フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆ラーン部族とラーン=テゴス(Rhan-Tegoth)は関係ある?
共通点:どちらもハサミを持つ者。らあん=てごす! らあん=てごす! らあん=てごす! ラーン=テゴスの化身の一つであるとされるノフ=ケーは角を持ち2脚・4脚・6脚を使い分ける毛むくじゃらの化け物とされる。あるいはクレープス・オーガに毛皮の外套を被せればそう見えなくもないかもしれない(オーガの角と、蟹の脚)。がおー。
ちなみに海の嵐の女(巨人)ラーン(Rán)は北欧神話における海の(巨人)エーギルの妻であり、大きな網を持ち、それによって船やヒトを海中に引きずり込む荒神である。

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◆前話
巨蟹鬼(クレープス・オーガ)のセバスティアンヌ女史「そんなことよりおなかがすいたよ」
 


16/n カニ・スタンピード-3.5(食レポ+子蟹増殖)

 

 食器同士がこすれる音が簡易礼拝堂に響く。

 

「おお、えぐみがなく不思議と甘みすら感じる野菜のサラダ! まさかこの冬に新鮮な野菜をこれほど食べられるとは! なんという贅沢!」

 

虚空の箱庭(まほうのべっそう)で年中栽培しているんだ。いつでもどこでも美味しいものを食べたいだろう?」

 

「まさにまさに! そのとおりだ!」

 

 虚空の箱庭から前菜として出したサラダ(特製ドレッシング付き)をモリモリと食べるセバスティアンヌ女史。

 ちなみに給仕用のホムンクルスが <物理障壁> の魔法で彼女が使い易い位置にテーブル代わりの平面を作って食べやすくしてやっている。

 この時代、手づかみで食べるのがまだまだメジャーであろうに、私が出した巨鬼サイズのナイフやフォークを何も戸惑わずに使いこなす当たり、食道楽だというのは本当なのだろう。

 

 そしてその巨体に応じて食べる量が多い。

 山盛りのサラダがあっという間に口の中に消えていく。

 ちなみに巨蟹鬼(クレープス・オーガ)の上半身の空間は、筋肉以外はほぼ胃と肺で占められている。あとは心臓と魔晶か。

 

 胃の壁は非常に強力な筋肉が発達しており、下半身に内蔵された腸へと送る前に消化液と蠕動運動で食物をほぼ完全な液体状になるまで擂り潰す。

 食べたものに寄生虫が居たとしてもこの胃を超えることは出来ないだろう。

 

 下半身の蟹の方の口からも食べることは出来るようにしてあるが、それを聞いたセバスティアンヌ女史曰く、「そちらでは味が分らぬのではないか? 味わわずに腹が膨れても意味がなかろうよ」とのこと。

 まあ、それでいいなら良いですけど。

 ……仮に今後護衛契約を結べれば、魔宮の代わりに経路(パス)を結んで私が魔力を流してやれば、栄養の偏りとか飢えで調子を崩すこともないしな。

 食事は完全に趣味・道楽としてとらえてしまっても問題はない。

 

 

 続いては汁物だ。

 

「これは……西方で一度だけ食べたことがある……! 何という濃厚さ! 蟹を野菜とともに焼いて砕いて裏ごししたものに乳酪が合わさり、まさしく嵐の中でも動かぬ大岩のような存在感! 命そのものがこの皿の中にある……!」

 

「えーと、確か、“ビスク” というポタージュスープだったかな。竜骨の出汁も合わせていたんじゃないか?」

 

「そう! ビスク! 手間暇かけた分だけ美味しくなるとは限らぬが、これは手間を掛けねば出せぬ味……! なんとも、なんとも……!!」

 

 豪快に蟹のビスクを流し込むセバスティアンヌ女史。

 腰のあたりから伸びる蟹の触角が上機嫌に揺れている。

 

 

 

 続いてはかにみそのパスタ。

 

