フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆前話
マックス何某が脳髄で孕んで生まれた娘にして戸籍上の妹である極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)、〈みえざるひかり〉のタチヤーナ(ターニャ)は、新しく開拓した【電界25次元】を己の領土として開拓中。頑張って国民(ようせい)を集めよう!!
 
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※ AIさん(DALL・E-3)に出力してもらった挿絵あり(マス)
 


31/n 年明けの諸々-3(北方半島横断運河造成事業主管 アストリッド・フォン・ホルシュタイン)☆AI挿絵あり

 

1.北方貴族少女当主「くっそ熾烈な運河誘致合戦に勝利いたしましたわ!!!!」

 

 ライン三重帝国の北方*1は、峻険な地形と流氷によって蓋をされる極限の地である。

 奥まった地形にある帝国唯一の外洋に面した不凍港でも、そのさらに外洋は流氷で閉ざされるため、夏しか外洋港としてまともに機能しない。不凍港なのにね??

 

 となれば必然、帝国は長年の昔から、外洋に角のように突き出た北方半島*2の根元を横断し、ライン河などが注ぐ半島の西側の外洋*3への直通運河を造ることを構想してきた。

 

 ……まあ、その構想も、大体においてそれにかかる費用── 失敗すれば普通に国家財政が破綻する規模の気が遠くなるほど莫大な費用──を理由に頓挫してきたのだが。

 

 

 しかし、今は違う!

 

 

 新たに創出された【隧道方伯(トンネル=ラントグラーフ)】として無血帝マルティンⅠ世に任命された若き俊英、帝国隧道公団総裁の任に就くマックス・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼンが開発した超々巨大なワーム型の使い魔によって、隧道(トンネル)掘削のみならず、運河の開削のコストが大暴落したのだ。

 

※画像はイメージです

 

 これにより帝国は、大流通革命時代に突入した。

 

 魔物の襲撃や鉄路の盗難によって頓挫していた鉄道網計画は、魔物も盗賊も入り込めない地下鉄道網計画として復活し、既に帝都と大都市を繋ぎ始めている。

 大陸横断大トンネルにより、遥か東方の沙漠の地と繋がったことも記憶に新しい。

 

 同様に帝国内の領地を隔てるさまざまな山脈を貫くトンネルの造成計画が立ち上がり。

 そして、運河網の拡張整備計画もまた、無血帝の肝煎りの事業として動き始めたのだ。

 

 地図上で見た時の「こことここが繋がっていたら便利なのになあ」という机上の空論が、実際に手の届く範囲の現実的な政策として実行可能となったのだ。

 

 帝国政府、そして領地を預かる諸侯たちの驚愕と熱狂は推して知るべし。

 

「我が領に地下鉄道を!」

「あの川幅を広げて運河にすれば、どれだけの収益になるか!」

「この山を貫く隧道を!」

 

 大陸横断トンネルという、夢物語でしかありえないような代物が、実績として現にそこにあるのだ。

 現物を前にすれば、信じないわけにはいかない。

 かつて社交界でマックス何某は、東方へ赴くにあたり「トンネルで帝国と東方の塩沙漠(カヴィール)を繋ぐのだ」と大言壮語して諸侯の冷笑を買っていたが、彼はそのような蒙昧の輩の言葉を実力をもって粉砕したのだ。

 

 そして実現可能で、かつ実例があるとなれば、帝国政府と貴族諸侯が手のひらを返すのも道理である。

 過去の言動を恥じないのか? という向きもあろうが、領地を富ませるに当たって変節することに何を恥じることがあろうか。

 そうやって過去の言動に拘泥するような輩は、そのまま時流の波に乗れずに廃れるだけでしかない。

 

 乗るしかない、このビッグウェーブに!

