ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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早いとこ原作に突入したいのですが、書きたいことが多すぎてなかなか進みません
(´・ω・`)

皆様の暇つぶしになれば幸いです。


個性『吸血鬼』?

“普通”というものについて深く考えたのは、まだ学生だった夏の日であった事はよく覚えている。

普通の制服を着て学校に通い、普通の友達と普通に弁当を食べながら、普通の会話をする。そして、普通に初恋をして、普通に失恋をした。

面白くもない日常。何も変わらないかに思える日々の中で、しかし、私は確かに普通の幸せを嚙みしめていたと思いだす。

 

「———この、“普通の幸せ”というものが曲者なのです」

 

繁華街の路地裏。鼠以外に(たむろ)する(やから)は、全員が何らかの悪事に手を染めているだろうと思える場所で私は少女に向けて話しかける。

 

「例えば異形の個性を持つ者たち。この間、貴女と同じ年頃の可愛らしい蛙の少女と出会いましてね。その時にふと思ったのです。この少女の好物はカエルと同じなのかと。無論、そんな筈がありません。あの子は“蛙という個性”を持っているだけで、普通の人間なのですから、………しかし、同時に考えてしまう。この世界にはあの少女以上に個性に引っ張られている人間もいるのではないかと———」

 

私に現場を見られたことで固まって動かなくなってしまった少女に代わり、倒れていた死体から出刃包丁を引き抜いた。

 

私は八斎會の組長宅に向かう途中、煙草を買いに行くためにたまたま通りかかった路地裏で、殺人現場に遭遇した。

 

少女が男に馬乗りになり、男を刺し殺していた。

そして、刺した傷口から流れる血を啜っていた。

 

その光景だけを見たのなら、私には殺害された男に代わり、加害者である少女を殺害するという正義を成す義務がある。しかし、何故だか私の中の“正義の心”が(うず)かない。

これは初めてレディ・ナガンを前にした時にも起きた症状であり、その不具合を放置する私ではないのだから、殺人者を前にしても動かない“正義の心”について、私は様々な検証を行った。

 

様々なシチュエーションで様々な人間を殺害した。

 

殺すしかない悪から、自分の意思で悪に成ったのではない者。果ては誰かの為に殺人を犯した者まで、ここ三ヶ月の間、私のギロチンが乾く暇はなかった。

 

そして、判明したことがある。

 

私の個性はただ身体にギロチンの刃を生やすだけのものでは無かった。

 

個性『ギロチン』。つまり“正義の柱(ボア・ド・ジャスティス)”は私の意思とは別に殺す相手を選んでいる。

 

私が卓越した嗅覚で嗅ぎ分けていたと思っていた“血の匂い”も、その副産物でしかない。

そして、私が()()()だと感じていたものは正しい物の在り方だった。

 

その検証の結果を踏まえて目の前の少女を見る。

少女は先ほど血を啜っていた時に浮かべていた恍惚とした笑みではなく、まるで作り物の様な笑みを浮かべて()()()()()

 

「———たとえば、個性『吸血鬼』。なんて人が居たとして、その人が人間の血を啜る事を悪と呼べるか否か。これは非常に難しい。悪として生まれた者は悪であるのか、という問いですからね。私の様な格好だけの似非牧師では、答えなど出せはしない。(いな)、答えなど無いのかも知れない。多様性、()()()()()()()()()は、それだけ難しいのです」

 

私は少女に向かい一歩だけ歩み寄る。

少女は一歩、後ずさった。

私は更に三歩を歩いた。

同じだけ少女との距離は離れて行く。

 

そして、私は少女が血飛沫が掛からない位置にまで遠ざかったのを確認して、地面に横たわる男の死体の顔面に逆十字のオブジェを突き立てる。

懐から取り出した鉛筆ほどの大きさの逆十字が巨大化して、それが死体の顔面を潰し突き立てられる光景に、少女の身体はビクリと震えていた。

私は努めて優しい口調で少女に語り掛ける。

 

「私の前で殺人を犯し、生きて居られる人間は非常に(まれ)です。今日はその幸運に感謝して家に帰りなさい。何も心配はいりません。この殺人は、私の所為になります。貴女は明日も変わらず学校に行って自分の個性との付き合い方を考えなさい」

 

「どう、して…」

 

