フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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魔法チート転生者(マックス君)ナチュラルチートエルフ(アグリッピナ氏)の性能差についてなぜかしっくりくる喩えを思いついてしまったので置いておきます。

宇 宙 戦 艦(内蔵魔導炉直列励起超過駆動マックス君)
マスターチーフ(戦闘態勢アグリッピナ氏)

出力は宇宙戦艦が上でも、勝つのはマスターチーフだろうという問答無用の説得力よ。あとアグリッピナ氏だけじゃなくて極まった魔導師は大体マスターチーフ級だと思うので、魔法チート転生者も頑張って魔導の技量を極めようね。素質はあるんだからさ。

◆前話
アグリッピナ氏:わたしにいいかんがえがある
 


再受験 編
5/n 古本市-1(腹を割って話そう)


 

 ヘルガ嬢を眠りに就かせてからはや十数日。

 夏草の香りが強くなってきた今日この頃。

 

 私たちは帝都に辿り着いて――― いなかった。

 

 

 何故かというと空間拡張されて下手な家より快適な馬車を持っているのに “野宿とか以ての外” というアグリッピナ女史が、雨が降っては旅籠への滞在を伸ばし、風が吹いては外に出ず、遅々として旅程が進まなかったからだ。

 

 私たちだけ先に行ければ良かったのだが、ヘルガ嬢の世話を押し付けていくつもりか、と言われれば残らざるを得ない。

 エーリヒ君はそもそもアグリッピナ氏とエリザ嬢の世話で手いっぱいだし、半妖精のヘルガ嬢を魔導師(マギア)であるアグリッピナ氏の管轄から離すわけにもいかないから、必然、ヘルガ嬢の世話は私とターニャの担当となった。

 施術したのも私だから、まあ割り当てとしては妥当だろう。魔法の術式のおかげで大体は見てるだけでいいし、看病もそこまで手間ではない。

 

 

 ちなみに私たちが乗る馬車については、魔法で自前のものを作った。

 さすがにアグリッピナ氏の豪華魔導拡張式6LDK馬車にも、私たち三人が追加で乗るスペースは……無いわけではないが、手狭になるのをアグリッピナ氏が許さなかったからな。

 

 だからその辺の枯れ木とか石とか、街道脇に打ち捨てられていた割れた車輪やら折れた車軸やらを材料に魔法でリサイクルして、馬車を1台仕立て上げたのだ。

 ちなみに馬は用意できなかったので、虚空の箱庭のフライホイールから動力を取り出して伝達することで自走させている。

 車軸と車体の間を斥力術式で浮かせているから振動も来なくて快適にできたのは我ながら良いアイディアだった。魔法サスペンションというわけだ。

 

 

 でまあ、ヘルガ嬢の看護のための他にも、私たちがアグリッピナ女史に同行するのは理由がある。

 

 なんとアグリッピナ女史が、私たち―― 私とターニャ、そしていまだに眠るヘルガ―― の臣籍を、貴族の末席に用意してくれるように根回ししてくださっているのだという。

 だからその結果が出て、身分証となる割符が届いてから帝都に向かった方が良い、と。

 

 いや怖いわ。

 ……ここまでしてくれる意味が分からんよな?

 

 しかも私とターニャの魔導院への紹介状も書いてくれるという。

 そんなに便宜を図ってくれる理由がわからなさ過ぎて怖い。

 

 半端なく怖い……。

 

 死刑囚は死刑の前日に好きなものを食べられるとか聞いたことがあるが、そういう類の恐怖を感じる。

 上げて落とす気なんでしょう?(震え声)

 

 アグリッピナ氏曰く、居ないはずの人間(戸籍のない人間)を、居なくなってしまったけど(もはや戸籍だけ)居ることになっている人間(しかない人間)のところに嵌めこむだけの簡単なお仕事だそうだけど、そんな簡単に経歴ロンダリング出来てたまるかってんだ。

 

 あっ、自分は指示するだけだから簡単とかそういう……?

