フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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閲覧ありがとうございます!

◆前話
変装して帰郷。
いただきました(意味深)。
 


3/n 極光の妖精(アウロラ・アールヴ)-1(魔物相手に試運転)

 

 ……あのほらあれですよ、据え膳食わぬは男の恥って言うし。

 

 ごほん。

 言い訳はともかくとして、若返った師匠と(むつ)みあって翌日。

 この身は再び旅の空の下に在った。

 

 え? 師匠を()()捨てたのかって?

 いやまさか。

 

 ちゃんと身代わりにホムンクルスを置いてきたさ。

 そういうことじゃない、って?

 

 ダイジョブダイジョブ。

 真っ当な人格に調律してあるし、チューンナップしてるから、師匠の眼から見ても優秀な魔法使いとして映るはず。並列思考の一部も割く半自律式にして、時々記憶も同期させる予定だし。

 バレやしないさ。

 

 それに半自律とは言え何か問題があれば直ぐに分かるようにしてるし、辺境とはいえ医療の実践の場を確保しておくのも悪くない。

 空間遷移術式でひとっ飛びだしな。

 

 ホムンクルスの方の戸籍についてだが、師匠の呪医ねえさまが後見人になって荘の人別帳に乗っけてくれるらしい。

 なんで知ってるかって言うと、いまも実はホムンクルスと感覚を繋げて様子を覗いていてね。

 

 田舎の医者って名望高いからね。

 ホムンクルスに持たせた持参金から教会に 賄賂 喜捨も積むし、そこは問題ないとか。

 頼りになるところを見せたい姉さんカワイイね。

 

 

 

 出会ってすぐそこまで惚れ込むか? という疑問も湧くが、呪医姉さんの立場で考えてみればそこまで不思議でもない。

 

 まあ幾ら呪医とはいえ、一晩で20も若返って十代の身体を取り戻したとなれば、荘の方に説明するのも面倒だろう。

 当面は魔法で元通りの幻影を被って誤魔化すとして、かといって若さを取り戻したのに青春しないのもあり得ない、と考えて。

 

 そこでお相手として思い当たったのが私だ。

 

 魔法の才能にあふれ、師匠の遺言を守るくらいに義理堅く、見た目も良いし、若返りの事情も知っている……となれば、私を伴侶として迎えようと白羽の矢が立つのも無理はない。

 誘惑の結果、身体の相性も良かったしね。

 

 そしてハニートラップに引っかかった時点でこっちに逃げ場はない。

 ライン三重帝国の貞操観念は重いのだ。

 ―― それなのに食い散らかして逃げたこの身体の元の持ち主(マックス)は、どれだけクズだったのかって話だ。そりゃ夢破れて故郷に帰っても居場所なんてねーわ。

 

 でもまだ田舎に骨を埋める気はないのでゴメンね!

 

 

 

 まあそういうわけで、まだまだ世界を見て回って楽しみたい私は、半自律稼働式のホムンクルスを身代わりに置いてそっと抜け出してきたのだ。

 

 

「不義理も清算して気がかりも無くなったし、次は帝都ベアーリンだな!」

 

 寄り道したが、いざ三重帝国の叡智の殿堂―― 三重帝国魔導院へ!

 

 

 空間遷移術式(どこでもドアー)

 

 

§

 

 

 …………と、思ったが、魔物の反応を見つけたので寄り道だ。

 

 ちなみに魔物とは、巨鬼(オーガ)小鬼(ゴブリン)といった魔種が、魔素を溜め込み過ぎて変異した、理性なき怪物である。

 魔素を溜める器官―― 魔晶―― を心臓の隣に持つゆえに、彼らは魔種と呼ばれ、それが秘める先天的な魔力的強化により物理法則を凌駕した生態を有する。

 普通に暮らしている魔種が魔物に堕ちるほど魔素を溜め込むことは稀だというが、瘴気(穢れた魔素)に充てられたりすると変異しやすいとか。

 

 あ、誤解しないでほしいのだが、魔物ではない魔種の巨鬼(オーガ)小鬼(ゴブリン)は普通に理性もあるし市民権があるぞ。

 農民だったり市民だったり、ヒト種(メンシュ)と同じように市井で暮らしてる。

 

 なんならこれまでに回収した悪党どもにもそういう魔種は混じってたくらいには普通に馴染んでる。

 三重帝国以外ではそうでもないらしく、迫害されているとか、魔晶目当てに狩られたりするとか。

 

 なお、私が維持してる虚空の箱庭はどうやら穢れた霊地に分類されるらしく、そこに突っ込んだ時点で元悪党の魔種たちは狂を発して魔物に堕ちた。

 さもありなん。

 めっちゃ強力な魔法で無理やり維持してる特殊空間だからな。私自身も善良とは言い難いし。

 

