フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆マックス君の
あくまで例示ですが、『魔法使いLv13~15』及びその派生上位職たる『魔導師(落日派)Lv4~5』を基本として、サブとして『神官(も教)Lv3~4』を生やしたみたいなイメージです(適当)。
(これがヘンダーソンスケール1.5の邪神官
なお作中で使う技能の区分ですが、
<●●●●●●術式> = 魔導(魔法・魔術)、
<○○の奇跡> = “もったいないおばけ” に請願した奇跡
になります(ルビはその場のノリ)。
魔導(魔法チート)の方が応用が利くけれど、再生・再利用・抗魔導といった特定の分野では奇跡の方が出力が高い、という感じの使い分けですね。一応、魔導と奇跡を併用する形の運用も、少なくとも自分の魔法を消さない程度には形になってきた模様。
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◆前話
全方向から弾幕に襲われる中、
夜闇の妖精ウルスラ「あるわよぉ、妖精保険なら薄暮の丘へのご招待と引き換えに助けてあげるわぁ」
風の妖精シャルロッテ「ロロットもねえ、ここはおそとだからねえ、みんなでわーってがんばれるからぁ、たすけられるよー!」
というわけで模擬戦の感想戦・反省会だ!
え? あのあとどうなったかって?
地面からの礫の逆滝と、空から降る光条の束に見舞われたエーリヒ君だったけど、
たぶんエーリヒ君に憑いてる風の妖精の権能だったんじゃないかな、アレ。
流石に本気になれば台風クラスのエネルギーを出せる子にはまだ私も勝てないし、妖精の使う魔法は自然現象だから神の奇跡で打ち消すのも難しいし。
だからまあ、引き分け、ということになるかなあ。
いまはお互いの傷を、私の<再生の奇跡>で完璧に治して── どうもエーリヒ君は妹のエリザちゃんから「あにさまは、なんで自分から危ないことを進んでするの? あにさまが危ない目に合うのはいやです」的なことを言われたのを気にしているらしいので妹に心配かけないために傷が残らないように念入りに治療するようお願いされたのだ── 帝都のエーリヒ君のお家に<空間遷移>で戻ってきたところだ。おじゃましまーす。
せっかく模擬戦をしたから、お互いに気づいたことを指摘し合おうというわけ。
兵演棋で言うと感想戦だね。
席に着くと、いつの間にか黒茶と焼き菓子が置かれていた。
── あ、どうも。
姿は見えないが、この家に憑いているという家妖精に礼を述べる。
彼女が出してくれる黒茶と焼き菓子は美味しいのだ。
黒茶に口をつけて喉を湿らせ、向かいに座った家主のエーリヒ君に話しかけた。
「エーリヒ君、エーリヒ君。最後の突風は風の妖精の助力かい? 随分と大盤振る舞いだったけど、対価には何を捧げるんだ?」
「あー、それでお願いがあるんだが、マックス。私の髪を魔術で伸ばして切るなりして、それで何か編んでくれないか……? 妖精たちに支払う報酬が必要でな……」
「ああ(察し)。分かったよ」
妖精たちは金髪が好きだものね。
私も自分の髪を織り込んだものを、ターニャにねだられて時々プレゼントしてるよ。
じゃあ髪の毛を数本いただけるかい?
……はい、確かに。じゃあこれを魔術で増殖して布にしよう。
<
「ほい出来た。これだけあれば良かろうさ」
「ありがとう、助かるよ……」
「
私はエーリヒ君の金髪を元にした反物を紡ぎ出して、彼の方に渡した。
これで夜闇や風の妖精の衣服でも小物でも、この家の家妖精に仕立ててもらえば良いと思う。
ま、それを羨んだ夜闇や風以外の他の妖精たちが、君の髪を毟りに来ないことを祈っておくとしよう。
「それよりも反省会だよ、エーリヒ君。お互いに気づいたことを忌憚なく話し合おうぜー?」
「そうだな、振り返りは大事だな」
PDCAサイクル、回そう!
