フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆前話
なんか物足りないのは例の金髪(エーリヒくん)が帝都を離れたせいだな。よし、追いかけるか!(元から密偵ロタールとして任務でマルスハイム入りしているが、他に魔導師マックスとしての子実体分身(キノコクローン)も追加で派遣することを決定)
せっかくだから久しぶりにみんなでパーティ*1組んで行こうぜ!!

 

*1
※マックスくん一党
1.魔法チート転生者(マックスくん):魔法使い / 邪神官(喧嘩殺法の習熟により多少は格闘可能)
2.極光の半妖精女王(ターニャちゃん):魔法使い / 妖精使い(フェアテ)(妖精女王としての権能は『電子と光波(オーロラ)』)
3.巨蟹鬼の氏族長(セバスティアンヌさん):戦士 / 格闘家(ハサミに拘束した静電精霊によるレールガン搭載済み)
4.真珠甲殻の蠍背人/伏蠍人(ルゥルアさん):神官 / 弓手(暗殺部族の頭領たる神弓(バリスタ)使いで蠍の神に愛された乙女)




33/n すりるじゃんきー -2(アイ ハヴ ア バッド・フィーリング アバウト ディス)

 

「助かりましたわ、マックス・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン卿!」

 

「何も問題ありませんよ、これも契約の範疇。アフターケアというものですからお気になさらず、アストリッド・フォン・ホルシュタイン卿」

 

「まさか工事予定地域に魔宮があってそれを貫いてしまうとは……迅速な対処のお陰で作業員の被害は軽微だったのは幸いでしたわ」

 

公団(こちら)の装備や人員の損耗も許容範囲です。しかし進路の環境アセスメントは十分だったはずなんですが、なぜ魔宮が急に……。アセスメントの範囲外から伸びて来たのか、アセスメント後の短期間で発生したのか……」

 

 帝国北方。

 白熊の熊体人(カリスティアン)たるアストリッド・フォン・ホルシュタイン伯爵が進める、北方半島の付け根を横断する大運河の造成工事。

 もちろんその大工事の実働は、帝国隧道公団が所有する幹線掘削用正式量産型シュド=メル級穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)と、帝国隧道公団の職員らや、彼らが操る重機他の装備により為されている。人工(にんく)が必要な作業は地元の者たちから普請として働く者を募っているが。

 

 

 そしてそこを西に向かいがてら北回りで視察しに来たのが、そう、マックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン魔導副伯(マギア=フィーツェグラーフ)にして隧道方伯(トンネル=ラントグラーフ)とその一行である。

 

 

 

 掘り下げられた空の運河の底。眼下に広がるのは、何百もの蠢く土くれ。

 大運河の掘削経路と繋がってしまった深い大穴──── 魔宮の枝穴から溢れてきた魔物たちだ。

 ゴーレムか、あるいはそういう生物なのか。戦力評価としては、一体一体が、並のヒト種(メンシュ)の兵士を凌駕するだろうと思われる。当たらせるなら、兵士3~5に対して魔物(ゴーレム)1、にすべきだろうと思われた。

 

 

「どうせ大地権能にまつわる神の怒りを買ったのだろうよ、(あるじ)殿」

 丸太のような長棒を振り回して鎧袖一触に土くれのゴーレムを砕いて回るのは、神銀(ミスリル)の外殻を持つ大蟹の下半身を持つ、巨鬼(オーガ)の戦士。巨蟹鬼(クレープス・オーガ) セバスティアンヌ。

 砕かれた土塊が散弾となって飛び散り、さらに広範囲のゴーレムを破壊する。有り余るパワーにより無理やり物理的に全体攻撃を実現しているのだ。

 

「さあ我が子らよ、ラーン部族の戦士たちよ。目標はどこぞの土の神の残り香、動く土くれだ。血も肉もない相手なのは残念だが、肩慣らしにはちょうど良かろうよ」

 

「「「 了解です、氏族長! 」」」 「「「 かにー!! 」」」

 彼女(スティー)はさらに、転移門から呼び出した、自らの娘たちからなる巨蟹鬼の幼生体の一軍を指揮している。大蟹に少女の上半身が生えた形態まで育った者から、まだ生まれてそれほど時間が経っていないのか大蟹の状態のままの者まで。巨蟹鬼はラーン部族の戦士団だ。

 

 そんな彼女ら巨蟹鬼の軍隊(クレープス・レギオーン)は次々と転移門から飛び出しては戦列に加わっていく。

 地の底から湧きだす土くれの魔物が、彼女らの武器で、ハサミで、拳で、歩脚で、次々と砕かれていく。確かな術理を感じさせる暴力の嵐が、彼女たちが無頼ではなく研ぎ澄まされた兵士なのだと知らしめる。

 敵のゴーレムたちとは技量が違いすぎるし、魔力強化された程度の土と、魔導金属を含む甲殻と生体装甲では、そもそもの硬度が段違いだ。為す(すべ)もなく土の魔物たちは殲滅される。しかし────

