見えた。

 

 

 

“また失うのか。”

―――失いたくない。

 

“また守れないのか。”

―――守りたいと切に願う。

 

“それが間違いだったとしてもか。”

―――・・・。

“レディ・ナガンは人殺しだ。”

―――そうだ。

“ムーンビーストも人殺しだ。”

―――そうだ。

 

“二人の子供が幸せになれると思うのか。”

―――・・・わからない。

 

“奇異の視線に晒される。差別を受ける。()()()()()()()()()()()、いつの日にか、お前が殺した者たちへの復讐によって命を落とす。死ぬよりも酷い目に遭わされるぞ。”

―――そうかもしれない。

 

“人殺しは幸せになっちゃいけないんだ。”

―――・・・それが私の掲げた“正義”。

 

“なら、諦めろ。ムーンビースト。”

―――諦めたくない。

 

“その行いに正義はない。”

―――そうであっても、戦う理由は有る。

 

“それは愛か。それを得てしまったから、お前は弱体化しているんだぞ。”

―――いいえ、この感情は愛じゃない。あるはずが無い。

 

“正義でも無い。愛でも無い。お前は、なんのために戦う。”

―――己の為に。目の前の相手が許せないから戦うだけなのでしょう。

 

『君の大切な人が復讐を望んでいたと思うのかい』

 

よく聞く言葉。よく聞く題目。答えは(すべから)く否だ。

私の大切な人たちが、人殺しを望む筈がないだろう。天国で彼らは私が幸せに生きる事を願ってくれていただろう。そう思う。そう信じる。しかし、それでも許せなかった。

許せなかったから、私は自分の意思(エゴ)を尊重した。

 

今は亡き人々の無念を掲げたと言い訳をした。

果たせぬ遺族の無念の代行だと詭弁を弄した。

弱者に代わり天秤の傾きを正すのだと(うそぶ)いた。

 

 

“それは、正義ではない。”

―――そうだ。

 

“それは、愛でもない。”

―――そうだ。

 

復讐(それ)は正義でも愛でもない。”

―――そうだ。復讐とは、怒りだ。人は許せないから、怒るのだ。

 

“答えは出たか。”

―――はい。

 

“なら、戦え。ムーンビースト。元より個性(僕ら)に意思はない。全ては君自身が課した枷でしかない。“

 

“お前は愛と正義の味方(ヒーロー)には成れなかった。けれど、今だけは自分の為に戦っていい。“

 

(おこ)れ。その怒りこそが、()を産んだ。”

 

 





オール・フォー・ワン。
自称、ムーンビーストのファン。でも普通に邪魔なので殺そうと思っている。スターとの戦闘で腹に穴を開けられている。スターの個性により回復が封じられ、余命がいくばくもない。しかし、大魔王は慌てない。


死柄木弔。
首だけにされた。でも、元気。完全な改造人間である脳無とは違い回復には時間を要する様子。ムーンビーストの”海王類“発言から、同じ漫画を嗜む同士だと知り、好感度がアップ。(要らない)。お前、俺の船に乗れよ!。


スターアンドストライプ。
オール・フォー・ワンと引き分けて海に落ちた。現在、彼女の兄貴たちが救出中。

レディ・ナガン。
妊娠中。彼女としても完全に予想外。それでもこれだけの活躍が出来るコツは気合。時系列など、あまりツッコまないで頂けると嬉しい。


ムーンビースト。
正義を失いギロチンが錆びた。


今後の参考程度にお聞かせください。

  • レディ・ナガンは幸せになっていい
  • レディ・ナガンは殺人の責任を取るべきだ
  • 難しいことは考えない方が幸せだ
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