フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
◆特性やスキルについて
ライン三重帝国がある世界における特性やスキルについては、原作者様のこちらのツイートなどを参考にしてますが、不明な部分はわりと独自設定です。
https://twitter.com/schuld3157/status/1208668057532542976
とはいえ流石にキャラクター強化のギミックだし説得力のためにも1話くらい割くべきかー?、となったのでお話を生やしました。不精してはいけませんね。
なお前話の差分解析的手法は、セーブデータ改造やプロセスメモリ改造系のやり方をイメージしてます。
◆マックス君のリスポーンペナルティについて
死亡 → 復活によって、マックス君の場合は神官技能に経験値が入りますが、同時に正気度とか人間性とかが削れていきます。削れ過ぎるとキャラロストしてエネミー化するので注意。残機の管理は計画的に!
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◆前話
エーリヒ君「あんまりマックスメタ構成にするのもアレだが、一番身近な脅威として無視できないんだよなあ……。
身近に
さて、エーリヒ君に頼んで記録を取らせてもらった<喧嘩殺法>(妙技)に該当すると思われる差分データ。
あらゆる肉体的、霊的、魂魄的な情報も観測できるような術式によって記録したため、おそらくは取得前後の全ての情報がもれなく記録されているはずだ。
もちろん単なる代謝による変化その他の経時的な変化も含まれるだろうが、その差分には確実に<喧嘩殺法>(妙技)の情報が含まれている。
あると分かっていて、観測が出来ていれば、それを見つけるのは不可能ではない。
むしろ観測できるかどうか、というのが一番のハードルなので、それをクリアできる魔法チートの権能がある私はイージーモードだ。
ただ、このエーリヒ君の権能によってもたらされた変化というのが、
でも多分そんな風なことにはなってないと思うし、エーリヒ君のように鍛錬を経ずにスキルや特性を付与するのも出来ると思う。一応根拠もある。
というのも、エーリヒ君のスキル取得方法が特殊なだけで、実際はスキルや特性ってのは、まずは本人の天与のあるいは積み上げた努力による実体が先にあって、それに対して
つまり、強いから称号が与えられるのであって、称号が与えられたから強くなるわけではない。
エーリヒ君の権能の場合は、それを逆転させるからこその『チート』なんだけどね。
彼が未来仏から与えられた権能では、『<喧嘩殺法>(妙技)のラベルが与えられた』から、逆説的に、『そのラベルが与えられると判断されるに足る技量等の最低条件を満たしている』ことになるし、実際にそのレベルまで技量が伸びる、という因果逆転が起こってるんだろうな。
……そう考えると、エーリヒ君が獲得したスキルや特性は、同じラベルがされているスキルを持つ者たちの中でも、最低限のライン(あるいは平均的なライン)に設定されるのだろうか。
だってラベル上は同じ<神域>でも、<神域>に上がりたての技量から、<神域>に届いても際限なく鍛えている者の技量まで、おそらくピンからキリまであるのは想像できるし。
つまり、権能で獲得しただけだと<神域>の中でも最低限か平均的ラインに納まるから、極まった<神域>の技量の持ち主には及ばない……?
どうなんだろうな。
ま、これはエーリヒ君が実際の神域の剣技の持ち主たちと戦う中で判明するだろうから、そのうち聞かせてもらおう。
同じ<神域>の技量における格の違いというのは、エーリヒ君が肉鞘アンドレアス氏監修で英霊召喚の魔本を使って、渇望の剣の過去の主たちを具象化して鍛錬する中できっと明らかになるだろうし。
えーと、それで、そうだ。付与的な手段でのスキルや特性の取得の可能性についてだ。
実際のところ、強制的にスキルや特性を取得させる方法は既にある。
落日派の場合は異種の肉体を移植したり継ぎ接ぎすることで、種族の生得的な特徴を組み合わせることもできるし、それはこれまでもやってきた。
とはいえ、これはかなり乱暴な施術にあたるし、エーリヒ君の権能のスマートさには全く及ばない。
それにエーリヒ君のように原因と結果を逆転させてスキルを習得させてやってるのではなくて、肉体改造なりで無理やり前提条件を満たしてスキルを取得させてるわけだから、作用機序が違う。
エーリヒ君の権能の作用は、どちらかといえば、いわゆる『魔剣』の作用に近いだろう。
ああ、あの『渇望の剣』のことじゃなくてね?
そうじゃなくて、『
これ、要はこれらの魔剣には『持ち主に<神域>の<剣術>を付与する』機能があるってことなんだよな。たぶんこの才能の後付けは、エーリヒ君の権能に近いと思われる。
で、エーリヒ君みたいなチート権能に寄らなくても、既に基底現実世界の実在物で同様の作用を及ぼす前例があるなら、きっと魔法チートでも再現できるだろう、ってことで。
じっ さ い に やっ て み た 。
まずは虚空の箱庭のエミュレータ内で実験。
……してみたけど、あんまりうまくいかない。
差分適用しても、データ上の徒手格闘の腕前には特に変化が起こらなかったのだ。
これはアレだな、エミュレータ上で再現できてない現実側のパラメータが必要なんだな?
