フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
予算青天井とか憧れるよね……。5000兆円欲しい!!
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◆前話
Q.落日派に新品種の利権渡して良かったん?
A.帝国政府の答弁:新品種の開発過程に帝国の研究費が使われた形跡がなく、魔導師保有とはいえ一般の農業同業者組合所属の商会からの申請であったため、前例に則り処理しました。
(帝国政府農政部門の言い訳:だって申請書に“早く採れる”って書かれたのが従来の半分の育成期間とは普通思わんやん? “甘い”って記載されたのが砂糖取れる麦とは普通思わんやん? しかも第二世代から普通の麦に戻るから種を買い続けなきゃいけないとは思わんやん?(普通にそれ以降の世代でも形質保持するというのがこの時代の常識=種苗ビジネスが成り立つとの認識が薄かったので当初は利権を渡したとも思っていなかった))
(縦割りによる弊害:あと帝城が揺れた事件の関係者ってのは知ってるけど、農政部門の専決事項をわざわざ魔導炉管轄部門に知らせたりせえへんし。向こうは向こうで手打ちしたらしいからこっちはこっちで進めるでー)
8/n 冒険に行こう!-1(
ノヴァ教授らが新品種の種苗ビジネス関係で
ありがたい……! 感謝! 圧倒的感謝……!
いやまあ私とターニャも
今後は技術官僚として公務方面の経験も積まなきゃいけないし、顔を繋いで名を売るのは大事だからさ。
お披露目に向けた私やターニャのためのローブや杖の準備や、日取りの設定、会場の手配も派閥の皆様に進めていただいているところだ。
私は先の帝城を物理的に震撼させた事件を機に完全に落日派に囲われたと見られているし(というか火中の栗と化しているので他の派閥は拾いたがらない)、ターニャも私の親族ゆえになし崩しに落日派と見られているから、お披露目までもう秒読み段階だね。
そしてやはり派閥という組織の力を利用できるのは良いよなあ。
各種折衝はじめ分担して任せられるのは本当にありがたい。
というわけで私は私で自分の担当として、購入した普通の小麦に各種品種情報をコピペして上書きしてやる作業をしている。
いちいち栽培して種を得なくてもゲノム情報を<変性>系の術式で書き変えてやればちょいぱっぱよ!
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魔法が作用して何袋もの小麦が新品種の遺伝子情報に書き換えられ、さらに発芽率を上げるための処理も加えた状態になった。
いずれはこの工程も魔導具化して自動化、分業したいねえ。
大した手間ではないが、いつまでも私がやるわけにもいかないし。
やはり虚空の箱庭の拡張と工業団地化が望まれるな。
だけどまあ、当面のノルマはこれで終わり!
初年度は南方で超極早生小麦の2期作の2期目になんとか間に合うはずなので、そちらの圃場の隅で試験してもらう分をここで作ったのだ。
あとは農業同業者組合の担当に引き渡して出荷してもらい、実際に試験栽培してもらう手筈だ。
そんでもって、実際に本格導入するまでには、肥料の普及による地力の補給……のためのチッソ・カリ・リンの安定大量取得法(あるいは鉱山)の開発に、省力化のための農薬や農機の発明に、こっちから種子を送り出したり年貢を得るための物流・車輌の整備に、増えた収穫を納める貯蔵所の建設に、余剰産物の加工や輸出の設備に、水利に治水に、農地のさらなる開墾に……!
そしてそのための各種折衝……!
アグリビジネスは総合芸術であることだなあ、ホントに。
仕事が減る気がしねえな……。
寧ろ増え続けてるな!
だけどアガリも大きいからなあ……研究資金源として国からの研究費とは別に財源を持てるのはデカイ!
マネー イズ パワー……!
