フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆前話
雙尾蠍のマリヤム「一族繁栄のためにも私も子供が欲しいのだが……ほら、周辺部族もハッシャーシュからの嫁や婿を求めているし、それを考えると族長家系の子供は多い方がいいだろう? それも優秀な子が」(完璧な理論武装だな)
真珠蠍の巫女ルゥルア「まさか妹の私が妊娠している隙にその夫を誘惑しようなんて考えてませんよね?」(女の勘、蟲の知らせ、男にデレデレする姉を見たくない妹心)
雙尾蠍のマリヤム「なぜバレ……はっ!?」
真珠蠍の巫女ルゥルア「語るに落ちるとはこのこと……。それより戦士団の訓練と掌握をお願いしますね、ね・え・さ・ん!」


真珠蠍の巫女ルゥルア「……しかしまあ一理あるのですよねえ。族長家系で生き残っているの、私とマリヤム姉さんだけですし。一方で、血縁による同盟の保証を求める部族の数は十や二十ではききませんし。嫁取り婿取りによる婚姻外交は次世代に先延ばしということにしていますが、いくら多産のギルタブルルとはいえ私が産むだけで賄うのはいかにも厳しい……。数人はハシシ=ミュンヒハウゼン家の子として帝国に出さなければならないとなると、尚更です。
 それに言っては何ですが、私たちは血族として以上に、個人としても価値ある血ですからね。方や神の寵愛篤き白子(アルビノ)の巫女で、方や姉は強烈な先祖返り(ということになっている)を果たした天才武人。その子供……しかも帝国の天才魔導師の血を引くとなれば、単にハッシャーシュの血族というだけに留まらない、優秀な個人としての価値も期待できると見られるでしょうし。引く手あまたとはこのことです。
 そう考えると、ハッシャーシュの族長筋の子供が増えるのは歓迎ではあるのですが……。
 でも流石に、まだ自分の感情が納得しません。ああ、蠍とはやはり独占欲が強く嫉妬深いものなのですね……」

なお出産(十つ仔)を経験したらキツ過ぎたので姉の側室入り肯定派の方に心の天秤がググッと動いてしまう模様。

 


27/n 穏やかなる日々-3(如何物食い(ザ・グルメ) 巨蟹鬼のセバスティアンヌの場合)

 

 乾燥して草木もまばらな沙漠地帯。

 

 その中を幾何学的な青が流れる。

 魔法の水源から溢れた水による運河だ。*1

 

 その運河が不自然に大きく波立つ。

 まるで何か大きなものが流れを遡って来たかのように。

 

 水面を行く船が揺れ、ぶつかり、転覆する。

 上に載っていた水夫や積み荷が運河に落ちる。悲鳴と怒号。そして混乱と恐慌。

 転覆した船の底には、何か大きく硬いもので削られたかのような傷跡があった。

 

 その原因となったであろう巨大な黒い影が、運河をさらに遡っていく。

 

 

海大鰐(シークロコダイル)だ!!」 「デカイぞ!?」 「ちくしょう、積荷が!」 「いいから逃げろ!! 波にさらわれるぞ!?」

 

 

 運河いっぱいはありそうな巨体によって押し出された水が、周囲を洗い流す。

 運河の脇に立つ倉庫の間を溢れた水が駆け抜ける。乾物や穀物の倉庫を持つ商人の嘆きの声がした。

 

 

 運河を征く巨体の持ち主は、沿岸域に棲む亜竜である海大鰐(シークロコダイル)だ。

 それは鰐竜(わにりゅう)大入江鰐(オオイリエワニ)などとも呼ばれる肉食のモンスター。*2

 

 大きな顎とずらりと生えそろった牙。そのひと噛みは船など簡単に両断する。

 長大な尾をくねらせ、ヒレを使ってすさまじい速度で泳ぎ、岩よりも堅い鱗の鎧を持つ。

 沿岸域の頂点捕食者。

 

 特筆すべきは、その四肢がオールのような(ヒレ)から、陸上動物のようなしっかりとした脚へと、ほぼ瞬時に変態可能な生態をしていることだろうか。

 その特異な生態により、海から河、河から陸、陸からまた別の河、そして河口を経由して離れた沿岸域へと分布を広げることが可能となっている。

 

 そして巨大な怪物の例に漏れず、魔力の多い場所を好む性質がある。

 