 

 そして蓄積した魔素によって魔種から魔物へ変じることは、不可逆の変異だとされており、治療法は見つかっていない……。

 

 

「……まあ多分、魔法チートさんなら治せるんだろうけど」

 

 因果を辿って過去の精神を賦活させ、魔晶に溜まった魔素を抜く。

 または新しい魔晶を形成して置換する。

 できなくはなさそうだ。

 

 でも別にそこまではしないかな。面倒くさい。

 

 ただ実は魔物は魂も変質してるのかもしれん。

 憎悪と殺意に支配され、画一化された行動をし、飲食すら不要と化す有様は尋常ではない。

 魔導院の連中が今以て治療法を見つけられていないというなら、それ相応の理由があるのだろうし。

 その場合はもっと面倒だな……。

 

 まあ、魔種だろうが魔物だろうが、死ねば同じ。

 素材にするだけなら血袋肉袋糞袋だということに変わりないし。

 

 ちなみにヒト種(メンシュ)であるこの身には魔晶がないから魔物堕ちはしないぜ。

 だから気にせずバンバン魔法を使っていこうな。

 

 

 

 虚空の箱庭から通常空間に遷移して出現する。

 

 重力係数軽減術式(ふわふわメリーポピンズ)

 

 上空に放り出された私は、重力に関する諸法則を歪めて落下速度を軽減。

 同時に常に周りに張り巡らせている探査術式に追加で魔力を注いで拡大。

 眼下に見える森を探査する。

 

 単に肉体的な、あるいは魂魄的な素材として用いるだけなら、わざわざ魔物を討伐しに通常空間に出てくるほどのことでもない……。

 ……いや、合法的に魔種の肉体と魔物の魂魄が手に入るなら普通に狩るわ。狩りますわ。

 魔物堕ちしてても肉体の価値は変わらないし。魂が魔物化していたとしても使い道はある。

 虚空の箱庭(無限収納)があるんだから素材や研究試料は幾らあっても困らんし。

 

 とはいえ今回寄ったのは単なる魔物の素材収集のためだけではない。

 

「やっぱり魔素溜まりが出来てるっぽいな」

 

 そう。

 魔種は普通に暮らしてるだけでは魔物に堕ちるほどの魔素に曝されることはない。

 であれば、魔物が集まる場所には、それ相応の()()()()()()()()があるのだ。

 

「……あの洞穴が中心っぽいか?」

 

 そういう魔素溜まりの中核を成す()()()は、魔法的に希少な由来を持つものが大半だ。

 帝都への行きがけの駄賃にするために降りてくるには十分な理由だろう。

 

 探査術式が示す魔力分布が(つまび)らかにした魔素溜まりの中心。

 それは洞窟の奥にあるようだった。

 洞窟の奥は地上への小さな穴が開いており、風穴(ふうけつ)となっている。

 

 ちょうどその地上へ通じる小さな穴の真下あたりに、目的のブツはあるようだ。

 

「魔法でちょいぱっぱとやっても良いけど、改造した身体の運動性能も確かめてみるかな」

 

 ふわふわと地上に降りる途中の私に、森の枝葉の天蓋を縫って、狙いすました弓矢が歓迎してくる。

 魔物たちの歓迎だ。

 

 彼ら彼女らは、魔物に堕ちる前の技量と戦術思考を持ったまま、それを殺意と憎悪全開で運用してくる怪物だ。

 理性はないが、知性はある。

 

 だが何も問題はない。

 加速された思考回路と動体視力は矢の軌道を捉えているし、それ以前から探査術式が危機を知らせてきていた。

 それにこのまま突き進んで来ても、何の強化もないただの矢では常駐起動させている障壁を抜くことは叶わない。

 

「だがまあ練習だからな、障壁は薄皮一枚まで圧縮しておいてやろう」

 

 障壁を切ったりはしない。慢心したらファンブルしたときに死ぬからな。

 

 飛来した2本の矢の矢柄(やがら)を左右の手それぞれで掴んで止める。

 身体強化は成功している。

 

 掴んだ矢を胸の前で交差させると、初歩的な<転変>と<現出>の魔法により、矢柄を融合させて(つか)に、鏃を融合させながら巨大化させて(やいば)にして合わせ、即席の剣とする。

 

「命までは取らないさ。魂が失われると()()()()()()からな」

 

 木の葉の天蓋を抜け、木の枝を踏んで射手の方へ跳ぶ。重力軽減はいまだ有効だ。

 次の矢をつがえようとしていた魔物―― 犬鬼(コボルド)小鬼(ゴブリン)の射手―― の両腕を、両脚を、まるで竜巻のように回って突撃しながら次々と刎ねる。

 