実際の収入として入ってくるのはまだ先だけど、それまでは何とか落日派の手元資金で回せるからキャッシュフローは破綻しない試算だ。
「ああ、おかあさま、いとしいひと。砂糖小麦の栽培もどんどん広まると良いですわねぇ」
今後砂糖が手に入りやすくなってお菓子の種類が増えることを夢見てうっとりしているのは、
妖精はお菓子好きだし、いまは
「あ、そうだった。砂糖小麦用に妖精除けの魔導具も開発しないと根こそぎ収穫前にやられそうだな」
「う~ん確かにそうなりそうですわね……。同胞には悪いですが、原料段階で吸われたら、お菓子にまで辿り着きませんし」
この世界特有の注意すべきポイントがあるだろうから、農業同業者組合の人たちとは仲良くやって現場の情報を教えてもらわないとね。
社交界デビューも待ち遠しいぜ。
私とターニャが魔導院に入院を許可されてから数日。
受講希望表に記入していた講義もそこそこ受講が許可され―― 人気講義は落選したものもあったので人づてに講義内容を聞ければいいのだが―― いよいよ私たちの魔導院キャンパスライフが始まったのだ!
……出席……レポート……実習……単位……実験……論文……ウッ、頭が……。
というのは私の中の魔導師の魂の苦悶のトラウマだが、今世の私にとっては無用の心配だ!
だって魔法チートのおかげでもう論文は何編もノヴァ教授に提出済みで、今はそれをブラッシュアップしてるところだからね。
そしてやっぱり教授位を持ってる人は違うねえ、指導が的確で非常に頼りになる。
魔導院に入った甲斐があるというものだ。
もちろん論文博士―― 論文はしっかりしているが魔導の実践が疎かな者への揶揄―― だなどと言われないように、実践やフィールドワークもしっかりするつもりでいる。
実際、データの充実についてはノヴァ教授からも指摘されているからね。
ひょっとしたら、ミュンヒハウゼン男爵領にも顔を出す機会があるかもしれないな。
―― ていうかいま気になったが、ノヴァ教授の専攻は何なんだろうか。
閉鎖循環魔導炉(前期型)の主導もやるし、私の魔法で開発された新品種の普及にも力を貸してくれてるし(種苗ビジネスの方は見返りが大きいからかもしれないけど)。
魔導炉の爆発の時にちらっと聞いた術式は、運命干渉系みたいだったしなあ。実は東雲派*1から落日派に転向した人だったりするのだろうか。
非常にマルチな天才、であるのは確かなんだろうけど。
あと魔導炉失敗の汚名を着ることにためらいがないあたりは、非常に面の皮の厚い人物であることは確かだね。
閥の長からの信頼も厚いし、私にとってはとても頼りになる師匠ではあるから、まあ今はそれでいいか。
魔導院の聴講生にとって、講義を受け論文を書き魔導を実践するのは本分ではあるが、一方で日々の糧を得る必要がある。
世知辛いね。
なお最悪喰わなくていい
種族差の暴力が
世知辛いね。
帝都だと見栄も必要だから服飾費にも交際費にもどんどんと金が出ていくしね。物価も高い。
武士は食わねど高楊枝、というわけだ。
世知辛いね。
学派学閥に入って教授と懇意になって後援を受ければ解決する―― 私やターニャ、あるいはエリザちゃんのように―― が、それは才能と人の縁に恵まれた場合。
運がなければ実力があっても燻ったままというのは考えられる。
世知辛いね。
で、まあ。
そんな窮乏する聴講生たちのために、かつて苦学生だった者も多い教授たち、あるいは
それが “御用板” というやつだ。
要は冒険者ギルドのクエストボードの魔導院版だ。
設置趣旨が苦学生の救済にあるため、利率は市井の同様のシステムよりかなり高めに設定されている。
内容はお遣いや、雑用、調合助手、買い物の荷物持ち、特殊な処理が必要な薬草の調達まで様々だ。素人には頼めないこともあるからね。
ガチなものでは、魔法の実践に付き合ってくれ(治験か?)という依頼や、極地遠方の探索行への同行者募集なんてのもある。
変わったものでは、苦学生に向けてか、自分が主催するパーティ―― 魔導院の教授は技術官僚でもあり貴族でもある―― の
依頼元の教授らとの人脈を築く手がかりにもなるし、聴講生身分でしかできないことでもある。
講義を受けるのと同じく、御用板の依頼をこなすというのもまた、魔導院における青春の一ページにして共通体験であるのだ。
私も、青春の悔いを残さないように、講義受講と並行して、精力的に依頼をこなしていくつもりだ。
というわけでエーリヒ君。
君もライゼニッツ卿の計らいで特別に御用板の利用を許可されたと聞いているが、今日は暇かい?
