フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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前話の後書きに「 人喰い外套(マントゥ・カニバル)をエーリヒくんは着けてくれるのか問題(独自解釈) 」を追記しています。要約すると、エーリヒくんは適合者ではありますが、アイテムの浄化シナリオを1セッション挟み、人喰い外套(マントゥ・カニバル) 改め 狼皮の外套(ウールヴへジン)として、モンスター特化の捕食機能と空きスロットを備えた冒険者向けの防具へと変質して継承する想定ですネ(シナリオ報酬)。シナリオボスはまあ多分 密偵ロタールですのヨ(外形上は土豪勢力なので是非もない)。

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◆前話
密輸拠点の掌握を進めるとともに、今後の国境線の封鎖のために有線で哨戒ラインを敷くマックス何某(密偵のすがた(ダリひげ若紳士))。東方交易路からの疫病には特に手を加えずとも今後西方辺境以西でも猛威を奮うだろうから、まずはライン三重帝国内の対応が優先だと考えている彼は、次に土豪勢力への接触をくわだてるのだった。

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※AIさん(DALL・E3)に出力してもらった挿絵あり(マス)
 


30/n 密偵ロタール(マックス何某)の暗躍準備-5(地の果て(エンデエルデ)の新年会)☆AI挿絵あり

 

「新しい年に! 乾杯!」

 

「乾杯!」 「我らの先祖に!」 「マウザーの実りに!」

 

 西方辺境の土豪らが集まった冬至の祝い(新年会)

 

 居館を提供するはかつての小王の末裔である由緒正しい誰某(だれそれ)

 もちろん音頭を取ったのもその誰某(だれそれ)だ。

 その党首の名前? 必要になればご紹介しよう。必要になれば。

 

 その新年の祝いの席にて、私ことマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン隧道方伯にして魔導副伯(密偵のすがた(ダリひげ若紳士))も(さかずき)、というかジョッキを傾けていた。

 帝都のような瀟洒なグラスなど使わない。ジョッキだ。それは都の惰弱な文化には決して染まるまいとするその意識の表れかもしれない。

 雰囲気的には山賊の宴だと考えればだいたい合ってる。だからこそ、私はこの宴の中で浮いていた。

 

 一応私は、衛星諸国家から祝いに駆け付けた事情通(スパイ)名士(密輸商)の紹介ということで、この場には潜り込んでいる。

 馴染んではいないが、宴席内での席次は高い。

 まあ、彼ら土豪に援助しているパトロンからのご紹介だからね。さもありなん。

 

「悪逆騎士のヨーナスは次の年も暴れてくれるかね」

「あれはマルス=ボーデンに隔意を持っておりますれば。きっと来年も大いに街道を血に染めるでしょうな」

「こちらは襲わないのだろうな?」

「それは抜かりなく。適当になだめて糧秣や物資を提供しておりますとも」

「春に向けて彼奴には英気を養って貰わねばですからなあ、ガハハハ」

「然り然り、ガハハハハハ」

 

 札付きのワルと繋がっていることを臆面もなく口に出したりしているが、まあやはり、帝国への帰属意識が薄いのだろう。

 現地の帝国側の棟梁であるマルス=ボーデン辺境伯の統治を揺るがせられるなら、と、辺境伯傍流の男爵家を裏切って文字通りに根切りにした悪逆騎士ヨーナス・バルトリンデンを援助しても気にも留めていない。

 

 そいつが差配する現地では無体な扱いをされている元土豪側の荘民も居るのかもしれないが、望んで配下に加わる荘民もあるいは多いのかもしれない。それとも兵隊となる人員を土豪側から積極的に送り込んだりもしているのだろうか。

 また、行政府側の騎士に勝つためにと、ヨーナスが配下に多少の訓練もしているのだとすれば、その分だけ援助も必要とするはずだ。槍を振っているあいだは、鍬は握れないのだから。

 その援助もしているのかもしれないな。

 

 とはいえその辺の事情は土豪側も同じ。

 ひっそりと少人数ずつ入れ替えで賦役を隠れ蓑に荘民を集めては教練して帰し練度を高める、というのは、土豪たちも行っている。

 そうすると当然、その教練に振り替えた分の生産性が落ちるのは自明の理。補填が必要になる。

 そもそも、腹が減っては戦はできぬというのはどこであっても変わらぬ真理。

 

「そこで衛星諸国家からの援助が必要になるというわけだ、な」

 

 自らの懐も火の車であろう土豪たちが、悪逆騎士にまで援助できるとすれば、そのカラクリは……まあそういうことだ。

 

 この冬至が明ける祝いの宴に出ている酒や料理も、何を隠そう、この私が持ち込んだものだ。

 ずらりと荷馬車を並べ、帝国に抗う勇士たちに、と献上しに参ったというわけだ。善意の第三者ヅラして。

 

 彼ら土豪たちはその物量に圧倒されていた。

 いつもの支援物資よりも大盤振る舞いなのは、それだけ期待しているからだと言えば、そう怪しまれもしなかった。

 

