………何が起きたんだ?
俺は確か自分の、そう。
いつもの部屋で眠っていたはずだ。
いつものようにご飯を食べて、
いつものように学校へ行って、
いつものように家に帰って、
いつものように布団に入って、
それで。いつものように。
「ゔっ…あ"ぁ"っ…ぐ……っ…!?」
頭が痛い。割れそうだ。
「ッッッ!ッは、はっ、……っは、は…ぁ……」
…………思い出した。大きなトラックが、
急に壁を突き破ってきて…俺を、潰した。
「ゔ………お"う"ぇ"…………っ……はぁ…はぁ…」
駄目だ、吐き気がする。思い出してはいけない。
だがあの出来事を忘れることが出来ない。どうしようもなく脳裏にこびりついて離れない。潰される瞬間の恐怖。あの感覚。
よせ、落ち着け、平気だ、平気なんだ。
「…………………………はは。」
よし、大丈夫だ。もう……………大丈夫。
大丈夫だ。
疑問がある。俺は本当に死んだのかどうか。少なくとも体は動くし頭も働く。…信じがたいが、宙にも浮いている。
あの世だろうか。
兎にも角にも今すべきことは、ここはどこなのか、今どんな状態なのかを確かめる事だ。
俺は恐らく死んだ。
なのにこうなってるってことは、あの世?
───────いや、生きている。
死んだ感覚が残っているからこそ分かるのだ。
命がある。
なぜ?
考えられる理由としては、前世で流行っていた転生や憑依などと言ったものだろうか。…改めて思い返してみても夢物語にしか過ぎない。現実味なんてする筈もない。
「どっちだ?」
口をついて言葉が飛び出る。
転生ならば、今俺が居る空間は何だ?
憑依ならば、今俺が居る人物は誰だ?
分からない。分からないが、胸に手を当ててみれば心臓の拍動を感じる。どちらにせよ生きている事は事実だ。誰かに憑依をしている場合その宿主には悪いが、俺はもう死にたくはないのだ、勘弁して頂きたい。
事故のショックのせいなのか、名前などの自分の事を全く思い出すことが出来ない。俺が夢を見ているだけで、本当は死んでもいないならそれが一番良いが……
もし、現実だった場合はかなりの死活問題になる。
………情報を集めよう。
起きたときから体が浮いていたが、此処は無重力なのか?見渡してみても、桃色と紫色が混ざったビビッドカラーな空間が広がるばかり。地面なんてありそうもない。
途方に暮れて自分の姿をつま先まで見下ろしてみる。
「……っ…!?」
これは………!!
白い玉房飾りの付いた白黒の服だ。何処かで見たことがあるような、そんな───────
こつんと、肩のあたりに何かが当たる。
日記帳………?
再度辺りを見渡せば、先程まで目に入らなかったぶよぶよとした玉が目に入る。この空間と配色が同じだ。
「っ……がッ……ァ………!?」
頭痛がした。
と同時に失った筈の記憶が一部だけ蘇る。
「っ…………………まさか。」
男は辿り着く。一つの答えに。
「鏡は無いか!?鏡は!………っで、出てきた!」
青髪と碧い瞳、頭部の赤いナイトキャップ。
「……………ドレミー、スイート。」
これは。
どこかの事故で命を落とした一人の青年の
数奇な運命を辿る物語。
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