フラグや個別データは
じゃあエミュレータじゃなくて基底現実世界で実践だ、というので、虚空の箱庭のホムンクルスたちを対象に、エーリヒ君が<喧嘩殺法>(妙技)を取得したときの差分データを適用してみると、動かなくなった。
……んん~~~?? なんで機能停止するん??
精査するとホムンクルスにする時点で罅が入って薄くなってる魂が、差分適用するときの反動に耐えられないらしい。
あれか、『熟練度を消費して取得』ってところの作用が、『熟練度が足りません』になって、『足りない分の熟練度は魂魄の構造体を分解してエネルギー化しますね』みたいになってるのか?
ホムンクルスじゃだめなら次はどうするか。
そうだね犯罪者の検体を使った人体実験だね。
これ落日派の嗜み。
<
わるいごはいねがー、と、悲嘆に染まった因果が積もってる場所がないか雪に閉ざされた田舎の方に探査をかける。
冬の時期にたちの悪い群盗山賊に居座られた荘が、冬の貯えを全部吸い取られつつ荘民がそのならず者どもの手慰みに “消費” されていくのは、ライン三重帝国であっても根絶できない悲劇であり、残念ながらいまだありふれた話である。
なので、探せば見つかるわけだな、これが。悲しいことに。
という訳で用意した生きの良い群盗山賊の皆さまがこちら。
「おらテメェ、離せやコラァ!」 「スッゾコラー!」 「テメッコラー!」 「ザッケンナコラー!」
本来なら行政府の巡察吏に引き渡してからきちんと罪状付けて魔導院に治験のために下げ渡し(生き残ったら無罪放免という類の刑罰)をし、そこからさらに魔導院側で各研究計画に基づく治験用人体の申請に則って割り振りしていくわけだが、そんなの待っていられないから、
正式ルートに則ったものではないが、まあ群盗山賊は基本的に生死問わずに排除対象だし、落日派の
緊急避難や正当防衛に付随する役得だね。
あと私は貴族の末席に連なってるし、その点では逆に群盗山賊の排除は責務の一つでもあるし。
さすがに
それやると除籍ものだし、普通にこっちが群盗山賊として処理される側になる。
というわけで群盗山賊の皆さんには治験に協力してもらいましたー(向こうの合意は関係ない)。
「ヤメッコラー!?」 「テメッコラー!?」 「やめ、やめろぉ!!?」 「おかあちゃん、たすけて……」 「うああああああ!!??」
居座ってる荘の位置は探占術式でいくつも把握済みだし、私は転移持ち。残弾はいくらでもあるから気兼ねせずに検体を消費できるのはいいね。潰れた検体はリサイクルしてホムンクルスの素体にすれば無駄もないし。
それに群盗山賊に食い物にされていた荘も救えて、一石二鳥。いいことをしたので私はとても気分が良い。
それで分かったことだが、ホムンクルスより生きの良い魂だったおかげか、<喧嘩殺法>(妙技)に適応した検体もちらほらあった。
ただ適応したのは、もとから喧嘩慣れしてたような奴が多かったから、<喧嘩殺法>の下地があったということだろう。
そのおかげで反動ダメージが少なかったんだろうな。
それでも熟練度不足による反動はあったようで、取得の代償に妙なマイナススキルを得ていたような感触がある。
急に異常に老化したり、感情が抜け落ちたり、錯乱が治らなかったり。
そういえば名だたる魔剣にも剣の腕が上がる代わりにエグイ代償があるものが多いから、そういうことなのだろう。
プラスとマイナスで帳尻合わせすることで、
「……となると、だ。熟練度ってのは、普通の人間は……というかエーリヒ君のような権能がなければ、熟練度を得るまでに経験したことがらに対応するスキルや特性に、即座に割り振られるものっぽいな」
これまでの実験結果は、『使い道が定まっていない浮いた状態の熟練度』など、普通の人には無い、ということを示している。
その証拠に、無理にスキルを習得させようとした対象は、必ずその反動に見舞われている。
「となれば、その熟練度の不足分を補うような道具……熟練度ストックと対象のスキルの両方を内包する魔道具、例えば『スキルオーブ』とでも言うべきものが開発できればあるいは、というところかな」
そうでなければ浮動熟練度不足による反動の問題が解決できない。
……っていうか、そこまでするなら、普通に真っ当に技術を身に着けても良い気がしてきたな。
「……とりあえず、<喧嘩殺法>を<妙技>で習得した検体は幾つかできた訳だし、これの観測データをエミュレータに取り込んで、エミュレータ内で再現した私のアバターが時間加速してそいつら相手に無限組手して修業した経験をフィードバックすれば、比較的リスク少なく習得できるんじゃなかろうか」
そうするか……。地道に普通に経験を積み重ねよう。
時は(エミュレータ内で)加速する!!