作り物の様な笑顔のまま動揺する少女に高鳴る胸を私は持ち合わせない。

可愛らしい容姿であることは認めよう。しかし、私の食指はピクリとも動かず、この見逃しがレディ・ナガンの時とは全くの別物であることを私は理解する。

私は優しい口調を止めにして、少女をあしらう様に言う。

 

「理由など、気分ではないからで良いでしょう。さあ、もう行きなさい。そして、もう二度と、個性に引っ張られて衝動的な殺人など犯してはいけませんよ。どうしても殺すのなら能動的にやりなさい。もっとも、その時の私は貴女を殺すかもしれませんが。その時は正義の元に痛み無く殺すので安心してくださいね」

 

それだけ言ってこれ以上に話すことは無いと視線で少女に伝える。

少女は少しだけ考えた素振りをした後、路地裏から足早に去っていった。

私は残された男の死体の血の匂いを嗅ぐ。私の当初の予測通り、この死体の血からは間接的に人を殺した匂いがした。

 

「………これなら、やはり問題はありませんね。しかし、まあ、なんとも、自覚してしまえば、やり辛い。これではまるで、この私が個性に操られている様では無いですか———

 

湧いて出た感情を潰し殺す。

 

———(いな)。否否否否否。それでは駄目だ。私は私の意思で私の正義を執行するのです。そうすれば…また褒めてくれますよね。香山先生」

 

私も路地裏を後にする。昔の香山先生を思い出せる匂いを求めて、煙草屋へ急ぐ。

紫煙をくゆらせる事で思い出すのは、私が最も幸福であった過去。雄英高校の生徒だった頃の記憶。

 

私の“オリジン”。しかし、それを語るべき時はまだ来ない。

 

 

「お待たせしました」

 

「遅い。タバコ買うのにどれだけ掛かってるのさ」

 

「いやあ、申し訳ございません。少し寄り道をしてしまいました」

 

「あっそ、まあ、いいけどさ。それで?私の頼んでたシュークリームは買ってきてくれた?」

 

「…あ」

 

「はぁ、使えない奴」

 

「アハハ!申し訳ございません!」

 

 

個性に引っ張られた人間。想像できた可能性が、自分のすぐ近くにいるどころか、自分自身だと言うことをムーンビーストは、まだ理解していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指定(ヴィラン)団体‐死穢八斎會組長宅。

大きな門構えに高く長く続く壁。大きく立派な屋敷の前に私は()()()立っていた。

溜息と共に吐き出されるものは面倒の一言。いくらレディ・ナガンのお陰でやる気に満ち満ちたとしても、物事を目の前にしてしまえばやる気が急転直下するのは人の(さが)だ。

しかし、面倒だと何時までも言っていても仕方無いので私は門へと手を伸ばし———

 

「行きたくもない場所に行き、やりたくもない事をする。まったく嫌なものですね。“仕事”という行為は人間の幸福度を大いに下げている」

 

———そして、腕に形成したギロチンで門扉(もんぴ)を縦に割った。

ガラガラと音を立てて崩れていく立派だった門を潜りながら、私は笑い声を上げ八斎會の敷地へと踏み込んだ。

 

「アハハ!ある女神は言いました。嫌な事からは逃げればいい、逃げるが勝ちという言葉が有るのだからッ!しかし、私は真面目なのですッ!嫌な事の中に遣り甲斐を見つけましょうッ!極道ッ、ヤクザッ、格好を付けても所詮は暴力団ッ‼正義を以って潰す事に何の躊躇が要りましょうかッ‼さあ———死穢八斎會‼どうしますか‼脅威()がッ、来たあああああ‼」

 

八斎會の面々は突然、門を破壊して侵入してきた私を前に混乱していた。

 

極道が衰退した現代において、討ち入りなんて真似が起こる事を誰が予想できようか。狂気的な嗤い声を上げつつ邸内に侵入し、松の木も庭石も池の鯉すら斬りながら暴れている私の凶行には八斎會の組員ですら、怖がりながら引いている。

 

それもその筈だ。私が頼まれてやって来たことは八斎會の組長と若頭である治崎を除けば一部の組員にしか、知らされていないと聞いている。加えて、私と治崎は八斎會側が指定した場所で会う筈だったのだ。

それなのに私が突然に組長宅にやってきて暴れているという状況に、混乱するなというのが無理な話だ。

しかし、悲鳴混じりの怒声が響き渡る中で、恐ろしく静かな声が私に掛けられた。

 