 恐らくこの海大鰐(シークロコダイル)が遡上してきたのは、数日前に降った雨が原因だろう。

 珍しく沙漠に降った雨は、新型魔導炉の試験に伴い大地に染みた高濃度の魔素を取り込みながら運河へと流れた。

 海まで流れた魔素の()()を、海大鰐(シークロコダイル)は己の鋭敏な嗅覚で捉えたに違いない。

 

 好奇心旺盛で若く活力にあふれた個体が、そうやって魔素に惹かれて生存地域を開拓していくことは、この海大鰐(シークロコダイル)の特徴的な生態の一つでもあった。

 

 そしてこの巨大な海大鰐(シークロコダイル)は、大河を遡り、そこに繋げられた運河をさらに遡ってやってきたのだ。

 その途中で多くの船を沈めながら。

 

 

 もちろん、それに巻き込まれる人間たちはたまったものではない。

 

 

 

 

 なので何とかしようと動くわけだ。

 

 泡を食った水夫の先導で現れたのは、非常に巨大な女の鬼だった。

 その女戦士は、そこらの倉庫の屋根と同じくらいの背丈があった。*3

 

 巨蟹鬼。

 クレープス・オーガ。

 

 大蟹の下半身を持つ、戦の鬼。

 

 彼女の下半身に備えられたハサミは二対四本の神銀(ミスタリレ)製。

 歩脚は四本。その後ろには平たいオールのような遊泳脚。

 

 その上に乗っかって生えるのは、蒼い肌に牙と角を持つ美しい巨鬼(オーガ)の雌性体の上半身。丸太のように太く長い鉄棍を携えている── ヒト種にとっては丸太のようでも彼女にとっては扱いやすい太さの普通の鉄棍でしかないが

 その身体は極上の戦士のものであり、均整がとれており、それでいて女性的な主張が激しかった。巨蟹の脚による大きな一歩に従って、強固な靱帯で支えられた大きな双丘がパツンと揺れる。

 

 彼女が纏う特大の日除けの外套の背中には帝国風の貴族の紋章が染め抜かれている。

 隧道鉄路上(ずいどうてつろじょう) 大蠍支持(おおさそりしじ) 転輪飾盾(てんりんかざりたて)

 ライン三重帝国の隧道方伯/魔導副伯であるハシシ=ミュンヒハウゼン家の者であることを示す紋章だ。

 

 それはこの砂塵の地では、運河をもたらした水の遣いの象徴であり、そしてその青を守護する者の証でもあった。

 

 

「姐さん!」 「姐さん来た!」 「これで勝つる」 「スーティーさまー!!」

 

 

 彼女こそが、ハシシ=ミュンヒハウゼン家の近侍護衛。

 ラーン部族の戦士、“津波の” セバスティアンヌだ!

 

 

「待タセタナ!」

 

 

 運河脇の通りから押っ取り刀で駆け付けた巨蟹鬼(クレープスオーガ)セバスティアンヌを、水夫たちの声援が迎える。

 異国出身ゆえにカタコトだが、それを以って侮るような不心得者はいるはずもなく。

 それに彼女は既に実績がある。運河の水により土の中から目覚めた巨大ハイギョや、巨大カメの討伐を成し遂げたという実績が。*4

 

「オオオオオオッ!!」

 

 見栄をきって蟹の脚を(たわ)めて大跳躍。

 

 セバスティアンヌの行く先は、運河を遡上する海大鰐(シークロコダイル)の直上。

 尾の方から飛びつき、押さえ込み、厄介な顎の射程に入らないようにするつもりなのだ。

 

 

『GWWWOOOW!!』

 

「ふっ、流石に対飛竜の型(たいくうこうげき)くらい持っているか!」

 

 だがそれを海大鰐は、身体をくねらせ、尾を大きく持ち上げることによって迎撃せんとする。

 飛竜や怪鳥といった空から来る捕食者は、海大鰐にとっても脅威である。

 それがゆえに、空中からの襲撃者への用意もあるのだ。

 

 頭を沈め尾を出し、さらに前鰭を前脚に変態させ水底をしっかりと掴む。それを支えに海大鰐は力の限り尾を振るった。

 水の(くびき)から開放された太く長い尾が、巨体を泳がせるパワーを打撃力に変換し、音速で振るわれる。

 

 だがそれに対する巨蟹鬼セバスティアンヌも只者ではない。

 

 

「力場展開、足爪固定(アイゼンロック)。一本釣りにしてやろう!!」

 

 

 空中に物理障壁の足場を作り出し、踏ん張れるように整える。

 歩脚をその物理障壁を砕かんばかりに叩きつけ、尾の衝撃に備える。

 

 セバスティアンヌから見ても巨大な鰐の尾が迫る。

 

