フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆前話
なんやかんやで工作員としての新しい名前を貰ったマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン。西方辺境を再編する地均しのために先に現地入りするマックス何某は、幾らでもインサイダー取引やり放題な立ち位置であり、力量次第で莫大な利益を引き出すことが可能となる。さらには土豪たちの密輸ルートの取りまとめ一本化乗っ取りの任務を課されたということは、再編後の貿易商社設立とスタートダッシュの勅許を貰ったも同然である。だがマックス何某はそこからさらに、非魔導師の魔法使いたちの同業者組合を設立する布石の許可もねだったのだった。
 
マックス何某「仕事は大変だけど、経済的・権力的な見返りもまた大きかったりします。まあお金には困ってませんけど、沢山あって悪いものでもないですしね。我田引水は貴族の華。成功裡に終われば褒賞は褒賞でまた別にいただけるでしょうし、次は禁書庫の閲覧権限でも上げてもらいましょうかね。以前褒賞で見せてもらった下水道スライムの全体同期術式は、子実体分身の統御にも役立ってますし、知識もいくらあってもいいものです。そして権益拡大も重要です………ふふふふふ、つまりこれを機に西方辺境で布教する足掛かりを築くのですよ………!(恍惚)」

 
===

※今回はエーリヒくん視点です。
 


29/n さらば悪友(とも)よ、また会う日まで-4(よう、また会ったな! 悪友(とも)よ!)

 

 帝都ベアーリンから寒さを避けるため南へと向かい(今は秋だが北側を通ると旅程の終盤で雪に降られる恐れがあった)、そこからさらに西へ向かうという、我が懐かしの故郷ケーニヒスシュトゥール荘への帰参の道中。

 

 私ことケーニヒスシュトゥールのエーリヒは、旅の道連れを増やしつつも、まあまあ順調に旅程を消化していた。*1

 

 旅の道連れを増やしたと言うのは、元雇用主であるアグリッピナ氏から下賜された軍馬2頭に加えてさらに、という意味だ。

 マックスの餞別で若返った2頭、カストルとポリュデウケスは、今まで以上に元気になっている。なんなら前より賢くなっているような気もするのだが………。ひょっとすると若返り薬というより、能力向上の副作用で若返りに似た作用がもたらされる薬だったのかもしれない。別に馬体が縮んだりもしていないし。

 

 さて、旅の道連れとして途中で拾ったのは、馬肢人(ツェンタォア)の戦士ディードリヒ。北方離島圏からはるばる帝国まで遊歴にやってきた()()戦士であり、巨大な長柄戦斧の優れた使い手だ。

 ちなみに女性なのに男性名であるのは、馬肢人(ツェンタォア)の伝統として彼らには名前で男女の別をつける文化がないからだという。カミーユが男の名前で何が悪いか、的な? 彼女の故郷の発音では『デルク』というそうだが、帝国での名乗りは帝国風に『ディードリヒ』としているという。

 

 馬肢人(ツェンタォア)というのは、まあ、いわゆるケンタウロスと思ってもらえれば良いだろう。

 馬の下半身と、ヒトの上半身を持つ亜人種だ。北方離島圏では混人馬(セントーア)と言うらしい。馬の肢のヒト、に対して、ヒトが混ざった馬、とのことで、その扱いの違いが何処に由来するのかなども興味深い。まあ文化人類学者でもないから自分で調べようとまでは思わないが。

 かつては『生きた滅び』と称されるほどに猛威を奮って大陸に覇を唱えた種族だが、文明の発展に伴い、種族的に手先が不器用なのが祟ってか、いまでは他の武断系の(つよい)亜人種と同じ程度の扱いに落ち着いている。………弓矢や刃はとても器用に扱うし、馬の蹄と肢を生かした蹴りの体術も大したものなのだがね。それに全員騎馬武者とかいうぶっ壊れユニットぶりは変わらない。なお食費。鯨飲馬食という四字熟語を思い出せば文字通りだ。

 農村では意思疎通できるヒトでありかつ馬の筋力を持つという利点を活かして、村落共通のトラクター的な役目を買って出てくれている場合も多い。ケーニヒスシュトゥール荘にも馬肢人の一家がいたが、自前の畑は持っていないかったな。勿論彼らはそれで生計を立てるので有償だが、文字通り馬力が違う。

 

