フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆前話
マックス何某「ルゥルアさんは置いてきた……この戦いにはついて来れそうにないからな……。いや実際、護るべき者を連れて参戦できるような戦場では無いし、彼女は死んだらそれまでなのだから。私たちとは違って」
『邪視の魔宮』の最奥の間には、空間のひび割れの向こうから覗く巨大で、巨大で、巨大な大目玉があった。そしてその大邪眼と戦う4人の冒険者たちの姿もまた。
斥候の腕の差によって、マックス何某たちとは反対側から魔宮へと入ったこの冒険者たちの方が先にこの最奥の間へと到着していたのだった。
◆フィデリオ氏の要素を選んで取り出すと……?
タワーシールド、ビームが出る長物、全身装甲、
===
※ AIさん(DALL・E-3)に出力してもらった挿絵あり
「横殴り失礼ッ!!」
「!? 君たちは───?!」
前線を支えてくれた地元の英雄級冒険者たちのおかげで、私たちはたっぷりと準備をする時間を得られた。
それを活かして初手から最大限の火力を投射することができるようになったのだ。
私が挨拶がわりに放った魔力弾が
急な乱入に驚き誰何の声を投げる聖騎士に、私は名乗りを返すことにした。
その間にも大邪眼へと牽制の魔導を投射するのを忘れない。
「私はマックス・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン隧道方伯にして魔導副伯! 帝国貴族の義務によって参戦する!」*1
そう言う私を飛び越えて飛んでいくのは、
ターニャの魔導と妖精の加護があれば、セバスティアンヌはあの冒険者一党の聖騎士や巨漢戦士に勝るとも劣らない活躍ができるだろう。向こうの聖騎士がビームライフルを連射するなら、こちらのセバスティアンヌはオーロラを固めた特大ビームサーベルでずんばらりだ。
そしてセバスティアンヌとターニャを見送った私の後ろには、まるで巨大な光背のような魔法陣があった。
「沙漠の私から解析データを受け取ったおかげで、世界法則の擾乱を補正して召喚することが可能になった。これで────」
私の強みとは何か。
魔法チートによる無限の対応力と、内蔵魔導炉による極大出力?
それとも “もったいないおばけ” に仕える教皇級の神官としての加護による不死性?
それらももちろん強みだ。
だがその方面ではより上位の存在だってこの世界には居るだろう。
であればきっと、それらに加えて。
虚空の箱庭にある都市一個分以上の
物量こそパワーだぜ!!!!
というわけで。
「異相次元探査艇ダンタリオン、各小隊召喚」
一機一機に主機 兼 制御装置として私の子実体クローンを搭載し、“冬虫夏草の使徒” の作用でフレームと融合させた、異相次元探査艇ダンタリオンの部隊。
即応予備として引っ張ってこれたのは、4機構成の8小隊で32機。
それぞれ改修を加えて複座式にしてあり、パイロットは巨蟹鬼の娘たちが務めている。
運動音痴な私よりも、反射神経と空間把握力に優れる彼女たちの方がパイロット適性が高い。
実際に彼女たちは凄腕のパイロットに育っていて、頼もしい限りだ。
次々と現れる有機的で未来的なフォルムの異相次元探査艇。*2
あまりに壮観な “力” の具現に、自然と私のテンションが上がる。
「ここが異空間化していて助かったぜ~~~!! それならいくらぶっ壊しても良いからなァ~~~~!!!」
ヒャッハー!
通常の基底現実空間ではオーバーキルだし、秘匿に気を使わなきゃならないから運用できないが、ここならいくらでも無茶が出来るって寸法よ!
これだけ世界法則が乱れていれば、上司の魔導宮中伯アグリッピナ女史に見られてしまってその戦力を前提に無理難題を押し付けられるってこともあるまい! 冒険者一党に見られたから彼らの武勲詩に登場する可能性はなくもないが、余りに荒唐無稽で吟遊詩人もさすがにお蔵入りさせるだろうさ。
「ダンタリオン部隊整列! うち半数で円陣を組め! 魔導刃形成、
残りの小隊は撹乱と遊撃だ! 高度な柔軟性を持って臨機応変に対応せよ! 邪魔を許すな!」
『『『
あの大邪眼を抜き取る。
そして『眼』の概念と権能を抽出して、結晶化させ、電界25次元の魔導的ダイソン球に付与融合させる。
退散させるついでにその程度の役得を狙うくらいには貪欲であらねばな!
