フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
このSSの世界線で原作より良い空気吸ってそうなの筆頭ってライゼニッツ卿だよなあ、などと書いてて思うなど。踏み台転生者をリサイクルした結果、生命礼賛主義者が大歓喜するとはなんというバタフライエフェクト。
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◆前話
名状しがたき
そしてこの計画が
マックス君「(生体シールドマシンというと前世の “あいとゆうきのおとぎばなし” にも似たのが居たな。さすがにサイズはこっちの計画のやつの方が小さいが、まあ両方とも設計コンセプトが土木機械だから似てもおかしくはない……収斂進化のようなものだろう)」
帝都の南東にある魔導区画。
そのうちのひとつの邸宅にて、今日も今日とて趣味人によるサロンが開かれていた。
サロン自体は珍しくもない。
見栄の都とも呼ばれる帝都において、貴種の
帝都北方の貴族街でもそういったサロンは開かれるし、貴族号を与えられた教授位の魔導師が居を構える魔導区画においてもそうだ。
「我ながら優れた術式だと思ったんだよ、アヌーク」
「マックス。それは確かにそうだと認めよう。事実、製図したものの複写の手間なんかが大幅に省けるのだからな」
「そうだろう?」
――― 「いいですね! そう、そういうアンニュイな感じ! すごくイイです!」 パシャッ
例えばこうやってアヌーク・フォン・クライスト同期聴講生(例によって性別反転中)と私みたいに術式談議に花を咲かせたりも、サロンの在り方のひとつだね。
「光に反応する顔料を紙に塗りつけてやるのではなくてさ、“紙の方が炭化し始める最低エネルギー” を魔法で下げることで感光させ易くするのは “これだ!” と思ったんだ」
「ああ。マックスのその発想がどこから湧いて出たかは気になるが、素晴らしい着想だ。特に
「そうしないと明るいところほど強く炭化して黒くなるから、写したいものと逆の明度になるからねえ」
「直感的に操りやすい術式にするのは大事だよな、同意しよう」
――― 「ちょっとポーズ変えてもらって、そう! そうそう! 一つの書付けを同時に覗き込んでふとした瞬間にその距離の近さに気づいてお互いにはにかむ感じで!」 パシャッ
「きちんと感光時間を調整しないと真っ黒になったりもするけどねー」
「使い手の熟練を待つのでなければ、システム的に解決すればいい。
例えば強烈な光を発する術を同時に放って、その反射光を誘導し、明暗反転して易炭化紙に瞬時に焼き付けるとかな。元の光が強ければ感光時間も短くて済む」
「アヌークのそれも良いアイディアだった。術の維持時間を短くすることで行使回数も増えるし、消費魔力が減るから使える人間も増えるだろうしね。まあ光を発するから偵察には向かないし、偵察に使う場合は長時間露光に熟練してもらう必要がありそうだ」
「それは熟練してもらうしかなかろう。それよりアイディアを即座に術式に取り入れられるマックスも凄いと思うが」
「まあちょっと
「へえ、そうなのか?」
――― 「ああ! 真剣に討論するところも素敵ですね!」 パシャッ
「きちんと論文にまとめれば、すぐに聴講生は卒業できそうな成果だと思うぞ。特に夏も終わってこれからの収穫の時期、徴収された税関係の書類の複写は大変な負担だと聞く。この術式を提供すれば、税収関係の業務に駆り出される教授連の覚えもめでたかろう」
「“写真” の術式は、正直のところ余技のつもりだったんだがなあ。アヌークも閃光のアイディア出したんだから共著にしてくれよ?」
「えー……。身に余り過ぎる……」
「私の身にも余るよ……」
――― 「“写真” というのですか、この術式! 真なるものを写し取る、んっんー、ぴったりなネーミングですね! あと論文化するならレビューを請け負いますよ!」 パシャッ
「…………」
「…………」
――― 「アーイイ……遥かに良いです……。無言で見つめ合う憂いに満ちた瞳……イイ……」 パシャッ
「「 はぁ…… 」」
私とアヌーク同期聴講生は、流石に無視するのも限界に達したので、周りをふよふよとだらしない顔で飛び回る死霊に、溜息をついて視線を送った。
「目線ありがとうございまーす」 パシャッ
<
視線の先には、私が作り出した写真術式を既に自在に使いこなすライゼニッツ卿の姿が!
そしてライゼニッツ卿が<見えざる手>の術式で把持しているのか、空中に幾つも固定されている精巧な木炭デッサン画のような紙面。
いずれも私とアヌークの何気ない日常風景を切り取ったという風情だ。
キ○ガイに刃物ならぬ、変態に写真術式!
これ以上のシナジーがあるだろうか!?
いや無い!(反語)
どうしてこうなった!!?