 そんな彼女ディードリヒの種族である馬肢人(ツェンタォア)は、手先がそれほど器用でないこともあり、細々とした身の回りのことを他種族の従僕に任せるのが普通だ。

 彼女も帝国で得た従者たち(おそらくは腕力で従えたか、その彼女の腕力のお零れに与ろうと擦り寄って来た者たちだろう)に雑事を任せていたのだが、暴君ディードリヒから得る利益と齎されるストレスの天秤が崩壊したのか、その従者もどきに管理を任せていた荷物や荷駄を含めて夜逃げされたようだった。………話を聞けば、荷駄用の驢馬(ロバ)と偽って騾馬(ラバ)*2を買わされていたようだし、その従者もどきたちはひょっとしたら他にも資金のちょろまかしもやっていたのではなかろうか。ディードリヒはどんぶり勘定だし。もしかすると最初からこの辺りで物資を持ち逃げする計画だったのかもしれない。それでも馬肢人(ツェンタォア)の戦士の不興を買うリスクを思えば葛藤の末の苦渋の判断だったのだろうが。実際、もしディードリヒが従者もどきの夜逃げに気づいていれば血の雨が降っていただろう。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、諸々あって旅路を共にして数日。

 

 その馬肢人のディードリヒを連れて、私は立ち寄った街の外れを歩いていた。

 一帯は雑然とした有様で、行政の手も目も行き届いていないような区画だ。

 

 まあ、端的に言えばスラムだな。

 

「エーリヒ、アタシの服買ってくれるのは良いんだけど、スラムで手に入るようなのはヤぁよ。ほらさっきの服屋に出物があったじゃない、結構いい生地の」

 

 その馬肢人用の装束が割といい値段するから、もっと懐に優しいやつがないか探しに来たんだよ。

 お前の食費で懐は寒くなる一方なんだからな。

 

 とはいえディードリヒは従者もどきに武器以外、着替えも含む旅の荷物をほぼ全部持ってかれてるし、流石に着たきり雀は問題もあろうということで、着替えを買うのは確定事項だ。

 代金は私が立て替えるが、貸しだかんな。

 

「何なら布買ってエーリヒが繕ってくれても良いんだけど?」

 

「お前なあ、そこまでやったらもう完全に嫁みたいだろ、私が」

 

「だからさぁ、婿に貰ってあげるって言ってんじゃん」

 

「断る。何度も言うが────」

 

「はいはい、“私より弱い護衛も妻も要らん” でしょ。もう覚えたわ」

 

 

 身体能力や武芸については才能の塊みたいな馬肢人ディードリヒだが、残念ながらそこに心根が追い付いていなかった。

 

 従者もどきに逃げられた彼女は、次の世話役として私に目を付けたのだ。

 そこから始まるのは、彼女自身の戦力を背景とした護衛の押し付け。

 私がいいとこの坊ちゃんみたいな小綺麗な恰好をしていたのも拍車をかけた。

 

 で、断った私の啖呵── 「自分より弱い護衛など要らない」── に腹を立てて得物を抜いたディードリヒ相手に応戦。愛剣 “送り狼(シュッツヴォルフ)” の腹で何度か撫でてやって、ディードリヒには彼我の力量差を()()()()()やった。

 ああ、身体には傷はつけていないとも。

 心は折ってやったが。

 

 武士は食わねど高楊枝、とまでは言わないが、腕に見合った尊敬を集める戦士として高潔であってほしいものだ。

 残念というか、惜しいというか、もったいないというか。芯がないんだよなあ。我を見よ、我を見よ、と力を誇示するにしても、それで結局どうなりたいか、どう見られたいかが欠けているし、浅慮だ。

 故郷の北方離島圏でもそれでやらかして、しかしその才能を惜しまれたがゆえに遊歴に出して経験を積ませる仕儀になったという。まさに可愛い子には旅をさせよ、だな。聞けば良いとこの出でもあり部族の中では上澄みの力量を持つことから、将来は部族会入りを約束されていたのだとか。まあ戦で逸って誤ったタイミングで早駆けした挙句に生け捕り命令のあった兜首を殺してしまうわ、そのあとの論功行賞で文句付けて勲一等の戦士にケンカを売った挙句に返り討ちになるわで、馬耳(ヒト耳とは別の副耳。周辺警戒用)の片方を半ばで千切られた上に髪も丸坊主にされて── いずれも彼女の部族では非常に不名誉な仕打ちだという。流石に髪はもう纏められる程度に伸びているが。── 、『いっちょ世間で揉まれてこい』と遊歴に出されたのだとか。

 

