私事ですが、彼女ができましたので、浮かれていました。以後気を付けます。
方向音痴な私でも、どうにかして絵里の家に着くことができた。予定していた時間よりも少し遅くなってしまったけれど。
絵里の家は、私のマンションと変わらないくらいの大きさで、かなり綺麗な建物だ。
海未の情報通りの部屋の前まで行き、少し緊張しながらインターフォンを押す。
「はーい!」
少し幼い、綺麗な声が返ってきた。
「どちら様ですか?」
「あの、私は絵里と同じ大学の友人で。海未の代わりに様子を見に来ました」
「お姉ちゃんのお友達!少し待っててくださいね」
インターフォンが切れてからすぐに扉があいた。
中から絵里によく似た、可愛い少女が出てきた。きっとこの子が海未の言っていた妹なのだろう。
「どうも、こんにちは。姉がいつもお世話になってます。妹の亜里沙です」
「こちらこそ、お世話になってます。白雪月華と申します」
「わぁ、美人さんな上にとっても礼儀正しいわ!」
「…?」
「すみません。とりあえず上がってください」
家の中へと案内してくれる妹さんについて、絢瀬家へと入る。綺麗な外装の通り中もとても広く、綺麗なお部屋だ。
「改めまして、妹の亜里沙です。海未さんが来てくださる予定だったんですが…」
「ありがとう、海未は大学で外せない用事があったみたいで。私がその代わりに」
「そうだったんですか。今家に私とお姉ちゃんしかいなくて、私も高校があったので」
そんな話をしながら、私はリビングのソファに座らせてもらい、お茶まで用意してもらう。
出来た妹さんだな、と思いながらも、やはり姉が心配で心細かったのだろう。
「ご両親もいなくて不安よね。私で良ければ色々手伝わせてもらうわ」
「ありがとうございます!
なんて言いながら、不安そうな顔をしていた亜里沙ちゃんの頭を撫でてみる。
私にもし妹がいたならこんな感じだったのだろうか。
「えへへ、なんだか急に安心しました。お姉ちゃんが増えたみたい!」
今、私が来たのはお昼過ぎだが、朝から高校を休んで家事や絵里の看病など、大変だったのだろう。
けれど、変に懐かれてしまった。隣に座って頭を撫でられていた亜里沙ちゃんは、私を横から抱きしめている。
やはりそれほど心細かったのだろうか、なんて考えていると、
「ありさぁ…、おなかすいたわぁ~」
気怠そうでいつもとは雰囲気の違う絵里がリビングの扉を開いたのだった。
そして、そんな絵里と目が合う。
「……っ!どうして月華がうちに…ごほっ、ごほっ…」
「絵里、落ち着きなさい。風邪が悪化してしまうわ」
「それどころじゃ…ごほっ…」
「もう、ほらフラフラじゃない」
ソファから立って、絵里のもとに行き支える。やっぱりいつもよりも体温が高く感じる。
「お姉ちゃん、あんまり迷惑かけちゃだめじゃん」
「あ、ありさだって…なんでつきかに抱きついて…」
「そんなこと別にどうだっていいじゃない、ほら」
なぜか、私と亜里沙ちゃんの様子を気にしている絵里を抱きながらソファに座らせる。
「…よくないわ……」
「もうお姉ちゃん拗ねないでよ」
姉妹でなんだか話し合っている様子を他所に絵里の様子をみる。
いつもより顔も赤く、目がトロンとしている。さっき支えたときも思ったけれどまだ熱は高いようだ。
「絵里はそこで大人しくしてて。亜里沙ちゃんはお料理得意かしら」
「いいえ、あんまりです」
「そう、じゃあ台所借りてもいいかしら」
「はい!お手伝いします!」
私と亜里沙ちゃんのやり取りに何かぶつぶつと文句を言いながらも横になっている絵里を放っておいて、二人でキッチンに立つ。
父の影響や一人暮らしをしている甲斐もあり、料理は得意だ。だけど人の家のキッチンを一人で使うわけにはいかない。
なので、亜里沙ちゃんにも手伝ってもらうことにした。
「消化にいいものがいいわね、亜里沙ちゃん冷蔵庫開けていいかしら?」
「はい!あと亜里沙って呼んでください!」
「えぇ」
冷蔵庫や棚の中をみて、うどんを作ることにした。私も亜里沙もご飯はまだなので、三人分になる。
だしは顆粒のものを使わせてもらい、醤油やみりん、酒などの調味料から汁を作る。
ネギや揚げも入れ少しだけ煮込む。冷蔵庫にあったショウガも少しだけ入れてみて、温まるように。
この間なぜか亜里沙は私の後ろから抱き着いて、手元をのぞき込んでいた。
「亜里沙、包丁を使っているわ。すこしだけ離れてもらえる?」
「えぇ~、ちょっとだけです」
やはり、なぜか変になつかれてしまった。
リビングの方からなんだか熱い視線を感じる。
「月華さん、すごい手際いい!すごい!」
「そんなことないわ、ありがとう」
なんていって撫でてあげると、
「あ~り~さ~」
暇なのか絵里がこちらを見ている。なぜかすごく睨まれている。けれどその目にはいつも以上に力はなかった。
