フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆前話
ガサ入れの情報を事前に知らせてくれる知り合いがいて助かったな!(まだ何も助かってない)
いやそもそもどの程度聖堂側は情報を掴んでいるんだ? それによって対応も変わるが……。予知で覗き見して何やら色々知ったらしいイミツァ嬢にヒアリングだ!
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※ AIさん(DALL・E-3)に出力してもらった挿絵あり
「イミツァ嬢。心当たり、とは何のことかな」
「またまた。別に隠してはいないでしょう? しらばっくれなくていいですよ、方伯閣下。貴方様が
帝都北方の自分の店── 石油原料系の新機軸の繊維と染料の店── の応接間にて、私こと隧道方伯にして魔導副伯たるマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼンは、耳寄りな情報があると売り込みに来た若い
彼女は皇統家であるエールストライヒ公爵家の侍女見習いで、同時に東雲派の流れを汲む卓越した未来視や因果介入の魔導の使い手だ。
それゆえ彼女は思いもよらないことまで知っているし、そして何を知っていても不思議ではないと思われている。
「………確かに隠してはいないね。各地の貧民街で大っぴらに説法してるし。だがガサ入れされるような下手を打ってもないはずだ。説法の時は既存の聖典の引用も多いし、他の神の信仰を奪うような真似はしていない」
我が神の信仰は、そっと添えるかのごとく、だ。
言うなればほんの少しの “もったいない精神” を持ってもらえればそれで良いのさ。
「それに、人々のためになる活動をしていると自負している」
「ええ、帝国各地のスラムへの何でも買い取り屋の出店配置と、下層民へのちょっとした事業の斡旋に、衛生の向上や炊き出し。もちろんそれらは私も知っていますし、聖堂もその程度は掴んでいるでしょう。加えて帝都においては各神の聖堂に多額の喜捨をなさっていることは当然承知の上のはず」
「であれば────」
無駄に波風立てない程度の頭は聖堂側にもあるはずだ。
それにそれらの慈善活動の実績に加えて、私は政府幕僚としての成果も著しい。これは自認でもあり、客観的な事実でもある。
さらに言えばここまで私を引き立ててくれたのは、夜陰神に帰依しているエールストライヒ家出身の皇帝たるマルティン先生だ。
ここで私の足を引っ張ったって、皇帝陛下肝煎りの事業が遅れるだけで、なにも良いことはないはずだ。
聖堂勢力がわざわざこちらに食指を伸ばすとは、なかなか考えづらい。
そのはずだし、私としても政治工作はその方向になるように行っている。
逆に言えば敵対派閥からの嫌がらせとして、聖堂の監査対象となるような働きかけは有り得るが、それならば今度はツェツィーリア嬢が同行するのはおかしい。
ツェツィーリア嬢は、当たり前だが、政治的には皇帝陛下の側の人間だとみなされるからね。
もし敵対派閥の政治工作で私の店の監査に来るにしても、そのときは夜陰神の聖堂ではなく、その敵対派閥の貴族が帰依する神の聖堂からになるだろう。
どうにも、何かがちぐはぐだ。
「そう、別に聖堂は本気で方伯閣下に異端の嫌疑をかけたいわけじゃありませんよ」
「………あー、つまり? 今時点では、どの陣営がどこまでの情報を掴んで動いているんだ?」
なんだか盛大なすれ違いか杞憂が発生している気がしてきたが……。
「そうですね、少し長くなりますが、最初から説明しますと────」
そうしてイミツァ嬢が語るところをまとめると。
「ふむふむ。
まず現時点で監査の予定を掴んでいるのは、イミツァ嬢と、君が知らせてくれた私と、あとはそもそも立案者である聖堂の担当者のみ、と」
「そうですね。というのも、私が知ったのは日課のお嬢様の運命観測に引っ掛かったから、という偶然からですし。その監査計画も、見習いであるお嬢様に現場の空気感を掴んでもらうためということで、本当に問題のあるようなところは避けて、無難なところを選定する方針のようです。その候補に挙がっているうちのひとつがココということですね」
「そう聞くと、抜き打ち、とは言いつつも、ほぼ定例行事みたいになっている感じだろうか? なあなあ、とまでは言わないが、“問題ないことを確認する” ことが主眼で、波乱は期待されていない?」
「ええ恐らく。私も聖堂の人間では無いので保証はできませんが。
ただ、そこそこの大店であれば、数年のうちに一回は何らか監査が入るのがセオリーだとか。まあ、監査と言ってもいざ異端が浸透したときに捜査協力を仰ぎやすいように備えての顔つなぎで茶飲み話する程度のパターンも多いようですね」
なるほど。
まあこの店自体の売り上げも順調だし、“キノコのお店” の方も売り上げは結構いっているから、そういうことであれば規模的には監査が入る対象に選ばれるのはおかしくはない、のか。
任意の職務質問に近いのかな? 『何か怪しい異端について知りませんか? 最近変わったことは?』みたいなノリかも?