 おかげで掴みは十分。

 

 

「ガハハハッ! 呑んでおるか!? ロタール殿!」

 

「はい、いただいております。ダグビャルトゥル殿」

 

「結構、結構! とはいえもとは貴殿の持ち込んだものだ! 存分に飲み、喰らいたまえよ! はっはっはっ!」

 

 バシバシと私の肩を叩く壮年の蛮族紳士は、土豪の一族の一員であるダグビャルトゥル氏。

 当主ではなく、当主の弟だか兄だか……確か妾腹で半分しか血が繋がっていないのだったか。宴の参加者の粗方のパーソナルデータは頭に入れている。

 彼は一族の当主と同じ姓を名乗っていたから、父親は同じだったはず。

 

 ………ああ、この辺りの古くからの文化では、「本人の名」+「父親の名-トゥソン(だれそれの息子)」+「家の名前」という名乗りをするようだ。

 彼のフルネームは、ダグビャルトゥル・(ヘイルトゥエン家の)ヨクルトゥソン・(ヨクルの息子たる)ヘイルトゥエン(ダグビャルトゥル)

 彼に息子がいれば、〇〇〇〇・ダグビャルトゥルトゥソン・ヘイルトゥエンとなるわけだ。

 

 ヘイルトゥエンの御家(おいえ)は、土豪勢力の中でも要衝を押さえ、夜陰神の寵愛も篤く神器すら下賜されている歴史ある名家。かつての上王の末裔でもある。

 ここの宴を主催している誰彼(だれそれ)とは別口の上王だ。この辺は元王族が多すぎるな。だからプライドだけは一丁前で、帝国への帰属も進まないのだ。これで東方征伐に出ていれば同胞意識も醸成されたのだろうが、西への備えとしてあまり徴用されなかったと聞く。

 

 そんな反帝国メインの中だが、ヘイルトゥエン家の現当主であるハルパ・ヨクルトゥソン・(ヘイルトゥエン家のヨクルの)ヘイルトゥエン(息子たるハルパ)はなんと()()()路線だ。反帝国の土豪たちに囲まれつつも親帝国を掲げられる程度に、武力も経済力も持っている。

 ヘイルトゥエン家は、周囲から苦々しい顔をされながらも一目置かれているから今もってその座にあることを許されている状態、というわけだ。

 

 そんなヘイルトゥエン家の当主の妾腹の兄だか弟だかが、なぜこの()()()の宴に出ているかというと………まあ、ヘイルトゥエン家も一枚岩ではないということなのか、それとも付き合いで引っ張り出されているだけなのか。

 あるいは………反帝国の動きをコントロールするために、あえて潜り込んでいるのか。

 

 ………ダグビャルトゥル氏も、おそらくは豪放磊落な見た目通りではないのだろうな。

 

 まったく、やはり土豪連中は一筋縄では行かない。

 無血帝たるマルティン先生でさえ手を焼くのだから当然か。

 

「おーい! ロタール殿! 酒を持ってきたぞ!」

 

「ダグビャルトゥル殿、これはかたじけない」

 

「なんのなんの、確かこちらに来るついでに野盗の(ねぐら)になっていた廃城を解放してくれたと聞く! それもヘイルトゥエン家の領域にあったと!」

 

「差し出がましい真似を」

 

「気にするな! 手柄は早い者勝ちだからな! 当主ハルパにも必ず伝えておこう!」

 

 実際はヘイルトゥエン家の領域というよりは、その隣の領との境くらいにあった廃城だが。

 ………まあ、ここでダグビャルトゥル氏が褒めることで、その廃城がヘイルトゥエン家の領地のものであったと既成事実化したいのだろう。

 勢力拡大に余念のないことで。

 

「なんならその廃城をそのまま与えても良いぞ! ロタール殿の出自はどこぞの城伯であったと聞くが………その名跡(みょうせき)を蘇らせても良いかもしれんな! 名前だけならヘイルトゥエンから贈ることもできよう」

 

「さて………名だけ蘇ろうと、そこが我が父祖のゆかりの城でなければ、御霊も納得いたしますまい」

 

 密偵ロタールとしての出自として設定している城の土地の名前を言えば、ダグビャルトゥル氏は同情するような顔つきになる。

 

「ああ、いまは転封によりマルス=バーデンの血脈に押さえられている地か……。なるほど、それで………。先は長いな、若人よ!」

 

「それに廃城をまた編成に組み入れるには辺境伯の御裁可が要りましょう」

 

「だから名前だけ、ということだ。なんの権限も実態もない、名前だけの “城伯”。そんな括弧付きの城伯を名乗る、名乗らせる程度はここいらでは誰でもやっておる。年金をマルス=バーデンから貰うわけでもない。構うまいさ!」

 

 もちろんヘイルトゥエンから年金を出すでもないがな! とガハハ笑いするダグビャルトゥル氏。

 

