轟姓になりたくないのでヒーローになりました   作:紅ヶ霞 夢涯

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グレイシアってポケモンでねえか!!


4話

〈轟炎司〉

 

 氷叢冷が勝利宣言をした直後に放たれた、恐らくは彼女の現時点での最大出力。それは熱を溜め込む体質である筈の俺に、確かに冷たさを感じさせた。

 

(だが………)

 

 炎を放出し続けながら考える。何故かは分からないが、この氷は俺のフィールドにある柱には向かっていない。

 

 察するに、柱を壊すより俺を倒すことを選んだのだろう。

 

「舐めるなッ!」

 

 真っ向勝負というなら望むところ。身体の芯にまで届きそうな冷気に、全力で放出する炎で対抗する。

 

 最大火力で、最高温度。しかし、体を包む冷気を振り払えない。

 

(ならば、火力を上げるまで!!)

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 そうして氷叢の個性を防ぎ続けて、どの程度の時間が経ったのか。五分………というのは言い過ぎかもしれないが、体感的にはそんな気がした。

 

 やがて、攻撃の勢いが僅かに弱まった。その瞬間を逃さずに、防御中も右腕に溜め続けていた炎を即座に放とうとした直前。

 

 俺の背後で、次々に柱が倒壊する音がした。

 

 

 

 

 

 あのエンデヴァーから直々に、相棒(サイドキック)として事務所に誘われた。きっと私以外のヒーローであれば、自分の事務所を畳むなり所属している事務所から移ることを選択肢に入れるだろう。

 

「………何故、とお聞きしても?」

 

「食事の時にも言った、救助・避難・撃退。これはヒーローに求められる基本三項目だが、ほとんどのヒーロー事務所では一つに方針を定めている」

 

「そうですね。私も強いて言うならば、避難よりの撃退という感じですし」

 

 私が最初に(ヴィラン)と接触したした場合には、当然だが撃退に入る。しかしこのヒーロー飽和社会で、毎度のように自分の手で敵退治が出来るのは、僅か一握りだけだろう。

 

 そんな中で私がどうやって評価と儲けを稼いでいるかといえば、個人経営事務所な点と他所のヒーローが敵退治をしている最中の避難誘導を積極的にやっている点。

 

 それから轟炎司との食事中にも言ったように、海難系ヒーロー事務所からのチームアップ要請。特にこれのお陰で私の活動範囲は広いので、様々な地域の人々から認知されている。

 

 あと一つ主な活動に加える仕事もあるのだが、今は置いておこう。

 

「俺の事務所では、その三項目すべてを行う」

 

「………『つもり』や『予定』を付け加えない辺り、強気な発言ですね」

 

 しかし、それがどうして私を彼の建てる事務所に誘うことに繋がるのか。

 

「社屋の場所は都心部を考えているが、他県への出張なども積極的にやっていく。そこで、お前だ」

 

 どこでだ。首を傾げながら続きを促す。

 

「救助・避難・撃退。何をするにしても、お前がいれば活動の幅が広がる。その場でやれること、そして出張先の選択肢もな」

 

「………買い被りですよ」

 

 それにしても、ちゃんと色々と考えた上での勧誘なようだ。けど。

 

(活動の幅が広がる、ね。それはエンデヴァー事務所のメリットであって、私にとってのメリットじゃない気がする)

 

 既に私のヒーローとしての活動は幅広い。その分だけ忙しくはあるけど、一応は仕事を捌くことは出来ている。

 

(敢えてメリットを上げるなら、事務所に所属=人手が増える、くらいかな)

 

 ただ事務所の規模が大きくなるのは確約されている訳だから、もしかしたら給料はかなり高いかもしれない。

 

(あ、いや違うか)

 

 私の言う『活動の幅』は言い換えると『活動範囲』。現場でやることはほぼ変わらないが、彼の構想するヒーロー事務所なら『活躍の幅』も広がることだろう。

 

(何だろ。轟炎司の事務所であることを除けば、めちゃくちゃ好条件な気がしてきた)

 

 デメリットがたった一つであるのに対し、メリットが多い。しかも就職した暁には、副所長ときた。

 

「それに貴方の事務所で副所長なんて、私に務まるとは………」

 

「買い被りなものか。謙遜も過ぎれば嫌味だぞ………二年間も個人でヒーロー事務所を経営してみせた手腕、ヒーロービルボードチャートでも上位に食い込む実力。並のヒーローには出来ん」

 

 とりあえず謙遜すれば、即座に否定された。

 

 別に自己評価を低く見積もっている訳ではないが、だからって『私TUEEEE!』みたいな態度は良くない。ので、程々な謙遜というか下手というか、そういう態度を忘れてはいけない。

 

「………光栄で、とても魅力的なお誘いです」

 

 これは本当。これ程までの好条件で雇ってくれるヒーロー事務所なんて、そうそうないだろう。

 

「ですが、ごめんなさい。お断りします」

 

 だが、断ることにした。それは勧誘してきたのが轟炎司だからというのが一番の理由だが、もう一つ。

 

(一度の拒否で引き下がる程度の勧誘なのか、それともそうじゃないのか気になる)

 

 

 

 

 

 ーーーあと、たった一度の勧誘で頷いたら、何だか軽い女に見られそうで嫌だった。

 

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