「どれ……練った小麦を伸ばしたものに、ソースが絡んで……! そうか、これによってソースの旨味が全体に行きわたる!!」

 

「やはりソースとの絡みを考えると麺が最適という結論にいたるわけだ」

 

「確かに。蟹の栄養を閉じ込めたソース! そして喉越し! 味だけでなく食感という楽しみがあるのか!」

 

 おー、どんどんとパスタが消えていく……。

 私も彼女に比べれば少ないが食べ進めていく。

 うむ。ほぐした蟹肉と、かにみそのソースを和えたパスタは確かに美味しい。

 

 

 

 続いてメインということで巨大海蛇竜(ヨルムンガンド)の尻尾の輪切りのステーキ。

 

「丁寧な下処理がされたテールはプリプリとして歯で触れるだけで蕩けるようだ……。ただ……」

 

「そろそろ堅い食感が欲しい、と?」

 

「ああ、まさにそう思っていたところだが」

 

「ではこちらもぜひ」

 

 と、ヨルムンガンドの骨付きアバラ肉の丸焼きを運ばせる。

 

「巨大なアバラ肉を、骨の表面の一部ごと削いで、丸焼きにしたもの。ああ、もちろん、骨がないところのアバラ肉も」

 

「おおお~~~!」

 

 新たに運ばれてきたのは、それはまさにもう、肉! としか言いようのない視覚的な暴力すら伴う巨大な肉塊。

 私がサーブ用の巨大な肉切り包丁で厚めに削ぎ切ったそれを、セバスティアンヌ女史の目の前の <物理障壁> のテーブルの上に並べていく。

 

 肉の脂が滴り、食欲をそそる匂いが広がる。

 

 特に骨付きの肉は、ほぼ半面に巨大海蛇竜(ヨルムンガンド)の骨の表面が付着しているが……。

 そんなもの意に介さず、セバスティアンヌ女史は両手づかみでかぶり付いた。

 うむ、この肉塊に対しては、手づかみこそが至上のマナーであろう。

 

 サクッ、パリッと、巨蟹鬼(クレープス・オーガ)の強靭な歯と顎にかかれば、塊ステーキの半面を覆う骨の膜程度は、食べるにちょうどいいまるでカツレツの衣のようなアクセントにしかならない。

 

「噛めば噛むほど味が出る海竜の肉! そしてちょうどいい厚さだけ残された骨皮のハーモニー! このような料理法があったとは……!」

 

巨鬼(オーガ)向けに試してみたが、気に入ってもらったようで何より」

 

 

 

 あとは摘まみながら今後の話をするために、手ごろなサクサク揚げ物(フリット)をどっさりと。

 

「蟹肉のつみれにパン粉を付けて揚げたものだ。塩を掛けたり、柑橘のしぼり汁を掛けたり、いろいろと味を変えられるようにしてある」

 

「ふむふむ。この軽い食感が癖になる。これならいくらでも食べられそうだ!」

 

「処理しきれなかった蟹脚も、そのまま湯がいて置かせておこうか」

 

「是非頼む!」

 

「じゃあ冷めないように <保温> の術式もかけておくよ」

 

 蟹肉団子のフリットに飽きれば、湯がいた蟹を酢をベースにしたさっぱりつけ汁でいただく。

 

 ついでに一緒に砂糖をまぶした揚げパンも出しておく。

 

「甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱい……無限のコラボレーション……!!」

 

「ええと、まあ、ごゆっくり~」

 

 私は気持ちのいい食べっぷりを発揮するセバスティアンヌ女史を眺めながら、優雅に黒茶を啜った。

 

 いやさ、なんか表情とか指を舐める仕草とかがエロイんだよね。

 眼福、眼福。

 それに気持ちのいい食べっぷりだしずっと見てられるわ。

 

 

 

 

「いやー、喰った喰った。これほど美味いものにありつけるとは想定以上だ! やはり貴公を我が部族に連れ帰りたいな!」

 