 速い。

 だが、それでも、セバスティアンヌにとっては速すぎはしない。

 

 あの金の髪の魔法戦士のように、意識の隙間を掻い潜るでもない、単純な魔物としての暴力。

 それは確かに脅威ではあるのだろう、ただの人類種であれば。

 

 だが、それ以上の力を持っていれば、それは脅威では無いのだ。

 

 〈剛細一致〉の境地。

 

 迫る海大鰐の尾を、巨蟹鬼の四つの鉗脚(ハサミ)で捕らえる。

 衝撃が足場にしていた物理障壁にまで伝わり、砕けた。

 だが、海大鰐の尾の勢いは全て吸収しきった。

 

 一瞬の静止。

 そして重力に従い、掴んだ鰐の尾を支点に落ちながら回る。

 この砂漠で出会った仙猫娘*5直伝の、世界と一体化するような力の遣い方を意識して。

 

 同時に、蟹の眼と鬼の眼で周囲を把握。

 

(あの広場が丁度いいな)

 

 目標地点発見。

 物理障壁の足場を再展開。

 

 そして、四つの鉗脚(ハサミ)に捕まえたままの尾を離さないようにして、さらにオーガの腕に持つ鉄棍でも後押ししてやって、投げっぱなしの一本背負い!

 

「飛んでいけ!!」

 

『GWOOWAAARR?!?!』 

 

 

 運河から引き抜かれた海大鰐が、倉庫群の上を飛んでいく。

 頭上を過ぎる非現実的な光景に、逃げていた人々は口をぽかんと開けて足を止めた。

 

 投げられた海大鰐の飛んでいく先。

 そこにあったのは、市民の憩いの広場であった。

 

 ズドォォオ、と生物が立てるとは思えないような音とともに、広場中央に置かれた噴水を粉砕しながら、海大鰐が落着。

 蜘蛛の子を散らすように、広場にいた人間たちが逃げていく。

 

 

 海大鰐はといえば、あれだけ激しく叩きつけられたにもかかわらず、無傷であった。よほどに鱗が硬く、身体も頑強なのだろう。

 むしろ怒りで元気いっぱいで、鰭を脚に変態させ、しっかりと大地を踏みしめていた。

 衝撃によって一瞬ふらつきはしたが、少し頭を振れば正気に戻ったようだ。再生能力も高いのかもしれない。

 

 あの大蟹は何処に? と海大鰐は己を投げた下手人を探す。

 

「はぁああああああっ!!」

 

 直後にその下手人、巨蟹鬼セバスティアンヌが降ってきた。

 転輪飾盾(てんりんかざりたて)の紋章の外套をはためかせて落ちてくる。

 

 

 ─── バカめ、正面から来るなら噛み砕いてくれる!

 

 仕返しに燃える海大鰐は四肢に力をみなぎらせ跳躍。

 さらに尾を螺旋状に撓め、バネのように地面を押し叩いて加速。

 ずらりと歯が生えそろう大顎を開き、化け蟹を喰わんとする。

 

 

 だがそれは叶わない。

 

 

「ええい、無駄に暴れるな! 味が落ちるだろうが!!」

 

 

 セバスティアンヌの四つの鉗脚(ハサミ)が、上下から挟み込もうとする海大鰐の顎を中から支えるように押さえた。

 咬合筋は海大鰐の持つ筋肉の中でも一番の力を発揮する。

 だが、それでもなお、強化魔導をみなぎらせた巨蟹鬼の開祖の力には勝てなかったのだ。

 

 そして顎が閉じないようにハサミで押さえたセバスティアンヌの目の前には、柔らかな肉を晒す海大鰐の口内(きゅうしょ)が。鱗は硬くても、流石に口の中は柔らかい。

 そして巨蟹鬼には蟹のハサミの他にもオーガの腕があり、その腕に持った鉄棍で狙いを定めていた。

 

 すなわち、海大鰐の喉奥から尻尾の先まで走る脊髄を───。

 

 

「秘技、神経締め!」

 

『GUWGYAAAA!!??!?』

 

 

 セバスティアンヌが手に持つ鉄棍、伸縮自在の魔導武器である〈如意鉄棍〉が突きと同時に一気に伸び、海大鰐の喉奥へと突き刺さる。

 そしてそのまま柔らかな喉奥の粘膜を貫通し、頭骨と頚椎の繋ぎ目から脊髄を一気に貫いた!

