フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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これ迄の話もそうですが、踏み台転生者ポジとはいえ原作キャラ下げ表現があるので念のためアンチ・ヘイトタグをつけています。

◆前話
「人的資源」(よりダイレクトな意味合い)
 


2/n 過去の清算-2(偽装の帰郷)

 

 悪党との縁を潰すついでに軍資金を得て懐も温かくなり、もう魔導院に入るのに障害はない。あ、いや新しい臣籍が要るか。

 

 文字通りの“人的資源”も大量に手に入ったし、それを素材として片っ端から人造人間(ホムンクルス)に転化させて、次元の狭間にある虚空の箱庭で働かせている。

 魔導炉を埋め込んで、魔法を使えるように知識も植え付けているから、素材や消耗品の生産やなんかはこいつらに任せられるだろう。こいつらの魔導炉の出力はほぼ恒常性維持(ホメオスタシス)術式に取られているから大規模魔導は使えないし、契約で縛っているから反逆の心配もない。

 

「身代わりにも出来るし、我ながらナイスアイディアだ」

 

 そう、人造人間(ホムンクルス)たちは私の因子を埋め込んでいるので、魔導的観点からは非常に高度な身代わりにもなり得るのだ。

 呪詛を受けてもこいつらがまずは被害を肩代わりしてくれるだろう。いや、肩代わり()()()

 ブラックだって? これも契約の内だから問題ないさ。

 

 

 それで今は、辺境をぶらぶらしながらかつての故郷へと向かっているところだ。

 街道近くの森で薬草を採取したり、寄った村々で水路や溜池の浚渫(しゅんせつ)がてら土砂を虚空の箱庭に送って、採取した薬草を栽培する薬草園を作らせたりしている。

 

 

 え? なんで故郷に向かっているのかって? 表向きは死んだことになっているのに?

 

 まあそこは私の中の邪神信仰者の魂と異世界人の魂が、『不義理をしたままなのが耐えられない』とうるさいからだ。

 魔導師の魂はそんなのほっておけと言うのだがね。

 

 だがまあ二度目の人生だ、悔いのないように生きることは大事だろうさ。

 新居にごみが落ちてたら片付けたくなるだろう? 清々しい新生活のためのちょっとした苦労というやつさ。

 

「一応、顔を変えるくらいはしておこう」

 

 

 肉体変容整形術式(これが……わたしっ!?)

 

 

 黒髪の冴えない風貌を、金髪碧眼の美男子に。

 ついでに幾らか若返らせておくか。

 これで白皙の美青年から、紅顔の美少年になった。

 

「こんなもんか。……妖精が好きそうな見た目だな。まあいいか」*1

 

 光を歪めて空中に鏡のように投影して、変化した自分の姿を()めつ(すが)めつ。

 なかなか良い出来だ。

 

 あとはどういう縁でこの身体の故郷に来たことにするか、だな……。

 ちなみに今さらだが、この身体の方の名前はマックスと言うらしい。オットーの子、マックス。*2

 

 そうだな、設定としては……

 

「『マックスさんは私の魔法の才を見出して指導してくれた師匠であり恩人なんです。

  だけどその師匠は、作った隊商を悪党に騙されて利用されて悪事の片棒を担ぐことになってしまって、責任を取って悪党を全滅させて自裁なさいました。立派な最期でした。

  その師匠の遺言を受けまして、故郷への恩返しの肩代わりと、師匠の遺品を届けにやってきたのです……』とかいう感じでどうだろうか」

 

 紅顔の美少年がこれを健気に訴えかければイチコロだろう。

 

 実際は、悪事の片棒を担ぐも何も主宰だったが、それよりも耳通りの良い『真実』の方が良いのさ。

 聞く方に『都合のいい真実』の方が、ね。

 かつての関係者らとしてはきっと、『身内から悪党が出た』よりも、『悪党に騙されたが責任を取って死んだ』の方が心情的に受け入れやすいだろうよ。

 

 実際巡察吏の聴取資料もそういう風に改ざんしておいたし、悪党側は大体潰したから問題ない。

 

 あとはケーニヒスなんたら荘の被害者たちの方から真実が漏れることがあるかも知れないが、こっちの肉体の方の故郷とは場所がかなり離れているから心配しなくていいだろう。

 

 それ以前の被害者たちについても、既に因果を辿って今の居場所を突き止め、賠償金としてこの間に悪党どもから略奪した資金の一部を転移して送り付けている。

 硬貨の表面を適当に変化させて、妖精か小人か何かの仕業に見えるようにして、な。

 被害者が既に亡くなっていた場合は、まあ、仕方ない。この身体の持ち主の魂は既に洗い流されているのだから、それでお相子(あいこ)ということで勘弁してもらうさ。

 