円陣を組んで整列したダンタリオン各機が、慣性制御術式を駆使しつつ、機体位置をリンクさせ、魔導刃を前に向けたまま、その円周軌道上を加速する。それはまるでひとつのコア抜きドリルの刃を構成するかのようだった。
「外周切除からの、極大の斥力術式で摘出だ! ターニャとスティーは援護と、最後の仕上げの視神経切断を頼んだぞ!」
「了解ですわ、おかあさま!」 「任せろ、主殿!」
すると間もなく、私の魔導弾や、聖騎士の光条をラーニングしたのか、
「ふん、ダンタリオンの魔導シールドならその程度は防げるさ」
それはそれとして、あの聖騎士の冒険者パーティとも連携しなくてはな。
ダンタリオン部隊とターニャ・スティーのバディが引き付けてくれている間に、共同作戦について彼らと打ち合わせをしよう。
時間は少し遡って、突入前の私たちの作戦会議。
「……先鋒を務めてくれている冒険者たちの戦いぶりは見事としか言いようがないけれど」
「それ以上に敵の大目玉の回復力が凄まじいようだな、主殿」
「相手のリソースを削れているのは間違いないのでしょうけれど……それも果たしてどれほどの痛撃となったものやらこれでは分かりませんわね、おかあさま」
順番に、私ことマックス・ロタール・フォン・ハシシ・ミュンヒハウゼン隧道方伯にして魔導副伯、
このまるで宇宙空間のような最奥の間に浮かぶ空間のひび割れから、巨大で巨大で巨大な瞳が私たちの世界を覗き込んでいる。
私たちが転移でこの魔宮の最奥へと空間遷移で飛んでくる前から、英雄級と思しき地元の冒険者一党は、魔宮の主である
聖騎士が放つ陽導神の加護に満ちた光条や光爆が巨大な瞳を抉り、
巨漢の戦士の奮う両手鎚に込められた
後衛で呪いを準備する呪術師を、斥候が窃視者の盲点死角へと導くことで隠し、
その間に褐色肌の長命種の女呪術師が特大の呪いを放って窃視者の瞳を真っ二つに割り、さらに細断し磨り潰す。
しかし、それらにより
「主殿、治癒魔法の類を阻害する奇跡や呪詛も、彼ら先鋒の冒険者の攻撃に含まれていたのではないのか? それにしてはもりもり回復しておるが」
「ああ含まれていたとも、私の見る限りでもね。そしてそれは問題なく発動していた。だが、それ以上に、あの窃視者の素の治癒速度が速すぎるんだ」
つまりは術式によらない、生態としての自然治癒能力が、阻害されてもなおケタ外れに高いということだ。
「おそらくは、あの見えている目玉は
あの目玉も、二つあるうちのかけがえないひとつなのか、あるいは例えば百か千かある眼のような器官のうちのひとつに過ぎないのか、敵の身体の全貌が見えていないからそれも分からない。空間のひび割れから見えているのは、巨大な目玉だけなのでね。
実体があるということは、あの敵は神々のような概念存在ではないのだろうが、恐らくはそれに限りなく近い格を持つ生物なのだろう。
再生速度などを鑑みるに、あの目玉が抉れた程度の傷は
「………でもあれだけこっぴどくやられても覗きを止めないなんて、よっぽどこちらの世界が気になるのかしら?」
ターニャが月光蝶の鱗粉で、周囲を侵す異界の法則を中和しながら思案する。
きっとこう、助平野郎が木戸の節穴に目を押し付けて隣の家の奥様の行水を覗き見るかの如く、あの
