轟姓になりたくないのでヒーローになりました   作:紅ヶ霞 夢涯

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 沢山の感想をありがとうございます!もう感想を見るだけで凄い楽しいです(笑)


10話

〈轟炎司〉

 

 今は昼飯を食い終わり片付けも済ませて、午前中の“個性”強化の疲れを少しでも取り除こうと休んでいる最中。俺も俺以外も、ほぼ全員がそうしている。

 

 そんな中で、一人のプロヒーローと共にどこかへ行った氷叢の姿は、嫌でも目に入った。

 

(何をしているんだ?)

 

 合宿の初日は気になっても追う気力もなく、また尋ねる機会もなかったが………。

 

 膝に手を当て立ち上がり、後を追う。そうして辿り着いた先は、断崖絶壁とまでは言わずとも、かなり傾斜のある崖の下。

 

 適当な木に隠れて様子を伺っていると、唐突に氷叢がその場から飛び上がり崖を登り始めた。

 

「………速い」

 

 思わず呟く。崖の上まで登る速度もそうだが、それ以外にも目に付く所が多かった。

 

 手足を次に置く場所の判断。そこまで移動する速度。その速度を維持したまま、バランスを一切崩さない体幹。それらを全て、個性で補助することもなく行っていた。

 

 仮に俺が同じことをして、同じ速度で出来るかどうか………そもそも崖登りなどあまりしたこともないので、何とも言えない。

 

 というか、だ。氷叢はどうしてこんなことをしている?

 

「あら、轟さん?どうしてここに?もしかして、休憩時間が終わったりしましたか?」

 

 崖を駆けるように降りてきた氷叢に、普通に見つかりそう声を掛けられた。

 

「まだ、全員休憩中だ。そういうお前こそ、休憩時間に何をやっている?」

 

 それに答えたのは氷叢ではなかった。

 

「どんな状況でも、どんな足場でも動けるための訓練だとよ。雄英生ってのは、向上心の塊だな」

 

 そう肩をすくめて言ったのは、確か雄英が招いたプロヒーローの一人。名前は聞いたこともないが………この場にいる以上、実力は確かなのだろう。

 

「余裕があるなら、轟さんもやりますか?勿論、無理にとは言いませんが」

 

 返事は決まっていた。

 

 

 

 

 

 八月八日、午前九時。私は轟炎司との集合場所に指定した、自宅から近い最寄り駅前の広場にやって来た。

 

(格好、変じゃないわよね…?)

 

 家を出る前にも確認したが、近くのガラスケースの前に立って一応確認する。

 

 白地に黒いボーダーの入ったノースリーブのシャツに、青と白で縞模様を象る膝丈のスカート。首元にはプロデューサー巻きにした薄手の白い上着があり、橙色をしたリボンを付けたバッグを肩に掛けている。

 

 ………ノースリーブはともかく、スカートはちょっと長めにした方が良かっただろうか?別に似合っていないとは思わないけど、今更になって少し悩んできた。

 

(まぁ、この格好で来ちゃったし仕方ないや)

 

「轟さんは………まだ、来てないみたいですね」

 

 改めて広場の時計を確認してみれば、集合時間までは後一時間近くもある。私は何に焦って、こんなに早く来てしまったのやら。

 

(近くに本屋とかなかったっけ?)

 

 流石に駅前の広場なのだから、探せばある筈。三十分くらい適当に時間を潰してから、また戻ってくるとしよう。

 

「おい」

 

 広場の出入り口から一歩踏み出した瞬間に、ぶっきらぼうに声を掛けられたので足を止めた。後ろを振り返る。

 

「来る時間、間違えていませんか?」

 

「そう言うお前こそ早く………いや、何でもない。待たせたようで、悪かったな」

 

 視線の先には、私服姿の轟炎司。黒いズボンを履いていて、それとは対照的な白いシャツの上から紺色っぽい七分袖の上着を羽織っている。

 

 ………………………………………………うん。

 

「普通ですね」

 

「それは流石に失礼過ぎるだろう」

 

 やっべ。声に出てた。

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