フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆若返りと性別反転の違い(独自設定)
若返り(老化の打ち消し)は、魂に刻まれている自然な情報(かつては若かったことを魂は覚えている)を呼び起こしているので魔術として定着可能で、性別反転は魂に根差してないので定着不可(一時的な作用である魔法止まりで魔術として定着しない)、という想定です。
ということは逆に、性同一性障害の場合は、魂の方のイデア的な性別に魔術として固定可能なのかもしれませんね。

===

◆前話
眠り姫(ヘルガ嬢)を起こすから王子様(エーリヒ君)を呼ぼう
 


10/n 霜の妖精ヘルガと優しい世界-2(夢の中へ)

 

 私とアヌーク同期聴講生が、度し難い変態の死霊のコスプレ大会に付き合わされた翌日。

 我々はヘルガ嬢が静養している死霊の館(ライゼニッツ卿の持ち家のひとつ)の玄関ドアの前までやってきていた。

 

 

 ではこの死霊の館に挑む頼れるメンバーを紹介しよう!

 

 

 まずは私ことマックス・フォン・ミュンヒハウゼン!

 魔法チート転生者の肉体に異世界人・魔導師・邪教信仰者の3つの魂の破片を捏ねたキメラ魂魄を突っ込んだナニかだ!

 無限の魔力と多彩な術式、そして死んでも生き返るタフネスが売りの落日派聴講生(マギア見習い)だゾ。

 外見特徴としては金髪と深い海のように澱んだ蒼の瞳が目を引く思春期美少年! しかしその美貌は魔法による整形と妖精の加護によるものだ。

 

 そして私の脳みそをパッカーンして生まれた我が娘、極光の妖精(アウロラ・アールヴ)が受肉した半妖精であるターニャ・フォン・ミュンヒハウゼン! 真の名はタチヤーナ。

 大喰らいの極光の妖精(アウロラ・アールヴ)だけど魔導炉を吞み込んでいるから地上での活動は問題なしだ。

 極光……すなわち光波と電子の妖精でもあるので、その権能に応じた魔法を使うぞ。

 見た目は虹色に揺らめくような髪をたなびかせる第二次性徴はじまるくらいの美少女だ。私と並ぶと2歳差くらいの兄妹にみえるだろうね。

 魔導師らしく蒼い瞳のような宝石を杖頭につけた杖を持っている。またその背中からは、オーロラのような色の非実体的な蝶の羽が生えているようにも見えるし、実際物理的に浮いている。

 ちなみに私と同じ落日派に所属する聴講生でもある。

 

 続いてのご紹介は、長く麗しい金髪の魔法剣士。

 転生者仲間という秘密を共有するケーニヒスシュトゥール荘のエーリヒ君だ!

 彼は自分自身をまるでTRPGのキャラクタのように自在にビルドできる権能を持っている『可能性の獣』だ。

 声変りが始まる前くらいの美少年で、平均より背が小さいかもね。次の秋に13歳になるそうだ。金髪碧眼の例に漏れず、妖精たちに好かれているよ。

 災難にも愛されているらしく、廃館に封じられていたヘルガ嬢を見出したのもエーリヒ君だ。

 今は妹の師匠である長命種(メトシェラ)の丁稚もしているから、その職業(クラス)は魔導従士と言っても良いかもしれない。

 

 最後の一人はそのエーリヒ君の妹君であるエリザちゃん。エーリヒ君の5つ下……だったかな。

 かわいらしい顔と手入れの行き届いた金髪。今日は余所(よそ)行きの服を着て、大好きな兄君とお出かけだからか上機嫌だ。

 エリザちゃんは半妖精でもあり、アグリッピナ氏の下で魔導師となるべく修行中。最近はお香を調合したり、それを触媒にする魔法について開眼し始めている。香りというのが妖精としてのエリザちゃんの権能に近いんだろうね。きっと魔導院に入学できる日も遠くはないはずだ。

 うちのターニャとは半妖精という境遇が共通していることもあり、仲のいい友人同士だ。

 

