フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆おそらくマックスくんの魔導院同期のあいだで交わされたことがあるであろう会話
アヌーク・フォン・クライスト同期聴講生「マックスのやつ “もったいなおばけ” のことになると早口になるのアレだよな……」
ミカくんちゃん「しっ。よしなよ」
◆『終焉と再始の神』は、転職の神?
『終焉と再始の神』の信仰を深めると、
当作中では、軍縮に伴って溢れる退役軍人をトンネル土木作業者に
===
◆前話
新生し再誕した
その過程でマリヤムの魂魄にも “もったいないおばけ” の手が入り、熟練度が整理・効率化され、その余剰で帝国語もマスターしたし、飛行技術その他も端緒は掴めているのだという。
そんな彼女の初仕事は、“もったいなおばけ教” 的な功徳を積むためにも、自らがかつて破壊してしまったハッシャーシュの本拠地集落の再建に決まったのだった。
晩冬から初春にかけて、私ことマックス・フォン・ミュンヒハウゼン魔導副伯は、異郷の地で多くの時間を過ごすこととなった。
仕事の一つは、私の婚約者である
「……これで、最後……っ」
「あ、マリヤム
「姉さん、お疲れ様。すっかり更地になったわね」
まあ、まだ今は、かつての本拠地であった廃墟を整地している段階だけれど。
ちなみにメインで働いているのは、新しく
と言っても、土木作業員らしく、ヘルメットなどの保護具を付けているのでなんだかシュールな感じに見えなくもない。
今ちょうど、全ての廃墟を壊し、瓦礫を片付け終わったところだ。
疲れからかべたーと伏せて黒曜のように光る蠍の背を晒している彼女は、ルゥルアさんの姉であり、つまり私の義理の姉に当たる。
ちなみに私からは「
一族最強の戦士でもあり今でこそ普通に生きているが、残念ながら先の東方征伐戦争において帝国魔導師の初見殺しにやられてその身を動死体に貶められていた。
だがそこで終わらなかったのがマリヤム女史の凄いところで、気合いで自我を取り戻し、なんとか自分の装備を奪い返して魔導師の塒から脱出してきたのだった。
……とはいえそれでも徐々に自我を保てる時間も少なくなり、帰巣本能と破壊指令が嚙み合って故郷の地を襲撃して廃墟にしてしまったのだが。
まあそうやって心ならずも愛する妹ルゥルアさんの勢力圏を脅かすこと数年。
いよいよルゥルアさんたちの集落も限界というところで、私がこの地に嫁いできたのだ。
当然私は
しかしながら英雄級のマリヤム女史の魂を惜しんだ
もちろんこの地の信仰を纏める真珠の巫女ルゥルアさんとしては、蘇りのようなことは教義に
とはいえ、動死体として氏族神の土地を侵した彼女の魂には穢れが纏わりついており、現世で功徳を積み直してそれを浄化する必要があった。将来的に
自らが廃墟にしてしまった集落の片付けはその第一歩。勤労奉仕による修行というわけだ。
ああ、その前にも、動死体の残骸の片づけ(※
「かにー!」 「かにー」 「かににっ!」
「おお、お前たちも手伝いありがとう……。助かったよ……」
そしてマリヤム女史は何も一人で作業していたわけではない。
私も鬼畜ではないので、巨蟹鬼セバスティアンヌが量産している子蟹たちを補助に付けてやっていたのだ。
脱皮の段階が進んで、蟹の身体から幼い巨鬼の上半身が生えている娘たちも居るが、彼女らは土木作業から戦闘教練の方にシフトしていくから数は疎らだ。
あとは素人作業で怪我をしてもしょうもないから、現場監督として土木建築系の知識を蓄えた
というわけで、彼女の頑張りによって、いよいよ本拠地の集落跡地は更地になったのであった。
だがこれでもまだ道半ば。
“
ここから再建を果たしてようやく完遂ということになる。
ただし再建の作業は、もっと人員を投入して速やかに造営していきたいから、マリヤム女史メインではなくなる。
そのため今後は私もフルでサポートするし、冬眠から目覚めたハッシャーシュの部族の若手たちにも働いてもらう。いわば賦役だね。
何より、
春にはここをある程度復興させて、周辺部族の者たちを呼んで盛大な結婚式をやってハッシャーシュの一族の復興を大々的にアピールしなければならないのだ。
そうすれば目ざとい商人たちのことだ、すぐに再建復興された拠点に集まってくるに違いない。
「集落の新設計は終わってるから、あとはこれに従って建てるだけ! 運河は
「ええ。それに新しい街のバザールのアーケードの設計の絢爛さが現実になるのも楽しみです! 部族の子の中に、あんな才能を持った子が居るとは意外でした」
