大学の履修登録も終わり、今日から大学の講義が始まる。
春休みの期間のうちに家の周りや大学周辺を何度も探索した。
しっかり道は覚えている。だけど、
(大学内を回ることを忘れていたわ…)
大学内マップを見ても教室がわからない。どうして大学内も散策しなかったんだろうって今になって反省…
「あの……もしかして、また困ってる?」
前にもこんなことあった、と思いながら振り返った。
◇◇◇
一年も通えば大学にもなれるようで、進級してもたいして何かが変わることはない。
そう思いながらも春休み明け一回目の講義に向かう。
実家から大学までそんなに遠くないから、私は実家から通っている。
いつもの電車、いつもの道を乗り歩いていつも通りの毎日。
大学では友人がいないわけではない。
けれど同年代の人たちが集まる大学では、私が高校で行っていた活動を知っている人も多い。
ファンだと言ってくれる子や興味本位で話しかけてくれる子など男女問わず、一定数はいた。
同じ学科で同じ講義をとっていて、一緒に受けてもいいかと言われれば拒むことはないが、自分から話しかけることはない。
ラブライブという大きな舞台にたってアイドルをしていたということが、周りにも自分にも未だ大きな影響があるのだと、この一年で感じた。
周りと壁を感じるし、もしかしたら自分から一線を引いてしまっているのかもしれない。
だから、これからの大学生活も同じ何だろうなと思っていた。
大学について講義室に向かおうとしていた時、ふと見覚えのあるモノをみつけた。
綺麗な銀髪で色白、周りの人とは違ったオーラを放つ女の子。そしてその子がオロオロしている姿。
この光景を私は、つい最近も見た。
いつも通りの大学の中で異彩を放つ彼女の方向へと自然と足が向いていた。
「あの…」
そういって明らかに困っている彼女に話しかけた。
「えぇ、あ、先日はありがとうございます」
どうやら彼女も私のことは覚えてくれていたようだ。それでも、話しかけて早々あのことについてお礼を言われるなんて思わなかった。
少し変わった子なんだなと思う。
「ふふっ、今日も迷子なの?」
「…はい、講義室の場所が…」
「どこの講義室かしら」
ほんとに迷子だったらしく、講義室についてきいてみる。
「ってこれ、私と同じ講義じゃない!」
あの時入学手続きの案内をしたはずだ。でもこの講義は新入生が受ける講義ではない。
「あぁ、私2年からの編入なんです」
この不思議西洋人形さん(仮)は同い年の同じ学科だったみたいだ。
「じゃあ、私たち同学年だったのね」
「そうみたいですね、よければなんですが…」
「えぇ、一緒に講義いきましょうか」
ありがとうございます、なんてお礼を言いながら歩き始める。
「そういえば、名前聞いてなかったわね。私は絢瀬絵里よ」
「絢瀬さん。私は白雪月華。少し前までフランスの大学に行ってたんです」
フランス?彼女は日本人ではあるようだけど、外国の血もひいてるのだろうか。
「絵里でいいわ。それに同い年なんだし敬語なんて使わなくてもいいのよ」
「そう。わかったわ」
会話もそうそうに私たちは目的地についた。
「ちょうどいい時間みたいね、適当に座りましょう」
教室内には結構人がいたけれど、私たちが入ったとたん視線がこちらに集まった気がした。
普段から人の視線を集めることはあったけれど今日はそれ以上に感じられる。その原因は当然隣にいる彼女だろう。
そんな本人は周りなど関係なしというように、授業の準備を始める。
「ねぇ、絵里。少し人に見られているようなのだけど、いつもこうなのかしら」
気づいてなかったわけではないらしい。
「そうね。私もよく人に見られることはあるけれど、」
「絵里って凄く綺麗だもの」
ストレートな物言いをする彼女に少し恥ずかしくなる。
「でも今日は貴方をみているみたいよ、気づいてなかったの?」
「そうよね、私のことはじめましてだものね」
(え、そこなの?)
「挨拶とかあるのかしら、日本とフランスで違いはあるのかしら」
「そうじゃなくて、貴方の容姿についてだと思うわ。始めから思ってけど、なにかやってたの?モデルとか」
容姿だけに限らず、立ち居振る舞いやオーラなどが一般の人とは少し違う。アイドル活動をしていた私でも違いを感じるのだ。
「そんなに珍しい見た目でもないでしょ。ただ、母が海外でモデルをしててそのお手伝いをしてたくらいかしら。あとは高校の時、友人の芸能関係の付き添いとか?」
「海外モデルって!そんな軽く言うことでもないでしょ、すごいじゃない!」
「絵里もわかるでしょ?私は見た目だけだって」
この時期にわざわざフランスから日本に来るだけの何かがきっと彼女にもあるのだろう。だけどそれは、ほぼ初対面の相手に話せることでもないだろう。
そう考えていると教授が入ってきて講義が始まった。
それから授業中になにか話すこともなく、彼女は真面目に授業を受けているようだった。
彼女がモデル活動の話をしだしたときのあの表情。私にならよくわかるかもしれない。
スクールアイドル活動の存在に悩み、学校存続のために、孤独だったころの私に似ているのだ。
だけど彼女が言った『見た目だけ』という言葉は違うと思う。
私はこの短時間で彼女の内と外のギャップに魅力を感じている。
それに私のことについて何も言わないあたり、μ’sのことは知らないのだろう。
私のことを知らない人ならば、これまでの人とは違った関係になれる、μ’s以外でも本当の友人になれるのではないかと思った。
閲覧ありがとうございました。
視聴ではないことに気付きました。
よろしければ、次回も見ていってくださいね。