 究極的には私の中の魂たちが納得するかどうかが問題なのだ。

 相手の納得は求めていない。

 この命の軽い世界で相場以上に補償したからそれでお仕舞いでいいと思うがね。

 新しい人生を清々しく過ごすための自己満足が必要なのであって、償いそのものをしたいわけじゃない……自分勝手な自覚はあるさ。

 

 

§

 

 

 

 というわけでやってきましたかつての故郷。

 まずは街の代官様の方から行くか。

 

 早速代官屋敷に赴き、窓口で事情を伝える。

 “あの男(マックス)の弟子です。師匠が亡くなったので遺言で御恩返しをして回っているんです” と。

 

 窓口の人は(マックス)のことを知っていたのか、その名が出たら一瞬嫌な顔をしたが、亡くなったと聞いて驚いている。

 流石に死んで喜ばれるほど嫌われてはいなかったか。

 

 そして少し待たされたが、代官様の方に取り次いでいただき、数時間後に面談の時間を取っていただくことになった。

 

 待ち時間の間に、この街で(マックス)がお世話になっていた幾らかの人たちに付け届けをし、因縁を清算しておく。

 

 そしていざ、代官様との面談だ。

 事情を話し、詫びの品として金銭を納めようとし……固辞されたので、代わりに魔法で出来ることは何かないかと御用聞きだ。

 

「君がマックスの弟子か」

 

「はい。その師の遺言で師に代わり御恩返しにと伺いました。何か私にできることはないでしょうか」

 

「……とはいっても、何ができるのだね?」 若輩に化けた私を値踏みする代官様。その瞳は冷徹だ。やはり三重帝国の官吏は優秀だな。

 

「これでも師に才能は褒められましてございます。かつて師がやっていたことならば大抵はできるかと自負しております」

 魂が入れ替わって権能も検証がてら使い込んだから前より腕も上がってるしな。

 

「であるか。……ならば、水路の護岸や街道の舗装、運河の開削も?」

 

「お任せください」

 

 自信をもって柔和な笑みを返せば、代官様もこちらを信用なさったのか笑みを返してくれる。

 ……チョロいぜ。

 

 詳しくは実務担当と、ということで、かつての(マックス)の上役と顔を合わせることに。

 そうそう、(マックス)は魔法の腕を生かして領内の土木系の仕事や、害獣や賊の討伐を行っていたのだとか。

 今回頼まれたのもその時と同じ系統の仕事なので、当時の上役と顔を合わせるのも当然か。

 

「これが計画している工事だ」

 

 あの男(マックス)がいる前提で立てられた計画は、当然ながら彼が抜けた今は遅々として進んでいなかった。

 

 だがそれも今日この日までだ。

 

 

 遠隔掌握土木工事術式(こびとさんがぜんぶやってくれました)

 

 

 上空に眼の術式を飛ばして地形確認して虚無の箱庭の方に領内のミニチュアを錬成してそれに工事結果を作り込んでさらに現実の領地とミニチュアをリンクさせてこっちの地面にも術式を走らせて一気にドーン!

 

「これが計画なのだが、いつまでにどこまでできるかい? あの男(マックス)に義理立てしてると言っても、本来関係ない君を長期間拘束するのは心苦しいからね」

 

「終わりました」

 

「は?」

 

「ですから、既に終わりましたよ?」

 

 ぜひ現地をご確認ください。

 

 そう言って、出された紅茶(色から緋茶とも呼ばれる)に優雅に口をつける。

 あ、結構いい茶葉使ってるな。恒常性維持術式で飲食不要とはいえ、味覚は残ってるから味の良し悪しは分かる。まあそもそも紅茶(緋茶)は舶来品だしな。

 メンツ潰して出奔した元部下の弟子にこんな上等なの出すってことは、それだけ切羽詰まってたってことか。

 大方、本家のお殿様にマックスが居る前提で組んだスケジュールで出来ないか詰められていたのだろう。

 

 困惑する上役が声を出す前に、お役人さんが飛び込んできた。ナイスタイミング。

 街の道路や水路が一斉に蠢いて整ったのが見えたんだろう?

 本業の造成魔導師が見れば目を覆うような、魔力頼りのゴリ押しの無様な代物だろうが、込めた魔力による強化がもたらす強度は十分なはずだし、水路の傾きだとかの機能面だけは虚空の箱庭でミニチュア弄る時点で精緻に作り込んである。

 故郷の荘にも行かなきゃならないんだから、さっさと確認して解放してくれよ。頼むぜ?

 

 

 

§

 

 

 

 代官様の方には筋は通した。

 あとはまあ、故郷の女衆だな。

 それと血縁の家族か。

 

 肉体改造と恒常性維持術式で疲れ知らずの肉体に任せて、昼夜となく歩き続けること暫し。

 転移で移動したくないのは、肉体の方の残渣がもたらす感傷かね?

