フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
余談ですがマックス君の虚空の箱庭のフライホイールのビジュアルイメージは、Fateのエミヤの固有結界の歯車に少し影響されてたり。どっかのSSか何かでエミヤ氏があの歯車に敵を挟んで/剪断して殺してるの読んだ覚えが、ある、よう…な……(幻覚では? 要出典)。
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◆前話
『英霊召喚の魔本』を手に入れたぞ!(一部のSRPGであるような経験値調整用 or やり込み要素の無限鍛錬ダンジョンみたいなアレ)
戦い続ける歓びを──!! なお当然の如く呪われている模様。
Q.マックス君の実力があれば、エーリヒ君が重症を負う回数を重ねる前に魔本の呪縛を解いて無限
A.マックス「故意ではなく過失とはいえ私が丹精込めて作った研究所が崩壊するきっかけを作ったことに対して腹を立てて、わざと手を抜いてた、とかそんなことは全然ないです。はい、まったく関係ないです。あの神剣めいた魔剣は奇跡寄りの天然自然な存在なので、世界の摂理として魔法チートに優越してますからね、時間かかるのも仕方ありませんよ(棒)」
Q.やはり虚空の箱庭が壊滅した原因だから怒っている?
A.マックス「怒ってないです。私を怒らせたら大したもんですよ」ニッコリ
Q.本音は?
A.マックス「……上手いことエーリヒ君に対して貸しにできねーかなーって思ってます。虚空の箱庭の方は再建するのは手間ですが、これもまたリサイクルですし “もったいないおばけ” を信仰する者としては功徳を積む良い機会でもあるので実際そこまで気にしてはいないです。これはガチで。……ただ、まあ、何がしかのケジメは必要なので、貸しにできないかなぁ、と」
私とエーリヒ君とミカ君、三者三様になんとか落ち着いたので、魔剣の前所有者であった
「さて何処から何を話すべきかね……」
そこでクゥ~~、と腹の音。
腹の音の主を見れば、そこには軽い羞恥に頬を染めたミカ君が。
……かわいい。とてもかわいい。
「いやこれは、その。ほら、結構長い時間、魔宮を探索してたから……」
そこでミカ君のお腹が狙い済ましたみたいにまたクゥ~~っと鳴ったので、ひとまず腹ごしらえすることに。かわいい。ベリィキュート。
とは言っても、エーリヒ君もミカ君も、ちょっと日帰りで森の浅瀬までピクニック、というくらいの装備と持ち物でやって来ていたものだから、水や食料のお持ち合わせがそうあるわけでもなく。
「いや何から何まで申し訳ないね、マックス君」
「なに、気にするなよ、ミカ君。同じ研究会のよしみじゃないか。ああエーリヒ君の分もついでに用意するとも」
「私はついでか」
「そらキミ、ミカ君と比べたらそうもなるさ」
「わかる」
「だろう?」
ミカ君は世界の宝だよ間違いない。
エーリヒ君と私はその点で見解の一致を見せ、「「 Yeahhh!! 」」と手をパシンと打ち合わせた。
「……なんか仲が良いというか、気安い、ね? 我が友。そして我が同期」
微妙に嫉妬ともつかない感情を怪訝そうな表情に乗せるミカ君もかわゆいね!
まあとりあえず飯にしよう。
虚空の箱庭の研究所は魔剣の襲来に伴うフライホイール剥落によって結構破壊されたとはいえ、無事なところも多い。
食材のストックや調理ブースは幸いにも比較的無事だったから、今こうやって2人と適当なやり取りをしてる間にも、料理の準備は虚空側で生き残りのホムンクルスたちが進めてくれている。
<空間遷移>で虚空の箱庭から丸い食卓と椅子を3脚呼び出して、と。
品種改良済みの自慢の野菜を、砂糖麦から精製した砂糖で甘みを加えたスープに塩とスパイスで味付けしてごろっと煮込んだ鍋に。
主菜は丸々としたソーセージを炭で炙り焼きにして辛子を添えたもの。肉汁が滴ってもう見るからにおいしそうだ。
主食は癖のない
「さあ召し上がれ」
「「 おおぉ~~! 」」
食器も出して配膳して準備万端。
軽く神への祈りを捧げれば、二人ともがっつくように食べ始めた。
「うまい! ああやはり素材が違うな、マックスのところの野菜は」
「品種には拘っているからね。これもまた落日派の生命操作技術のちょっとした応用というやつさ」
なにせ数百年分の品種改良データを反映しているし、いまも虚空の箱庭のエミュレータで気が向いたときに改良を続けている。
エーリヒ君が褒めてくれたとおり、自慢の逸品ぞろいだとも。
「じゃあ食べながらで良いから情報共有しようか」
「そうだね。僕もどういう経緯でマックス君がここに居るのかとか良く分かっていないし」
「逆にマックスは私とミカがここに来るまでの経緯も良く分からんだろうしな」
虚空から取り出したストックの安ワインも開けて水と一緒に<見えざる手>でそれぞれの陶器のコップに注いでやる。さらに香りつけに果物の欠片を一つ放り込む。
しゃばしゃばのワインは食事のお供の水分補給には定番だ。それをグイっとひとくち。
「それではまずは私から話すか、その間にミカ君とエーリヒ君は食べててくれ。その方が良さそうだしな。お腹空いてるだろう?
