轟姓になりたくないのでヒーローになりました 作:紅ヶ霞 夢涯
という訳で次は、主人公のヒーロー名を募集です!
活動報告でも感想欄でもご自由に。最終的にはいくつかの候補でアンケートする予定です。
パソコンの画面から目を離して、壁に掛けてある時計を見た。そろそろパトロールの時間なので、パソコンででの書類仕事を保存してから電源を落とす。
クローゼットに仕舞ってあるコスチュームを取り出して袖を通した。初めの頃はコスプレ感があって少し気恥ずかしかったけど、高校三年間と二年間のヒーロー活動で流石に慣れた。
「さて、と。今日も行きますか」
自宅兼ヒーロー事務所の戸締まりをして、私は喧騒飛び交う街中へと歩いて行った。
(うんうん。今日も平和で何より)
予め決めてあるルートと時間に従って巡回しながら、時々のファンサービスも忘れない。といっても、私のヒーロー名を呼ぶ人に軽く手を振るだけだが。
「それにしても………」
毎日毎日、本当に代わり映えしない風景だ。私以外にも街をパトロールするヒーロー達に、出勤するサラリーマンやOLに、買い物中の主婦もいれば公園に向けて散歩する老人もいる。
それからーーー
「引ったくりだぁ!誰か捕まえてくれぇ!!」
ーーーほぼ毎日のようにどこにでも現れる、“個性”を持て余した
「アイス
ため息を押し殺して自分の個性を発動し、矛の形にした氷塊を走る
敵退治での街の被害で正面から文句を言われることはほぼないが、それを最小限に抑えるに越したことはない。
「朝っぱらから引ったくりなんて、暇な人ですね」
誰かから奪ったらしいバッグを拾い上げ、被害者に手渡し到着した警察に敵を引き渡す。ここまでが、基本的な仕事だ。
しかし、他の仕事が発生することもある。
「応援要請、ですか?」
「はい。隣街の方で敵とヒーローが交戦しているようですが、未だ取り押さえることが出来ず此方にまで要請が回ってきたようです」
珍しい。どこの街にも多くのヒーローがいるというのに、まさか隣街から応援要請が回ってくることがあるなんて。
「詳細をお願いします」
「敵と交戦しているヒーローは『エンデヴァー』。敵の“個性”は炎や熱に耐性を発揮するタイプという連絡が」
………本当に珍しい。
(ま、行こうかな)
あのエンデヴァーが応援要請を出す程に苦戦しているというのは、普通に少し見てみたい。
「分かりました。すぐに行きます」
なるほど。ヒーロー・エンデヴァーが苦戦する状況がどんなものかと思えば………うん、これは仕方ない。
(場所は大通りのビル同士の間にある細道。あそこだと彼くらい大柄だと、流石に動きづらいわよね。建物が近いから、火力を上げすぎる訳にもいかないし)
しかもどうやってかは知らないが、敵は『エンデヴァー』の炎やら熱を上の方に逸しているようだ。お陰で普段は熱気で遠ざける一般人が、あの『エンデヴァー』の活躍を間近で見ようと彼と反対側に集まっている。
『エンデヴァー』の
「応援要請を受けて来ました。通して下さい」
彼の相棒たちにそう言って、エンデヴァーの反対側から細道に入る。すると私に気づいたのか、僅かに目を見開く。そしてそれに敵が気づく前に、彼は瞬時に拳を握り必殺技を放った。
「赫灼熱拳っ!!!!」
こいつ正気か。
一瞬で凝縮された炎が敵を貫き、勢いよく私に迫ってくる。後ろに誰もいないなら避けるところだけど、生憎と野次馬が未だに屯していた。
(………仕方ないな)
持ち上げた片手で火炎放射と表現するには熱すぎるそれを受け止め、弾け飛びそうな炎を氷で相殺し続けること数秒。赫灼熱拳の直撃を喰らった敵は、当然のようにその場で倒れ伏していた。
「応援要請で駆け付けたヒーローに、この仕打ちは流石に酷くありませんか?」
「………ふん。貴様ならば防げると判断しただけだ………それにしても、久しいな。ざっとニ年ぶりといったところか」
「あら、もうそんなに経つんですね」
雄英高校ヒーロー科に在席している時からこの男のフォローをすることは多かったので、お互いにサラッと流した。今更こんなことを本気で責めたりしない。
「それでは敵の無力化も済みましたし、私はこれで失礼しますね。今後の活躍も期待しています」
相棒に敵を任せるエンデヴァーにそう告げれば、「おい」とどこか控えめな様子で呼び止められた。
「少し話がしたい。夜は都合が空いているか?」
(………応援要請、断れば良かったかも。手こずってはいたけど、苦戦はしていなかったし)
雄英高校を卒業してから、私はクラスメート達と意図的に連絡を断っている。去年に行われたらしい同窓会にも、出席していない。
しかもエンデヴァーこと轟炎司は、学生時代に………まぁ、かなり仲を深めたクラスメートの一人。
それが二年間も音沙汰なしで久々に会ったとなると、引き止めたくなるのも分からないではない。
ただ。
「私、隣街に住んでいるんです。夜間の巡回は他の人に任せてあるので、用事があるなら貴方から来て下さい」
こう一方的に言ってタクシーに乗ったので、何用か知らないがわざわざ隣街にまで足を運んで来ることはないだろう。そこまで彼も暇とは思わない。
ーーーーーーーーーあぁ、それにしても。
(どうすれば良いのかな)
私が『轟冷』にならない為の手段を、そろそろ本気で考えなければ。