轟姓になりたくないのでヒーローになりました 作:紅ヶ霞 夢涯
※感想への返信が済んでません。ごめんなさい!
「少し、私が想像していたのとは違いますね」
「そうか?」
「はい。私のイメージだと、もっと射程があります。軽く見積っても、ビル五つくらいですね」
「どんなイメージだ、それは」
そりゃ、もう………某海賊漫画に登場する、炎人間の代名詞とも言える技。彼には是非とも頑張って、それを再現して欲しい。
「なかなか、想像通りに行かないものですね」
私が轟炎司にした提案とは、必殺技の共同開発。私の使う技は基本的にアニメやら漫画やらの技を模倣したもので、当然だが覚えているのは氷系統の技に留まらない。
この知識を使い、轟炎司を強化する。まぁ、技をいくつか伝授した程度で、本当に強くなるか分からない。それに私が何もしなくても、彼は自力でこのヒーロー飽和社会を駆け上がる。
私がしているのは、恐らく余計なお世話だ。
「凝縮したものを拡散しつつ、放出。拡散という過程を挟むと、流石に射程が短くなりますね」
「近距離で多数を相手取るときに使えそうだな」
それは、そうだけど………やっぱり違うんだよなぁ。別にどんな用途を見出そうが、彼の勝手なんだけど。
いや、しかし。知れば知るほど、防御に向かない“個性”だ。確かに彼の場合は無駄に時間を掛けてそれの習得を目指すより、攻撃を優先した方が良さそうだ。
「それでは早速、次です。轟さんは炎の形状をコントロールできますよね?」
「………あぁ」
「でしたら、弾丸のようにしてみましょう。凝縮した炎を、さらに凝縮して指先から射出する感じで」
銃を構えるように片手を上げて、人差し指の先に小さな氷の塊を作る。そして、それを文字通り弾丸の如く射出した。こうした手本がある方が、彼もやりやすいだろう。
「その程度なら容易い」
言葉通りに轟炎司は、何の苦もない様子で火の弾丸を打ち出した。それから思案するような様子を見せる。
「氷叢、的を複数作ってくれ。多い方が助かる」
どうやら何か思いついたらしい。彼の言葉に従って、訓練場の半分を氷で埋め尽くす。ついでにサイズも色々と揃えてやった。
「少し離れろ」
言うと彼は両手を前に構える。そして全ての指先から炎を吹き出させる。
「ふんっ!」
そして計十本の炎の糸が、次々に氷を破壊した。
赫灼熱拳・ヘルスパイダー。そういえば、まだ見たことなかったっけ。初めて見るし彼も初めて試みる技なのだろうけど、それにしては完成度がそれなりに高い。
「………いいですね」
思ってたより順調だ。この調子でじゃんじゃん仕込むとしよう。
私が贔屓にしているスポーツジム。その一室にあるリングの上で、私は轟炎司と殴り合っていた。
(いやはや、しかし。こうして彼と拳を交えるのも久しぶりだなぁ………流石にもう、パワーじゃ太刀打ちできないや)
避けてカウンターを放つという単純な作業にも飽きたので、試しに彼の拳を受け止めてみる。
「っと、危ない」
軽く後ろにバックステップを踏んで、衝撃を殺す。“個性”なしでこの威力とか、果たして何を目指しているのやら………って。
(決まってるか)
彼がどこを目指しているのかなんて、とっくの昔に知っている。
五分後。互いに決定打を相手に与えることはできず、私たちはリングから降りた。彼の隣に腰を下ろして、用意していた飲み物を手渡す。
「どうぞ」
「悪いな」
「いえ」
リングで殴り合いをする前に、ランニングマシンを使ったりボルデリングをしたり色々としている。かなり汗もかいたし、疲れた。適度な運動しかするつもりなかったのに、この男はどうして全力で体を動かすのか。
「腕は落ちてないようだな」
「嫌味ですか。落ちてないだけ、みたいに聞こえますよ」
「………いや、そんなつもりは」
「分かってますよ。冗談です」
まぁ、彼にそんなつもりはないだろう。私が勝手に、そう思ってしまうだけ………それは高校を卒業して以来、強くなったという実感が特にないから。
(考え過ぎな気もするけどね………)
「並列して温泉宿が建てられているんです。借りた服は向こうで返せば良いので、移動しましょう」
「そうか。便利だな」
「えぇ、重宝してます」
そうして温泉宿に繋がる渡り廊下を彼と二人で歩く。
ひっそり立てられていた『本日貸し切り』の看板には気づかなかった。
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温泉宿での展開
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√B 宿のオーナーと対談
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