 

 

 

「その点私は幸運でしたわね」

 

 北方半島の根元のあたりに領地を有する大貴族ホルシュタイン伯の若き当主アストリッドは、目の前で進む運河開削の様子を見ながらしみじみと呟いた。

 

 直立した熊のような亜人である熊体人(カリスティアン)の一族であり、より北方に起源を持ち、透き通るような体毛と、ひと際大きな体躯を持つ白熊(シロクマ)の亜人。*4

 彼女はその末裔である。

 

「海氷でできた蓮の花型の海水鉱山の誘致もほぼ一番乗り。

 そして超極早生小麦の作付も積極的に勧奨したことで、短い夏でも十分な量の収穫を得られるようになりました。

 やはり私の見る目は間違っていなかった。ハシシ=ミュンヒハウゼン卿に賭けて良かった」

 

 東方までの大陸横断トンネルが出来上がってから、一年ほど。

 本来であればそれだけの期間では、北方半島のどこに横断運河を引くのかというのは決まらない。

 重要な政治的な決定をするには、一年は短すぎる。

 

「様々な艱難辛苦があったけれども、このホルシュタインの地に誘致できた。ホルシュタインの向こう千年の繁栄は約束されたようなものだわ」

 

 これほど早く北方半島を横断する運河を通す場所が決まったのは、当然、その地を治める貴族の手腕の優秀さの証である。

 

 現ホルシュタイン伯アストリッドは聡明であり、そして剛腕であり、幸運であった。

 

 前皇帝たる竜騎帝アウグストⅣ世の忠臣であった前ホルシュタイン伯は、前帝が無血帝マルティンⅠ世に帝位を譲位するのに合わせて隠居することに決め、その伯爵としての地位を、既に頭角を現していた一族の麒麟児たるアストリッドへと譲った。

 

 シロクマ令嬢アストリッド・フォン・ホルシュタインはホルシュタイン伯の爵位を相続し、さっそく改革に取り組んだ。

 

 聡明なる彼女の情報網に入ってきたのは、無血帝マルティンⅠ世の “お気に入り” として出世街道を駆け上がる魔導宮中伯アグリッピナ女史と、その補佐たる魔導副伯(マギア=フィーツェグラーフ)マックス氏の働き。

 特にマックス氏は写真術式による複写の簡易化や、小麦の品種改良に、海に咲くロータス型の海水鉱山などで既に実績を持っていた。

 ホルシュタイン伯爵家としても、かねてより重要人物として目星を付けていた人物であった。

 

 様々な伝手を辿り、マックス何某との縁を繋ぎ、誘致への道筋を付けることができたのは、多分に幸運の要素があっただろう。

 

 

 

 

 アストリッドの慧眼と……そして剛腕。

 

 アストリッドは隠居した前当主に帝都での交渉全般のお膳立てを任せ、領内および近隣領との調整に奔走した。

 話の通じる者たちには利を説いて引き込み。

 

 話の通じない者には────

 

 

「決闘ですわ!!!」

 

 

 ──── 帝国貴族の最終的解決手法である決闘(フェーデ)によって、その剛腕をいかんなく奮った。

 

 シロクマ令嬢アストリッドは、機を逃さずに、真っ先に動くことの重要さを分かっていた。

 運河は広い北方半島のどこにでも通すことができる。それはホルシュタイン領である必要はないのだ。

 

 であればこれは、“早い者勝ち” なのだ、と。

 

 

 白く輝く体毛を返り血に染めたシロクマの熊体人(カリスティアン)アストリッド・フォン・ホルシュタインが反対意見を物理的に粉砕し、真っ先に巨大運河にかかる調整を終えさせた。

 その甲斐あって、北方半島を横断する運河が通る場所は早々にホルシュタイン領を通ることに決まったのだった。

 

 若さゆえの暴走?

