轟姓になりたくないのでヒーローになりました   作:紅ヶ霞 夢涯

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 アンケートの選択肢について指摘がありましたので、勝手ではありますがアンケートをやり直させて下さい。シンプルに行きましょう。


13話

「赫灼熱拳、ジェットバーン!」

 

 そう叫んだ轟炎司の拳から、凝縮された炎が勢いよく私に向かって飛来する。なるほど。既に力の凝縮と放出というものは、とっくに習得済みであるらしい。

 

絶対零度の盾(エスクードデルセロアブソルート)

 

 本来は氷の壁の中に敵を閉じ込める技を、防御に転用する。本来の使用方法が必要な場面もあるかもしれないが、なるべく少ないことを祈る。下手をすれば、相手を凍死させかねない。

 

「いい必殺技ですね」

 

「軽々と防いでおいて………馬鹿にしてるのか」

 

「まさか、本心ですよ。それでは次は、私から」

 

 さて、どんな技を使ってみようか。彼が中遠距離用の技を披露したのだから、とりあえず私も似た用途の技でいいか。

 

「アイス(ブロック)暴雉嘴(フェザントベック)

 

 氷で象った大きな雉を飛ばし、その嘴で以て相手を穿つ攻撃力が高めの必殺技。しかし、それは再び放たれたジェットバーンで撃ち落とされる。

 

(あれ?)

 

 その様子を見て、思い浮かんだ僅かな違和感。そしてその違和感がはっきりと形になったのは、何度かお互いの必殺技をぶつけ合った後だった。

 

 

 

 

 

 携帯を買ってから、色々と見て回った。机や椅子などのインテリアに、ペン立てなどの小物類。轟炎司に会話を投げかけつつ、彼が気になっている様子の物を片っ端から………いや、嘘だ。財布と相談しながら買っていく。

 

 そして事前に二人分を予約していた、昼前に始まる映画を見るために映画館に入る。

 

「どうして映画だ」

 

「知らないんですか?まぁ………私も見た訳ではありませんが。何でも、最近の流行りだそうですよ?」

 

「いや、流石にそれは知っているが」

 

 ふむ。どうやら彼の好みではないようだが、今更キャンセルするのも勿体ない。悪いけど、今回はこれで我慢して貰うとしよう。

 

「ところで、轟さんはメニュー決まりましたか?」

 

「………決まっているなら頼め。ここは俺が持つ」

 

「え?いえ、自分で払いますよ。クーポンもありますから」

 

「………………………そうか」

 

 そして「悪い。電話だ」と言って、轟炎司は映画館の外に出た。その背に向かって、「じゃあ、私が貴方のを決めておきます」と言った。

 

 特に反論もなかったので、適当に選ぶ。確か学生の頃から、何故だか渋いものが好きだった。とりあえず、ポップコーンは外すことにする。

 

「それにしても」

 

 独立が間近だと、やっぱり色々と忙しんだなぁ。まるで二年前に、私が個人事務所を建てるために奔走していた時のようだ。懐かしさすら感じられる。

 

(どの程度の規模で事務所を建てる気か知らないけど、ひょっとして急な予定ができたりするのかな?)

 

 けどまぁ、彼の方から言い出さないなら問題ないだろう。

 

 轟炎司がいない間に、注文と支払いを済ます。そして考えるのは、これまでの二年間とさっき彼に渡したプライベートの携帯番号。

 

 ………改めて言うようなことでもないが、私の目的は轟炎司との結婚を避けること。その為にヒーローを志し、しかし普通のヒーローでは箔が足りないと思い雄英高校に入った。

 

(まさか、肝心の轟炎司と同じ学年で、しかもクラスまで同じになるとか予想外過ぎたけど………)

 

 そこはまぁ、臨機応変に。ヒーローとしての成功は確約されているような人物なので、彼から学べることは多いと思った。それに、将来No.2から頼りにされるヒーローという立場になれたなら、即ち私のプロヒーローとしての実力も立場もそれなりのものになるだろうとも。

 

 ただ………まぁ、その。何だ。私としては、上手くやっているつもりだったんだけど。周りからはとてもそうは見えなかったらしい。

 

(せめて、もうちょっと早く言ってくれたら良かったのに)

 

 何で指摘するのが、三年の半ばも過ぎた頃だったのか。いや、まぁ文句を言うのも筋違いな気はするけども。

 

「はぁ」

 

 溜め息を吐く。

 

 だから、二年間も離れた。しかし、再び私達は距離を詰めようとしている。しかも、今日の場合は私から。

 

 ………………………………………………いきなりプライベートの番号を渡したのは、流石にマズかっただろうか?

 

(けど、渡さない方が不自然だし仕方ないよね。うん、仕方ない仕方ない)

 

「悪い。待たせた」

 

 そう結論付けたタイミングで、轟炎司が戻ってきた。彼の分の飲み物とかが乗ったトレーを渡す。

 

「いえ、大丈夫です。それより轟さんは、これから二時間近く平気なんですか?忙しそうに見受けられますが」

 

「問題ない」

 

「………そうですか。では、もう入ってしまいましょう」

 

 彼の隣を歩きながら、思考は再び振り出しに戻る。

 

 私の目標は、轟炎司との結婚を避けること。それは昔も今も変わらない。変わっていない。変わる訳がない。

 

(ーーーあぁ、けれど)

 

 けれど、もし。もしも結婚さえ避けられるというのなら。

 

 私は。

主人公は轟炎司からの勧誘を………

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