じゃあ模擬戦の初めから振り返るかね。
「まずは斬撃が飛んでくるやつ── <次元斬>だっけ?── は良い初見殺しだけど、私みたいなのには効果が薄いから、そこは何か考えた方が良いと思うよー」
「いや、普通は『三寸切り込めば人は死ぬ』って言うからな?」
「そりゃあ普通の生物を相手にするならそれで良いと思うけどさ、そこんとこどーなの? 私みたいなのまで斬り殺す想定?」
「うーむ、剣で仕果たせるに越したことは無いが、必要な熟練度との相談だろうな……」
「なら魂を斬るとかそういう、非実体の概念の切断を極めるのも良いだろうし、魔法かアイテムか何かで回復阻害の呪詛系エンチャントが出来ればそれでも良いと思うよ。それともっと気軽に<次元斬>を繰り出せるようになるだけでも随分違うと思う。今日のは溜めが必要っぽかったし」
どうするのがエーリヒ君の権能的に安上がりか知らんけど。
あるいは『氷結剣』とか『火焔剣』とかいう系の属性エンチャでも良いかもだけどさ。
「あとあれって、一応視界内に斬撃を転移させる系? 見えないところも斬れたりすると便利じゃね?」
「それは私も思った。ジャイアントキリング用に、巨大な生物の体内を<次元斬>で斬れないか、というのは考えていたんだよ。竜の頭蓋の内部や心臓に直接斬撃を出現させるのは強いからな。観測手段があれば行けると思うのだが……」
「体内を視るって言うと、エックス線とか磁気共鳴とかかなあ」
「エックス線出せるならそれを高出力にするだけで結構な必殺技になるぞ?」
「それはそう。……じゃあ、聴診の延長でさ、音波叩きつけてその反響を観測するとかじゃダメかしらね? ほら、スタングレネードの術式と合わせれば一石二鳥だしさ。魔力ソナーでも良いけど」
「なるほど、聴診、聴測か。少し考えてみよう」
「もし私の魔法チートの権能で戦場観測用の術式作って欲しかったら相談に乗るぜー。有料でね。
「うーん、うーーーーん、どうしても自分だけじゃダメそうなときは頼む……」
で、次はそのスタングレネードの術式と、剣群乱舞と、テルミット棒手裏剣かな。
「スタングレネードの術式は指向性あるんだよね? エーリヒ君が自滅しないようにさ」
「ああ、指向性はつけてある。一回テスト中に自爆して酷いことになってな……」
エーリヒ君が遠い目をしておる……。
「でも結構簡単でお手軽な術式だから、相手がラーニングしてくることも考えた方が良いと思うんだよね」
「敵が使ってきたときの対応、か。それなら、<隔離障壁>の選択除外で、強すぎる音や光を通さないようにするとか、か?」
「それか私がやったみたいに、魔力ソナーで周辺情報把握できるようにするのもアリだよ。あとは回復力のゴリ押し」
「魔力ソナーに、回復術式か……。一応<遠見>で別視界確保という方法なら、いまでも対処できるかな」
「個人的にはスタングレネードの対策含めた頭部保護術式セット一式を込めたサークレット型魔道具でも作ってしまうのが良いと思うけどねー。……お安くしとくよ?」
「……考えときます」
── どうか前向きにご検討の上、御贔屓にー。
「次は剣群乱舞のアレね。と言っても、これは特に言うことないけどさ。<神域>の剣士を複数人並べられるだけでシンプルに強いし」
「とはいえ課題も浮かび上がったな。<見えざる手>の術式を消されるようじゃ魔導師相手には怖くて使えない」
「私がやったみたいに、ここぞというところで消したり、私はやらなかったけどあるいは制御奪って逆撃したりね。それを防ぐにも術式の暗号化は少しは齧っといた方が良いと思うよ。これはスタール卿に尋ねた方が早いかもね」
「ああ、聞いてみるよ。あ、それと予備の剣や他の武器をもっと影収納に沈めとこうと思う。最後の弾幕を防ぐときも、予備の剣がたくさんあればもっと余裕があったと思うし」
── 確かに予備は大事だねー。何なら魔法チートで氷とか炎とか雷とか浄化とか呪詛とか付与された、各種魔剣を製造するけど? 料金は相場で、さ。
「で、次は……テルミットね。いや、あれ過剰威力でしょ、エーリヒ君」
「それは私もそう思った。でもそれならもっと普通にダメージ負っててくれないか? けろっとしてただろ」
「再生系は得意だから、信仰的に。……君も “もったいないおばけ教” に入ろう!」
「
「うーん、燃焼時に発生する紫外線対策はしてるんだよね? それで味方の目が潰れないように気を付けよう、ってくらいかな。あ、あとは言うまでもないけど、命中させられるかどうかが問題になるだろうから、それ用の射出魔法でも作ったら? <見えざる手>で投げるんじゃなくて。術式で自動追尾つけたり、亜音速とか超音速で射出できるようにしたりとかさ」