となれば、差し詰め先ほどの冒険者たちの攻撃は、
「若い個体なのかもしれないな。好奇心が旺盛で、そして肉質が柔らかいような。じゅるり」
「痛みを感じる神経がそもそも通ってなかったりしてな。眼のように見えるが、爪や髪みたいな器官だという可能性もあるかも。それか巨体過ぎて神経が鈍いとか」
何にせよ問題の核心は、あの
私たちがこうやって作戦会議がてら他愛もない話をしているあいだも、聖騎士の冒険者パーティは奮戦している。
いくつもの光が奔り、巨大な眼球がそのたびに弾ける。
その一方で太陽が眠る夜も迫っている。
彼ら一党の主力が陽導神の聖騎士であることを考えれば、あまり悠長にはしていられないだろう。
「ふむ。スケールの問題なら、こちらも対応のためにスケールのケタを上げるのが適当だな」
「以前、黒海で獣型の使徒を複数相手にしたときは、海氷で白銀の巨大ゴーレムを作ったんだったかな。主殿」
「そしてスティーには加護と強化を山盛りにして敵の使徒の急所に飛び込んでもらった」
「では今回はどうしますの? おかあさま」
「私に良い考えがある。ここはほぼ異相空間となっている。ならば、それに適した部隊を既に私たちは持っている」
ついでにやはり、敵の眼を摘出して、手中に納めたい。
「というわけで、ダンタリオン隊に支援を要請する」
「なるほどですわ。それなら押し返せるかもしれません」
「押し返すだけでは足りないがね。押し返している間に、次元のひび割れを閉じなければならない」
「それも主殿が?」
「いやできなくもないが、権能的にはあちらの聖騎士殿に任せたいところだな」
世界の正常化にかけては、やはりここら一帯の神話の主神格の力こそが適当だからね。
それに、彼らほどの戦力を遊ばせるのも、もったいないし。
というわけで、時刻は現在。
異相次元探査艇ダンタリオンの部隊が
私は貴族の証として、ハシシ=ミュンヒハウゼン家の大紋章を刻んだローブを亜空間収納から取り出し、堂々とそれを羽織る。
我が家の紋章は、東の砂塵の国では広大な水路網をもたらした “水の守” として有名だが、帝国でも新進気鋭の貴族にして、いろいろ手広くやってる商会(きのこのお店)を持っているということで、知る人ぞ知る、というくらいの知名度はあるはずだ。帝国隧道公団として、運河工事や隧道工事も手掛けているし、それはここ
「やあやあ、冒険者諸君! 獲物の横殴り失礼したね。あらためて、私はマックス・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼンだ。帝国においては隧道方伯にして魔導副伯の位を拝している。………ああ、戦場の習いだ、儀礼は気にしないから楽にしてくれ。周りを見ての通り、それどころじゃないしな」*5
「…………。方伯閣下、お言葉有難く。私はアイリアのフィデリオ、陽導神に帰依する在俗僧でございます」
「方伯……? 偉かりし?」 「辺境伯閣下とおんなじくれーだよ」 「ゼーナブ、下手なこと言うなよ! 冗談抜きで首が飛ぶからな」
精一杯に友好的に接触するが、どうにも彼らの反応は固い。
いやまあ、分かるよ?