 

 

「再生していますわね……」

 白熊令嬢当主アストリッドが具足に身を包んで思案気に呟いた。

 彼女もまたマックス何某の視察に同行してこの場に居合わせたのだ。

 視察に鎧具足を持ち込んでいたのは、さすが武門の御家柄といったところか。

 

 そしてアストリッド嬢のつぶやき通り、砕かれた土くれの魔物たちは、その身を再びつなぎ合わせて捏ね上げて、再生して立ち上がっている。

 巨蟹鬼の軍勢は優勢だが、再生する魔物たちによる波状攻撃にさらされ、それどころか蘇った魔物に退路を絶たれて包囲され、ある種の拮抗状態となっている。お互いの増援の数も釣り合っているようだ。

 

「こういうものは魔宮の核を砕かないと終わらないことが多いですからね。今回もその類でしょう」

 

 ゴーレムはもともとは神聖なる儀式を経て生まれる召使いだという伝承だ。

 いまでは魔導の産物であるとされることが多いが、始まりは神の奇跡の領分であった。

 魔導師によって貶められた、かつての奇跡の、その本分。

 

 大地を削り、境界を侵して進む。

 そんな巨大な魔導の産物である魔蟲を、自らの権能への挑戦者だと捉えたのだろう。

 かつてこの地で信仰を集めていたのだろう── この地は蛮族に取ったり取られたりしていたからその “取られていた” 時期の信仰かもしれない── 大地の神の残滓が、煮凝り、変性して、魔宮となったのだ。

 

 地の神の魔宮となれば、土くれの魔物が現れるのも道理だった。

 

「だからこちらの手の者を突入させました。核を砕くために」

 ここに居ない極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)ターニャと、アルビノの伏蠍人/蠍背人(ギルタブルル)ルゥルアは、魔宮への突撃チームとして枝穴の奥へと向かった。

 

「そちらのチームは経験豊富です。うちの妹のターニャは、魔導院で魔宮法則を専攻しているバンドゥード卿の門下生ですし、その教授に同行して何度も魔宮を攻略しています」

 ターニャは半妖精由来の馬鹿げた魔力と権能で、立ちふさがる全て何もかもを根こそぎにプラズマへと昇華・分解して進んでいることだろう。

 

「同行している妻のルゥルアは、工事中に魔宮と遭遇する事態を、沙漠で運河を広げる際に何度も経験しています。そして、神をも殺す毒をもたらす蠍の神の奇跡を使える高位の聖職者です」

 伏せた蠍のような人(ギルタブルル)の本領は、狭隘(きょうあい)な閉所で身を伏せての隠形。神の毒を滴らせた神弓を背負い、魔宮を行くなど造作もない。後顧の憂いを断つ意味で、この魔宮にトドメを刺すのは彼女の役目だ。

 

 

「ま、直ぐに片付きますよ。我が最愛の妻の手にかかれば、神の残滓程度を永劫に葬り去ることなど容易いことです。そうなれば今後は同じ由来縁起の魔宮が湧く心配はありません」

 

「頼もしいことですわ。そして仲睦まじくて妬けますこと」

 

「ホルシュタイン卿もご縁談はあるでしょうに」

 

「ハッ、軟弱者ばかりで辟易としておりましてよ」

 

「まあ確かに武門ともなれば、武力も判断基準ですか。そしていまは、はたから見れば乗るか反るかの大博打のような運河事業に投資中。難しい時期ではありますね。

 ………ああそうだ。私とルゥルアの縁と同じく、陛下に斡旋していただくのも良いかもしれませんよ。それか………確か魔導院のシュマイツァー卿が、隣のシュレスヴィヒの縁続きであったと聞いたことがありますが………」

 

それこそ貴方が熊体人(カリスティアン)であれば話は早かったのですがねえ。──── ま、結構ですことよ、当主たる私の進退を決めるのは私自身しかありえませんもの」

 

「なるほど、それは確かに。無粋でしたね」

 

 

 急な魔宮の出現は、予定外だが想定内だった。

 

 そして実際、そのように対処された。*1

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 帝都を出発した私ことマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン魔導副伯にして隧道方伯の一行は、時に帝国隧道公団の仕事ぶりを視察しては地の底から湧き出る怪物を退治し、時には群盗山賊を退治し、時には地元の美味いものを食べながら都市の外縁で説教をしたり、“キノコのお店” の菌糸を根付かせて出店範囲を拡大したり、隠棲している市井の魔法使いを同業者組合に勧誘したり、はたまた冒険者同業者組合やなんかで情報収集して自主的に行く道沿いで寄り道程度に怪物退治や困りごとの解決などをしながら、北回りで西方辺境はマルスハイムを目指していた。