 それならばそのせいでどこかで死にそうに忙しい目に遭っているだろう誰かの健勝を祈っておこう。

 

 とはいえ実際アグリッピナ氏も結構な枚数の書簡を書いては、それを蝶に変成させて何処かに飛ばして頻繁にやり取りしているようだし、彼女自身の手間も相応にかかっているようではある。

 となると、ますますそれだけの労力を私とターニャ、そしてヘルガ嬢にかける理由が分からない。いや書簡の内訳にはアグリッピナ氏自身の分やエリザちゃんやエーリヒ君の分もあるのかも知れないけどさ。

 それにしたって、アグリッピナ氏はめんどくさがりだってエーリヒ君から聞いたんだがな……。

 

 

 ホントに代わりに何を要求されるんだか……。と、私は日々、戦々恐々としている。

 

 

 過去の不義理をあらかた清算したと思ったら、その次の瞬間からデカすぎる恩義で押しつぶそうとしてくるのはやめてくれ。

 私の中の義理堅い異世界人の魂と邪神信仰者の魂がまたうるさくなる……。

 

 ――― あと、あんまり考えないようにしていたが、長命種(メトシェラ)が嬉々として労を惜しまず何か始めた時って、だいたい誰かに嫌がらせするとき……。

 

 うん。

 やはり考えないようにしておこう。

 その策動に私が組み込まれてるなんてことはないはずだ、きっと。おそらく。たぶん。

 

 

 とはいえ、このまま勝手に御恩が積み上がっていくのが怖すぎたので、“何かできることはないか”、と尋ねてみたある日のこと。

 アグリッピナ氏が滞在する、街一番の旅籠の最上級室にて。

 

 

「そうねえ。じゃあ何ができるか教えてくれるかしら」

 

 

 なんか急に面接が始まった件について。

 

 ……ふむ、エーリヒ君も居るし、ここらである程度腹を割って話しておくか。

 多分だが、私やターニャの紹介状を書くのにも必要なのだろうし、これも良い機会か。

 

 

 

§

 

 

 

「何ができるか、というと……そうですね」

 

 エーリヒは丁稚らしく黒茶を淹れて傍に控えて、唐突に始まったマックスとアグリッピナの面接を聞いていた。

 

 ヘルガ嬢は別の部屋に寝かせてあり、このマックスという魔法使いの妹? 娘? だとかいうターニャという娘が看病をしている。

 ときどきなんというか美術品を眺めるような目でこちらを見てくる―― 養殖モノ(マックス/魔法整形済み)もいいけど天然モノもやはり良い、とか言っていた―― 少女で、なんとこのターニャも半妖精なのだという。

 しかも既に自分の出自に由来する魔法を使いこなせ、宮廷語などの一般教養も十分だから、マスター・アグリッピナ曰く、帝都に着けば直ぐにでも魔導院に入れるだろうとのことだ。

 

 つまりターニャはエリザの先輩に当たるといえよう。

 見た目の年もエリザより少し上、私よりは少し下くらいだ。10歳くらいか。

 同じ半妖精で年恰好も近いせいか、この数日でエリザとターニャの2人はかなり仲良くなったようだ。

 

 時折2人でお互いの兄自慢をしているのを、面映(おもは)ゆい思いで聞くことにもなった。

 だがターニャちゃんが、マックスのことを “おかあさん” と呼ぶのは何なんだ?

 実は女だとか……いやないな。骨格が男のそれだ。うぅむ、謎だ。

 

 エリザも人見知りするかと思ったが、お友達が増えて兄としても一安心だ。

 ……などと言うと、昔からお友達いっぱいいたもん! と可愛らしく頬を膨らませるエリザまじ天使。

 はいはい、暖炉の火トカゲ(サラマンダ)に、夜のトイレについてきてくれる真っ白くて真っ黒い子(スヴァルト・アールヴ)に……これって妖精のことだったんだなあ。

 お兄ちゃんはエリザには人間のお友達も増やしてほしいよ。

 

 もしもヘルガ嬢が目覚めれば、3人姉妹のようになるのではなかろうか。

 そうなればいいな、とそう思う。

 

 

 その可愛い私の天使、エリザは、この部屋の目の届く範囲で宮廷語の書き取りの自習中だ。

 日ごとに上達していくさまを見て、我が妹は天才に違いないと思っている。間違いない。

 

 

 などと兄バカなことを考えていると、マックスが考えをまとめたのか話し出した。

 

「私ができること……というと、頭が吹き飛んでも待機させていた再生術式の遅延発動で復活出来たり、虚空への空間遷移が出来たりとかですが、結局は魔力頼りですからね。でも魔力だけは自信があります」

 

 は? 十分化け物なんだが?

 頭吹き飛ばしても死なないのか……!?(戦慄)

 

「それはその身体のおかげ?」

 

「ええ。良い拾いものでした。ああ、その点でも貴女には感謝を、Mgr(マギア).スタール。貴女がこいつ(この肉体)を棄ててくれたお陰で、私は再誕できた」

 

 んんっ?