ちなみに前衛のフィデリオ氏と巨漢戦士の二人は、この隙にと下がって後衛の斥候と呪術師の二人のところまで戻ってきている。
そりゃあ、私みたいな得体の知れないやつの近くに、後衛を無防備に置いとくのはマズイものなあ。
「君たち一党の戦いを見させてもらった。その腕を見込んで頼みがある。──── といっても、他ならないあの大目玉のことだがね。アレをこの世界から叩き出すために、一緒に戦わないか?」
私の提案を聞いて、彼ら一党は目配せをしあった。
「…………。少し、仲間と相談しても?」
「もちろん構わない。一党の仲間の意見を尊重することは重要だからね。ただ、なるべく早めに決めてほしい。ほら、あんな感じだし」
私が周囲のまるで流星雨のようなSF的な攻防を指差すのを尻目に、さっと顔を寄せて彼らは相談を始めた。
「どうする、フィデリオ?」
「僕としては共闘してもしなくても、どのみちやることは変わらないから構わないと思うが」
「………どうせなら “依頼” ってことにしてもらえねーかな」
「おいロタル!」
「ふむ。触媒、減りし。補填、望ましき。横取り、そも、厳禁」
「あの勢い見てみれば俺らの助力なんてなくてもどうにかなりそうじゃねーか。それなのにこうやって声かけてくるってことはだな」
「………僕たちの力を何らか必要としている、ということか」
「そういうこった。道理の分からん御仁でもなさそうだし、ダメ元で言ってみても良いんじゃないか?」
「うーん……」
相談は終わったのか、聖騎士のフィデリオ氏がこちらに向き直り、兜の面頬を上げた。
汗にまみれているが、強い意志の光を宿した碧眼が私をまっすぐに見つめてくる。
……が、どこか困っているような風にも見える。
「…………。大変失礼な物言いになるかもしれないが、それは、依頼、ということでよろしいだろうか」*6
「ん? …………。ああ! もちろんだとも。あとできちんと報酬は払うし、戦利品については要相談だが、先に戦っていたのはそちらだから、色は付けさせてもらうよ」
「おお、言ってみるもんだな!」 「若くして方伯になる器なだけはあるってわけか」 「喜ばしき」
「ただし、依頼とするからには、こちらからのお願いはきっちり聞いてもらうから、そのつもりでいてくれ給えよ」
むしろ私としては、依頼としてきちんと取り組んでくれる方が信用が置けるというものだね。
「ええ、閣下。我らは冒険者ですので。………陽導神の道に背かぬ限りは従います」
「素晴らしい。アイリアのフィデリオ殿、それでは良しなに頼む」
「は。それで閣下は我らに一体何をお望みでしょう?」
「それだが、これからあの大目玉……私たちは『
「なるほど?」
「だが、押し返しただけでは直ぐにまた戻ってくるだろう。ゆえに、そもそもの次元の裂け目それ自体を塞ぐ必要がある。貴殿ら──── というよりも、陽導神の加護篤き僧であるフィデリオ殿に、それを頼みたいのだ」
世界の壁を直すのであれば、それは主神である陽導神の権能である方が盤石だ。
私の信仰する “もったいないおばけ” の場合だと、どちらかというと、“次元の裂け目をリサイクルして転移門に仕立て上げる” 方が得意だものな……。それだとあんまり意味ないし、今回の場合は。
「奇跡の贖いについても私で役に立てることがあれば、できる範囲でなんでもしよう。喜捨でも、あるいは苦行に身を投じるあいだの生活の補償でも。
そして仕掛ける
まるで “死ぬがよい” とでも言いたげな密度の弾幕が、異相次元探査艇ダンタリオンの部隊へと襲い掛かっている。
まさしく嵐のような攻撃だが、半数の機体が防御・遊撃担当に割り振られており、シールドを張ったり魔力弾で相殺したりして、残り半数の工作担当の機体を守っている。
その一方で回転するように隊列を組んで目玉の周りを削り取る工作担当の機体の作業は順調だ。
再生する以上の速度で継続的にダメージを累積させることで、眼球回りの肉は再生を許すことなく排除され、ほぼ眼球のみが球形に露出している。
極光の半妖精ターニャを背甲に載せた巨蟹鬼セバスティアンヌも、縦横無尽に飛び回って活躍している。
………筋力値を参照しているのか、セバスティアンヌが振るうプラズマ光刃の攻撃は、深く
アイリアのフィデリオ氏も仲間に守られながら精神を集中させ、神威を降ろす準備をしている。