 魔導による自動走行車を使っているから、そこらの馬車などメじゃない速さで道中をかっとばし、さらに転移も活用しながら進んでいるから、非常識なほどの短期間で帝国を横断している計算だ。局所的には航空魔導師による速達便に追いつかん勢いだと言えばきっと皆が驚くだろう。

 

 

 冬の終わりに帝都を出て、いろいろやっているうちに春が来た。

 夏はまだ遠いが、この時期は色々なモノが活動的になる。

 商人然り、野盗然り、魔獣然り。

 

「というわけで、マルスハイム(エンデエルデ)に辿り着く前に、あと一つだけ冒険を挟んでみたいと思う。みんな、何か希望はあるかい?」

 私ことマックスが、他の三人に尋ねる。

 

「わたくしはこの間、悪さをしていた妖精の噂を聞きつけて調伏しましたし、今回は譲りますわ」

 これで電界25次元に国民追加ですの!! と言っているのは極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)のターニャ。

 札付きの妖精や、生まれたての微小妖精を〈みえざるひかり〉たる妖精女王として、新たな妖精郷である電界25次元へとリクルートするのが、彼女がこの冒険に同行した目的の一つだった。

 それは着々と果たされつつあるようだ。特に私の金髪碧眼の見た目が妖精特攻のため── そうなるように魔導で整形してターニャの祝福で固定されているから妖精に刺さるのは当然だが── 、誘蛾灯のようになっているらしい。

 

「私は何処へでも。何もかもが新鮮ですから、特に希望はありません。見聞を広めに来ていますから」

 控えめに言うのは、伏蠍人/蠍背人(ギルタブルル)のルゥルアさん。ホラサーン首長国の運営や、十ツ仔の世話のためにたびたび離脱することもあるが、この冒険行は、ルゥルアさんの良い息抜きになっているようだ。

 ライン三重帝国を良く知ってもらうことにも繋がるし、両国の友好のためにもこれは非常に重要だ。

 ………国家元首が友好国とはいえこんな他国でフラフラしてて良いのかという問題はあるが。まあ、私とターニャにセバスティアンヌが居れば護衛として十分であるし、いざとなれば転移で逃がせば良いし。

 

「であれば、我が眷属が得てきた情報を開帳しよう」

 そういうのは、巨蟹鬼のセバスティアンヌ。

 自他ともに認める如何物(いかもの)喰いのグルメだ。

 当然、今回のぶらり帝国漫遊の旅の目的も、これまで食べたことのないようなゲテモノ喰いを含む食道楽だ。

 独自に眷属の子蟹を展開し、耳寄り情報を得ていたらしい。私の護衛として再誕する前からのノウハウもあるのだろう。

 

「どうも異界より()()りし大眼玉なるものが────」

 

 

*1
◆大地の神の魔宮の末路:ターニャ「迷宮核を探知できた時点で、最奥まで “月光蝶の羽” で熔かして道をつけましたわ。その後はルゥルアねえさまの出番ですの」

ルゥルア「ええ、そこから私が蠍の神の毒を垂らした神弓でズドン、です。久々の大物狩りで、帝国漫遊の良い思い出になります。………ただ、ここは寒いのが堪えますね」(特注の毛皮コートでモコモコでも寒い)




 
◆同時期、春のマルスハイムにて。英雄級の冒険者たちが(たむろ)して。
 異国の呪術師たる長命種(メトシェラ)の女性、寄食のザイナブが、同じ一党の仲間である聖者フィデリオ、梵鐘砕きのヘンゼル、風読みのロタルを相手に演説を打っていた。
「目玉の怪、此方近く、在り。災い為す、その前に討つべし」
 禿頭の巨漢、梵鐘砕きのヘンゼルが、面白がって応える。
「ゼーナブ、そしてそれを喰うつもりかぁ?」
 寄食のザイナブはそれに力強く応じた。口の端から食べかけの干物をのぞかせながら。
「然り。目玉、刻んで湯に通すと旨し」

「ロタル」
「あいよ」 頭目である陽導神の戦闘僧フィデリオに促され、鼠人(スチュアーツ)の斥候、風読みのロタルが補足する。「もともと情報収集してたヤマの一つだ。ゼーナブの占いを元に準備を少し追加すりゃ対応できるだろうよ」
 聖者フィデリオが纏める。
「いいだろう、大眼玉退治といこう」


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今話のタイトル:『いやなよかんがする』(スターウォーズより)。(マックスくんが聖者フィデリオとの邂逅を予期しての直観)
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原作小説9巻下、発売中!!
本編もヘンダーソンスケールも面白かったし、新キャラも濃い面子ばかりで大変良し。これは買って読むっきゃないね! ちなみに全然知らない話でした(恒例)。
……ヘンダーソンスケールに曰く、マルスハイムを拠点にしたエーリヒ君の冒険では、世界が滅ぶレベルの危機までアリらしいので、「まじか」と思うなど。でもまあそもそも転生者が投入されてるのは人類史が潰えるのをどうにかするためだから、そう不思議でもないのか。
 
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