 え、捨てられたって、アグリッピナ氏の元カレか何かか!?

 コレ(アグリッピナ氏)と付き合ったことがあるとかなんて勇者なんだ……!

 

「丁稚が何か勘違いしてるみたいだから言っておくけど、違うからね? こいつの肉体の件はむしろ丁稚のあんたに関係あるのよ」

 

「ええ。エーリヒ君とエリザちゃんには、その節は大変なご迷惑を」

 

 ―― 誠に申し訳なかった、と頭を下げるマックス。

 

 そう言われても、全く心当たりはないのだが……。

 

「誘拐したり殺そうとしたり、まったくもって汗顔の至りで」

 

 ゆう、かい?

 

 その言葉で思い当たるのは、1つ。

 あの外道の人拐いの魔法使いの男だ。

 

 ……だが、あの男は黒髪の青年だったはず。

 こんな風な金髪で、海のように深い青の瞳はしていなかった。

 あとマックスは歳も私より少し上程度にしか見えないし、もし本当にあの人拐いだというなら若返って姿も変えているということか?

 

 これでは同一人物には思えないし、もっと言えば、同一人物だったなら形を変えてもエリザは気づきそうなものだが。

 

「気にすることはないんじゃない? 中身は入れ替わってるんでしょ」

 

 入れ替わっている? 中身が?

 

「ええまあ。でもこういう誠意は大事ですしね。ほら、身内の不始末を謝るような気持ちですよ」

 

「いやその(たと)えは分からないけど」

 

長命種(メトシェラ)の皆さまはそのようなことなさらなさそうですものね。二重の意味で」

 

 

 なんだ、つまり。

 あの黒髪の誘拐犯の男は……アグリッピナ氏の魔法で異空間に送られたのだかして綺麗さっぱり消えたはずのその男は。

 その中身の魂が入れ替わって、見た目も変えて、若返って、いま目の前に座って黒茶を飲んでいる、と?

 

 アグリッピナ氏が噓を言っているとは思えないが、本当にそんなことがあり得るのか……?

 

 ―― っていうかそれってもはや別人なのでは。エーリヒは(いぶか)しんだ。

 

「アンタがあの霜の妖精を助けたのも、その “身内の不始末を謝る心持ちから” ということで良いのかしら」

 

「まあそうなりますね。私の信念(リサイクル推進)の問題もありますが。そしてどうやらこの肉体に絡みつく因果は、つくづくあなた方と縁があるようで」

 

「喜んだらいいんじゃない?」

 

「ええ誠に喜ばしいことです、Mgr(マギア).スタール」

 

 ちっともそうは思っていない渋面で黒茶をすするマックス。

 

 ん、んん~~、情報量が多すぎてちょっと整理が追いつかない!

 というかあの誘拐未遂事件からこっち、いろんなことがありすぎてあの誘拐犯の行く末とか考えたこともなかったわ……。

 どうせ死んでると思ってたし。

 

「まあこちらとしてもヘルガ嬢を助けるのに尽力しましたから、エーリヒ君に借りは返したと思っておりますよ。これからは改めて善き関係を築ければと」

 

「それはご自由に。あ、そういえばうちの丁稚の鎧の大穴を直したときに術式付与もしていたでしょう」

 

「ええ。それもまあ、私の出来ることの一つですね。リサイクルは得意なのですよ」

 

 ―― あとは馬車を作ったり、人造人間(ホムンクルス)を造ったり、魔素遮断布を織ったり……。

 指折り数えるマックスがさっき言った通り、彼はエーリヒの鎧を修復し、さらに術式効果まで付けてくれたのだ。

 

 十数日前、ヘルガを眠らせようと抱きしめた時に、冷気によって心臓を凍らされてさらに凍った心臓を起点に氷柱が背中をつき破って飛びだしたため、それによりエーリヒの鎧は大きく破損してしまっていた。

 荘の親方が私のために作ってくれた逸品だったのに、何年もお金をためて仕立てて貰ったのに……と落ち込む私をエリザが慰めてくれたりもした。

 

 そしてマックスも、自分の策のせいだからと言って、修復を請け負ってくれたのだ。

 

 専門の職人ではないから、と謙遜しつつも、どこからか取り出した何かの皮をあっという間に革に加工し、魔法によって元の鎧に融合。

 穴を塞いで見せたのだ。

 

