ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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スプラトゥーンばかりをやっていて投稿が遅れてしまいました。
今後も皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




個性『オーバーホール』⑦

 

月明かりにギロチンの刃が照らされる度に周囲で人の首が飛ぶ。

身なりの悪い男の首が飛んだ。

派手な化粧をした女の首が飛んだ。

子供を抱えた父親の首が飛んだ。

オールマイトパーカーを着た少年の首が飛んだ。

十字をきる敬虔な信徒の首が飛んだ。

人々を誘導していた警官の首が飛んだ。

 

ステインの身体を埋葬した教会を目指して、レディ・ナガンの死体を片手で抱き、オール・フォー・ワンの首を腰に結んだ縄に繋いで引きずり歩く私の後ろを多くの人々が追っていた。

それはまるで巡礼の列の様で、私は内心で笑ってしまう。

彼らは全て、私の正義に救いを求める信奉者(シンパ)達で、中にはヒーローへの不信感から生まれた脱ヒーロー派の自警団や、ダツゴクに乗じて暴徒と化しながら私の姿に恐れおののき許しを請い続く者もいる。

逆十字のロザリオを下げた昔からの信奉者(シンパ)たちの中には、社会が混乱してから私の正義に救いを求める彼らに軽蔑の視線を送っている者もいるが、私としては人を殺していないのなら、彼らを害するつもりも差別するつもりも無い。

 

「好きにしなさい」

 

それだけ言って巡礼の道を急ぐ。レディ・ナガン、火伊那の死体が腐っていく様を見るわけにはいかない。国の混乱により火葬場には数多くの死体が積み重なっているという。

順番待ちをしている暇が無い以上、教会で埋葬するほかにない。

 

「ついてきたいのなら、来ると良い。人を殺していないのなら、誰で有ろうと救済対象です」

 

面倒ごとを避けたいだけの私の言葉を、信奉者(シンパ)達が「慈悲深い」などと言祝ぐなか、ギロチンの刃が再び月明かりを反射する。

信奉者(シンパ)の一人の首が飛ぶ。

 

「・・・偽証が有ろうと、意味は無いのですから」

 

悲鳴が上がる。私は歩みを止めはしない。怖いのなら、着いてこなければいい。

それでも私に続く者達に対して投げかける言葉は何も無い。

 

聖ペテロ十字を掲げる教会についた私の前に一人のシスターが跪く。

美しい顔に火傷を負ったシスターにレディ・ナガンの死体を預ける。

シスターは何も言わずにレディ・ナガンの死体を恭しく受け取ると、私の目をジッと見つめてくる。

その責めるような視線を受けて、そういえば彼女とレディ・ナガンが仲よさげに話をしていた光景を思い出す。私の心に描写する必要も無いと無視したレディ・ナガンと信奉者(シンパ)たちの交流。信奉者(シンパ)達を纏め上げていたレディ・ナガンと彼女の間には私の知らない友情が結ばれて居たのかも知れない。

ならば、彼女にはレディ・ナガンの仇を討つ権利が有る。

 

「私を、殺しますか?」

 

「・・・いえ、人は、人を殺してはいけない。それをしてしまった時、人は獣に堕ちるから」

 

「流石、ですねえ。私の様なファッションで牧師服を着ている者とは違う。本職はそうで無ければならないのでしょうねえ。貴女になら、安心して彼女を任せられる」

 

「葬儀には参列されないのですか」

 

「私にはやるべき事があります」

 

「それは、彼女の死より優先すべき事ですか」

 

「・・・ええ、そう。そうあるべき、事なのでしょう」

 

私にはやるべき事がある。それをしなければ何も終わらないし、始まらない。

 

「何処へ行かれるのですか」

 

「雄英へ。アハハ、遅すぎたお礼参りと参りましょう。アハ、アハハ、虚飾を剥がさねば成りますまい。人を殺した者たちが、ヒーロー面する社会など許容出来るものでは無いのですから。全ては正しき社会の為に。まずは居場所の分かりやすい方から参りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

士傑高校ヒーロー科。其処は東の雄英。西の士傑と謳われる程の名門校であり、平時であれば、かの有名な『雄英バリア』に勝るとも劣らない防衛システムに守られており、部外者の侵入を許すことは無い。

