フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
ひえっ……投稿した翌日に原作者様にツイッターアーでご紹介いただけるとは思わんやん?(震え声) ご紹介ありがとうございました!!!!!
みなさま今回もご笑納いただければ幸甚です。
◆前話
轟断! フライホイール殺法!
(現在の時系列的には、ケーニヒスシュトゥール荘のエーリヒが、まだ風妖精のロロットとは出会っていないくらいの頃ですね。エーリヒ君12歳の春~晩春、魔法使いの丁稚編序盤に相当)
足取りも軽く魔素溜まりの中心である洞窟改め
いやまあ足取りが軽いのは即席超大剣をオシャカにして無手になったせいなのだが。
洞窟があった小さな丘も随分と風通しが良くなったなー。
さてさて目的のブツは、と。
「お、あったあった。こっちがここの魔素溜まりの中心か」
探査術式の反応を頼りに足を進める。
辿り着いたのは洞窟の奥、まだかろうじて洞窟としての体裁を保っている場所。
天井に微かな風穴が開いたその真下に、それはあった。
春の日差しが風穴を通じて降り注いでいる中の、異様。
まるで空間に穴が開いたかのようにすら見える漆黒が、洞窟の床にめり込んでいたのだ。
「……
うーん。
何かの結晶か?
だが間違いなく、これが魔素溜まりの中心だ。
この真っ黒の、漆黒の結晶めがけて、魔素が集まり続けている。
「天井の穴、地面の真っ黒の結晶の位置……もとは流星か何かだったのか?」
この結晶がはるか上空、宇宙から墜落し、この洞窟の天井を貫いて、落下の威力を失い、床に微かにめり込む程度で済んだ……と思われる、漆黒の結晶。
魔素の流れのイメージとしては……本来吸い込まれて流れていくはずなのに、それが何故か流れていかずに溜まっている、というような感じだ。
吸引力の変わらないただ一つの、っていうキャッチコピーが似合うような状況だ。ただし永遠に目詰まり、みたいな。
「てっきり中心の何かから魔素が溢れてきてると思ったんだが」
実際は溢れるどころか、その逆。
それはまるでこの結晶が貪欲に魔素を求めるように。
いや魔素を求めているのは、
「いやあ、分からんなあ、分からん! だが……それがひどくそそるじゃあないか!!」
この結晶は何だ?
どのような性質がある?
由来は?
なぜ魔素が集まる?
中に何かあるのか?
真っ黒なのは光を吸収しているから……としても、探査術式で計った結晶の表面温度が低いのは解せない。
吸収された光のエネルギーはどこへ消えた?
……あるいは、蓄積している?
「中身を知りたいな……。探査術式は……通らない?」
これはいよいよ興味深い。
魔力遮断物質?
いやまてまて、感触的には物質表面で弾かれたというよりは、その中でぼよんと弾き返された感じだ。
この真っ黒の結晶体表層は通ってる。じゃあ魔力遮断の性質は無い、と思う。
……じゃあ中に詰まっているモノの密度が高い? だから浸透通過せずに探査波が弾かれた?