 爵位の僭称は帝国では重罪なんだが……。

 さすが地の果て、エンデエルデ。統治(ガバナンス)が終わっておる。

 この調子で騎士爵位だとかも適当に売り払って金に換えているんじゃあなかろうか。

 いつまで上王気分でいるのだか。

 

 

 

「まあそれはともかく! 西の話を色々と聞かせてくれよ、ロタール殿!」

 

「ええ、もちろんですとも、ダグビャルトゥル殿」

 

 

§

 

 

 んでまあ、酒が入って宴もたけなわ。

 蛮族思考にアルコールが入ってどうなるかというと───

 

「おらー! よその商人の拳 一発で沈んでんじゃねーぞ!! 立てー!!!」 「根性見せろー!」 「立てー! お前に賭けたんだぞ、こっちは!」

 

「ガッハッハッ! いやあ、やると思うておったが強いのう、ロタール殿! 儲けさせてもらったぞ!!」

 

 まあ、上を脱いで力比べ(殴り合い)が始まるわけだ。あらヤダ蛮族。野蛮人かな? 野蛮人だったわ。

 

 どっちかというと入会儀礼(イニシエーション)じみた見世物なのかもしれないがね。

 私の他にもこの場が初顔見せの人間もいて、そいつも同じように殴り合いに引きずり出されていたから。

 あるいは格付けのためかなあ。売官じみたことが横行してるぽいし、爵位序列が当てにならないからって腕力を見てるのかもしれない。

 

 殴り倒した相手を助け起こし、健闘を称えて軽く抱擁する。

 遺恨無しにするための儀礼でもある。

 

「や、やるじゃねぇか、新入り……」

 

「なんの。たまたま私が酒に強かったからですよ。シラフならまた違った結果でしょう」

 

「いやおめえ、その酒でも10人から飲み比べで潰してるだろ」

 

「そうでしたっけ、はっはっはっ。楽しく飲んでいただけですけどね!」

 

「お、おう……もっと胸を張れよな。俺に勝ったことも含めて。

 しっかし、やり合ってみて初めて分かったが、針金 束ねたみてーな筋肉してんのな、お前。こりゃ勝てねーわ」

 

 そりゃこの密偵ロタールの筐体は落日派らしくガチガチにチューンナップしてるからね。

 アルコールなんかいくら飲んでも酔いつぶれたりしないし、人類基準でのそこらの力自慢程度に負けたりもしない。〈喧嘩殺法〉の技能も、達人には至らないが妙技と呼べるレベルでは修めているし。

 私を酔わせたかったら、猛毒のキノコや毒草を漬け込んだ酒でも持って来ることだ。それも美味しくいただくがね。

 

 

 

 

 さて。

 どうやら私の勝ちに賭けて儲けたらしいダグビャルトゥル氏の卓へと戻る。

 

「ダグビャルトゥル殿、最初は腕比べ(アームレスリング)だけって話だったじゃないですか。結局殴り合いになりましたが」

 

「はっはっは、酒が入っていて殴り合いのひとつも起こらんなどありえんよ! その分だと西の方ではずいぶんお上品に過ごしていたようだな、ロタール殿は!」

 

「まあ実際、こちらのことは話でしか聞いていませんでしたからね……。経験してみるまでは分からないものです」

 

「ふはは、だが最初に武威を示すのは大事だぞぅ? 特に貴公のように素の腕前が高いのであればその方が色々と話が早くなるのだから、なおさらな! なめられたって良いことなどひとつも無いのだ」

 

 それはそう。

 糧食・支援物資の提供に、道中の廃城の野盗退治に、酒の席での殴り合いでの勝利。

 これだけやれば、私が土豪勢力へ食い込むのも上手くいくだろう。

 

 あとは反帝国派を焚き付けてやって、反乱に踏み切らせるよう誘導しなくてはな。

 

「ではまあ、気を取り直して飲もうではないか!」

 

「………まあ良いですけどね。では我らの出会いに。乾杯」

 

「おう、この地の未来に! 乾杯!」

 

 




 
土豪が悪逆騎士ヨーナスを支援してるとか、新年の宴があるのかとか、売官やってるぽいとか、その辺は妄想設定です。9巻上で土豪側の掘り下げが入ってて設定が矛盾したらその時はその時だ……! こっそり修正しよう!、の精神です。



◆ダグビャルトゥル・ヨクルトゥソン・ヘイルトゥエン氏について(独自設定)

オリキャラのおっさん。原作Web版で、夜陰神の神器目当てにエーリヒ率いる剣友会にハック&スラッシュ(押し込み強盗)された土豪のヘイルトゥエン家の係累。当主ハルパの兄弟(妾腹)という設定。父親は同じヨクル氏。当主ハルパとの仲は悪くないのか、信頼のおける名代として土豪の会合に出たりしているようだ。正史(原作Web版)ではナイトゥーア湖畔の大会戦にて戦死している想定。

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