ペットショップでの買い物もおわり、私の車で彼女の家まで戻った。
大荷物であったけれど、終始ご機嫌な様子で家に着く。
「一人だと大変そうだし、私も手伝うわ」
立派な見た目のマンション、いったいどんな部屋に住んでるのか気にもなるし。
「ありがとう、お願いするわ」
そういって二人で大量の荷物を運ぶのだった。もちろん運転手にも手伝わせたわ。
「おじゃましま~す」
「えぇ、いらっしゃい」
そういって部屋に入ると、ほんとに学生が一人で住むような内装ではなかった。
2LDKのセキュリティ抜群の10階だての10階にある景色も抜群のお部屋だし、家具にしても統一感のある。
1週間ほど前に引っ越してきたとは思えない素敵な部屋だった。そこにおいてあるワインセラーなんて誰が飲むのよ。
「貴方、この部屋いくらするの?それに家具はどうしたの?」
「家賃は詳しく聞いてないけど心配しないでって。内装はママに任せたらこうなったの」
そうだ、月華のお母さまデザイナーだった。こだわらないわけがないわ。
「ワインやお酒なんかも。これもインテリアなの?」
「え、それは私のよ。」
「誕生日、冬だったはずよね。まだ未成年じゃない」
いつからそんな悪い子になってしまったのかしら。
「フランスでは16歳から飲んでいたわ。あんじゅも飲んでく?おすすめがあるのよ」
まだ私は未成年だからと、一応断りをいれていると、
「にゃーーん」
そうだった、猫ちゃんのために手伝いに来たのを忘れてた。月華も思い出したかのように、
「狭いところにごめんねぇ~、ほらおいで~~」
なんて私のことそっちのけで、せっせと子猫のために働きだした。
片付けもひと段落したところで、
「ありがと、あんじゅ。遅くなっちゃったけどご飯でも食べてく?」
子猫とじゃれながら時間をかけて作業していたら、いつの間にか夕食時になっていた。
「えぇ、いただくわ。何か手伝うことある?」
「お客様だし、手伝ってもらったから座って待ってて。ソラと遊んでて」
どうやらこの子猫はソラと名付けられていたようだ。
私がSNSやテレビ片手間に猫ちゃんと遊んでいると、
「おまたせ、できたよ」
食卓に二人分の夜ご飯が並んでいた。料理中のエプロン姿も絵になる。
ソラちゃんご飯だよ、なんて語尾にハートが付きそうなほどに話しかけながら猫のご飯を用意することも忘れない。
「じゃあ、いただきます」
「どうぞ~、いただきます」
トマトベースのパスタに、コンソメスープ、サラダとオーソドックスでおしゃれな夕食だ。
「美味しい、ほんとになんでもできちゃうわね」
「ありがとう、なんでもではないわ」
彼女の場合は謙遜でもなく心の底から思っているのだろう。ほんとに無自覚でいい女よね。
「いいお嫁さんになるわ、いや私のお嫁になってよ」
冗談交じりに言ってみると、
「あんじゅのお嫁さんになると、いろんな人から怒られちゃうから」
「怒られなきゃ私と結婚するの?」顔を近づけあざとく意地悪をしてみた。
「ぁ、あんじゅ…近いわ……」顔を真っ赤にして目をそらす。
これだ。この子の怖いところはこういうところ。。
いつもはあまり顔に出さないのに、私のように近しい人には無防備な表情をする。
そして表情だけではない。自分の容姿についての理解ができていないのよ。
自分が周りに与える影響にあまりに無頓着すぎる。
こんなに無防備だと私も困ってしまうのよ。
「にゃーー、にゃにゃーん」
少し変な空気になってしまった中、その空気をかき消すように子猫が鳴いた。
(じぃーーー)
目が合った子猫にどこか責められているような気持ちになった。
「泊っていけばいいのに」
「それは魅力的だけど明日の仕事、早いから」
ほんとに、明日の仕事がなければ泊っていきたかった。でも、私は芸能の道に進むと決めた。仕事に集中しなければ。
「じゃあ、いつでも泊りに来てね。私には少し広すぎて寂しいの、なんなら一緒に住んでほしいくらいよ」
一緒に住むのは冗談だろうけれど、寂しいのは本当だろう。彼女は意外に思われるだろうけれどすごく寂しがり屋だ。
「わかったわ。私も仕事がない時連絡するわ。今日はありがとう」
こちらこそ、と笑顔で返してくれる。
あまり人と積極的にかかわることのないこの子が、こんなかわいい一面をもってることを知っているのは私くらいだいう優越感に浸って今日のところは自分の家に帰ろう。
それに明日の仕事はいつもよりも頑張れそうだ。
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