「実はモノを投げる分には<戦場刀法>と<艶麗繊巧>がギリギリ乗るから<見えざる手>使うのがリーズナブルなんだよな……。っていうかマックス、射出用の魔法って、それそこまで強力なら、別に射出するのはテルミット手裏剣でなくても良くなるだろ?」
「正直、石礫で十分だと思う。
「石器時代とか第四次世界大戦とかじゃないんだから……」
── でもさー、大地の自転公転の角運動量の一部を拝借して放つ石礫の魔法とか絶対強いと思うんだよなー。既存の運動量を拝借するからリーズナブルだろうし。
「さて次は夜闇の妖精の加護でステルス化してから溜め斬撃を食らったんだったかね。これも別にコメントはないかなー。強いて言うなら妖精から力を借りるのは慎重にってくらいと、渇望の剣に何かエンチャント纏わせてたりしたらこっちはもっとヤバかったかもねってくらいか」
「妖精関連はね……うん……気を付けてる……うん……」
── マジで気を付けろよー。私も次も薄暮の丘から生還できるとも限らんし気を付けんとな……薄暮の丘の妖精女王の転移阻害を超えて転移する意気込みはあるけど。
「で。最後は問題のアレだ。燃料気化爆弾の術式な。……そもそも何のために作ったん?」
「え、雑魚散らしに良いかと思って……?」
「なるほど……?? でも制御できてなかったっぽいぞ? 偶然、爆燃領域が私の障壁の内側に納まったからエーリヒ君の方に余波が行かなかったけど、プリセットの障壁は割れてたみたいだし」
「あー、やっぱり強度足りなかったかー……」
「せめて指向性を持たせるか、気化領域限定のための障壁を強化するかはした方がいいと思う。自爆したら詰まらんでしょ?」
「だな。もうちょっと練ってみるか……」
── その方が良い。もし実験が必要なようだったら、虚空の箱庭の一部を貸しても良いし。有料で。
「あとは最後の天地からの全方位弾幕か。あれエーリヒ君が避けきれるとは思わなかったな」
「風で吹き飛ばしてくれたロロットに感謝だが……避けきれなかったら私はミンチになってたよな?」
「死ぬ前に
「それはそうなんだが……。マックスのことは割とエネミー系にカテゴライズしてるからなぁ……」
「私はあの燃料気化爆弾術式の威力を逃すために<空間遷移>の障壁で透かしたんだけどさ、エーリヒ君もまた全周囲攻撃に巻き込まれたら似たような感じにしたら良いんじゃね? それか転移して逃げるとかさ」
「それやるのにどれだけ熟練度が必要になると……!? あと、それで空間遷移での防御しても、暗号化してなかったらマックスは制御奪ってたんだろ?」
「そら勿論さぁ。透かしたはずの攻撃が自分の至近から再出現したときの顔は見ものだろうね」
「悪趣味……。いやそれなら魔法じゃなくて<次元斬>の応用で空間を裂いた方が奪取されなくていいのか……?」
── その辺の技能習得の采配は任せるよー。
「そうだ忘れるところだった。エーリヒ君、そもそもの話、魔導師が細工した領域に無防備に入るのは絶対ダメだからねー?」
「ああ、骨身に沁みた」
── 領域に塗り込められた魔法そのものを神域の剣技で斬ったり、あるいは神の奇跡で解除したりできるなら別だけどさー。
「じゃあ次はマックスの方へのコメントだな」
「おっけー、ドンと来い」
「つっても全体的に、『素直に死んどけよ』って感想しかないが……」
「いやなんか他に気づいたことあるでしょ?! ほら、多重障壁を一気に数枚重ねて割ったりしてたし、あれ意外だったんだから」
「ああ、あれか。と言ってもな、あれも障壁の精度を上げたり、弱所のパターンが決して重ならないように複数の障壁をひとセットにしてパターン構築したりすれば防げるんじゃないか?」
「なるほどー」
「それか、そもそも近づかせないようにするとかな。ほら、最後の炎熱竜、あれ、輻射熱で近づけなかったし」
「ああ、そういう手もあるか。灼熱や、毒ガス、酸欠空気で縦深を確保するのは有効そうだな!」
「それならこっちも宇宙服みたいな環境維持の防護術式考えないといけないか……? えーと、あとは、マックスも体術か杖術か何かを鍛えた方が良いんじゃないか? 防いだりするときの動きや反射速度は賦活術式のお陰か、かなり素早かったが、正直無駄が多かったし構えもなってなかったし」
「おお! 確かにな! 最近、神官技能も獲得したし、バトルモンクってのも悪くない!」
「接近戦を “やらない” のと “できない” のは、まるで違うからな。ま、とりあえずはそのくらいかな」
── 十分参考になったぜ! ありがとうな!