そろそろ頃合いだろう。
「仕掛けるぞ!!」
まずは敵の目玉をこちらに弾き出しつつ、土台である本体の方をその反動で押し返すのだ。
〈
作用と反作用。運動量保存の法則。
そのような物理法則がこの異常な空間でどの程度保たれているか不明だが、保たれている前提で動く。
というのも、単純に押し返すよりも、目玉を飛び出させる反動を使った方が良いかと思ってね。……ということをフィデリオ氏御一行に訊かれたら説明する予定だ(目玉を確保したいからなど言えるはずもないからね)。
敵の
露出したそこに引力と斥力を作用させる術式を仕込む。目玉はこちらに、土台はあちらに、だ。
さらに………
〈
引斥力作用術式への魔力供給回路を、私からではなく、
それを為すための、やつの魔力の解析結果は、すでに頭の中にある。
何かがカチリと嵌まったような感覚。
引斥力術式への魔力供給が切り替わったのだ。
その途端に、可視化されんばかりの膨大な魔力が、窃視者から術式へと流れ込む。
「スティー!!」
「承知!」
急激に
さすがは異次元の超生命体の魔力生産。
同時に土台の側は、眼球が飛び出してくる速度に比べればゆっくりとだが、確実に、次元の裂け目の向こうへと遠ざかっていく。
互いに離れゆくその二つの間をつなぐ、特大の視神経らしきなにかの綱束。
それがピンと張られる直前に、セバスティアンヌが輝く
「極光斬波!」
つなぎとめるものを失った巨大で巨大で巨大な眼球が、こちらの世界に飛び出してきた。
「もらった! 概念抽出開始────!」
この巨大な邪眼はまだ生きている。
だが、望むところ。
恐らくは生きが良い方がいいはずだ。
〈
〈
〈
本体との繋がりを切り、概念を抽出し純化。
その権能を結晶化する。
眼球の不要な部分がしゅうしゅうと溶けて体積を減らしていく。
より純粋な『眼』の権能を結晶化。
あとはじっくり術式に任せて結晶を育てておけば良さそうだ。
「おかあさま! 次元の裂け目の向こう側から、再生体が溢れますわ!?」
「チッ、往生際が悪い!!」
雑に再生したのだろう。
幾つもの触手に目玉が不規則に並んだものが、次元の裂け目から伸びてきていた。*7
もう一度押し込む必要があるだろう。
だがそのとき、びたりと触手が動きを停めた。
「……! 影縛りの呪いか!」
「ひと仕事せり」
フィデリオ氏の一党の呪術師による援護だ。ありがたい!
「この隙に押し込むぞ!! ダンタリオン各機、
『『『
32機が魔導波動砲をチャージする。
各機に融合している私の子実体クローンの内蔵魔導炉が直列励起し、唸りを上げる。
「撃てッ!!」
最大チャージの魔導波動砲が炸裂!
そのエネルギーの波濤は、影縛りで麻痺した敵の触手を打ち砕き、押し返していく。
やがて間もなく、完全に、敵が次元の裂け目から離れた。
「いまだ! フィデリオ殿!」
「心得た! “ 見よ! ただ主のみが、悪鬼犇めく獄の門を閉じるのだ ” !!」
その瞬間、フィデリオ氏の背後から後光が差し、空間の裂け目へと彼の影絵を投じた。
かと思えば、その彼の影が後光を吸い取ったかのように輝き始める。
それはまるで、神の上半身が光臨したかのようであった。
「ぬぅん!!」
フィデリオ氏が両手のひらを胸の前で合わせるような動作をすると、輝く巨神の上半身も同じ動作をして、次元の裂け目をその輝く両手のひらでプレスしていく。
「おおおおおおおおッ!!」
フィデリオ氏の両腕が鎧の腕覆いの固定ベルトを弾けさせんばかりにパンプアップし、じりじりと両手のひらの間の空間を押し潰していく。
歯を食いしばり、さらにもっと と、あらん限りの力を込める。
もう一押しだ!
「むむっ、あとひと押しなのだが………! いやそうか、太陽の光があれば!」
しかしながらその、あと一息というところから進まない。
というのも、夜になり陽導神の奇跡の出力が落ちている様子だ。どうにも時刻が悪い。
つまり、逆に、陽の光さえあれば……。
それに気付いた私は、とっさに空間を引き裂く。
〈
夕暮れ時でも夜であっても、この大地の別のところは昼なのだ。
であれば、昼の地域から、太陽の光を持ってくればいいのだ。
採光窓のように空間が剥がれ、フィデリオ氏の頭上から陽光が降り注いだ。
すると目に見えて、彼の奇跡の出力が上がった!