「おい、その辺にしてくれ。庭が汚れる」

 

眼鏡の下の細い目で屋敷の縁側から外へ声を掛けてきた男を見る。

短い黒髪に黒い布マスクと黒い皮手袋をした男の風貌は事前に渡されていた写真の治崎と同じだった。

 

「これは失敬、折角(せっかく)来たのですから組長に出迎えて頂きたく思いましてね。少々はしゃいでしまいました。それで———八斎會の組長はどちらに?」

 

「お前みたいなのが来たんだ。オヤジは直ぐに飛び出そうとしたが、奥で止められている。お前みたいな危ない奴をそう簡単にオヤジに会わせる訳には、いかないからな」

 

「なるほど。代わりに若頭である貴方が出て来たという事ですか。組長に会いたくば自分を倒して行けと、それはそれは、解りやすくて、とても助かる」

 

「…随分と余裕そうだが、お前、此処がどこだか解ってるのか?」

 

「無論、承知です。死穢八斎會組長宅兼事務所でしょう。それがどうしたというのです?よもや、このご時世に極道であることが抑止力になるとでも?」

 

私の言葉に治崎は状況を理解していないと言いたげな苛立ちを含んだ眼で言う。

 

「いや、そうじゃない。…そうじゃないだろ。俺たちは常に警察とヒーローに監視されている。すぐに警察とヒーローがやってくるぞ。この街には昔、オールマイトの相棒(サイドキック)を務めたヒーローの事務所もあるんだぞ」

 

“だから、会うのはこっちで指定した場所だった筈だ”。

 

言葉には出していない治崎の最も大きな苛立ちの理由を理解しながら、私はあえて煽る様に大袈裟に両の腕を広げて極めて癪に障る表情で言う。

 

「おや、おやおやおや、その言葉はまるで私がヒーローを恐れているかの様だ。そして、その言葉が出るという事は……貴方はヒーローを恐れているという事だ。若頭でありながら、なんとも情けない」

 

「…お前、何を言っている?」

 

「あるいは極道であることが抑止力にならぬなら、次はヒーローに頼るのですか?ヒーローの方が、極道よりも強いから!」

 

ピクリと治崎の米神の血管が動くのが見えた。

 

「それでも別にいいのですよ?所詮、貴方たちは指定(ヴィラン)団体、(ヴィラン)にも成れぬ半端者どもの集まりなのですから、存分にヒーローに頼るがよろしかろう!さあ、言いなさい!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と‼アハ、アハッ、アハハ!アーハハハ‼」

 

「———なんだ。殺されたいなら、そう言え。ムーンビースト」

 

私は存分に煽り倒した。それでも治崎は声を荒げることなく、しかし、明確な殺意を眼に宿して皮手袋を外すと縁側から降りてきた。

縁側から見下ろされていた視線が平坦に戻る。治崎は私を対話相手では無く、敵対者として見ている。

私はそれで良いと笑みを浮かべる。不法侵入、器物破損、殺人予告。用意できるだけのものは用意した。治崎の言う通り、あと三分もしない間にヒーローが駆けつけてくるだろう。

 

しかし、時間はそれで十分だった。

 

治崎の個性『オーバーホール』の情報は既に得ている。

 

「手で触れた対象を分解・修復できる個性。なる程、強い。羨むべき強個性だ」

 

そして、治崎もまた私の個性のことは知っているだろう。

 

「そんな強個性で私をどう攻撃するか?真っ先に考えるべきは私のギロチンが届かぬ位置からの遠距離攻撃でしょうねえ。たとえば、地面に転がる大きな庭石を分解して石槍に修復(かえる)

 

私は腹部に目掛けて伸びて来た石槍を躱す。

治崎の顔に驚きの色が浮かんでいた。

 

「躱されたなら、次は地面だ。土と石を分解して創り出す点ではない面での範囲攻撃。ともかく近寄らせないと、貴方は地面に両手を置く」

 

治崎はまるで私の指示に従っているかの様に地面に手を付いた。しかし、その行動が事前に予想できるなら、避けようのない面での攻撃は発生する前に止められる。

私は両足にギロチンの刃を形成し、地面に刃を落とす衝撃で跳んで、地面に触れる為に姿勢を低くしている治崎の顎へヤクザキックを繰り出す。

 

「がッはッ!?」

 

