轟姓になりたくないのでヒーローになりました 作:紅ヶ霞 夢涯
半ば、本戦への出場を確信していた二次予選。しかし、始まってみると意外や意外。苦戦しているどころか、あまり勝ちの目が見えなかった。
「さっきから轟さん、私の邪魔しかしてませんね!協力っていう単語を知らないんですか!?」
「そっちこそ俺の邪魔ばかりしていることに気づいていないのか!?無闇矢鱈と氷を出すな!炎の勢いが削がれる!!」
思えば彼とこれまで、共闘の訓練をした覚えがない。それでも戦闘訓練やら必殺技の開発やらで、十分に彼のことは知っている………つもりだ。だから、合わせられると思っていた。彼の実力に、私なら。
(………甘い考えだったのね)
本当に、甘く見ていた。彼ーーー轟炎司が実戦になると、普段より数段は上のパフォーマンスを発揮することは知っていたけど………私の想定を軽く上回っている。
二次予選が開始して直後に、私達は複数のチームに囲まれた。それを氷の壁で押し返した瞬間に、轟炎司が“個性”を発動。しかし、私の氷の防壁を溶かして、敵側に有利となっただけだった。
その時点で嫌な予感しかしなかったし、実際にそこから先は散々なものだった。
とにかく互いが互いの邪魔。氷は炎で溶かされるし、彼の言う通りに氷が炎の勢いを削いでしまっている。
(どうしたものかしら………とか、言ってる場合じゃないわね)
まだ披露するつもりはなかったけど、新技を使うとしよう。
身体を洗ってから、露天風呂に向かった。中の大浴場も悪くないのだけど、流石に熱くて長く浸かっていられない。こういう時ばかりは、“個性”と体質が恨めしい。
「あ〜」
気持ちいい。体から力がすぅっと抜けていく。自宅の風呂じゃこうはいかない。足も思いっきり伸ばせないしね。
「………それにしても」
今日、一日。久々に轟炎司と過ごした訳だけど………正直、悪い感じはしなかった。いや。はっきり言うと楽しかったし、こんなに楽しい時間は二年ぶりとさえ思えた。彼と過ごす時間は、こんなにも心穏やかなものだっただろうか。
「やっぱり、さ。私………アイツのこと」
別に嫌いな訳じゃ………そう、別に嫌いじゃない。それだけ。
(どうしよっかなぁ)
彼の事務所で副所長をするのも、良いかなとは思っている。そうしたからって即結婚になる訳でもないし、普通に好条件な職場だし、大手ヒーロー事務所になるのは間違いないし。
ただ………あと一歩。ほんの少しだけ、まだ迷っている。何かしら背中を押してくれるきっかけでも、その辺に転がっていて欲しいんだけど。
「そんな都合のいいこと、ないですよね」
そう呟いた時、誰かが近づく気配を感じた。それに私はこの旅館で、すっかり馴染みの世話役となった少女の姿を思い浮かべる。肩まで浸かっていた露天風呂から立ち上がった。
「丁度よかった、ミカ。少し聞いて欲しいこ、と………が」
そこにいる筈もない人物がいた。
温泉宿での展開
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√A ラッキースケベ
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√B 宿のオーナーと対談
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√C ライバル?登場