しかし、今は其処に何人もの人間を殺害した経歴を持つ黒マスクの(ヴィラン)-オーバーホールが堂々とした足取りで校舎の中を闊歩していた。

オーバーホールは己の部下である鉄砲玉八人衆の内、最強の男と名高い乱波(らっぱ)を引き連れ目的の教室に向かう最中、廊下の窓から外をみる。

窓からは士傑高校の敷地内に建てられた避難民のための仮設住宅を見下ろすことができた。

数多くの人々が士傑高校に避難をしていた。その中には女子供や老人は勿論、大の男や他校のヒーロー科生徒。果てはヒーローを辞した者やヤクザ者まで様々だ。

オーバーホールは湿った溜息を吐きたい気持ちで一杯だった。

女子供や老人に関しては何の感情も抱かない。オーバーホールが崇める組長(オヤジ)の思想では、彼らは弱き守るべき者達。それを任侠という。

だが、大の男やヒーローを目指している筈の子供(ガキ)共まで、助けを求めるとはどういう了見だと、言いたかった。

平穏の中でなら、その在り方を責めはしない。ヒーロー社会と警察組織が完全に運営されている平時において、ヒーローと警察に助けを求めることは恥では無い。存在するシステムは活用した方が良い。それが賢いやり方だろう。

しかし、ヒーロー社会が崩壊し、警察組織が機能を停止している現状で、戦う力を持っている癖に守るべき者を誰かに託すという感覚が、オーバーホールには理解が出来なかった。

更に、其処に元ヒーローや己と同じ極道の看板を背負う者たちが居るとなれば、全く以て理解の外だ。

 

オーバーホールは窓の外から視線を外し、右手に視線を落とす。この右手でオーバーホールは数分前に壊理の頭を撫でていた。壊理に強請られたから行う行為にオーバーホールは意味を見いだすことはない。ない、筈だった。

それは最近になり、芽生えた感覚だった。愛情。羨望。義務感。あるいは嫉妬。そのどれでも無い感覚を、オーバーホールに齎す壊理は、時に強くオーバーホールの右手を握る。

治崎壊理。血の繋がらない義妹は現在、オールマイトの“治療”に精を出している。

オーバーホールは極道の地位を端に追いやったヒーロー達は敵だと壊理に教えてきたが、壊理はオーバーホールがやれと言えば黙って従う子だ。

控えめな表情の裏に隠れた我の強さが、どういう考えをしているかはオーバーホールでも知る由はないが、手を抜く事なくオールマイトを全盛期の肉体にまで“巻き戻す”だろう。

其処に後はオーバーホール自身が“改修”を加えれば、仕込みは終わる。

 

オーバーホールの世代で全盛期のオールマイトのチカラを侮るモノはいない。

秋田でナマハゲが暴れているのを鎮圧したかと思えば、沖縄で怪獣化したゴーヤを討伐し、北海道で暴れる猛牛の群れを宥め、腕の振り一つで竜巻を巻き起こす。

誰もが憧れたコミックの中のヒーロー。それが全盛期のオールマイトだ。

そのチカラを持ってすれば、今回の騒動も直ぐに片付くとオーバーホールは考えている。

かつて超常黎明期にヒーロー社会を築き上げた本物の超人(ヒーロー)の復活によって、崩れかけているヒーロー社会は救われる。人々は再びオールマイトという本物のヒーローに希望を見いだすだろう。

 

それを再び、分解(バラ)させる。

それがオーバーホールの目論見だった。

 

壊理の手によって復活した全盛期のオールマイトの肉体に個性『オーバーホール』で改修を加える。具体的にはタイムリミットを付けるつもりだ。大凡、三ヶ月でオールマイトの肉体が徐々に死に至る様に循環器系を改修する。日本を救った本物のヒーローは血尿を漏らしながら、不様に非業の死を遂げるのだ。

その光景を思いうかべて、オーバーホールは暗く嗤う。

壊理の保護者である自分の善意からの最終メンテナンスを拒む事をヒーローなら、しないだろう。いや、あるいはオールマイトの人間性を考えれば、例えそれが時間制限付きの復活だと分かっていたとしても、今の社会を守る為に気づかない振りをするかもしれない。

オーバーホールはどちらでも良かった。肝心なことは社会が再び“平和の象徴”を失うということ。

一度目は、耐えられたような気になった。けれど、社会は崩壊し、やはり人々は“平和の象徴”を他のヒーロー達に求めたが、それは叶わなかった。

そして、復活したオールマイトが社会を救った。

そうして社会は“平和の象徴”へ以前より増して依存する様になり、その最中にオールマイトは不様で非業な死を遂げる。

そうなったときの混乱は今以上だとオーバーホールは考えている。

オール・フォー・ワンと敵連合という目に見える驚異は消えているだろう。しかし、真の恐怖は目に見えない。一度、ヒーローへの信頼を失っている社会だからこそ、本物の超人(ヒーロー)を失った社会は(つぎ)()、ヒーローへ求めはしない。

 

そうなった時、目に見える暴力(チカラ)と見えざる組織力(チカラ)を携えた極道が復権を果たす。極道革命(ゴクドウ・レボリューション)

オーバーホールの絵は既に描かれている。

 

邪魔なのは後、ムーンビーストだけだった。

 