魔素を揺らす魔力は通るけど、魔素それ自体は浸透しない、とか?*1
「ふーむ、そして見た目からするに、ほぼ100パーセントの光を吸収して逃がさない、と。吸収した光を熱として発散させていないのなら、内部にキャプチャーして溜め込んでいる、のかな」
興味深い。
魔素溜まりの中心としてもそうだが、純粋に物体として興味深い。
――― 何が悪かったと言えば、運が悪かったのだろう。
「この真っ黒い結晶それ自体は、魔素を集める力はなさそうだな。じゃあ、魔素溜まりの中心としては、やっぱりこれの
興味深げに漆黒の結晶体を眺めていたそのとき、上空から洞窟の天井に空いた風穴を通って、
それは洞窟を切り拓いた即席超大剣の破片であり、それが遥か上空まで反動で飛び上がったものが漸く落ちてきたのだった。
偶然にも風穴の間を抜けたそれは、鋭い断面を漆黒の結晶体に突き立てた。
「あ」
と思う間もなく、砕かれた結晶体から
その瞬間を外から見ていた者が居れば、驚きに目を見張っただろう。
空から洞窟の天井の穴を通って落ちてきた刃の破片が漆黒の結晶に突き立つや否や。
その結晶の断面から一条の光が奔り、結晶を観察していた
それと時を同じくして、
脳髄と脳漿を炸裂させながら、
花の蕾から妖精が生まれるようにして、その妖精のような女の子は頭蓋を開いて生まれたのだ。
恍惚とした表情を浮かべてうっとりとした彼女は達したかのように身を震わせ、その背から
その表情は、砂漠で水にありついた旅人のような安堵と恍惚に彩られていた。
その瞬間を
しかし、
――― 高位の魔法使いを殺しうるものは数多ある。
純粋にスペックで上回る、“旧き巨人”、神の“落とし子”や“吸血種”に“大精霊”。
あるいはヒトの身であっても、技量を極め“斬撃”という概念すら操るに至った“剣聖”。
熟達した魔導技術により妨害術式を解き、はたまたこちらの術式を逆用してくる、より高位の“魔導師”。
魔導という
現象の化身であり概念存在である“妖精”のうち、個我を持つに至った高位のものもそれに含まれる。
そして彼ら彼女らが持つ『初見殺し』に『わからん殺し』。
上位存在の権能により力を得たとはいえども、それは決して最強無敵の存在であることを意味しない。
だが同様に、それは必ずしも、今この瞬間に、彼の命が潰えることを意味しない。
脳髄を花咲かせるように失った
この狭いようで無限の、あるいは無間の
“くろいつき” にほど近い、青い空と黒い
その時ははっきりと何かを考えることなど出来なかったけれど、虹色の大きな光の輪を作るのはうきうきした。
青い空にゆらゆら光で模様を描くの。
とっても素敵なのよ?
だけど
黒い
青い空の下、ずっとずっと下まで落ちてきて。
落ちてきた拍子に、この檻の扉が閉められて。
――― 閉じ込められた。
気づいたときには遅かった。
出られない。
どこまで行っても出られない。
広くないはずの檻は、何よりも、誰よりも速いはずの私の脚でも抜け出せないくらいの迷路になって。
どこまで行っても、どこまで行っても、どこまで行っても。
この迷路の檻は私を逃がしてくれない。
同じ場所を何度通っただろう。
一生懸命走っても、迷路はどんどん広がるばかり。
しかも、ここには
走って疲れても、喉が渇いても、
どれだけ渇いても、欲しいって願っても、
青い空と黒い宙の間に居たときは、そんなこと気にしたことなかったのに。
あそこは“くろいつき”に近いから、
あそこに居た時は気づかなかったけど、たぶん私って、結構な
檻の外にはたくさんの
でもこの檻は、私には一滴の
もっと
どんどんと食べきれないくらいに増えていく
そんなに
だけど
そうじゃないと、
でもね!
さっき良いことがあったの!
ようやくこの檻が壊れたのよ!
出られたの!
とってもとっても解放感!!
周りの
でもいいの。
代わりにとっても美味しい
一瞬だけ、とってもかわいい金髪の子のお顔が見えたけど、でもそれどころじゃなかったの。
私はもう、渇いて、渇いて、渇いてしまっていたの……。
だからその子の
だけどその金髪の子って意地悪なのよ。
壁を作って取らせないようにしてきたの。
でもね。
でも、私知ってるの。
金髪の子の頭の中にも、
何かを考えるたびに、ヒトの子の頭の中では、
お空の上で踊ったときほどじゃないくらいに小さな
だからね。
こうやって壁を跳び越えて、そっちの子たちと一緒になるのも簡単なのよ?
――― ああ! ああ! ああっ!
待ちわびた
とっても美味しい!
太陽みたいな味のする
しかも、お星さまや太陽みたいに、飲んでも飲んでも無くならないのね。
お腹の中にお星さまの泉があるみたいだわ。
……一緒に何か呑み込んだのかしら。
ちょっと身体がおかしいかも。
…………でもきっと大したことじゃないわ!
だって、こんなに清々しい気分なんですもの!
