フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆前話
東方沙漠の蠍の国ホラサーン首長国で、首長たるアルビノ
一方帝都では新機軸の繊維と染料を扱うマックスのアトリエが順調に営業し、巨蟹鬼の少女が店番したり、きのこのお店のコミュニケーション・インタフェイスが窓口を置いたりしていた。
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◆多産な
首長の地位は、神権政治形態であるため神官(巫女あるいは巫覡)が継承することが前提。そのため、
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※ AIさん(DALL・E-3)に出力してもらった挿絵あり
「………全然、
ギラギラと輝く一兆度の魔導的ダイソン球の下で、
「どうしてですのよー!」
「うーん、荒ぶってるねえ、ターニャ」
それを聞いた、彼女の戸籍上の兄にして実際上の母であるマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン隧道方伯にして魔導副伯が苦笑する。
自らの脳髄で孕んだ可愛い長女にして妹分であるターニャのことを彼はとても気にかけているのだ。
「こんなにたくさん
「それしか無いからじゃないかなあ」
新たに開拓された異相次元である『電界25次元』と名付けられた、新たなる妖精郷。
最新にして極小の、出来立てほやほやの “
だがしかし、そこに広がっていたのは……。
無明たる虚空であった。
吹き荒ぶ電子風であった。
乱反射する光波であった。
揺らぎ、巡る、
虹色に輝くダークマター。
今にも産声を上げんとする星屑の揺り篭。
そして、それしか無かった。
「風も水もなければ、他の子たちにはちょっと暮らしづらいんじゃないかなあ」
このターニャの妖精郷である『電界25次元』は、あまりに原初の風景であり過ぎるのだった。
「でもでも、おかあさま! 光も闇もありますのよ! 天地開闢の要素は揃っています! まずはここから……そういうものでしょう?」
「うんうん、そうだね。
でもね、ターニャ」
「…………」
「今はもう、
「そ、そんなぁ……」
既に世の理が定まって久しく。
闇や光。夜に星。そういった根源的な概念を司る妖精というのは、天地開闢の頃はいざ知らず、今では押しも押されぬ大妖精ばかりだ。
そんな原初概念の妖精らにとっては居心地のいいかもしれない『電界25次元』だが……。
「そういう強い子は、わざわざ新興で弱小の妖精郷に落ちてきたりはしないんじゃないかなあ」
「………私だってそんな大御所は願い下げですわ。きっと私の国が乗っ取られてしまいます。私は、もっと小さなかわいい子たちと一緒に、この妖精郷を育て上げていきたいんですのよ」
「その小さなかわいい子たちの
ターニャが望むのは、まだ自我の獲得もしていないような、微小妖精たちだ。
そういった赤ちゃんのような妖精に、この電界25次元で居場所を得てもらって、大きく偉大な概念を司るまでに成長してほしいと、そう思っているのだ。
まあ実際は、ご覧の有様で、そんな力のない妖精が迷い込んだとたんに荒ぶる電子と光波に磨り潰されかねないのだが。
というか、実際に微小妖精を拉致……誘拐……あー、勧誘してきたときには、この電界25次元の荒ぶる自然によって上書きされて変質してしまいかけて不味いことになった。
直ぐに解放したから良かったものの……。
つまりは環境とニーズのミスマッチだった。
この環境に適合する原初概念の妖精たちは既に自分の地位があるため新興の妖精郷に来る理由がなく。
新しい妖精郷に来たがるような微小妖精たちは、この過酷な環境に耐えられない。
そもそも強者側の
「ターニャ。素直に他の妖精郷と同じように、薄暮の丘をモチーフに添えた方が良いんじゃないのかい?」
「む、むむむむむ……」
昼と夜の
「もちろん、ターニャのコンセプトも分かるよ? 薄暮の一瞬を切り取るのではなく、極夜と白夜の
斬新でとてもいいと思う。
でも、斬新ってことは、受け入れられる者も限られるってことなんだ。
「いえ、いいえ、おかあさま! それでも私はこの道を行きますわ!」
既に力持つ原初概念の妖精の中でも、新興勢力を選び、半妖精の女王に従うような変わり者か。
あるいは微小妖精でもこの荒ぶる環境に耐えられるほどの才能を持ったエリートか。
厳しい篩い分けをしてでも、極光の半妖精にして 〈みえざるひかり〉 の号を名乗るターニャは我が道を行くと決めたのだ。
「そうかい? でもそれなら、少しだけ助力したいんだけど、許してくれるかな」
「ええ、もちろんですわ、おかあさま」
「それじゃあ失礼して………」
〈
マックス何某の魔法が、世界を切り取る。
魔法的ダイソン球から漏れ出る激しい電子風と揺らめく光波を動力源とし、仮初の世界を構築する。
ごくごく狭い範囲の、現実再現。シミュレーテッドリアリティ。
「これは……いわば電子的な揺り篭ですの……? 虚空の箱庭と同じような、いえ、どちらかといえば
「そうそう。入門編ってことでさ。電子のまやかしで再現した、この前庭で、そこでまずは慣れてもらえば良いんじゃないかな」
「……確かにこれなら、樹も草も風も水も、わたくしの権能の範疇に収まりますわね。生まれたての妖精たちでも、この前庭で過ごすのであれば、塗りつぶされて狂うこともないでしょう。
流石です、おかあさま」
理不尽。解せぬ。これだからおかあさまの権能は……。と顔に書いてあるようなターニャだが、有用であることに異論はないのか、反抗期的な心を妖精女王としての利益を思って抑え込んだ。
「まあちょっとおせっかいが過ぎたかもしれないけれど。許しておくれ。………そうだな、蠍の子たちの誕生祝いにオーロラをプレゼントしてくれたから、その返礼ということで」
「………弟や妹の誕生を祝うのは当然でしてよ、おかあさま。何人かは
「それはもちろん。まあでもそれ以前に、あの子たちは
「そうであれば良いのですけれど……」
本能に忠実な妖精たちが、どこそこの神のお気に入りだとかいうのを気にするかというと、少し怪しいかもしれないが。
マックス何某は子供たちに妖精除けの
「ああそういえばターニャ」
「はいなんでしょう、おかあさま」
「いつぞやのグレムリンを
「それがあの子、隠れてるのか見つからないんですのよ。おかあさまも、見つけたらとっ捕まえてくださいますか?」
少し前までは首長国の情報処理端末 “ぱそこん” にちょっかいかけてきてたみたいだったが、設計見直しやグレムリン除けの紋章を部屋にも刻むのを徹底したらそれも減っていったのだ。
「了解したよ」
「まあ案外、このおかあさまが作ってくださった電子仮想的な前庭に惹かれてやってくるかもしれませんけれど」
「もしそうなら楽でいいな」
複雑にして精妙なるを狂わせることに長けた、
そんなグレムリンにとってみれば、この電子的に仮想空間を構築した術式は、格好の餌食だろう。
「来たら捕まえて、臣下に勧誘するんですのよ! あれで能力は十分ですし、もとは静電気の妖精ですから、わたくしのこの電界25次元にも適応するはずですの!」
「手に余るようなら協力しよう」
「もう、おかあさまは過保護ですわね!」
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毎年恒例? いいふうふの日(11/22)のHS2.0、死霊伯爵とスタール夫人のイチャコラの更新だ! https://ncode.syosetu.com/n4811fg/286/
ヘンダーソンスケール2.0(メインシナリオの崩壊。キャンペーンの終了)の世界線なので、相当にあり得ない可能性を辿った世界線のはずだが、今のところ他のどのHSよりも子供の数が多いという。奥様は