「なあ、オバホ。俺は後、どれくらい我慢すれば良い?我慢()身体に毒なんだ。我慢()心を弱くするんだ。俺の拳が、血に飢えているぞ」

 

オーバーホールの後ろを歩いていた乱波がシャドーボクシングをしながら、そんなことを言う。

 

「お前の後ろを歩けば喧嘩に困らないから、俺はお前の側に居るんだぞ。最近、それを忘れてないか?」

 

乱波の感覚からすれば、それは当然の物言いだった。非合法の地下闘技場出身の彼が求めるものは名誉でも金でもなく血湧き肉躍る闘争(ケンカ)。だと言うのに乱波は満足できる喧嘩を少し前にオーバーホールが製薬会社と起こしたいざこざ以来、出来ていない。

不満を漏らす乱波に対して、オーバーホールは振り返り、少しも口角を上げないままに嗤うような声で言う。

 

「心配するな。もうすぐ、満足できるケンカが出来る。用意はしてある。だから、それまでは勝手な事をするな」

 

「本当か?信じて良いのか?」

 

「当たり前だ。俺がおまえ達を騙したことはないだろう」

 

「それはそうだ!」

 

返事に満足した乱波が大声で笑う。単純な奴だと呆れていたオーバーホールは、目的の教室に到着した。

扉を開けて中に入れば、既に数多くの人々が着席してオーバーホールがやってくるのを待っていた。

教室の椅子に座る人々の年齢性別は様々だ。士傑高校の制服を着た女子生徒もいれば、他校の制服を着た男子生徒もいる。スーツを着た成人男性にエプロン姿の中年女性。中には赤子を抱えた夫婦の姿もある。一見して共通点など無い様に見える彼らに共通する点は一つ。

全員がオーバーホールの組織した『奇跡の手』により救われた人々だと言うことだ。

既にオーバーホールの目は(ヴィラン)連合もヒーロー陣営も敵として認識していない。

オーバーホールが思い浮かべる極道による裏社会の支配の為、必要なのは自身の所属する灰色陣営-その首魁、ムーンビーストの討伐だった。

 

「おまえ達に(ヴィラン)やヒーローと戦う力は無い」

 

教壇に立つオーバーホールの言葉の一言一句を聞き逃さない様に教室全体が静まりかえる中で、オーバーホールが語る言葉に嘘は無い。士傑高校の制服を着ている女子生徒はヒーロー科ではなく、普通科の生徒だ。否、例えヒーロー科の生徒だろうとこうして自分に良い様に使われていることに気がつかない時点で、そんな奴が(ヴィラン)や他のヒーロー科生徒に敵うなんてオーバーホールは考えもしない。他の一般市民は言わずもがなだ。

 

「だが、善良なおまえ達はムーンビーストの正義執行対象外。つまりは()()()()()()だ。奴との戦いでは、おまえ達のような奴らこそ役に立つ」

 

何のチカラもないからこそ、何にでも使い捨てられる者たち。ムーンビーストは人殺し以外の殺人をしないから大丈夫だと説得すれば、思考停止で頷いてしまう彼らを使いオーバーホールはムーンビーストに挑む。

 

『極道は堅気に手を出しちゃならねぇ』

 

不意にオーバーホールの脳裏に尊敬する組長(オヤジ)の言葉が浮かぶが、直ぐに消えた。

誰にでも優先順位がある。その最上位にオーバーホールは死穢八斎會の存在を置いている。

故に迷わず。故に悩まず。既に組とは袂を分かったと自己完結する死穢八斎會の若頭-治崎廻は、(ヴィラン)名-オーバーホールとしてその悪名を轟かせる。

支払い能力も無い癖に大金を借りた債務者を自殺に追い込んだだけで外道と称された。

金が無いから買ってくれと言ってきたから肝臓(ブツ)(さば)いたのに後で訴えてきた恩知らずを分解(バラ)しただけで畜生と揶揄された。

弱者の皮を被った卑怯者達の所為で社会から恩人(オヤジ)が爪弾きにされた事を、オーバーホールは許さない。

それでも尚、『愚図(堅気)には手を出すな』という心優しい組長(オヤジ)に代わり、オーバーホールが社会を正す。

 

全ては、居場所のなかった自分の居場所になってくれた恩人のために。

社会秩序と比較しても大きすぎる恩を返すために。

 

「俺が、極道が石を投げられる屈辱の歴史に終止符を打つ」

 

その時にこそ、壊理が日向を安心して歩ける日が来るのだとオーバーホールは信じて居た。

 

 





何時も感想をくれる方々、ありがとうございます\(^_^)/
皆様のお陰で、文章を打つ手が進みとても助かっています!


最近、”忍者と極道”と言う漫画を読みました。
あの勢いにハマッテしまっています。極道革命(ゴクドウ・レボリューション)ッ‼
\(^_^)/

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