 それで、なんというか画竜点睛を欠くような有様の彼女、ヒルデブランド部族の戦士ディードリヒに矜持というものを教えるべく、しばらく面倒を見てやることにしたのだ。

 お人よし過ぎるという声もあろうが、あそこでディードリヒを放流したら進退窮まった彼女が確実に野盗に転身するところだったので、善行の類であろうと信じる。

 

 ディードリヒは野盗にならずに済んで良し。ついでに遊歴に出される原因となった矜持なき衝動を高潔さに昇華できればなお良し。

 野盗化したディードリヒに襲われる可能性があった無辜の隊商や旅人の皆様も脅威が水面下で除かれて良し。巡察吏も馬肢人の天才戦士なんぞという厄いユニットが野盗化したのを相手にせずに済んで良し。

 さらに私も後味悪くなくて良し。ついでに言えば馬肢人みたいに『見るからに強い』ユニットが隣に居ると、私みたいに見た目がなよっとした風の少年の一人旅も安定するだろうから良し。なお出費。貸しにするから返してもらう予定ではあるから良いのだが、結構な勢いで路銀が減っているのは悪し。

 

 

 なので背に腹は代えられぬと、ディードリヒの身の回り品をリーズナブルに揃えなおすために、馴染みの商人を探しているわけだ。

 

「さて、噂だとこの辺りのはずだが」

 

「噂?」

 

 そう、私も別に無計画にスラムじみた街区を歩き回っているわけではないのだ。きちんと目星を付けている。

 

「ゴミ拾いを勧める聖職者が説法……というか、ゴミの中から役立つものを見分ける方法や、ゴミから何か作ったりする方法を講義していると聞いてな」

 

「ふーん?」

 

 それとお店が何の関係が? って思ってる顔だな。

 私も事前知識がなければそう思う。

 でも実際問題、リサイクルを説く神官の近くに便利なお店(コンビニエンスストア)があるのは事実なんだよな……。

 

 しかしこんな旅程の半分もいっていない状態でその売店(キオスク)を頼ることになろうとは……。

 

 

 

§

 

 

 

「いいですかー、みなさーん。この世に無駄なものなど何ひとつとしてないのでーす」

 

 ああ居た。

 

 深海のような昏く澱んだ青い瞳をした、金髪の神官。私は探し人の片割れを見つけることに成功した。

 矢印が輪転するような形の聖印(シンボル)を首から()げたその少年神官は、本業とは別に趣味で分身して帝国各地で布教しているのだという。日曜大工ならぬ、日曜神官といったところだろうか。

 ついでに言えば神官であるとともに、魔導師であり貴族でもある。

 

 うーん、属性過多ではなかろうか。

 特に『分身して』ってなんなんだよって感じだが。

 しかも影武者とかではなく遍在する全員が本人で同一人物だということだが、まあ あいつ落日派だしなあ……。そういうこともあるのだろう。

 

 

 閑話休題(それはそれとして)

 

 帝都で別れた後にしては早すぎる再会に思うところは無いではないが、挨拶は説法の後で良いだろう。

 説法というか、なんか西暦世界のテレビショッピングというか、ガマの油売りの口上めいてるというか、なんなんだあれ??*3

 

 取り急ぎは、今 用があるのは、あの胡散臭い少年神官(マックス何某)ではなく、そのお供でここいらに出店しているはずの “きのこのお店” だ。

 

 あまりに便利過ぎるのでおいそれと簡単には頼りたくなかったが、ここで買うのとそうではないのとで、銀貨何十枚と変わってくるようならもはや致し方なし。

 特に衣料品については、彼らマックス何某の眷属は大量生産を実現しているのか、値段の桁が違うからな。

 

 

 マックスが居るってことは、多分ここいらにも窓口を作って出店しているんだと思うんだが……。

 

 

 

 

 と、その時、私が通り過ぎようとしたところで、耳心地の良いように計算されて設計されたかのような女の声が聞こえた。

 

「あ、ひょっとしてエーリヒさんではありませんか?」

 

 声のした方を見る。

 曲がり角をちょうど曲がったところの、何かの店の建物の側面の壁から、その声はしていた。

 

「いらっしゃいませー! 何かご入用のものはありますか?」

 

 そこは確かに先ほどまでは何の変哲もない壁だった。

 

 だが、今はその平面が薄く盛り上がりレリーフのように凹凸を作り、精緻に彩色されて、まるで売店(キオスク)のカウンターを映し出したかのように変わっていた。

 実際には平面のはずなのに、精緻な騙し絵によって奥行きすら感じられる。

 