 

 歩くだけではもったいないので、行きがけの駄賃にと、領全体に術式を走らせてたときついでに(ねぐら)を把握した賊を潰しつつ、人的資源と金穀を回収して領内の治安にも貢献する。

 ヒャッハー! 代官様、この山賊駆除はサービスだぜー!

 

 そしてようやく我が麗しの故郷に辿り着いたのだ。

 

 まあどことも変わりない単なるクソ田舎だが。

 

 私の魂の方には特に思い出があるわけではないが、肉体の方は脳髄に思い出が残っているのか、故郷の匂いを胸いっぱいに吸い込んで何やら安堵を覚えているようだ。

 

 さてそれでは参りましょうかね。

 

 

 

 この肉体(マックス)のご両親に微妙な愁嘆場を提供しつつ、名主には代官様から貰った書状を添えて食料や上等な色とりどりの反物を渡す。

 特に代官からの添え状ってのが大事だ。

 これでもって出奔するような男(マックス)を推薦した名主の咎を許すっていうサインだからな。

 

 で、(マックス)とかつて関係を持っていた幼馴染の女性たちにはいくらかの金子(きんす)を渡すよう名主に頼む。

 変に宝飾品だのを渡すよりは、こっちの方が良い。

 お金には情の色は着かないからな、受け取る方も気兼ねなく受け取れるだろうよ。

 今の彼女たちはそれぞれ家庭を持ってるわけだしな。直接接触するのは避けよう。

 

 

 そして最後はこの肉体(マックス)の師である呪 医(ヘクセ・エールツティン)の女性。

 この肉体の持ち主の男(マックス)のせいで盛大に婚期を逃し、いま以て独身なのだという。

 

「あら。あなたがあの子の?」

 

「はい。大師匠様」

 

「やめてよ、大師匠だなんて大げさだわ。それにあの子は破門よ、は・も・ん」

 

 彼女はこの身体の方(マックス)の初恋の女性でもあった。

 下手したら親子ほどに年が離れているが、呪医はいつも若々しく魅力的だった。

 ……まあ、この身体の持ち主であったマックスは、結局彼女を捨てて街に行ってしまったわけだが。

 

 薬草の匂いのする家にお邪魔する。

 やはり匂いは肉体の記憶と強く結びついている。

 内心、やたらと郷愁が襲ってくる。魂がそれ(肉体の反射)に引きずられる。

 

「では、その破門された弟子から、償いの品を預かってまいりました。麗しの呪 医(ヘクセ・エールツティン)様」

 

「へえ? 詰まらないものだったら叩き壊してあげるわ」

 

「さあ、私には何とも……。お気に召されるかどうか」

 

 そして取り出したのは、とっておきの魔法薬。 

 

「ただマックス師匠からは、学んだ全てを込めた至高の品だと伺っています」

 

 

 若化賦活魔法薬生成術式(いのちみじかし、こいせよおとめ)

 

 

「すなわち“若返りの魔法薬”だと」

 

 

 

§

 

 

 

 研究用と実用用に合わせて2本の若返りポーションを置いてさっさと逃げてきた。

 1本で10年くらい若返るはず。しかも副作用ナシ。

 まー、魔法チートさんも良い仕事するよな、さすが上位存在謹製の権能だわ。

 

「よーしこれで未練ナシ!」

 

 清々しい気分だ!

 

 じゃあ次は適当に人別帳を弄って臣籍作って、帝都に行って魔導院に入るべなー!

 

 さらば故郷よ!

 

 

 

 と思ったら20年分若返った大師匠に捕まって誘惑されたので泊まりです。

 このひと昔から、才能ある若者が好きだったからなあ……。

 

*1
妖精が好きそうな見た目:どういうわけか妖精は種族的に金髪碧眼フェチ。金髪碧眼の子供はよく妖精に助けられ、また拐われるという。

*2
オットーの子、マックス:日本語でいうと「太郎の子、次郎」くらいのありがちな名前。ライン三重帝国では平民には名字はないため、どこそこ生まれの誰々の子という名乗り方が一般的。功績を重ねると名字の名乗りを許される場合もある。魔導師も教授位にまでなれば一代貴族に列せられる。




 
◆呪医
ヘクセ(Hexe/魔女)エールツティン(Ärztin/女医)。おそらく薬草ベースの魔法薬や、まじないによる病魔払いを行う者ではないかと思われる。
魔導師の号を得ずとも、このように魔法を使って生業を営む人たちは居る。そこまで厳しく締め付けても意味がないので、ある程度は市井の魔法使いの活動は容認されている。彼ら彼女らは、一人一派の独覚系の魔法使い(およびその系譜)が多い。高度な理論を以て効率的な魔法を使う魔導師連中は、それら市井の魔法使いとは一線を画する。
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