 よし、身体制御も向上しているな。

 魔力探査によって空間失認を回避し、正しく俯瞰視点を得た私は縦横無尽に森を駆けた。

 

 魔物の無力化に重きを置き、四肢を切断。

 無力化したやつらは<空間遷移>で虚空の箱庭へ落とす。

 あとは箱庭にいる人造人間(ホムンクルス)が適切に処置して保管してくれる。

 敵の武器や防具は<転変>の術式で手持ちの即席剣に融合させていく。

 

 魔物の断末魔の声が響くこと暫し。

 

「魔物は逃げずに向かってくるから処理が楽でいい」

 

 こちらが隠蔽術式で魔力を隠して一般人に偽装しているからというのもあるだろうが、思考を憎悪と殺意に支配された魔物たちは、基本的に逃げることを知らない。

 だが狂したとはいえ、待ち伏せする程度の能はある。

 

「残りは洞窟の中か……」

 

 魔素溜まりの中心がある洞窟までたどり着いたが、魔物たちはどうやら洞窟の中で待ち伏せしているようだ。

 小癪なやつらめ。

 

「だいたいの肉体性能は把握できたし、もういいか。思った以上に戦えることも分かったし」

 

 飽きたともいう。

 中に残ってる魔物の素材は……諦めるか。

 面倒くさくなってきたし。

 素材としてではなく、肥料としてリサイクルだ。魔晶が原形を留めていればあとで拾おう。

 

 敵の得物を奪って融合させ続けて肥大化した即席大剣を上段に構える。

 さらにそれを<現出>の術式で巨大化。

 森の木々の梢よりも倍は大きな超大剣と為す。

 

 当然、生身の手で支えられるものではないので、魔力の力場で支える。

 

「……えーと着弾点からの崩壊範囲を予測演算……、弾み車(フライホイール)接続準備……」

 

 狙って狙ってー。洞窟の奥の目的のブツを壊さないように精密に演算してー。

 

 

 動力伝達術式(せいみつでおおざっぱないちげき)

 

 

 虚空の箱庭に浮かべておいた巨大な弾み車(フライホイール)を魔法で超高速で回転させ続けることで保存していた運動エネルギーの、ごく一部を魔法のギアを介して取り出し、超大剣を支える魔法の力場に伝達。

 すると超大剣はまるで見えない巨人に蹴っ飛ばされたみたいに急加速して振り下ろされた。目にも止まらぬ速さだ。

 

 流星が落ちたかのような衝撃とともに地が揺れ、洞窟と周囲の土砂が地面をひっくり返したみたいに逆巻いて噴き上がった!

 

 一拍遅れて砂粒を含む烈風が押し寄せてきて樹をしならせ、森の動物たちが逃げる気配。

 もちろん洞窟の中に隠れていた魔物は跡形もないだろう。

 

「うむ、これはいいな。魔力消費量のわりに威力が大きい」

 

 せいぜい虚空への門をほんの少しだけ開く程度の魔力消費で、ミサイル程度の破壊力を出せるのは破格だな。

 発動速度も速いし。

 純粋に物理的な力だから、物理対応の障壁(例えば空間遷移の応用で虚空に威力を散らせるみたいなやつ)には弱いが、これだけ威力が強ければ大抵の抵抗はなぎ倒せるだろう。

 

 噴き上がった土砂が落ち着くように周辺に重力強化を数十秒かける。

 ざ、と豪雨のような音がして、土煙が落ちて視界が晴れる。

 

「さぁてお宝は何かな~」

 

 私は足取りも軽く、超大剣によって切り拓かれた()洞窟の奥へと足を進めた。

 

 

 ――― そのときはあんなことになるとは思っていなかったのだ……。

 




 
◆呪医のお姉さん
同行ルートも考えたが、たぶん地方医療を預かるものとしての責任感から地元は離れないだろうと判断。

◆魔種
小鬼、巨鬼、犬鬼などなど。市民権が認められているし、特に就業制限もないはず。(種族特性による向き不向きはあるが)

◆魔物
肉体的には魔種と変わらないが、正気を失ってもとに戻れない。エネミー。

◆フライホイール
異空間に物を置けるならやらせてみたかったギミック。亜空間に収納した超巨大な円盤が超高速で回転してるところから魔法でいい感じに半実体ギアでエネルギーを取り出す。エネルギー保存則をそこまで無視しなくて済むので、世界のつじつま合わせがしやすく、発動自体は省エネという想定。フライホイールを回転させ加速させ続けるのは大変。

◆魔素溜まりの中心
さて何があるのだろう?

===

魔導院の落日派(ブラボの医療教会っぽい連中なイメージ)に加入するまでは書きたいです。

感想、評価いただければとても嬉しいです。
そしてみんな原作を読もう!(あと原作の設定と違ってるところあったらご指摘いただければこっそり直します)
 
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