治崎の身体が宙を舞った。この間、僅かに二十数秒。

残り時間は二分半以上ある。

私は倒れて気絶しているだろう治崎の元に歩いて近づき、顔を踏み潰そうとして上げた足を掴まれた。

気絶しているかに思われた治崎の血走った目が私を睨む。

 

「死ねッ‼」

 

その単語に込められた思いに答えられないことは残念でならないが、私はこんな所では死なない。

治崎の個性は発動しなかった。それもその筈で、私の足を掴んだ時点で治崎の右手は前腕部を半ばにしてギロチンで断ち切られている。

ギロチンを振る腕も見えない速度での切断。この技に名前はない。刃物に関する個性を持つ者なら、それ程までに当たり前の技術だと思っている。

 

「がッ、クソッ、何時の間にッ、お前ッ‼」

 

「断たれた右手を修復する為、貴方は左手で右手に触れる。しかし、なら右手が治った瞬間に左手を斬り飛ばしましょう。以下、舐めプ及びに堂々巡りの為、割愛(かつあい)

 

跪き荒い息をしながら修復を終えた治崎から距離を取り、懐から取り出した煙草を口に咥える。

少しして治崎は脂汗を流しながらに立ち上がる。未だに私を睨みつけていられる精神力は大したものだった。

 

「はぁ、はぁ、どう、して、殺さない」

 

「どうにも今日の私はそういう気分では無い様なのです。殺されずに済んで、よかったですねえ」

 

「ふざけるな!お前はッ、なんなんだ!こんな真似をしやがってッ、何がしたいッ!ムーンビーストッ‼」

 

「私は(ただ)、教えて差し上げているだけです。個性などというものは、所詮は人の特徴の一つでしかないという事を」

 

そう言いながら、煙草に火を付けた。

 

「『オーバーホール』は素晴らしい個性です。物体を分解し別の形に修繕することでオールレンジに戦える。加えて、その手を治した様に人体の欠損や欠陥を修繕(なお)す事も出来る。そして、触れただけで分解(バラ)す事も出来るのでしょう。貴方の戦いは、常に相手に触れる事に終始できた。さぞ、気分が良かったことでしょう。強個性という絶対的なアドバンテージを得た上で強者を気取る事ができたのは」

 

———しかし、私から言わせれば強個性(そんなもの)は、まるで怖くない。

 

「圧倒的であるが故に、足りないものが多すぎるのです。経験による予測は極めれば予知にすら届き得るのです。そうなれば身体からギロチンが出るというだけの個性でも、あるいは無個性であろうと貴方を倒すのは難しい事ではありません。何故なら、個性が強くても貴方自身が弱いからッ!」

 

私はズビシッ!と治崎を指さした。

治崎の顔からは屈辱感がありありと見て取れる。

 

「個性の使い方に関してはそれなりに極めたのでしょう。しかし、肝心の肉弾戦の練度がまるで成っていませんねえ。これではヒーロー科に在籍するヒーロー志望の学生にも負けるでしょう。触れれば勝てるから、などと言う理由で殴り方を疎かにするなど、愚かしいにも程がある」

 

「…うるさい、…黙れ」

 

「加えて、その意思も弱い。私に右手を斬り飛ばされた時、左手で右手を修復するのではなく、私に触れていれば勝てたのでは?何故、それが出来ないのです?それは貴方の心に迷いがあり弱いからだ。八斎會という組の為に私を倒す、その思いに迷いが無ければ保身になど走らない」

 

「…黙れと言っている」

 

残り時間は短い。黙ってなどいられない。

 

「貴方は極道の復権を望んでいると聞きました。その為に様々なものを犠牲にしようとしていると。アハハ、止めておきなさい!今の貴方が何を犠牲にした所でッ、その夢は叶わないッ‼断言してもいいでしょう‼」

 

「…黙れ!」

 

「何故ならッ、弱者ほど自分よりも他人を犠牲にしたがるものですがッ!自分より他人を犠牲にした夢など叶う筈がないのだからッ‼」

 

二分五十秒経過。時間一杯、終了だ。

 

「…黙れって…言ってるだろうが…」

 

私は打ちひしがれる治崎を置いて、逃げる事にする。

 

 

「死穢八斎會ッ‼これは何の騒ぎだ‼」

 

 

丁度、ヒーローが到着したタイミングで屋敷の至る所に煙幕弾が着弾して、周囲一帯を薄桃色の煙が包む。

私はその煙に紛れて、その場を後にした

 

 

 