私は総合受付の御用板の前で依頼を吟味していたらしきエーリヒ君に声をかけた。
「……マックス!? 死んだはずでは?!」
オイオイオイいきなりずいぶんなご挨拶じゃないか。
そんな死霊を見たような顔をするなよ、ちゃんと生身だぜ?
「だが帝城を揺るがすような爆発の爆心地に居たと……エリザのところに遊びに来てくれたターニャ嬢から聞いたが」
「それは間違いない。身体の殆どが焼失したよ」
「??? 無事そうに見えるが」
「再生した。落日派の嗜みだ」
「ぇえ……?」
まあまあまあ。
そんなことは別にいいじゃないか。
重要なことじゃない。
それより今日は君に耳寄りな依頼を持ってきていてね。
君が正規の聴講生に遠慮して残り物の依頼しか手に取らないのは知っているが、そればかりだとどうしても手元が不如意になるだろう?
そこで、私がメインで君がサブという形で共同で受ければ君も気兼ねしなくて済むと思ってね。
ぜひ一緒に受けられれば助かる、というものを持ってきたんだ。
私はエーリヒ君に依頼概要が書かれた紙を差し出した。
「なになに……『試作品の新型爆弾のテスト』に『北海航路を
「報酬欄を見てくれよ、山分けしても相当になるぜー? うちの学閥から回してもらったんだけどオイシイ依頼だから是非にと思ってさー。この二つを一緒にこなせば一石二鳥じゃんね?」
「いや、いや、いや。もう字面からして聴講生向けじゃないだろ。流石に手に負えないぞ」
「おお! そう言ってくれると信じてたよ! 実はもう依頼受諾の手続きは済んでるんだ! 早速行こうぜ!」
「聞いてる?」
「いやー、技量の確かな剣士が居てくれると助かるんだよなあ。快く受けてくれて良かったよ!」
「まて引っ張るな、人の話を聞け! やめろっ!」
「じゃあ早速転移するぜー。実は今回の試作品の新型爆弾ってのはうちの閥のパピヨン卿にターニャが協力して完成した電子励起爆薬をふんだんに使った新機軸の―――」
「ターニャ嬢の自慢は後で聞いてやるからっ! おい待―――」
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魔導院で早速才能を発揮した
さあ電子励起爆薬を使った弾丸を雨霰と降らせて
『試作品のテスト』と『魔法生物のサンプル採取』なんて、いかにも初心者向けの依頼だな! ヨシ!
次回ボス戦。
推奨Lvが10ぐらい上のボス戦に連れていく畜生魔法チート転生者。ヘンダーソンスケールの漂泊卿エーリヒ教授ムーヴっぽいけど、漂泊卿の方がもっと丁寧に導入フェイズをやってくれると思う。
マックス君はマックス君で「Lv10分のバフを履かせるからへーきへーき! 権能持ちの転生者なんだし、きみならできるよ! だって君はきっと主人公なんだから!」くらい思っているので、エーリヒ君に限っては無茶ぶりが酷いようです。なお概ね善意なので質が悪い。
◆電子励起爆薬
近未来の爆薬。ニトロ系の化学エネルギーではエネルギー密度に限界があるので、物質そのものにエネルギーを付加し電子励起状態になった物質を化合して作る次世代爆薬の概念。まだ実用化されていない。威力は戦術核並みだがクリーンな通常弾頭が出来ると期待(?)されている。
爆発に一家言あるパピヨン卿が、光波と電磁の妖精であるターニャからインスピレーションを得て着想し、そのターニャの全面的な協力の下で試作品を作成した。…………何故そんなものを作ったか? “出来ると思った”から。それ以上の理由は無いし、それが研究者/技術者のサガなので……。