よーし、じゃあ反省会も一通り終わりということで、お待ちかねの
今回エーリヒ君が得た模擬戦の熟練度を、私が指定するスキルに注ぎ込んでもらおうか!
「それは構わないが……いったい何のために? 念のため言っておくが、私は自分が不利になるような特性は取らないぞ」
「ふふふ、いよいよエーリヒ君の権能が扱うその技能獲得の仕組みについて調べたくなってな……!」
「……人体実験の被験者になるつもりはないぞ?」
「エーリヒ君は私の観測術式を受けてくれればそれでいいから。要は、技能取得前後の観測結果の差分を取って、その差分をコピペすれば私でもその技能を取得できるんじゃないかと思ってさ」
「そういうことなら……」
おっけー! では同意ということで!
「……それで、マックス。権能を立ち上げるが、一体どんな技能を取ればいいんだ?」
「んー、まー何でもいいんだけどね。せっかくだから、さっき指摘された格闘とか体術とかの技能で、できるだけ
「なるほど……と言っても道場で体系的に教わってない中だと、だいたい我流系のものになるが」
「エーリヒ君の<戦場刀法>みたいな? むしろそういう実践的なのの方がありがたいね」
「それなら良いか……」
エーリヒ君が虚空を見て、暫し固まる。
権能のインターフェースを開いているのだろう。
「おっ! かなり熟練度が溜まってるな! 大漁で大量だ! これなら──……」
エーリヒ君熟考中……。
邪魔をしてはならぬ……。
こればかりは邪魔をしてはならぬ……。
「うん。この<喧嘩殺法>ってのが良さそうだな。<戦場刀法>の
「じゃあそれでお願い! こちらは観測用の術式を用意するよ」
<
よし、準備完了。
「じゃあエーリヒ君、頼む」
「ああ。<喧嘩殺法>を<
特に何か劇的な効果音やエフェクトが鳴るでもなく、エーリヒ君は彼の権能により熟練度を消費して新たに<喧嘩殺法>の技能を<妙技>レベルで習得した。
外見では特に変化はないが、しかし私が走らせた記録術式は、エーリヒ君の肉体や霊体や魂魄の情報から、確かなその変化を捉えることに成功した!
「よし、観測成功だ! この差分から該当すると思われる個所を抽出してノイズ除去して── おお、きっとこれがスキル、というものだろう!」
「おおお! では早速やるのか!?」
「──── いや、まずは実験してからだな」
あ、エーリヒ君がズコッとしてる。
でも流石に魂を弄るのにぶっつけ本番はちょっと……。
エミュレータやホムンクルスを使って検証してからじゃないと不安だからね。
エーリヒ君の言う『熟練度』ってのが私に適用したときに何に該当するパラメータなのかも分からないし。
「あ、そうだエーリヒ君。他のデータも欲しいから、また適当な時に今度はこちらから模擬戦頼むかもー」
「はいはい、了解。その時は声をかけてくれ」
「よろしくねー。じゃあちょうどお茶も飲み終わったし、そろそろ帰るよー。ごちそうさま」
そう言って私はエーリヒ君の家を辞して、冬の帝都に繰り出した。
いやあ、有意義な時間だった!
というわけで着々と対不死者・対魔導師の経験と対策を積むエーリヒ君でした。「あ、これマックス・ゼミでやったところだ!」
(VSマルティン公にはマックス君は加勢させる予定はないので、この模擬戦関係は、当SSでエーリヒ君のエクストリームな術式をお披露目するための話をやりたかったという面もありました。)
<喧嘩殺法>(独自設定)のスキルについては、そのうち検証が終わって、マックス君はしれっと習得してる感じになると思います。なお、ここで検証なしに差分を適用してたら魂にダメージが入って一死プラスになるところでした。
次は、落日派ベヒトルスハイム閥のノヴァ教授の弟子としてのマックス君の正式なお披露目の様子をお届けできればと思います。