 そして声を出しているのは、この平面の上に展開されているお店 “きのこのお店” の文字通りの看板娘である『マイコニド・アルファ』嬢だろう。

 多分そのはずだ。

 

「…………*4はい、エーリヒさんをご担当しているマイコニド・アルファでございます!」

 

 どうやら合っていたらしい。

 さて、ウビオルム伯の従僕を辞したから、事業規模の仕入れはできなくなっているが、そもそもその必要もないので問題はない。

 一方で私個人としての戦力評価が無くなったわけではないから、普通に一般家庭としての買い入れの規模なら問題なく利用できるだろう。今回は召喚用の触媒を消費したわけでもないし、その分の費用も乗らないので良心的な価格で利用できるはずだ。

 

 

「ええ、これどうなってるの? 妖精の悪戯か何か?」

 

 基底現実ではありえない様相に、ディードリヒは目を白黒させている。

 気持ちは分かる。

 どう考えても人も店も入らないようなスペースに急にお店のカウンターが現れたみたいに見えるからな。

 

「あら、そちらの方はお初ですね! いつもニコニコあなたの御側に。日用品から魔法の武器まで、何でもござれの便利なお店 “きのこのお店” へようこそ!」

 

 そんな中でもマイコニド・アルファ嬢はマイペースだった。

 今日も営業スマイルが眩しい。

 

「きのこのお店? キノコ専門店なの? ここ」

 

「いえいえ、きのこ系の亜人種である私たちが店員を務めているので “きのこのお店” でございます」

 

 ………亜人種? 魔導生命体の間違いでは? と思ったが、分類学者でもないため線引きについては棚上げする。

 そもそも学者でなければその辺の区別なんて気にもしないだろうからな。

 

「ふーん、樹人のキノコ版みたいなもん?」

 

「似たようなものかと」

 

「へー。まあいいや、それで混人馬(セントーア)向けの服って置いてある?」

 

「もちろんございますとも! こちらのカタログをご覧いただけますか? その中からお選びください」

 

「わあ、総天然色の型絵見本! すごい!」

 

 転移門の高度な応用か、レリーフのようなマイコニド・アルファ嬢の手元からにゅっと分厚いカタログが出された。ご丁寧に馬肢人の手に合わせたサイズだ。さらに魔法によってか、ひとりでにページがめくれていく。

 

「戦士の方とお見受けしますので、特に丈夫で快適なものとなりますとこちらのページ以降に……」

 

「おお、これはすっごい……──── って、安っ!? えっ ナニコレ訳あり品とか?!」

 

 ディードリヒの素っ頓狂な声に私もカタログを覗き込むと、そこには安い方に桁違いの金額が書かれていた。

 今は遠き前世の西暦世界であればそんなものかと思うが、今世の新品の被服でこの値段はあり得ないと感じるなぁ。

 だが決して訳あり品だとかそういうことではないのだ。

 

 

 

 営業スマイルのマイコニド・アルファ嬢が流暢に解説する。

 ディードリヒの疑念を解きほぐすために。

 

「いえいえ、新品でございますよ。もちろん、貴女様が凄腕の剣士であるエーリヒ様のお連れであるというのが一番大きいですが、これでも利益は出ているのです。少し種明かしをするのでしたら、そういう妖精の仕業で布がいつでも大量に手に入るとでも思っておいていただければ」

 

「あーーー……そうか、確かにエーリヒほどの戦士の御用達なら、値引きは不思議じゃないか」

 

 ディードリヒは頭蛮族だからか、強い=偉い=商人から特別扱いされて当然、という彼女の思考回路に、マイコニド・アルファ嬢の説明がすっぽり嵌まったようだ。

 うん、ディードリヒ、君はもうちょっと考えよう?? 部族会入りを嘱望されるくらいだから、出来ないわけではないんだろ??

 

「もちろんもっとお高いものもございますよ、混人馬の戦士様。こちらなどはお値段の桁が上がりますが非常におススメで、先ほどのものよりさらに強靭な新素材に魔法の刺繍を加えることで────」

 

「へえ! 魔法の服! あ、でも鎧の(まじな)いとの相性があるって部族の祈祷師衆から聞いたような……」

 

「ふむ、そうなのですね。お客様は北方離島圏の御出身で? ご懸念は魔導刻印(ルーン文字)に込められた妨害や擾乱の概念でしょうか。鎧をお預かりできればそちらを参考に服の方を鎧と干渉しないように調整もできますが……」

 

「うーん流石にエーリヒの紹介でも一見の店に鎧は預けられないわね」

 