 

 背骨に沿うように伸びた如意鉄棍は、尾の先まで神経を一気に潰した。そうされては、流石にもう再生はできない。

 海大鰐の身体が何度か跳ねて噴水の瓦礫を蹴散らし、次の瞬間、どぉ、と音を立てて横たわった。

 

 決着である。

 

 

§

 

 

 

「急いで血抜きだ! 早くしないと味が落ちる、熱を冷まさねばならん」

 

「「「 はぁい、ただいまー! 」」」

 

 最後に噛み付こうと跳び上がるなど、まったく無駄なことを……と、セバスティアンヌは内心で悪態をついた。

 彼女にとって、巨大なモンスターとの戦いは、美食欲を満たすための狩りに他ならない。

 

 とはいえ、彼女が自分で料理するわけではない。

 それはプロに任せる方が上手くいくことをセバスティアンヌは知っている。

 

 だからこそ、戦いの後すぐに、そこらの倉庫や店舗の影から、人造人間(ホムンクルス)たちがわらわらと湧いてきた。

 彼ら彼女らは、巨蟹鬼セバスティアンヌの専属の解体、下処理、調理班だ。

 なお巨蟹鬼セバスティアンヌの主であるマックス何某から付けられた人員であるこのホムンクルスたちは、セバスティアンヌが倒した生物の貴重なサンプルを回収する役目も担っている。

 

 魔導刃で海大鰐の首を裂き放血する者。

 まだ動いている心臓の拍動に合わせて溢れ出る血液を回収する者。

 腹を裂き内臓を取り出しつつ冷却魔導で肉を冷やす者。

 より効率的に冷やせるように血管に冷えた生理食塩水を注入しつつ、心臓を念動力で拍動させる者。

 取り出された内臓の内容物や寄生虫を記録する学術担当の者。

 より効率的に解体できるように海大鰐を吊るせるようなヤグラを組み立てる者。

 複数人で協力して〈見えざる手〉の魔導を展開し、そのヤグラに海大鰐を吊るす者たち。

 皮と肉の間に切れ目を入れて複数人で剥がしていく者。

 取り出され、記録も終わった内臓を適当な大きさに切り分ける者。

 大きな熱湯の球を浮かべ、切り分けられた内臓を洗って血脂を落とす者。

 

 あっという間に、海大鰐の死体は、『肉』になっていく。

 

「セバスティアンヌ様、肉は幾らか熟成が必要ですが、内臓系は直ぐにでも調理できます。シンプルに焼いても良いですが、レバーペーストに、腸の煮込み、はたまた脳のシャーベットまで」

 

「であるか。それは良い、良いな。少し暴れて小腹も空いた。ぜひ頼む。フルコースで、豪勢に、な」

 

「は。畏まりました。……どうやらちょうどマックス様もお手隙の御様子。ご相伴していただいても?」

 

「主殿が? もちろん構わないとも」

 

「ではそのようにいたします」

 

 

 広場に立ち込めていた血なまぐさい臭いは、下処理が進むほどに段々と薄れ、不快さが失せていく。

 それどころか、下処理のために塗り込められる香草類や、酒や酢の匂いによって、どうにも食欲をそそるように移り変わっていく。

 

 周りにはおこぼれに期待してか、人々が集まってきていた。

 あの海大鰐のスープの一杯くらいは飲めるかもしれない、と期待して。

 

 とはいえセバスティアンヌも大食漢であるので、そうそう余りは出ないのだが。

 

 まあそれだと吝嗇(りんしょく)の誹りを免れないので、その代わりにマックス何某が振る舞い酒や料理の下げ渡しなんかをするというのが、大物捕りの後の一連の流れになっている。

 今回も恐らくそうなるだろう。

 

 

 

 

 

 ほどなくして、〈空間遷移〉の魔導によってマックス何某が現れた。

 

「スティー、今回もすごいものを仕留めたようだね……って、それは?」

 

海大鰐(シークロコダイル)の脳のシャーベットだ。レモンを絞ると良い具合だが、ガツンと辛子を利かせても良いな」

 

「……そうかい。まあ、美味しいようなら良いんだ。絵面は酷いが」

 

 なにせ大きな鰐の凍った頭を開いて脳に匙を突っ込む巨蟹鬼の図だ。ば、蛮族……!