 

 

 

死穢八斎會での仕事を終えた後、私はお気に入りの動画配信者であるジェントルが以前の放送でオススメしていた紅茶の美味しい喫茶店でクリームソーダを飲んでいた。

無論、逃走の手伝いをしてくれたレディ・ナガンも一緒である。彼女は普段の荒い言葉遣いとは打って変わった優雅な仕草で紅茶にミルクを混ぜながら、テーブルの下で私の脛を蹴っている。

 

「無茶しやがって、なんで正面から乗り込んで事を大袈裟にするのさ。危うくヒーローに捕まる所だった!」

 

「正面から乗り込めと言ったのは貴女では?…いえ、何でもありません。ごめんなさい。そんな目で私を見ないでいただきたい」

 

レディ・ナガンの言う事は最もだ。私と治崎は確かに穏便に出会うことも出来たし、戦いたいならヒーローの邪魔が入らない場所で戦うことも出来ただろう。

しかし、それをしなかったのには訳がある。

 

「八斎會の組長から事前に知らされていた情報によれば、治崎には潔癖の気があり、他人に触れられると頭に血が上るそうです。そんな男が蹴られて地面を転がされて、挙句の果てに殺されずに生かされた。さて、この後の治崎はどうすると思いますか?」

 

「あんたのことを殺しにくるんじゃないの?」

 

「でしょうねえ。でしたら、私は何度でも治崎を“わからせ”ましょう。正面から来ようと、搦め手で来ようと、叩き潰して“わからせ”ましょう。治崎が気づくまで何度でも」

 

「気づくって、何にさ」

 

「敗れて、折れて、砕かれて尚、自分の心に立つ一本の柱。その存在にですよ」

 

「あっそ、意味わかんない」

 

呆れた顔でミルクティーを飲み始めたレディ・ナガンに苦笑しつつ、私はクリームソーダの上に乗っているアイスをスプーンで崩して掬い取る。

 

そして、それを口に運びながらに考える。

 

治崎からは濃い血の匂いがした。彼は人を殺したことのある正義執行すべき男だった。

それなのに私のギロチンは、"正義の心"は、彼を殺せと叫ばなかった。無論、その声が無くても私の意思で殺すことは出来た。そうすべきだったのかも知れない。

しかし、同時に私は思った。治崎の中に最後に残る(もの)。それを私は知るべきなのだ。

 

私は正義の為なら、人を殺しても良いと思っている。

私の言う正義とは“復讐”と“愛”だ。それ以外にはない。

だから、ステインは良い。彼は本物の英雄(オールマイト)への愛を患いヒーローを殺している。

 

しかし、目の前に居るレディ・ナガンはどうだ?彼女は愛を以って引き金を引いたか?

否、彼女は社会の平穏の為に人を殺していた。だから、私は平和の礎となった者たちの無念を晴らす為に、麗しい彼女を()()()()だと今でも思っている。

 

路地裏であった少女はどうだ?彼女が愛した男を殺したと言うなら良い。しかし、彼女は行きずりの男を殺して個性による欲望を満たしていた。であればただの快楽殺人。あれは()()()()だった。

 

そして、治崎。極道の復権を目論む彼からは濃い血の匂いがした。治崎が何人も殺している事は明らかだ。これからも何人も殺し続けるだろう。彼こそ()()()()だ。

 

(では、手始めに目の前に居る彼女から)

 

そう考えても、やはり身体は動かない。それは目の前にいるのが少女や治崎に変わっても同じだろう。

私の中で何かが変化している。“正義”が変わる筈ないのだから、変わっているのは他のナニカなのだろう。

自分の個性を検証した結果、それは浮彫になっている。

 

後は知るだけだ。治崎を使い、知らねばならない。

 

 

“そんなものはないという事実を知らねばならない”。

 

 

斬首台(ギロチン)の正式名称は“正義の柱(ボア・ド・ジャスティス)”。

人間の罪を裁く為にルイ16世の手により完成したギロチンは、ルイ16世の首を刎ねたことで本当の意味で完成した。

人を殺した者は人に殺されねばならない。因果応報という正義。それを成す為に私は復讐者として此処に居る。

 

私の心に立つ柱は『ギロチン』。正義の柱。

 

それに並ぶナニカなど無いという事を、私は知りたいのだ。

 





とりあえずあと3話くらいで原作に入れればいいなと思っています
(´・ω・`)

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