「つまり、今のところ聖堂側としては、ここの監査も無難に終わるだろうと見積もっているわけか」
「むしろ、ここらで1回、外形上は問題がないことを確定させ、周囲にも示しておきたいのでしょうね。
夜陰神聖堂はエールストライヒ家とも懇意ですし、
「……少なくとも、下手に他の神の聖堂が介入してくるよりは、か」
「そういうことですね」
基本的には全て善意からの申し出であるということらしい。
問題はこちらが実際にガチで異端で異教な輩だということなのだが……。*1
それでもやりようはあるだろう。
別に私は、今の陽導神と夜陰神を主神とする神群を否定しているわけでもないしな。
“もったいない精神の
既存の正統信仰を壊すようなことはしていないし、今後もやるつもりはないのだ。
「まあ、そういうことなら何とでも誤魔化せるだろう。イミツァ嬢が見たという予知ではどうだったんだい? きっと特に問題なく乗り切れていたと思うのだが」
「いえ、フッツーに異端の
「なんて????」
いやいやいや。そうはならんやろ??
何をどうすればそうなる!?!?!?
思わず素で聞き返してしまったが、深く息を吐き気持ちを落ち着けると、改めてイミツァ嬢に尋ねる。
「………ゴホン。詳しく聞かせてもらおうじゃないか、イミツァ
「ええもちろん。本日はそのために参りましたので」
ああ。じっくり詳細を聞かせてもらおうじゃないか……!*2
そしてしばらく日付を挟んで。
対策を万全に整えて、応対のシミュレーションも綿密にして。
ついにその日を迎えた。
「あのー、すみませんー、夜陰神聖堂の方から来ましたー」
戸口で呼ぶ声がした。少女の声だ。
ドアマン代わりの巨蟹鬼幼生が染料と繊維のお店であるマックスのアトリエの扉を開け、その来訪者を迎え入れようとする。
果たして戸口に立っていたのは、聖職者然とした少女と、その護衛らしき長身の女性。そしていかにもベテランの
栗色の髪の神官服の乙女は、おそらく夜陰神の遣わす奇跡により人化した吸血種の少女、ツェツィーリア嬢だろう。吸血種の血のように赤い瞳も、イミツァ嬢が自慢げに語っていた
彼女のことは話には聞いていたが、これが初対面だ。アポなしで突撃させられているせいか若干声や表情が硬い気もする。
長身の護衛は何度か顔を合わせたこともあるメヒティルト女史。
苦労人であるが、ツェツィーリア嬢に忠誠を捧げる叩き上げの女騎士だ。
そして最後に後ろに控えるいかにもな人狼は、この度のツェツィーリア嬢の実地研修の教導役だろう。
……体格からして聖堂騎士団上がりだったりするのかもしれない。
「いらっしゃいませ。本日は何をお求めで?」
抜き打ちでの監査ということで、事前に情報を得ていたと悟られぬように何食わぬ顔で接客を開始する。
さあて、これからが正念場だ……。
異端バレして公職追放喰らう流れの予知の内容は、いー感じのネタに纏められればヘンダーソンスケールで書ければと思います。ツェツィーリア嬢のダイスがn回連続でクリって、マックス何某のダイスがn回連続でファンブった……そんな感じの世界線で想定してます。