 

 

 ちなみに人選の経緯は、ヘルガ嬢の戸籍上の兄妹であることから私とターニャ。そして目覚めのキーパーソンであるエーリヒ君に、彼の付き添いと半妖精仲間としてのエリザちゃん。ターニャも半妖精的なシンパシーを期待されている。

 うむ、見事に美少女美少年で構成されたパーティだな。

 きっと、生命礼賛主義者(ロリショタコン)死霊(レイス)の館に招待されたとなれば、帰還の望みは薄いと判定されるだろうメンツだ。

 

「ヘルガが目を覚ますのが楽しみですわね。マックスおかあさま」

 

「そうだな、ターニャ。十分休んだし、きちんと正気を取り戻してくれているはずだよ」

 

 ヘルガ嬢をライゼニッツ卿に預けてからは、ライゼニッツ卿が治療を引き継いでくれている。

 私よりも精神魔法に造詣が深く、精神という繊細なものの扱いに熟達した魔導師(マギア)であるライゼニッツ卿ならば、私が想定していたよりも高度な治療を施している可能性も高い。

 いや、間違いなくそうだろう。欲望に忠実すぎるきらいがあるだけで、ライゼニッツ卿のその惜しみない慈しみは本物なのだから。

 

「確かにライゼニッツ卿は精神魔法の権威だと聞くからね。心配いらないさ」

 

 エーリヒ君は少し緊張気味に、自分に言い聞かせるみたいにそう言った。

 まあ緊張するのも仕方ない。

 ヘルガ嬢の脅威に一番さらされていたのはエーリヒ君だし、軽い気持ちで彼女の封印を解いてしまったのもエーリヒ君だ。

 ……せめて封印を解く前にアグリッピナ氏でも呼んでいればまた展開が違っただろうにね。

 

「ヘルガおねえちゃん、元気になったかなあ」

 

 半妖精としての霊感的な知覚でヘルガ嬢の魂魄の傷の深さを直感的に知っているエリザちゃんは、とても心配そうだ。

 廃館から帝都までの道中で、ヘルガ嬢の身の上やその容態を見守ってきたのはエリザちゃんも同じ。

 心配するのは当然ともいえるが、エリザちゃん自身がきちんとエーリヒ君を始めとする家族から愛されて育ってきたが故の反応でもあるのだろう。

 

 

「ではいざ行かん、死霊の館に眠り姫を起こしに!」

 

 気取ってそう言う私は、魔導的な認証キーでもあるライゼニッツ卿からの招待状を扉にかざした。

 無事に認証され、扉がゆっくりと下品にならない程度の速度で開いていく。

 扉が開いて見えた玄関の先の広間には、ライゼニッツ卿が楚々として佇んで我らの来訪を迎えてくれている。

 

 なおエーリヒ君は私にだけ<声送り>の術で「無駄にフラグを立てないでくれ。本当にクエストになったらどうする」と窘めてきた。

 

 

 

 ハハハ、いやまさかそんな、こんな帝都の真ん中でしかも招待状まで貰ってやってきたのにそんな冒険になるはずがないだろうハハハハ───

 

 

 

 ─── ( ˘ω˘) スヤァ ZZZZzzzzz……。

 

 

 

 

§

 

 

 

 死霊の館の女主人にして凄腕の精神魔法の使い手であるマグダレーネ・フォン・ライゼニッツは、館に入るなり眠りに落ちた4人の少年少女たちが床に倒れないように<見えざる手>の術式を伸ばして受け止めた。

 

 そしてそのまま持ち上げると、階上へと運んでいく。

 

 この館の使用人たちがライゼニッツ卿の行く先の扉を開けると、そこは白が目立つ清潔な部屋だった。

 

 ライゼニッツ卿はその部屋の真ん中に置かれた天蓋付きの大きなベッドに寝ている先客………ヘルガ嬢の横に半妖精の少女2人(ターニャとエリザ)を寝かせる。

 金髪碧眼の少年2人(エーリヒとマックス)は、それぞれの身内の寝ている側のベッドサイド用意された椅子にもたれ掛からせる。

 

