海未と大学で出会えたことは驚いたけれど、その後の展開になかなか頭が追い付かなかった。
私たちはなぜか今、A-RISEが所属する事務所のカフェにいる。
月華が紹介した友達がA-RISEのあんじゅさんで共に競い合っていた元ライバルだった。そんな彼女に連れられてこんなことになっている。
「で、どうして月華と絵里さんがお友達なの?」
あんじゅさんがカフェについて早々、圧強めに質問してきた。
「それは———」
私と月華がどう出会いその後どのように過ごしたかなどを説明した。私も彼女とであって大体一か月ほどだ。
「そう。大変でしょ、月華のお世話」
「お世話って何よ。あんじゅこそ急にこんなことして、英玲奈やツバサに迷惑かけてるんでしょ」
「そんなことないわ。私もしっかりお仕事してるもの」
「さっき英玲奈から『仕事終わったとたんあんじゅが消えた』って連絡来たわよ」
「いつの間にそんなに連絡とるほどの仲に!英玲奈ももしかして!」
あんじゅさんと月華は仲よさそうに言い合いをしている。こんなにも感情を表に出せるほど、一緒にいた時間が長いのだろう。
「っ!」
胸のあたりに一瞬鋭い痛みが走った気がした。
「絵里?どうかしましたか?」
「ううん、何でもないのよ」
そう何でもないの。過ごした時間が長くて仲がいいのは仕方がない。
「絵里、何頼む?」
「あ、えぇ私はガトーショコラにするわ」
「私はおまんじゅう、はないので抹茶アイスを」
「私がフルーツロールケーキで、月華がチーズケーキね」
「ちょっと勝手に…」
「だってそうでしょう?」
「…そうだけど」
不服そうな月華、可愛い。けど私の知らない彼女をあんじゅさんはたくさん知っているみたいだ。
あんじゅさんが注文をとり、話しながら待っていると数分で運ばれてきた。
「ごめんね絵里、最初は二人だったのに。それに海未も絵里と積もる話もあったでしょう」
「いえいえ、でもどうして私も誘ってくれたのですか?」
「知らない絵里を知りたかったから」
え?知らない私?
「海未といるときの絵里は私といるときとは全然違って見えたの。だから知りたいって」
「へぇ~、珍しいわね。月華が他の人に興味持つなんて」
「絵里は、見た目で判断する人ではないと思ったから。それに絵里も海未も、あんじゅも私に無いものを持ってる」
「そうね、私のこともスクールアイドルではなく、ただの絢瀬絵里としてみてくれたわ」
「それは、知らなかっただけなのだけど…でも、すごく綺麗な人だって思ってたのよ」
スクールアイドルとして認知され、周りと壁を感じていた、作っていた私は彼女の存在が目新しかった。
そして彼女も外見で評価されることが日常になっていた。
私と彼女は、欲していたものが一緒だったのかもしれない。
「つきか~、私は?私はどう思うの?」
「あんじゅのことは、そうね…」
彼女は私たちとは違い、高校卒業してからプロとしてアイドル活動を続けている。そんな彼女のことをどう思っているのか気になる。
「わたし、あんじゅのことは好きよ」
「「「!?」」」
あまりの衝撃的な言葉にその場の全員の動きが止まる。
「あんじゅは、私がUTXにはいって芸能科にいるときから私を見てくれていた。母親が芸能界にいる私を利用しようとしたり、非難したりする人もいたわ。そんな中でもあんじゅは私自身を見てくれて、一緒にいてくれた。そんなあんじゅだから、アイドル活動だって応援したし、手伝いもした。貴方の頑張る姿を一番近くで見ていたかったの。それを今も努力し続けて、変わらず接してくれている。だから私はそんなあんじゅが好きで、応援しているのよ」
彼女の言う『好き』の意味がどうであれ、二人の関係は友達以上の特別なものなんだってわかった。
告白を受けている当人の顔は、アイドルのソレではなく、ただ一人の女の子としての優木あんじゅだった。
「あれ?どうしたのかしら。もうたべないの?」
告白した本人は案外、けろっとしている。やはり、その「好き」は恋愛的なものではないのだろう。
だとしてもこんなに真っ直ぐそれも、この子が言うとこちらまで顔が熱くなる。
まだあんじゅさんはこちらの世界には戻ってこれないようだ。軽く聞いた質問が、こんな破壊力を持って帰ってくるなんて思わなかっただろう。
海未もこういったものに耐久がないので、心ここにあらずって感じだ。
以前のように『破廉恥です!』なんて言わないあたり少しは耐性がついてのだろうか。
「あ、絵里。わたしガトーショコラ食べたい」
「え、えぇ」
一連の出来事に意識をやっていた私はお皿ごと渡そうとすると、
「あーん」
この感じ前もやった気がする。これは恥ずかしがったら負けなのだ。
「はい、あーーんっ」
私のフォークでためらいなく口に入れる彼女は、美味しそうに食べながらこちらに笑顔を向けてくる。
私はこの出来すぎた顔に耐久を付けなければならない。そうでないとやっていけない。心臓が。
「…ちょっと、人に盛大な告白しておいて、なにいちゃついてんのよ」
やっとこちらへ戻ってきたのか、顔を伏せていたあんじゅさんは文句を言う。
「告白…いわれてみればそうね…。…大好きよ、あんじゅ」
これはわざとだ。さっきのは無意識的なものだっただろうけど、今のは悪意をもったいたずらである。
「っく!……!」
お気の毒に。きっと照れ隠しにからかおうと思ったら、またもらってしまったのだ。
これはもうしばらく立ち直れないのではないだろうか。
月華も月華だ、自分の外見なんて気にしないというようにふるまっているが、こういう時には使い方が分かっている。
当の本人は、
「あんじゅ?大丈夫?…ふふっ」なんてのんきに笑っている。
これはもう、小悪魔だ。なんて様子を眺めていると、面白がっている月華と目が合った。
途端に彼女は何か思いついたようだ、これはまずい。
「え~り、」そういいながら、席をたってこちらに寄ってくる。
「な、にかしら?」
まずい、まずい、これから先の言葉は聞いてはだめだ。離れなきゃ!
「えり、あのね…」
彼女は私の背後に回る、そして
「私ね、えりのこと、好きよ」
((ドクンッ))
これ、は、思った以上だ。席に座る私の後ろから耳元でささやく彼女。逃げることができたはずなのに、何処か期待していたのだろうか。
彼女のその言葉は、予想をはるかに上回って私の心を揺さぶった。
それだけ言ってさっさと席に戻る彼女。私は未だに耳元に彼女の気配を感じながら、テーブルに突っ伏すことしかできなかった。
「はっ!私は何を!」
海未がなにか言っているようだけど私は知らない。
アイドルがするファンサービスなんてものじゃない。あれは無差別テロみたいなものだ。確信犯ならなおたちが悪い。
被害をこれ以上広げるわけにもいかない、どうにか私が手綱を握るしかない。いや、あんじゅさんも一緒に。
ここでなら彼女と協力しあえるはずだ。どうにか大学内での被害が起きてしまわぬように祈るしかない。
閲覧ありがとうございました。
途中から破廉恥に免疫のない海未さんはフェードアウトしていた様子ですが、たまには自覚して周りを振り回してみてもいいと思いませんか?私は大いにそう思います。
ですが、基本的に主人公は受け身なので勘違いしないように。
たまに右ストレートを打って、一発K.O.もらうくらいです。
次回もよろしくお願いします。