そんなに妹を取られるのが嫌なのだろうか。
「絵里、いい子にしてなさい」
わがまま言う子どもをあやすように言ってみる。
「子ども扱いしないで、そのくらい待てるわ。でも、」
「お姉ちゃんは私に嫉妬してるのね」
亜里沙は絵里が拗ねている原因を当てようとする。亜里沙が私にくっついているから拗ねているようだ。
なんだかいつも以上に絵里は感情表現が豊かになっている気がする。
「ほら、もうできたわよ」
そういって、三人分のうどんをソファ近くのテーブルに持っていく。
私と亜里沙はダイニングテーブルで食べようと思ったが、絵里が少し寂しそうな目をしていたので、結局三人一緒に食べるようにした。
「ねぇ、月華は私の隣よ」
「はいはい」
いつもよりも甘えてくる絵里に少し戸惑いながらも、病人だからと割り切って指示通りにする。
普段の絵里なら考えられないような近さで、私にもうつってしまいそうだ。
「「「いただきます」」」
三人で手を合わせて、それぞれうどんに手を付ける。
「おいしい!」
「そう?ただのうどんよ、誰が作っても変わらないわ」
絵里はもちろん、隣で料理作業を見ていた亜里沙も満足そうに食べている。
午前の講義が終わってからすぐに来てみたものの、方向音痴が災いし、少し遅めの昼食となったため、私もすごくおなかが空いているようだ。
その後は、みんな特に会話もなく、黙々とご飯を食べ続けた。
◇◇◇
久しぶりに風邪をひいてしまった私は、部屋で寝ているしかなかった。
ふと、部屋の外から声がしたが、今家には亜里沙しかいないはずだ。学校にでも電話しているのだろうか。
休ませてしまって申し訳ないのと心配をかけてしまっているなと考えていると、お腹の音が鳴った。
いくら体調が悪くても、お腹は空くものだし、薬を飲むためにも何か食べなければならない。
少しフラフラするけれど、ベットから起き上がって自分の部屋をでる。
「ありさぁ~…」
その後の展開は驚いた。なぜか私の友人である月華と妹の亜里沙が密着しているのだ。
私でさえあんなスキンシップとったことないのに…
「台所借りるわ」
なんて言って、月華が料理を作ってくれるみたいだ。ほかにも何か話していたけど、頭がぼうっとして内容は入ってこない。
けれど、ソファに寝ているのも暇なので、キッチンの方を見ていると、先ほどより密着していた二人が見えた。
むぅ、仲よさそう。私なんかよりの亜里沙の方がとっつきやすいし、好きなんだろうか。
そんなこと考えていると無意識に声に出していた。
「あ~り~さ~…」
今日はなんだか、月華のことが気になって仕方ない。
□
遅めの昼ごはんも食べるとなんだか体もあったまってきて、眠気が出てきた。
「絵里、眠いでしょう?お部屋のベットで寝なさい」
「うん、そうするわ」
「月華さん、お姉ちゃんのお手伝いしてあげて。私じゃちょっと難しいから」
亜里沙の言う通り、月華は私の部屋のベットまで抱き支えてくれた。
しかし、あと少しのところで、私の足がもつれてしまい、二人でベットに飛び込んだ形になる。
「絵里、少し重いわ。早くどいて」
私は今月華を押し倒してしまっているみたいだ。すごく近くに月華を感じられる。
なんだか甘いいい匂いがしてきた。彼女の体からみたいだ。
「ぺろっ」
「ひゃっ!」
ん。甘い匂いはしたのにあんまり味が分からない。もう一回。
「…んんっ、えりっ…寝ぼけてるの?…っ」
その後も何度か舐めてみても特に美味しい味はしなかった。そしてそのまま意識が薄れていった。
◇◇◇
なぜか私は今、眠っている絵里の下にいる。何度か首筋を舐められ少しくすぐったかったが、寝ぼけていたようだ。
きっと絵里は目が覚めても覚えていないだろうから、黙っておくことにする。変な声もでて恥ずかしかったし。
「この状況、どうすればいいかしら」
気持ちよさそうに眠る絵里を起こさないようにするには、動いてしまってはいけない。
もう、私もこのまま寝てしまおうかと思う。
「人の家で人のベットだけど仕方がないわ。おやすみなさい」
そう独り言ちて私は眠りについた。
□
お姉ちゃんの部屋に行った月華さんがあまりにも戻ってくるのが遅いから、部屋をのぞいてみたが、二人気持ちよさそうに寝ていた。
今日のお姉ちゃんの態度といい、この様子といい、もしかしたらお姉ちゃんは…
私も月華さんと初めて会ってすごく素敵な人だと思ったし、私を見る目がすごく優しかった。
お姉ちゃんが二人に増えたみたいだ、と思ったけれど。これは本当にそうなってしまうのかも…
食器洗いなどは済ませておいて、もう少ししたら起こしてあげよう、亜里沙は1人でそう思ったのだった。
閲覧ありがとうございました。
やはり主人公は受けです。異論は認めます。
あと、作者実は女であります。