うおおおおおおお!!? やっばい、即死した!!?
何だコレ、何が起こった!?
あ、やべ。
もどれー、もどれー、もどれー!
まだ死なんぞーーー!
抜け出してゴーストに変性しようとする魂を肉体に留めるべく術式を練る。
魔導炉の制御用の副脳での思考も限界がある。身体も修復させなければ。
<
<
いきなり死ぬとは思わんかったが、何とか保険は動いて良かった……。
一部の並列思考の外在化と、もしもの時に箱庭経由で
これがなきゃいきなり死んでたぞ……。
……いや、なんか頭部の再生が遅い?
自己チェックプログラムを走らせて――……。
は?
脳髄自体が消失?
飛び散っただけなんじゃなくて?
そこの構成要素が、概念的に私の管轄から奪われてるの?
松果体に同化させてた超々小型魔導炉ごと?*3
っていうか常駐術式ごと食われてる!!??
再生が遅いのは素材が無いのと、常駐術式が消失してるせいか!
マジで何が起こった……??
感覚器官もまるごと食われたっぽいから現状の把握が出来ん。
あ、身体が動き出した。
虚空の箱庭側からの遠隔干渉か。
確かにまずは襲撃を受けたこの場から離れないと、頭部の再生もおちおちできないしな……。
常駐術式の再構築。
足りない構成要素を予備のパーツと一緒に虚空の箱庭から転送。
よし、頭部の再生が進み始めた!
同時に因果の糸を辿って、さっきの死因を解析。
<
…………。
……。
え?
あの結晶の中に居たのって、
地上で会うとかめっちゃレアじゃん。
へー、光波と電子を司る妖精だから、障壁を電磁誘導的に跳び越えて脳内の神経発火で発生する電流を火種に脳内に直接顕現したのか~。
なるほどな~~。
…………クソゲーでは?
いくら何でも『初見殺し』で『わからん殺し』が過ぎる。
あと妖精が司る専門の権能領域で勝つとかまだ不可能なんで、
あ、死因解析してるあいだに頭部再生終了。
視界も戻った。
戻った視界に映ったのは、極光を纏った妖精だった。
はえー、妖精さん綺麗ですね。
特にその羽、オーロラそのものって感じ。
月光蝶っすか?
っていうか受肉してない?
あっ。私の脳髄ごと恒常性維持術式を喰ったから、その脳髄を素材に、松果体に同化してた魔導炉からの魔力を燃料に、バグった恒常性維持術式の作用で再構築して受肉したってわけっすね~。
えっ。
いや、この子、半妖精になってるの? 妖精サイズの半妖精……たぶん相としてはかなり妖精に寄ってるっぽいのかな。
この場合、脳みそで妊娠したことになるの? 私?
混乱する私に、彼女はたおやかに微笑みかけてきた。
こちらを覗き込む星空のような瞳。極光のような髪が流れるのが美しい。
彼女の小さく可憐な唇から、少し舌足らずな声でお願いが放たれた。
「ねえ、いとしいひと。はしたないこと言うようで恥ずかしいのだけれど……もっとたくさんくださるかしら?」
な、ナニをご所望なんですかね……?(震え声)
頭だけは、頭だけは、なにとぞご勘弁を……!
◆漆黒の結晶(独自設定)
外宇宙からやってきた魔素を通さない物質が、偶然に内部の屈折と反射で光を閉じ込めるような形状になったもの。空から落ちたときの衝撃でその形状が完成し、光を完全に内部に溜め込む形になった。偶然が生み出した奇跡の産物。
◆
オーロラ、ひいては光波と電子を司る妖精。とても大喰らいなので、隠の月の影響が大きい上空から魔素の薄い地上へ降りてくることは稀。基本的に妖精は自意識のない現象であるが、力を高めたものは自我を獲得することがある。今回の子は漆黒の結晶にとらわれた時点では自我はなかったが、絶えざる渇きをきっかけに自我を得た。さらに
◆半妖精
ヒトの
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◆ニコニコ大百科 → https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BD%E3%83%B3%E6%B0%8F%E3%81%AE%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E3%82%92
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