轟姓になりたくないのでヒーローになりました 作:紅ヶ霞 夢涯
雄英高校ヒーロー科としての学生生活も、早二年目に入った。そんな私の生活には、ある一つの習慣が生まれている。
「ロッククライミング、かなり慣れたようですね。隣で見ていても、危なっかしさは感じません」
今いる場所は、轟炎司がトレーニングによく使っているという瀬古杜岳ーーーで見つけた、崖の中腹。
「一年の合宿以来、これにも時間を割いていたからな。自分でも上達したと思っていたが………お前から見ても、そうか」
習慣というのは、ここ瀬古杜岳で行われる轟炎司とのトレーニング。平日は流石に厳しいものがあるが、土日のどちらかは来るようにしている。
「これなら、次のステップに進んでいいかもしれませんね」
「は?次、だと?」
「えぇ」
私と同じように崖の中腹で、若干だが口元を緩ませていた轟炎司。彼自身が言うように、去年の合宿時とは動きが別物だ。
卒業までに習得できれば儲けもの、程度に考えていたが………これなら次のステップも、仮免試験までに間に合うかもしれない。
「まぁ、それも………貴方にやる気があればの話ですが。どうします?」
半ば答えが分かりきっている問いに、やはり予想通りの答えが返される。
「やるに決まっている。で、どんな内容なんだ」
「そうですね」
丁度二人揃って、崖の上に登り着いた。ぐいっと組んだ両手を振り上げ、身体を程よく伸ばす。そして轟炎司と目を合わせて、こう尋ねた。
「フリーランニングって、知ってます?」
予定よりも早い時間に集まってしまった私達。
(まぁ、遅刻するとかよりはマシかな)
そのままショッピングモールに移動することにしたので、とりあえず今日の最初の予定を轟炎司に伝える。
「とりあえず、携帯が欲しいので付き合って下さい」
「まだ持っていなかったのか」
「どの機種が良いのか、あまり調べる時間がなかったので。店のオススメでも良いのかもしれませんが、どうせならヒーロー活動中も問題なく使える物を、轟さんから教えて欲しかったんです」
既に、独立間近だと聞いた。この男なら多分その辺りも考えて、色々と用意していたことだろう。
「………参考程度にしておけ。俺も、そこまで詳しくは知らん」
とか言っていたが、頼んだ私が引きそうになるレベルで詳しかった。何より驚いたのは、冷気に耐性のある携帯を勧めてきたこと。電気カイロみたいな機構でも、組み込まれているのだろうか?
「では、それで」
何故か支払おうとする轟炎司を携帯ショップから追い出し、当然だが自分で払う。自分の誕生日だというのに、どうして財布を出したのやら。
買ったばかりの携帯の初期設定も、店員に手伝って貰いながら済ませる。店の外に追いやった轟炎司に近づくと、彼は電話をしている最中だった。
聞き耳を立てるのも悪いと思い、少し離れて電話が終わるのを待ってから声を掛ける。
「意外に物知りなんですね、轟さんは。どれを選べば良いか分からなかったので、本当に助かりました」
「そうか………………………何も聞いていないだろうな?」
「?いえ、特に何も。盗み聞きするような趣味、私にはありませんし」
仮に私が聞いてヤバい内容だったのなら、ここで話す轟炎司が悪い。
(いや、でもちょっと気になるなぁ。わざわざ確認したくなるくらいに、私に聞かれたくないことって何?)
普通に考えれば独立関連のことだろう。流石に私がそれを聞くのは、確かによろしくない。
(まぁ、何でもいいや)
とりあえず、携帯を出しているなら丁度いいと、そのまま轟炎司とメアドと連絡先の交換を済ませる。
「連絡先なら、以前に貰ったぞ」
「以前に教えた番号は、家の固定電話の番号なんです。今、轟さんに伝えたのはプライベート用の番号ですよ」
「は?」
「今の所で知っているの、轟さんだけですから。変に広めたりしないで下さいね?」
身体を固める轟炎司に、私は軽い笑みを浮かべながらそう言った。
主人公はエンデヴァー事務所への勧誘を………
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