「完全に私が提供したサンドボックス型の設計術式を内蔵した魔導具を使いこなしていましたものねー」*1
ルゥルアさんの言う通り、遊びながら街の仮想設計が出来る術式を魔導具化して提供したところ、冬眠から覚めたハッシャーシュの部族の子供たちが、それに熱中。*2
果樹園をどうこう、バザールを云々、街道と運河はこうで、神殿はこんな風に……と、かなり熱心に作り込んでくれたのだ。
上手い設計ができれば、それを実際に建築して自分たちの街にできるというので、彼ら彼女らも大張り切りだった。
魔導具上で仮想の街づくりをして遊ぶ中で、必然的に読み書きや算術にも精通していったしね。
「遊びや学びに集中できたのも、マックスさんが食糧を提供してくれて、労役をホムンクルスたちが負担してくれたからです。ありがとうございます」
「将来に向けての投資ですよ、ルゥルアさん。それに私のことを受け入れてもらうためのご機嫌取りという打算でもあります」
「それも全てひっくるめて、ですよ。それに街づくりの参考になるだろうと、
ああ、そういうこともあったなあ。
<空間遷移> の魔導と空飛ぶ絨毯の魔導具を組み合わせて、ここら一帯で一番大きな街であるバグダァドまで引率して視察に連れて行ったんだった。
とはいえ、復興にあたって必要になるものとかを買い込んだりするにはいずれ出向く必要もあったし、そのついでだ。
見識を広めることはとても大事だし、何より私自身が商都バグダァドを見たかったし……!
行き交う商人たちの熱量!
見知らぬ産品、作物、書物!
文化と文化のぶつかり合いで生まれる活気!
私の中の知的好奇心が大いに刺激される街だったとも。行ってよかった。
……あとは、都市特有の後ろ暗い事物も、当然のように存在した。
売春宿、歓楽街、阿片窟、闇市場……。
恐らくはここでも帝都で
ま、それは追々。
裏の世界に橋頭堡を築く必要が出た時で良いだろう。
普通に商会を表に構えれば暫くは事足りるだろうからね。
ああ、それと、まだイスラームに該当する一神教の興隆は遠いらしく、多数の信仰が入り乱れる状態だったから、我が神である “もったいないおばけ” の布教伝道の隙もありそうだった。
神のしもべとしての活動は、私のライフワークだから、これもそのうち腰を据えて行いたいところだ。
ルゥルアさんと話していると、整地のノルマを終えたマリヤム女史が、
「あ。マリヤム姉さん、どちらに?」
「んむ? セバスティアンヌ殿との手合わせだ」
「ああ、いつもの……」
実際のところ、この東の沙漠の地に来て一番充実しているのは、私の護衛である巨蟹鬼の
なにせ異郷の地であるがゆえに普段食べられないような食品が目白押しであるから、スティーの中の美食の欲も満たされるし。
そして何より、氏族神に目を掛けられるほどの英傑であるマリヤム女史と日常的に手合わせを行えるとくれば、これはもう巨鬼としては楽園に居るようなものだ。
土地も余っているから、数が増えた巨蟹鬼の幼生体(※単為生殖の産物。基部である蟹の背から巨鬼の上半身が生える程度には育っている)に対して、腰を据えて稽古をつけてやったりも出来ているし。
ちょっと別の刺激を受けたければ、商都バグダァドにまで買い食いがてら重力制御で飛んでいき、道場破りなり闘技場への飛び入りなりをすれば良いし。
あるいは他流試合でなくても、バグダァドの運河に居座る怪物退治だのといった、冒険者的な依頼にも事欠かないようだし。
あぁ、そういえば依頼で、手に負えない不死身の化け物が暴れているとかで行ってみると、改造された動死体が残置されたまま野生化(?)したヤツだったりした案件もあったなぁ。
スティー曰く “そこそこ歯応えがあった” そうだが、まあ無難に討伐して、私が証拠品押収のために残骸回収に
類似案件が他に無いか、私の方で魔導探査して見つけては、それらを全て潰して、回収できるものは回収したから、この地の動死体騒動は流石にもうひと段落と見ていいだろう。
回収した中には、過日にマリヤム女史が率いていたような
そして巨蟹鬼スティーはそうやって色々やってここ最近充実していたお陰か、また脱皮して一回り大きくなった。
一皮むけましたね(物理)。
武の腕前を伸ばしているのは
二叉の蠍尾それぞれに魔剣『
脈翅で自在に空を飛んで、三次元的に動くことで暗殺者としての動きを更に昇華したりしている。
まあ、アレだね。
巨蟹鬼
うむ、流石は我が神の御業の賜物!