「ははは、まあそればかりは直ぐには無理かな。ああ、そうだ。そろそろ栄養が足りただろうから、子蟹の一匹や二匹は産んでみてはどうだい? 槍持ちの随伴支援兵も居た方がいいだろうし」

 

「ふむ。ふーむ……やってみるか。ぬぬぬぬぬぬ……」

 

「やり方はつかめそうかな?」

 

「お、おお。なんか急に、こう何かが育っているような……? う、産まれるっ!!」

 

 すぽーん! 「かー!」 「にー!」

 

「わっ、産まれたけど、見えてる見えてる! セバスティアンヌ殿! 早く蟹の腹部の()()()()は畳んで閉じてくれ! 開けっ放しで局部(アソコ)が見えてるぞ!?」

 

「ん。私は気にしないが」

 

「私が気にするんだ!」

 

 

 

§

 

 

 

 子蟹が産まれた分だけ腹が減ったからと、またどんどんおかわりしていったり、「これは食べて産んでを繰り返せば無限に食べ続けられるのでは」とかセバスティアンヌ女史が気づいてはいけないことに気づいてしまったりとかしたけれど、流石に短期間で産みまくると母体に悪いからと説き伏せ、とりあえず食事はひと段落した。

 

 ひと段落したが、そうこうしている間に日は沈んでもう夜になってしまった。

 ま、まあ、岩浜に散らばっていた大蟹の死骸は全部なくなったから、ヨシとしよう。

 

 食事の間に、私の方も、セバスティアンヌ女史の武器を作るのに必要な採寸は終わったし。

 これから彼女に相応しい魔導武器を作り上げるつもりだ。

 

 

 ちなみに満腹になったセバスティアンヌ女史は、いまは、魔晶に刻まれた重力操作魔法を使って自らの身体を軽く浮かせながら寝ている。

 我が神の奇跡によって再誕したとはいえ、蘇生したての病み上がりだし、ゆっくり休んで魂と肉体を馴染ませてほしいものだ。

 

 あとさっき生まれた二匹の子蟹は礼拝堂の床だ。

 この子らはセバスティアンヌ女史からの魔力供給があるうちは食事は要らない。

 このまま死ぬことなく何回か脱皮できたなら、オーガの上半身も生えてくると思われるが、いまはただの大きな蟹だな。

 

 まあ、女王を世話するために産み出された働きアリみたいなものだ。

 武器防具の脱着の補助や荷物持ち、食事の補助、手の届かない場所の清拭、精神リンクによる偵察などなどが役目だな。

 ……あとは緊急時の囮だとか、まあ、そういう用途もある。子蟹の命の価値は、実際軽い……。

 

 

 

 さぁて、セバスティアンヌ女史にはどんな武器が良いだろうか。

 

 足元に届くくらいに長い長柄武器(ポールウェポン)にするのは確定として。

 もちろん長さに加えて、頑丈さも必要だ。

 巨体の身のひねりや、鉗脚を引き付けることにより発生する膨大な角運動量が、柔軟な腰部関節を通じて武器の末端まで伝達されて炸裂することを考えれば、相当以上の頑丈さを備えることは最低条件だ。

 

 とりあえずはひたすらに頑丈なものを作っておけばいいかな。

 最初はそういう、癖がないのが使い易いだろうし。

 穂先の刀身が割れて中からエネルギー光刃を発生させたり、魔獣肉から吸収・蓄積された過剰魔素を魔力砲撃(カニビーム)にして撃ったりする機能を付けるのは、そのうち、だなー。

 




 
というわけで胃袋から掴みに行くマックス君でした。
マックス君の場合、従者機能はほぼ虚空の箱庭(じぶんのこうぼう)と空間魔法で直結させてやって賄えるから、連れ歩くやつはホント、面子さえ立つやつなら良いんだよな……。

じ、次回こそ「カニ無双」。戦闘に入れるはず……!
魔導で海を割って(モーセして)一帯の蟹を集合フェロモンと思念波でおびき寄せて一網打尽じゃ~!
 
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