 確かにそうかもしれない。

 

 

 

 だが結果を残せば、その評価は一変する。

 

 

 『勇猛にして果断』。

 

 

 アストリッドは貴族家当主としての資質(カリスマ)を示した。

 

 

「さあ次は蛮族退治ですわ! 超極早生小麦による生産の増大! 運河による流通の改善と、外洋貿易の飛躍的な拡大! 運河開削のための借款もありますが、それは従来の構想に比べたら微々たるもの。それ以上の収入を得て軍備を整え、あのクソ蛮族どもを磨り潰しますのよ~~!!!」

 

 

〈1.『マックス何某「いやあ、積極的で協力的な当主が居るところは事業を進めるのが楽でいいねえ! ありがたいことだ! 運河予定地にある農地は潰すのももったいないし、大地鳴動魔法で()()()()保全してやることくらいはサービスでしてあげようかな~」』──── 了〉

 

*1
◆帝国北方:西暦世界で言うところのドイツのバルト海沿岸地域を想定。ヴァイキングの略奪に晒される土地。詳しくは原作小説9巻上を買って、HS1.0 Ver0.8を読もう!!(ダイマ)

*2
◆北方半島:西暦世界のユトランド半島(デンマーク)を想定。

*3
◆半島西側の外洋:いわゆる北海。過去話で、巨大首長竜(ヨルムンガンド)が巣食っていたのはこちら側として想定していた。が、帝国の外洋港がバルト海側にしかないなら、「北海の主」と呼ばれる真竜の配下である強個体で、バルト海から北海に抜ける航路のどこかを塞いでいた、とした方が妥当か。

*4
◆熊体人(カリスティアン):(追記)原作登場済み種族。なお、ホッキョクグマの亜種については妄想設定。全ケモ。

以下引用。中央大陸北方の森林帯を起源とする、直立した熊と言った風体の亜人種。熊に劣らぬ巨体、鋭い爪、硬い毛皮、組み合えば亜竜を制することもある筋力を誇る身体的な“最強”候補だが、平時には自然に親しみ詩を愛する穏やかで慈しみ深い種族である。




 
◆ホルシュタイン伯爵家当主 アストリッド・フォン・ホルシュタイン(オリキャラ)

 シロクマ種の熊体人(カリスティアン)。彼女は女性ではあるが一族の男性に伍する恵まれた体躯を持っており、体高は優に3mを超える。巨鬼にも負けない武の種族だが、ホルシュタイン家はただの脳筋ではなく、その頭脳も優れている。
 領有する地域は、西暦世界で言うところのユトランド半島の付け根辺り、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の一部。キール港や、今回の話のモチーフとして考えているキール運河(北海=バルト海運河)がある。
 もちろんホルシュタイン家は政治手腕も優れている。隠居した前当主は「隠居したはずなのにめっちゃ帝都で調整頑張らされてるんだけど?? 隠居とは??」とか言いつつも、領地のためならと頑張っている*1。娘に頭が上がらないとも言う(武力的にも)。ホルシュタイン家の彼らの政治手腕が優れているのは、最終的に物理で解決すればいい、という自信に裏打ちされているからかもしれない(蛮族(ヴァイキング)に年がら年中襲われる土地柄か、半分くらいは蛮族思考に足を突っ込んでいるきらいがある?)。
 過去話の『20/n 静電悪戯妖精グレムリンズの襲撃! 魔導航空艦アレキサンドリーネを守れ!-1(杞憂を杞憂のままにするために)』でマックスくんに話しかけてきていた北辺に領地を持つ家の令嬢たちのうちのひとり。
(追記。余談。最初は金髪縦ロールなヒト種(決闘は巨蟹鬼セバスティアンヌを雇う)のつもりでしたが、物理で反対意見をなぎ倒した実績が彼女個人のものになったことから逆算して全ケモシロクマの女当主になりました。)

 

*1
◆追記:帝都はシロクマ一族にとっては暑いが、社交の季節は冬なので耐えられている。夏は魔法使いを雇っているようだ。そのうちエアコン魔導具をマックスくんが売り出すのでより一層過ごしやすくなるはず。

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