 しかもその際に、ささやかながら魔力回復支援効果と、疲労回復支援効果を付けてくれたのだという。

 オートリジェネは腐らない特性! と密かに喜んだ。いや、顔に出ていたかもしれない。動きにも出ていたかも。

 でも革の原料が何の動物か聞いたときに答えを濁されたのは不安だ……。

 

 と、とにかく、数値でカチッと出るわけではないが、継戦能力が向上したのは間違いないだろう。

 修復部分は魔法で完全に元の鎧と融合しているから強度的には問題ないようだし、形も元の鎧をなぞったみたいに修復されているように思う。

 念のためどこかで鎧職人に見せておきたいのは確かだけど。

 

 

「あと若返ってるってことは、そういう術式も持ってるんでしょう?」

 

 おっと、マックスの面接は続いていたか。

 

「はい、術式も運用できますが、それを固着させた若返りの魔法薬も調合できますよ」

 

 若返りっ!?

 ヒト種(メンシュ)が種族変更せずに何百年も延命する方法は見つかっていなかったのでは?

 いや延命と若返りは違うカテゴリなのかも。

 

「じゃあ幾つか作っておいて。あと気が向いたら術式の助言(レビュー)してあげるわ」

 

「分かりました、助かります。ご自分でお使いになるわけでもなさそうですが、どなたかに贈答品としてお贈りで?」

 

「あんたたちの臣籍手配の関係でね。予想以上に先方が早く動いてくれてるからご褒美にでも、と思ったのよ」

 

「なるほど。書面上だけとはいえ一門に連なるのですから、私も力を入れて作りましょう」

 

「ほどほどでいいわよ、そんなの」

 

 その後、ターニャちゃんに交代したりもして面接は続いた……。

 ターニャちゃんもえげつない魔法を使えるのな……。

 

 これでマックスもターニャちゃんもまだ正規の魔導師ではないというのだから、魔導院というのはどんな魔窟だというのだ……。

 近づく帝都の魔導院での丁稚生活に一抹の不安を覚えたエーリヒであった。

 




 
ヘルガの核(魔力効率UPアイテム)が手に入ってないけど、その代わりに鎧に常時バフ(魔力・スタミナ・負傷の自動回復効果(小))が付きました。エーリヒ君に、戦い続ける歓びを……。

時系列的には、原作小説3巻の冒頭に入ります。エーリヒ君12歳の夏です。
まだまだ帝都は遠いぜ……。

◆魔素遮断素材
アグリッピナ氏は20年もフィールドワークで魔導院から離れていたが、帰参に当たって情報収集を行い、落日派の論文に端を発する閉鎖循環魔導炉の構想が行き詰っていることと、魔素遮断素材が帝国の将来を左右するだろうこの研究課題において重要な役割を果たすだろうことを読み解いた。
高値でマックス君を売り飛ばせそうな買い手が見つかりそうで何より。
払暁派ライゼニッツ閥と同等の五大派閥たる落日派ベヒトルスハイム閥がいま一番求める基幹技術であろう魔素遮断素材をもたらす魔法使いを推薦したとなれば、返礼の手紙の一つ程度は固いだろう。しかも閉鎖循環魔導炉のような実践的な課題に実学派閥である払暁派が関わらないことはないだろうから、結果的に払暁派にも恩が売れる。いいことづくめだ。
そしてそのときの我が師の心中を思い計ればもう……愉悦っ!
(なおのちのちこの閉鎖循環魔導炉の実用化計画を魔導宮中伯の立場から率いる羽目になるとは、このときのアグリッピナ氏には思いもよらぬことである)

◆Mgr.(マギア)
Dr.(ドクター)のノリで付けてみたマギアへの尊称。マネージャーとは読まない。独自設定。

◆魔導式の美しさ
今後例えば機械式の魔導補助デバイスなどが発展すれば、魔導術式の美しさよりも補助デバイスのマシンパワーが重要視されるような時代が来るかもしれない。マシンパワーのゴリ押しもそれはそれで一つの解ではある。ただ術式の洗練と言うのは今後も重大なファクターであることに変わりはないだろう。(ちなみにターニャはプロット時点では、魔法チートが生み出した人造妖精として、魔導術式を解析し、あるいは効率化するためのシンギュラリティ越えの学習型AIのような存在にする予定だった(光波と電子の妖精なのはその名残)。転生者に魔法チートが吐き出す術式が理解できないなら、理解できる存在を魔法チートで作ればいいじゃない、という考えだった。)
 
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