「で、ございましょうね。恐らく問題ないとは思いますが、お売りしたものにもし不具合がありましたら、またお呼び立ていただければ幸いに存じます」

 

「って言っても、直ぐにここは出発しちゃうしなあ」

 

「はい、それですが、我々の “きのこのお店” は手広くやっておりますし、それ用の品でお呼び立ていただければこちらから参ることもできますので、ご検討を。詳しくはエーリヒさまがご存じです」

 

「………そんな大店なのになんでスラムなんかで商売してんのさ?」

 

「オーナーのご意向で、としか」

 

「ふーん、まあ、いいや。じゃあどれにしようかな────」

 

 おいおいおい、待て待て待て。

 なに勝手に魔法付きの服を選ぼうとしてるんだ!

 いくら “きのこのお店” の品は普通の魔法付与品より安いとは言っても、それじゃあ節約にならんだろ!

 

 まったく、ディードリヒもだが、マイコニド・アルファ嬢も営業熱心で油断も隙も無い………。

 

 

*1
◆エーリヒくんの旅程は順調?:当社比ではまあまあきっとおそらく順調の範囲内だと思われる、たぶん。なお一般的にはトラブル続きと評して差し支えない模様。安定の道中表さんの仕事ぶりよ……。

*2
◆騾馬:ラバ。馬とロバの雑種。馬のパワーとロバの忍耐強さを合わせ持つ一代雑種である。子孫が残せないこと以外はほぼロバの上位互換。当然ロバよりお高い。

*3
◆マックス何某の口上:スラムで聴衆の興味を引くために大袈裟な身振り手振りと小気味良い口上で注意を引いている。聖職者というより商売人という風情。逆にこれが聖堂に対する隠れ蓑にもなっている。なお実際、

「どんなゴミでも持ってきたならお買取り! なんでも、なんでもだよ!

 使えないものでも、キノコの苗床にすれば、ほれこのとぉぅり! あっという間に嵩が減ってキノコも採れる!

 しかも! 生えるキノコは食用もあれば薬にもなる!

 こりゃもうみんなでゴミを集めるっきゃないね! ただし盗品は勘弁な!」

とか言ってるので、聖職者というよりはなんか怪しい買取店の広報担当みたいな感じで聖堂からは静観されている。ちなみにゴミ収集する者には免疫力を強化する経口ワクチン成分を含むキノコを与えたり、使い捨て手袋などを配るなどして感染症の予防に努めるなどしているし、小さい子供には優先的に免疫向上のための薬用キノコ成分を含んだ飴を配るなどもしている。これらはマックスくんが手掛けてきた魔導による農作物品種改良に続く帝国の国力増強策の一環でもあり、衛生向上による人口増加への布石。衛生が悪化すると人口が増やせないからな……!(Civ並感) ちなみにあらゆるゴミを分解する改良済みキノコの菌糸だが、ゴミの分解に伴って発生する熱量を生体活動に使用するのに加えて魔力に転換することも可能なので、広義の魔導炉ともいえる。閉鎖循環魔導炉に比べると非常に極めて緩やかに微量の魔力を発するに過ぎないが、魔導師のローブに刺繍されるような〈清拭〉の魔法を発動させるくらいは可能であるため、水の浄化その他に活用可能。原子力発電に対する小水力発電のようなイメージ。

*4
看板系看板娘(コミュニケーション・インタフェイス)たち:出店地域や出店順によって担当する中の知性体のバリエーションは微妙に異なるが、直ぐに切り替えは可能。微妙に応答に間があったのは完全切り替えまでの若干のタイムラグのため。アルファも居ればベータも居るし、他にも適当に名付けられているのだが、マックス何某による余りに適当な名付けに不満を持っている中の娘も多い。そのうち外見なども含めて個性が出てくるのだろう。ちなみに最初にエーリヒに声をかけたのはアルファちゃんではなかったが、初顧客としてエーリヒのことは彼女らの意識が巣食う菌糸ネットワーク上では有名人なので気づいた。裏側の処理(バックグラウンド)では「きゃー、生エーリヒさん見ちゃった♡」とかミーハーなことを思いつつアルファちゃんと交代したのかもしれない。