そうしてエミュレータ内で積んだ経験をダウンロードすることで、私は無事に<喧嘩殺法>を<妙技>スケールくらいで習得することに成功した! と思われる。……だって私の場合、エーリヒ君と違って、自分のステータスを可視化できるわけじゃないからね。
<喧嘩殺法>を習得させた検体のデータに強化ナシの
その過程で、名付けるならば<威圧>だとか<苦痛耐性>だとかの近隣周辺技能も習得できたっぽいし(私には自分の習得スキルは見えないから、仮に名付けるとしたら、だが)、結果的にこちらの方が良かったのかもしれないな……。
まあともかく、これで近接戦闘にもかなり対応できるようになったと思う。
エーリヒ君も同等の技能を持っているから、次に模擬戦をするときに必ずしもアドバンテージになるわけではないが、不利は潰せたはずだ。
そうして時は流れて、年の瀬の冬至の大市── 西暦世界で言うところのクリスマスマーケットだろうか── が開催される頃。
私とターニャのお披露目の日がやってきた。
別に私とターニャのお披露目がメインではなく、落日派を中心とした魔導院の教授連の忘年会パーティのようなものに便乗する形だ。
私はライゼニッツ卿から贈られた衣装に、師匠であるディーター・フォン・ノヴァ教授からいただいたローブを纏い、同じ師匠筋のヨセフカ研究員にエスコートされ。
ターニャはこれまたライゼニッツ卿から贈られた衣装に、師匠のバンドゥード卿から贈られたローブを着て、同じくバンドゥード卿配下の研究員であるパピヨン卿にエスコートされての入場となった。
この場には落日派とそこまで仲が悪くなく、それでいて私とターニャに縁があるということで、払暁派のライゼニッツ卿も参加している。
え? アグリッピナ氏が居るかって? 出不精のあの
他にも種苗ビジネス関係で、農業同業者組合の重鎮やなんかも来ているし、
このあたりはわざわざ私のデビューに合わせて出席してくれたのだろう。あとであいさつ回りに行かねば。
もちろん我らがベヒトルスハイム閥の首魁であるベヒトルスハイム卿も参加しており、方々から挨拶を受けている。
来賓に高位の方が多いのも、主催のベヒトルスハイム教授の格に合わせてのことだろうなあ。
私とターニャもそれぞれの師匠の紹介に与り、ご挨拶させていただくことが出来た。
そして社交界デビューということで顔を繋ぐ中で、領地からこちら帝都にいらっしゃっていた
「おお、ディーター君ではないか! 君の弟子のお披露目ということで、楽しみに参加させてもらったよ!」
「これはこれはマルティン先生。ご無沙汰しております」
ノヴァ教授に親しげに語りかけたのは、銀髪銀眼の細面の人間離れした美貌を持つ紳士だった。
ローブに杖を差していることからも分かるように、魔導院の教授なのだろう。
砕けたやり取りから察するに、かなり親しい間柄なのだろうか? 若く見えるが、恐らくは非定命で、ノヴァ教授よりも年上か。
「ディーター君、そちらの将来有望な若人を紹介してもらっても?」
「ええ喜んで。こちら我が閥の聴講生であるマックスです。
マックス君、こちらは私もお世話になった、中天派のマルティン先生だ」
「よろしく、マックス君。私はマルティン・ウェルナー・フォン・エールストライヒ。中天派に所属しているが、特に閥を率いるわけでもないしがない
彼こそは、皇帝として1期15年の任期を3選全うし“無血帝” と呼ばれた現 大公閣下。
家の力無しに自らの才覚のみで魔導院の教授に上り詰めた凄腕の魔導師であり。
帝国経済の手入れをする経済界のドンにして、三皇統家が一つ、エールストライヒ公爵家の当主すなわち吸血種の統領でもある。
私は銀色紳士なVIPのいきなりの登場に面喰いつつも、なんとか
ちょっとサプライズすぎやしませんかねえ……。
魚類学会後の懇親会に出たら上皇陛下と遭遇しました的なシチュエーション。心臓に悪い。
この時点(エーリヒ君13歳の冬時点)で
エーリヒ君の権能の解析による技能取得は、話を膨らませた結果、一筋縄ではいかないため引き続き要研究となりました。修行しても習得できないような特殊なスキル・特性の習得については出番があるかもですが、<喧嘩殺法>みたいな修行して習得可能なスキルは、それよりエミュレータで時間加速して修業した結果をロードして真っ当(?)に習得した方が早いかもですね。
原作WEB版も更新されてました、みんなも読もう! 権能や熟練度、スキルについても解説されてあって助かります……。ありがてえありがてえ……! そして概念を斬る系のハイエンドスキル強っ!?
https://ncode.syosetu.com/n4811fg/221/
原作書籍5巻も2022/02/25に出るそうなので楽しみですね!