「……あまり熱中しすぎて、また治療のためにマックスさんのお手を煩わせないようにしてくださいよ、姉さん」
「善処する……が、まあその時は頼む。義弟殿」
「ええ、私としても功徳の積み甲斐がありますのでご遠慮なく」
「マックスさん、あまり姉を甘やかさないでください!」
甘やかしているつもりはないんだけどね?
だってマリヤム女史が怪我をしたとすれば、それはうちのスティーの不手際のせいだろうし。
であればその失態を拭うのは主たる私の仕事だし、マリヤム女史はルゥルアさんの姉で、つまりは私の身内なんだから、怪我の治療くらいするさ。
こうやって、東の地でのアレコレは穏やかに過ぎていった。
では、穏やかではなかったのは、というと…………まあ、帝都は魔導院のアレやコレやだ。
私が東の地で得た、動死体を戦場で組織的に運用していた証拠となる、
それを見れば、多少魔導の腕前があれば、術式の癖から誰が作ったかも粗方見当がつく。
更に魔導院で詳細に解析すれば、製作者は容易に割れるだろう。
私はそれらの証拠となる動死体兵器の一部を、自らの所属学派にして、本件の下手人の所属学派でもあると思われる落日派に供出した。
「これヤバくないですか?」、と。
魔導副伯としての任務中に発見したのだから、本来は帝国政府に報告するべきスジであるのは百も承知。
私だっていつまでも隠しておけるものとは思っていないし、私が報告しなくてもそのうち誰かが見つけるだろうさ。
だから、必ず帝国政府にも報告を入れるつもりだ。
ただ、それは今じゃないってだけで。
具体的には、落日派の窓口をやってもらっているノヴァ教授には「いくら誤魔化せても春までですよ」と通告している。
何故かというと春になったら、私の上司であるアグリッピナ・フォン・ウビオルム魔導宮中伯が、領地視察から戻ってきて職務に復帰する見込みだからね。いやまあ夏になるかもしれんけども。
ともあれ、タイムリミットはそこだ。
当然、アグリッピナ女史は、彼女が不在中のアレコレについての詳細な報告を私に求めるだろうし、私も彼女に対して隠し事なんていう叛意を疑われかねないリスキーなことをするつもりもないから、包み隠さず報告するつもりだ。
っていうか寧ろ積極的にこんな厄介事は投げたい。
だって上司の存在理由ってソレだろう?
だから、所属学派に義理立てするにしても、春までが限界だ。
今でも本来は、魔導宮中伯の不在中の上長にあたる皇帝陛下に報告すべきところを延期してるんだもの。
これ以上危ない橋を渡るのは無理だねー。
だから春までに何とか落日派の被害を最小限に留めるシナリオを用意しといてくださいまし、ということなのよ。
あと個人的に、本件の下手人と目される屍戯卿に思うところがあって、事件隠匿のモチベーションも低いんだよね………。
いやね、魔導の腕前とか動死体製作の技量とか、信仰者としての姿勢とか、門下への教育の態度とか、見習いたいところは多いし、尊敬もしてるんだけど………。
こう、思想がっ、思想が決定的に相容れなくってね………っ!
冬眠から目覚めたハッシャーシュの部族の子供たちとマックスくんの交流とかはスキップ! まあでも大体こんな感じでした ↓。
ガキ大将的な伏蠍人「俺たちの白姫さまをとるなーー!!」
子供たち「「「 とるなーー!! 」」」
ガキ大将的な伏蠍人「余所者には渡さないぞーー!!」
子供たち「「「 わたさないぞーー!! 」」」
(触肢の蠍鋏をカチカチカチカチと鳴らして威嚇する)
マックスくん「ほー、そんなこと言っていいのかなぁ……?」
ガキ大将的な伏蠍人「なにィ……?」
マックスくん「これを見るがいい! 新鮮な果物盛り合わせ、蜂蜜練乳掛けだ! 私が婿入りした暁には毎日これを食べられるようになるぞ~~~?」
ガキ大将的な伏蠍人&子供たち「「「「 わぁい!! 婿様ありがとう!! 」」」」