 そして、マックス、ターニャ、ヘルガ、エリザ、エーリヒそれぞれの手を繋いでやった。

 

 

「完璧ですね」

 

 

 余所行きを着た4人の少年少女に挟まれた、白い儚げな療養着を着たヘルガ。

 ライゼニッツ卿は、パシャリと写真術式でその姿を紙に転写すると満足げに腕を組んで頷いた。

 

 そして彼女自身はどこからか取り出した薄い本(シナリオ)を開いた。

 

 

「ヘルガちゃんを目覚めさせるにあたっては、彼女の納得が必要です」

 

 

 ── 彼女に一時の救いはもたらされました。

 ── エーリヒ君が抱きしめる中で眠りに就くことで。

 

 ── ですが無事に目覚めるためには、それだけではいけません。

 ── 治療の過程で彼女の精神を覗く中で気づきました。

 ── ヘルガちゃんには、父親との離別……いえ、訣別が必要です。

 

 ── そしてその儀式は、詩的で、劇的で、前向きなものでなくてはなりません。

 

 ── 愛と勇気。友情と努力と勝利。

 ── その末に掴む、しがらみからの解放と、永訣。

 ── それは激しく英雄的(ヒロイック)で、劇的(ドラマティック)であればあるほどよろしい。

 

 ── それが自然な納得を生むのです。

 ── それこそが葬礼の起源なのです。

 

 ── 父の幻影を弔い、思い出として自らの内に埋葬し、涙を拭って明日へと歩み出すのです。

 

 

 自らが怒りのままに仇の家を滅ぼした経験がある死霊(レイス)は、実は結構な体育会系(スパルタ)な思想の持ち主だった。

 鮮烈で暴力的ですらある、過去との決別の儀式。それをマグダレーネ・フォン・ライゼニッツは肯定する。

 

 もはやヘルガが愛した父は、妻であるヘルガの母の死により変貌し、そして既にこの世から去っている。

 それは避けがたい事実である。

 なればこそ、ヘルガはそれを認知し、消化した上で踏みださなくてはならない。

 

 ヘルガ自身は何も悪くなく、弱くて狂うしかなかった父が悪かったのであると、認めなくてはならない。

 切っ掛けは誰かに指摘されるのでもいいが、彼女が自分自身で真に納得する必要があるのだ。

 

 父の狂気と不幸に対して負うべき責任などないことを。

 そして。

 自分には幸せになる権利があるのだということを。

 

 

 

 ライゼニッツ卿は、ヘルガが眠っているうちに施した治療中に、彼女の記憶を隅から隅まで確認している。

 

 そしてそこで得た記憶の情報をもとに脚本(シナリオ)を作り上げたし、期待できる珠玉の役者(キャラクター)も揃えた。

 

 

「愛と勇気。友情と努力と勝利。その末に掴む、しがらみからの解放と、永訣。

 皆さんならきっとやり遂げてくれると信じていますよ」

 

 

 マグダレーネ・フォン・ライゼニッツは魔力を滾らせ、監督 兼 脚本家(ゲームマスター)として、眠る5人の少年少女(プレイヤー)精神(ゆめ)に干渉を始めた。

 




 
次回、『鬱クラッシャーズ、夢の世界で大いに暴れる』的な話になるはず。
(各自の夢の世界を連結したものでもあるので、ライゼニッツ卿が把握していない技能でも各自が自分が使えると思ったら使えます。つまり魔法チートはエミュレート可能です)

原作書籍版2巻ではヘルガ嬢が手遅れなまでに狂ってしまっていることが篤く描写してあるので、二次創作とはいえそれをひっくり返すためにはまだまだ描写が足りないだろうと考えまして、シナリオ追加となりました。



Q.そんな気軽に精神魔法使って良いの?
A.治療だからセーフ!(ホントか?)
 
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