「もとはと言えばマックスを探しにライゼニッツ卿が研究会やってた演習室に入ってきたからだろう」
「私は悪くないはず……。しかも折悪しく図面や文献の複写効率の向上のために写真術式を試してたところだったし……」
強いて言うなら運が悪かった。
幸いだったのはミカ君がライゼニッツ卿と鉢合わせしなかったくらいか。
ミカ君まで変態の毒牙に掛けるのは忍びなさ過ぎる。
ともあれ、人工ものとはいえライゼニッツ卿好みの容貌である私とアヌークは、それぞれが師事する師匠や御家に連絡を素早く飛ばして許可を得たライゼニッツ卿に―― 無断で他閥の者を攫うと学閥紛争に発展する危険があるのだ―― 拉致されるように連れられていき、彼女の所有するサロン用の邸宅で撮影会(強制)をやっているのだ。
周りにはライゼニッツ卿と趣味を同じくするメイドたちが控えていて、非常に羞恥プレイな気分だ。
「はぁ~♡ 堪能しました! この写真術式による
それは良かったですね、ライゼニッツ卿。
肌艶の良い―― 死霊にこの表現はいかがなものかと思うが―― 彼女の様子を見て、私たちも一息つく。
流石にこれで終わり―――
「では衣装チェンジです! お色直ししましょう! 仕立てたいですけど今日はありもので我慢ですかねー」
あ……ああ……私たちはいつ解放されるのだ……??
さらに何度か衣装チェンジをし、ようやく本題に入れたのは、夕刻になってからだった。
アヌーク・フォン・クライスト同期聴講生は、家の門限の関係もあって、解放されたら直ぐに帰っていった。いいなあ。
ちなみにアヌーク同期聴講生に施されている性別反転・理想容貌化の術式については、すでにライゼニッツ卿は把握済みだったらしい(ちなみにそのとき中性化も可能か聞かれたが、別の術式を作れば可能な気がする)。
あと普通の教育者らしい感じで 『同意なしの術式行使はいけませんよ』 と
同じ口で 『でも1回くらいは誤射かもしれませんね。もう1回くらい盛大に誤射しても良いんですよ?』 と
それに加えてアグリッピナ氏経由で若返り魔法薬も把握されているだろうから、場合によってはライゼニッツ卿のサロンから、性別反転や理想容貌化や若返りといった術式の依頼が来るやもしれん。
というか来るだろう。絶対依頼が来る。間違いない。
……その時は吹っ掛けてやろう……そのくらいは許されるはずだ……。
「ライゼニッツ卿、そういえばなぜ私を探していたのですか? 思念通話でも飛ばしていただければ対応いたしましたのに」
折角だからと出された夕飯をいただきつつ―― 物を食べない死霊の前で私だけ食べるのも悪い気がするのだが―― ライゼニッツ卿に問うた。
「たまたま講義の合間に通りがかったのでついでにと思いまして」
「あの、それで開発中の術式を持っていかれたらたまったものではないのですが」
「てへっ」
なんだおいこの死霊かわいいな。
「こほんっ……ご安心なさい。きちんと論文化されるまで秘匿しますよ。
でも早く論文にしてくださいね? 秋の税収確認作業が終わらないうちに、ぜひ! ぜひ!」
―― 私もレビューは手伝いますから。とおっしゃるライゼニッツ卿。
よほど税収の確認とそれに伴う書類作成は大変らしいのと、写真術式の使用感を気に入ったのだろう。
「まあそれより本題です。お伝えしたかったのは、そろそろヘルガちゃんの目を覚まさせようと思いまして、そのご連絡です」
「なるほど、確かにそろそろいい時期ですね」
ライゼニッツ卿から伝えられた内容を聞いて納得した。
もう夏は終わり、秋になる。
ライゼニッツ卿に預けたヘルガ嬢を、霜が降り始める前に―― ヘルガ嬢の
となれば……。
「エーリヒ君にも同席してもらう必要があるでしょうね」
「そうですね、私も治療がてらヘルガちゃんの記憶を覗きましたが、その方が良いでしょう。
エーリヒ君には私から招待状を送りますが、マックス君からも伝えてくれますか?」
「お安い御用です」
お姫様の目覚めには、王子様の立ち合いがなければ締まらないものな。
◆写真術式
銀塩写真や青写真は、光のエネルギーで化学反応が進んで発色する薬剤を用いる。
要は光に反応すれば良いのだが、凸レンズによって収束した光が紙を焼くのも反応のひとつであることから着想を得て、普通の紙に対して、とても日焼けしやすくする魔法をかけることで薬剤の代わりにした。反応しやすい薬剤を塗るのではなく、普通の光でも焼かれる程度まで紙の側の耐久を下げる術。一見すると精巧な木炭デッサンのように見える。キレイに撮るためには西暦世界の写真と同じように露光時間など様々な点で熟練が必要。
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コピーや写真の術式を開発してさらに過労死フラグを積み上げていくスタイル。
マックス君「でもこれがないと逆に業務効率が悪すぎて過労死するし! 何をするにもないと困るって異世界人の魂がうるさいし!
民業圧迫? 市井の魔法使いは少ないから魔法使いじゃない複写職人の需要はそこまで喰わないはずだし、魔導書の複写は単純に光学的にやっても意味ないから住み分けできるはずだし!」
なお直径は10~20mを目指しているので、“あいとゆうきのおとぎばなし” の
次回はヘルガ嬢の目覚め。