轟姓になりたくないのでヒーローになりました 作:紅ヶ霞 夢涯
轟炎司との必殺技の応酬を終えて、運動場βから教室に戻って来た。そして彼と向かい合って座り、互いの必殺技について感想を言い合う。
「仕方ないかもしれませんが、轟さんは防御力に乏しいですね」
「大した問題ではない。避けるか、相殺すれば良いだけだ」
何度も彼と必殺技をぶつけ合ったが、彼は防ぐという行動をしなかった。轟炎司には少なくとも現時点で、防御用の必殺技はないのだろう。
それは私じゃなくても、誰でも気づく。つまり彼には、こんな言い方は何だが『数撃ちゃ当たる』の戦法が刺さる………かもしれない。
(そんな単純な手で、やられる男とは思えないけど)
それでも、可能性はなくはない。機会があったら試してやろう。
「相殺ばかりして、熱で動きが鈍くならないといいですね」
私の言葉に口を噤む轟炎司。自覚はあるようで何よりだ。まぁ、その辺は自分で頑張って欲しい。欠点はこれくらいにして、少しは褒めてやるとしよう。
「火力は十分だと思いますよ?私の防御技だって、何度も貫いてきましたし………秘訣は力の凝縮ですか。器用ですね」
「あっさり人の秘訣を見破るな」
「まぁ、それなりの数を拝見しましたから」
「………お前の必殺技も、かなり高レベルで仕上がっているな。威力は俺に劣るが、それを補って余りある汎用性だ」
そして彼には失礼かもしれないが、彼より技の種類が豊富だ。まぁ………色々と手を出し過ぎて、実戦レベルに仕上げられているか少し不安だが。
「全く………君たちは本当に、向上心のある生徒なのさ」
ガラッと教室の扉を開いて入って来たのは、担任である根津先生………………………今どうやって開けた???
「根津先生、お疲れ様です。先生から見て、私達はどうでしたか?」
そう尋ねれば、先生の目からしても高校生レベルは余裕で超えているそうだ。実感は沸かないけど、先生が言うならそうなんだろう。
「今はまだ不安に思うかもしれないが、もう仮免試験が迫っている。全国のヒーロー候補生と競い突破すれば、自信も身に付くさ」
加えて、根津先生曰く。私と轟炎司とが成長を実感しにくいのは、私達のレベルが同じくらいだからだそうだ………彼は先生からのその指摘に、どこか不満そうにしている。
しかし、そういうことなら轟炎司との戦闘訓練は一旦中止かな。偶には他のクラスメートとも訓練するとしよう。
「そういう訳で、今後は新しい必殺技に着手しようと思うんです」
「………そうか」
「そこで、一つ提案があるんですが」
提案とは言いつつも、拒否させるつもりはなかったりする。断りそうな雰囲気を出してきたけど、ゴリ押した。
映画の内容はあまり入ってこなかったけど、何だか頭は冷えた気がする。
映画の終盤で、手洗いと言って抜け出した。その足で向かうのは、このショッピングモールでブランド物の腕時計を扱う店舗。
「流石に高いですね………」
ここで買うのは奮発し過ぎ?いや、でも半端な贈り物はしたくない。それに以前からそうなのだが、轟炎司も時計の一つくらい身に着けないと不便だろうし。
そこそこ高めの買い物を終えて、映画館に戻る。すると予想より早く彼が出てきていた。多分、この男は本編だけ見てエンディングをしっかり見ない派だな。勿体ない。
「すみません。ゴミを任せてしまったようですね」
「気にするな」
彼に空腹かどうか尋ねてみれば、そんなに空いてないらしい。ならばと適当に食べ歩きしつつ、ショッピングモールを出て近くのアクティビティ施設へと向かう。
「アクティビティだと?」
「えぇ。お気に召しませんか?まだ着いてもないんですけど………?」
「俺は構わんが、お前の………その、服装でか?」
「着替えの貸し出しくらいやってます。何の心配してるんですか」
ハンバーガーの最後の一欠片を口に放り込み、クシャクシャと紙を丸める。しかし、こうして並んで歩いていると………高校時代を思い出す。
確かこの男と放課後に初めてバーガーショップに行った時、物凄い戸惑っていて面白かった。育ちが良過ぎると、ジャンクフードの類を知っていても触れたことがなかったらしい。
「ふふっ」
「………どうした、氷叢」
「何でもありませんよ?ただ、以前の貴方は可愛げがあったと思って」
世間知らずな辺りとか、特に。轟炎司が知らないような、色んな場所に連れ回すのが楽しかった。
「俺にそんなことを言うのは、お前くらいだ」
「そうでしょうね。貴方にそんなイメージを持っていたのは、私くらいなものでしょう」
少し根気強く会話すれば、彼に対するイメージも多少は変わるだろうに。まぁ、近づきにくい雰囲気があるのは否定しないけど。
「さぁ、着きましたよ。ここです」
私は轟炎司を連れて、スポーツジムの中に入って行った。
主人公は轟炎司からの勧誘を………
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受ける
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受けない