「はぁああああああああッ!!」
そしてついに、バシッと彼の両手のひらが打ち合わされた。その間の空間は、ゼロだ。
同時に、次元の裂け目もまた、フィデリオ氏の動きとリンクした、巨神を模した光体によって完全に閉じられていた。
これにて封鎖完了だ。
次元の裂け目が閉じたことで、この魔宮の最奥の間も、徐々に通常の空間に復帰し始めた。
「お。『眼』の権能の結晶化もちょうど終わったようだね」
私ことマックス・ロタール・フォン・ハシシ=ミュンヒハウゼン隧道方伯にして魔導副伯の前には、大きな結晶体が浮遊していた。
これが、異次元の大邪眼から、純粋な『眼』の権能を抽出し、結晶化したものになる。
「コアをくり抜いて、と」
さらにその結晶の髄から、相似形の小さな結晶を空間魔法でくり抜き、手元に転移させる。
これで、この権能結晶体は、コアと外殻に別れた。
「ターニャ! コアは君が。そして外殻はダイソン球に!」
私はコア結晶体を、ターニャへと与えることにした。
魔法によりコア結晶体を飛ばすと、それをターニャの胸へと埋める。
「んぅっ」
コア結晶体が、ターニャの胸に沈みゆき、彼女の存在に溶け込んでいく。
それと同時に、ターニャの月光蝶の翅に、ジャノメチョウのような『眼』の紋様が浮かび上がってくる。
後付けの権能だが、無事にターニャに根付いたようだ。妖精女王としての格も上がったのではないだろうか。
あとは、残った外殻結晶体を、電界25次元の魔導的ダイソン球に放り込めば、ターニャの権能とリンクしてくれるはずだ。
電界25次元の人工太陽は、その界の支配者であるターニャの下で『眼』の権能を得て、単なる物理現象として捕らえられた1兆度の火球から、わずかなりとも神威を得た本物の太陽へと近づくはずだ。
その未来を確信しつつ、私は次元の門を開いて電界25次元に接続し、外殻結晶体を放り込んだ。あとは慣性に従って、魔導的ダイソン球へとぶつかり、取り込まれるだろう。
─────── 私がこのときの軽率な行いの報いを受けるのは、そのすぐ後のことであった。
確かにあとから思えば、陽導神の敬虔な信徒の前で、
しかも、
次の瞬間。
ひと息つこうとした私の頭の中に、厳父のような、しかし神懸かった声が響いた。
私が信仰心をあまり持っていない神からの啓示だったのか、単に私を対象にしていない神託の一部が漏れ聞こえただけなのか、内容は断片的にしか理解できなかったが、それは次のようなものだった。
─────── 『不遜』 『大敵』 『ありうべからざる挑戦者』 『彼奴への神罰を代行せよ』
どうにも嫌な予感しかしない言葉の羅列である。
そしてまあ、視線の先でぴかぴかキラキラと神威を纏って光る聖騎士殿が居るとなれば、否が応でも悪い想像が高まっていくのだった。
寄食のザイナブ「(あの異形の巨鬼………上半身の方は昔に故郷の戦いで見た覚えがあるのう。確かウラガン部族の、
◆信仰者ロールプレイについて
たとえ相手が一時の戦友であろうとも依頼人であろうともあるいは上級貴族であろうとも、神託で『殺れ』と言われればそれをこなさなければならない。それが信仰者RPのツライところ。しかも今回の場合、実は、既に遣わしてもらった『時空の裂け目を閉じる奇跡』の、その
なおフィデリオ氏の一党の他のメンツも、仮にマックス何某と交戦するとして、それに参加してくれるかはそれぞれ判断が別れそうである。梵鐘砕きのヘンゼル氏は滅茶苦茶迷った末に「まあそういうこともあらぁな」とか言って付き合ってくれるかもだが、風読みのロタル氏は「いくらなんでも方伯殺しはマズイって!」と神罰代行を止めるか最低でも中立を保つだろう気がする。寄食のザイナブ女史は……美食珍味で買収すれば味方に出来るかもしれない。まあ、ダイス目次第では普通に全員二つ返事で協力してくれるというのもあり得るかもしれないが……。