…………発端はその魔剣が、亜空間に維持している私のラボに飛んできたことで───」
ん? なんか壁に立てかけてるその魔剣、さっきよりこっちに近づいてね?
……気のせいか?
「どうかしたか? マックス」
「ん、ああいや。多分気のせいだろう。……話を続けるが、そこの魔剣がいきなり私が管理する亜空間に飛び込んできてだね───」
かくかくしかじか。
「ええっ、亜空間の工房が結構な被害を受けたって……それ大丈夫なのかい?」
魔導師にとっての工房の重要さを知るミカ君には、その被害の大きさを心配され。
「お、おおぉ……まさかそんなことになっていたとは……」
損害の大きさにエーリヒ君は頬を引くつかせた。損害賠償の心配かな?
……まあエーリヒ君が魔剣ちゃん’sブートキャンプで腕やら足やら臓物やらをポロリしてたのを見て、私も多少溜飲は下がったから無茶な要求をするつもりはないよ。
そもそも亜空間に違法建造したものだから、帝国法上の資産としてどこまで認められるか分からん代物だしな。
あと故意ではなく過失だし緊急避難だしで、エーリヒ君にも酌量の余地はあるし。
「ま、貸し5つ分くらいにしとこうか」
「……
ああ、そういえば冬ごろにはそれも一部はもらえるはず。別にエーリヒ君の分までは要らんけど。
「金よりもエーリヒ君への貸しにした方が価値があるから、褒賞金は取っておきなよ」
「金で片付けた方が安心なんだが??」
「だからだよ。それに金はこれからどうとでもなるしな」
いやー、貸し5つ分とか、何してもらおうかな!
技量が必要な
それともエーリヒ君の権能の解析をがっつりやる感じか?
あ、ライゼニッツ卿のコスプレ会の代打を頼むというのも良さそうだな……。
結果的には悪くない取引だ!
って、あれ。ミカ君どうした、そんなに蒼い顔して。
ああ、ミカ君は苦学生だからねえ。金の話は耳の毒だったか。
いやそうじゃない?
え? 私の脇腹? 別に何も──
「って、なんじゃこりゃあああああ!!??」
ミカ君に言われて自分の脇腹を見ると、そこにはいつの間にかすり寄ってきていた漆黒の厄い魔剣が!!
まるで定位置のように!
椅子に座った私の左下半身から脇腹にかけてっ、めり込んでいるゥゥウウ!!?
「マックス君、それいったいどうなってるんだ?! 痛くないのか!? どんどん魔剣が! 沈み込んでいっているぞぉおお!!」
「い、痛くないんだ、ミカ君! 恐ろしいことに、
「“むしろ……”、なんだい!? 気をしっかり持って! ほら、エーリヒも、これ抜いてやらないと!」
「あ、ああ。すまん、あまりの光景に呆然自失としていた……、何なんだこの剣……」
疲れからかエーリヒ君はSAN値チェックに軽く失敗していた模様。
ホント何なんだろうね、この魔剣。
だが私は私でそれどころではない。
「───
そうこう言っている間にも、漆黒の魔剣は私の身体にその刃を埋めていく。
明らかにあり得ないのに、
間違いない! スタンド攻撃 この神剣じみた魔剣の権能だ!
こいつ、何が気に入ったのか知らんが、私のことを本気で鞘にするつもりだぞっ!!?
─── この! “はーやれやれひと休みするかー”、みたいなノリで人の身体にめり込んで沈んでいくんじゃあないっ!!
「くっ、呼びたくない、呼びたくないが、これを放っておくのもマズい気がするっ。
─── 来 い 、 魔 剣 よ ! !」
気を取り直したエーリヒ君が魔剣を呼ぶ。
と、まるで何もなかったかの如く、私の中から魔剣が消え失せ、エーリヒ君の手に納まった。
「だ、大丈夫かい、マックス君……?」
「あ…ああ。何も問題ない。むしろアレだけがっつり肉に沈み込んでいたのに、回復魔術も使わずさっぱり元に戻っている……」
「ええ……? これもうちょっとした怪奇現象だよ……」
ドン引きするミカ君と私。
しかも魔法の発動を感じなかったから、これ、こういう現象として世界に定義されてる、つまりは “神の奇跡” と同じカテゴリって訳で……。
こいつこの禍々しいオーラのくせに、やっぱり神剣というか、神の系譜なんじゃねーか……。
エーリヒ君はエーリヒ君で、呼んだらホントに手元に喜び勇んで顕れた魔剣から “ごすずん、ごすずん、なに切るなに斬るねえなにKILL??” って感じのねっとりした歓喜の思念をぶつけられて心が折れそうになってるし。
……若干同情しなくもないが、飼い主としてしっかり躾けてくれ、マジで。頼むぜ。
あれ、なんで思考形態が違いすぎるはずの魔剣の歓声を私は理解できてるんだ?