 満面の笑みで食べているのが逆に恐ろしい。

 

「珍味だぞ? まあ無理に分ける気もないが」

 

「お気遣いなく。ああ、味変するのに私のキノコが入用なら声をかけてくれ」

 

「ふぅむ、それなら……あとで『薬指』を分けてもらおうか。これにも合うと思うし、そろそろなくなりそうだったはずだ」

 

「その程度ならお安い御用さ。ほぼ全部を “冬虫夏草の使徒” の菌糸に置き換えたマックス印の人造トリュフ『五本指』シリーズの、その『薬指』だな」

 

 どうやらマックス何某の身体は極上の調味料になるようだ。

 

 こっちもまた絵面がひどいが。

 なにせその調味料の見た目は人間の指のミイラだ(実態は干し茸であるが)。それを削って食事に掛けるらしい。指ごとに風味が異なるように調整してあるとかなんとか。

 

「護衛してもらう代わりに領内の怪物退治に駆り出していてすまないね」

 

「まあ主殿が分身していてはな……こちらの身は一つしかないし。だが気にするな、むしろこちらの方が気楽だ。珍しいものも食えるしな」

 

「それなら良いんだけど」

 

「マリヤムも手練れだし、東から流れてきた達人の仙猫を師父と仰げているし、手ごわい怪物もまだまだ湧いて出る。育ってきた子蟹な娘たちへの教導も楽しい。なかなかに充実しているさ」

 

 巨蟹鬼としての戦闘欲求も、そこそこ充足しているようだった。

 

「本当にそう思ってくれているならうれしいね。強くなりすぎて倦んでいるんじゃないかと心配していて」

 

「まさか倦むなど。……だがもし主殿が気に病むようなら、分身のひとつでも私の生まれのウラガン部族の方に派遣してくれても良いんだぞ? きっと氏族を挙げての大歓迎になる。あるいはその時は私も一緒に古巣に顔を出してみるか……」

 

「……ま、おいおいね。おいおい……」

 

 マックス何某は賢明にも明言を避けた。

 お互いどうせ末永い付き合いなのだ。

 そう急くこともあるまいさ。

 

*1
◆運河の水源:各地の海底などに設けられた海水鉱山プラント(海水中から魔法で元素分離して回収。スイレン型、ウミユリ型、ホヤ型などいろいろなタイプあり)で副生成される真水を空間遷移させて水源にしたもの。なお、沙漠の地には、水を湧かせる聖者や奇跡の伝説がある(メッカの『ザムザムの泉』など)ので、それ系としてわりと「有り得そうなこと」として現地では受け入れられている。

*2
海大鰐(シークロコダイル):もしかして → モササウルス(モース河のトカゲ)

*3
◆今の巨蟹鬼セバスティアンヌの大きさ:体高4mとなり、かつての約1.1倍近い背丈に成長している。体重はそれ以上に重くなっており約2倍(約16トン)になっているが、これは内骨格と外骨格の魔導合金化が進んだため。加えて大蟹と巨鬼の2つの身体に由来するツインな魔晶からもたらされる天然の強化魔法がそれを支えている。そしてまだ成長期なので、もっと大きくなるようだ。重力操作や障壁作成も組み合わせることで、どこでも沈まずに走ることができる。

*4
◆巨大ハイギョや巨大カメの討伐:そのあとスタッフが美味しくいただきました。ハイギョは尾に蓄えられた脂肪が美味であったそうな。またカメは甲羅ごと火にかけて亀スープとなった。

*5
◆仙猫娘:前話で描写のあったマルヌネコ系の長毛の猫獣人。仙人として半ば自然と同化しており、妖精のような半分現象の域に足を突っ込んでいるため、沙漠で長毛でも暑くない。年齢は内緒……というか既に数えなくなって久しいらしい。




 
ヒロインフォーカスシリーズ第三弾は巨蟹鬼セバスティアンヌ女史でした。
次回は極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)のターニャ嬢で〆です。


◆そのころエーリヒ君
秋の15歳の誕生日まで残り半年もないことから、ウビオルム領内視察中に現地でめぼしい後任者を見繕うなどしている。現在は通常業務と後任育成が同時進行になっており、その分さらに激務になっている。なお、業務を整理したら、エーリヒ君1人分の業務をまともに回すには、家宰1名、護衛騎士数名、小姓10名規模は必要だと判明した。宮中伯(大臣級)の秘書業務+SP業務+雑事連絡等、と考えると妥当なチーム編成だが、逆にこれを1人で回せてしまっているこの金髪がおかしいのである。後進の錬成に失敗すると足抜け出来なくなりそうなので、内心切羽詰まっている。そんな中、そろそろ新型炉に換装した魔導航空艦の試験飛行が予定されており、それに乗れることを少し楽しみにしている。なお魔導炉の不具合で不時着する羽目になる模様。……がんばれ!
 
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