 
マイコニド・アルファ嬢「エーリヒさま。手元不如意でございましたら、幾らか融資いたしますが」(ことあるごとに経済的な繋がりを深めようとしてくる看板娘)
エーリヒくん「貸すなら私じゃなくてディードリヒにだろう。あ、でも道中で仕留めたシカの皮とかは買ってくれるとありがたい」(肉鞘アンドレアス氏の影収納の魔法を背嚢の中に展開してそこから取り出している。シカ皮だが、ヘルガ嬢直伝の “とけないこおり” の術式で皮の水分全ての動きを固定して微生物が利用可能な自由水を無くすことで腐敗を止めている)
ディードリヒ嬢「その背嚢便利よね……」
エーリヒくん「やれんし、やらんぞ」
ディードリヒ嬢「まあそうよね……」
マイコニド・アルファ嬢「ではエーリヒ様、シカ皮その他を買い取らせていただきます。似たような機能のある背嚢のご用意はございますよ? ディードリヒ様。……それではこちらの拡張背嚢の料金も含めてディードリヒ様のツケにしまして、そしてエーリヒさまがその連帯保証人になられるということで……」
エーリヒくん「それなら素直に立て替えた方がなんぼかマシだよ! っていうか魔法の服とか魔法の背嚢とかは買いません!」
マイコニド・アルファ嬢&ディードリヒ嬢「「 え〜〜 」」
エーリヒくん「 “えー” じゃない!」

====

説法を終えたマックス何某がエーリヒくんのところに顔を出して曰く。

マックス何某「おや、こんなところで会うとは、なんと奇遇な!」
エーリヒくん「おいばかやめろ、“なんと奇遇な” とか言うと変な文脈が乗りかねんだろうが」
マックス何某「?? なんか元ネタあったっけ?」
エーリヒくん「知らなかったのか……」
マックス何某「そんなことより、私はとっても喜ばしい気持ちでいっぱいです。連れの馬肢人の戦士さん、性根を鍛え直しているところと見ました。君も “もったいない精神” が分かってきたようじゃあないですか! 心根がアレなのに武芸の腕も才能もあるのを “もったいない” と思ったのでしょう? 性格矯正・人材育成も、我が “もったいないおばけ教” の実践功徳の一環ですからね。嗚呼、スキル選択式で本人の了解なしに勝手にスキルが生えない君のチートの仕様がなければ、直ぐにでも君も我が神から奇跡を賜れるでしょうに!」
エーリヒくん「いや、バレたらまともに社会生活営めなさそうな邪教はちょっと……。失名神祭祀葦編関係ってことは、SAN値上限が下がる系だろ? 同じ理由で屍霊術だって取ってないんだから、ノーセンキューだよ………」
マックス何某「ざんねん >< 」

===

◆ヒルデブランド部族の馬肢人ディードリヒについての所感(追記)
※※原作書籍版6巻のネタバレがあります※※
 
原作のキャラはまあ大体全員好きなのですが、ディードリヒ(デルク)も例に漏れず良いキャラで好きです、精神的に成長するキャラで王道を行く感じが特に! 噛めば噛むほど味が出る……。序盤のメスガキムーヴ(なおエーリヒより年上)から、己のオリジンを見つめ直して、『一番になる』という己のこだわりの、その根底にあった『なぜ一番になりたかったのか』を思い出して、やがては矜持を胸に、縁を結んだ格上の旅の戦士エーリヒとはあえて違う旅路をいく過程とか大変宜しい、ヒロイック! たぶん原作6巻はエーリヒ君的には箸休めの クソ 単発セッション盛り合わせなんですが、同時に別の卓のPC1ディードリヒの過去編の位置づけでもあるのかも。……となると、ディードリヒの経歴表は「才能を絶賛されたことがある」、「師と呼べる人物が居る」(エーリヒ、心の師匠)、「身体に傷痕がある」(副耳欠損)とかで、冒険に出た理由が「故郷に居られなくなって」あたりでしょうか、ひょっとすると。
WEB版だと序盤のクソガキムーヴで切られるリスクを考えると出せなかったキャラだと思うので、書籍版でこそ生えてきたキャラなんだろうなと思ったり。ディードリヒのヘンダーソンスケールはまだ実装されてないので、エーリヒくんが北方離島圏にお持ち帰りされてなんやかんやでやがて上級王になるアーサー王伝説ルートのヘンダーソンスケールなんかもあるかもしれなくて期待が持てますね!!! あと当作で動かそうとしてみてよくわかるのですが、この娘、すっごく動かしやすいし、シナリオ回してくれるんですよね……やはりPC1枠……。あ、でもそうするとイルフュートのディルク(幸運にして不運のジークフリート)と、ディの字とPC1枠で被るなぁ、なんてこった(PL(中のヒト)が同じで「ディ」の字縛りネーミングしてる可能性)。

 
 
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