って、やっぱり侵蝕されてるんじゃねーか!!
放っとくとやばくね?? このままだと完全に『鞘』にされる……ッ!!
それで、えーとつまり、とりあえず、あれだろ?
きっと、その魔剣と私の間で何か因果の糸が絡まってるんだろ??
カテゴリというか、作用機序的には神の祝福とか聖別とかそういうアレの分類が正しいんだろうけど、あの魔剣の見た目が見た目だけに、呪われてるようにしか思えん。
呪いの装備の効果はエーリヒ君だけに与えといてくれ。私を巻き込むな。
「それでどうするんだい、マックス君」
「まあ呪詛への対応は決まってるからなあ。
とりあえず、ミカ君に答えたとおり、呪い雛の要領で呪詛を移す。
幸いにも虚空の箱庭が
どうせあの英霊召喚の魔本も運用しないといけないんだから、内蔵されてた魔導炉もそのまま流用しちゃえ。そうすれば私が居なくても、こっちの鞘の方からの魔力供給で鍛錬できるようになるだろ。
<
虚空の箱庭からホムンクルスの残骸パーツを呼び寄せて、魔法チートで捏ねて鞘の形に形成する。
こう、ミイラが絡みついて抱き着いたみたいな感じの肉々しく生々しい鞘になったが、この際仕方ない。
魔法チートさんに造詣センスを期待してはならない(戒め)。
……ま、どうせ持つのは私じゃないし。
そして出来上がった鞘をエーリヒ君が持つ魔剣の方に投げる。新しい鞘よ~~。
すると途中で
その辺を漂っていた
とか思ったら、肉鞘の頭蓋骨パーツが喋り出した。ああ、憑依したのね。
『ヘイ、ハニー! 鞘になった俺にずっぷし刺してくれよぉおお~~!!』
ええ……?
あっ。そっかぁ。入り込んだ幽霊って、さっきまで魔剣の迷宮の核になってた冒険者さんでは?
きっとそうだわ(確信)。
割れ鍋に綴じ蓋じゃあないが、呪われてそうな魔剣に呪われてそうな鞘だから、うん、ぴったりだよね。
そして冒険者が憑依した肉鞘が、わざわざ自ら切り裂かれて血を滴らせながら魔剣をその内に納めた。
『ああ……』(恍惚)
「「「 うわぁ 」」」
エーリヒ君らと一緒にドン引きしてしまった。この憑依した冒険者の霊魂、きっと生前は剣を抱いて寝てそうなくらいに、この魔剣に執着してたのだろうなぁ。
魔剣の方も肉を裂く感触に満足したのか、思念の波が幾分大人しくなった。
「エーリヒ君、その鞘あげる」
「え……要らん……」
「早速貸し一つ使うからその鞘受け取って! じゃないとまたその魔剣が私の方に来るから」
「……はい……」
「心ばかりのお見舞いに、鞘を吊るせる剣帯、ついでに魔本も吊るせるようにしたのをあげるから」
「これを持ち歩けというのか!?」
「鞘の方も転移は可能だけど、剣帯に鞘を吊るしておけば内蔵した魔導炉から魔力供給受けられるようにしとくよ? 常に持ち歩かないにしても、本気で戦うときは吊るしといた方がいいと思うけど」
実用性は高いと思うけどなあ。
なおビジュアルには目をつぶるものとする。
エーリヒ君も葛藤したようだが、最終的には首を縦に振ってくれた。
うむ! これで三方丸く収まって良し!
エーリヒ君が魔剣と合わせてさらに禍々しい魔剣士って感じのビジュアルになったけど、それくらいは些細なことだよね!
元人間の魔族側幹部って感じが凄くする。
いいと思うよ!
じゃあ少し休んだら森を出ようか。
あとエーリヒ君たちの事情も聞いたけど、ここにおつかいに来る発端の『
それ、気になるなあ。
私の中の邪神信仰者の魂が、なんかざわめいてるんだよね……。
◆没ネタ
エーリヒ君「このヴルスト美味いな。不思議な風味だが何の肉だ?」
マックス君「本当に食べてしまったのか?」
エーリヒ君「……何の肉だ?」
マックス君「ふふ冗談さ。心配するな、いくら私がリサイクルマニアでも、別に
エーリヒ君「─── そのベースは?」
マックス君「海蛇竜やら無肢竜やらなんやらと……ミミズ」
エーリヒ君「!!??」
ミカくんちゃん「(口を付けなくて良かった……)」
※没ネタなので、本編中で振舞われた肉が何の肉か、その答えは皆さんの心の中に(たぶん普通に豚の肉)。
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魔剣の肉鞘に、前の持ち主の霊魂がIN!!
なお魔剣ちゃんは昔の男とはすっぱり関係を切ってる認識の模様。あなたとはもう終わった関係なのよ、でも