フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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前話あとがきで載せたコンセプトアート的な画像にタイトルを加えたものを目次ページに追加しました。(燃える三眼、と言われると、だんだんそうとしか見えなくなってきますね)

◆前話
新しく魔導院地下に工房を貰ったので、研究会の仲間を招待したよ! ますます検討が(はかど)るね!
 


22/n ミュンヒハウゼン研究室へようこそ-2(ここに脆弱性があるのでパッチをあてます)

 

 生憎の雨模様の中、私ことマックス・フォン・ミュンヒハウゼンは、箱馬車の中に居た。

 戸籍上の妹になっている極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)ターニャと、霜の半妖精(ライフアールヴ)ヘルガも一緒だ。

 

「雨ですわねえ、おかあさま。……雷でも落ちませんかしら。食べて差し上げますのに」

 

 極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)ターニャが窓から外を見て言う。

 彼女は、宇宙から飛来した魔素遮断材質の結晶に運悪く閉じ込められていた極光(オーロラ)── すなわち光波と電子── を司る妖精であり、私の脳髄を母胎代わりに、私の内蔵魔導炉や精神・肉体の恒常性維持術式を喰らって受肉した、少々イレギュラーな成り立ちの半妖精(チェンジリング)である。(そのためターニャは私のことを、おかあさま、と呼ぶ。)

 妖精のころの記憶をほぼ全て保持しているまさに肉を得た妖精そのものであり、魔素にあふれる高空を常の住処にする極光の妖精(アウロラ・アールヴ)らしく保有魔力もその瞬間出力も高い。

 彼女は、落日派の教授位であるバンドゥード卿や研究員のパピヨン卿に師事しており、己の特性を生かした電磁気学的観点の魔導を専攻と定めている。

 虚空の箱庭の私の研究所では、電気系、材料系をはじめとして、西暦世界の現代科学技術の再発見のための研究も手伝ってもらっている。

 

 つい最近は、その科学の進展にともなって、静電気の微小精霊(グレムリン)が精密機械にいたずらするのを、調伏してもらったりもした。

 そのうちの一匹はあまりに進化の速度が速かったので掌握できずに取り逃がしてしまったが、まあ、それ以外は配下に置けたので結果オーライだろう。

 ご褒美にと、私の深海のような色をした瞳をねだられたので、久しぶりに眼玉を抉って宝石化して渡す羽目になったが……まあ、それだけの働きはしてくれたからな。

 それを半分に割って加工した髪飾りも、彼女の虹色に揺らめく髪に似合っているから良しとしよう。

 

 ちなみにターニャが雷を食べられるのは冗談ではなく本当のことである。

 逆説、それと同じ規模をまた放電することもできるのだが。

 

 妖精として自然を従える権能と、現象の化身としての膨大な魔力に、私の西暦世界の知識に着想を得た魔導理論が合わさり、手に負えなさ具合が留まるところを知らない。

 頼もしくもあり、恐ろしくもある妹にして娘である。

 

 

 

「……私としてはこういう日がもっと多い方が助かります……。夏はやはり暑くて」

 

 若干調子が悪そうな声音で相槌を打ったのは、ブルネットに霜が降りたようなまだらな髪色をした美少女。

 かつてエーリヒ君が街道沿いの廃館から助け出した、厳重に封印されていた半妖精で、元貴族の娘、ヘルガだ。

 司る権能は『霜』。

 ヘルガは、ターニャとは違い真っ当に(?)ヒト種(メンシュ)の両親から生まれ、愛情たっぷりに育てられた半妖精だ。しかしあるとき不幸があって母が病没し、娘が半妖精だと知った父が狂い(そこには落日派と思われる癒者の暗躍があった可能性もある)、その父の手によって館に監禁され、妖精の相を剥ぎ取る拷問のような施術を受け、さらに長い間に渡って封印されていたという凄絶な過去がある。

 

 そこをエーリヒ君が助け出し、私も微力ながら力を貸して、ゆっくりと肉体と精神を癒してなんとか正気に戻したのだ。

 定命の者としての精神の可塑性と、そして何より、恋する乙女の愛の力が、快復の鍵であったと言えるだろう。

 そしてもちろん、現在彼女の師匠を務め、精神魔法のエキスパートでもあるフォン・ライゼニッツの尽力も。

 

 ちなみにヘルガは、エーリヒ君に思いを寄せる乙女たちのうちの一人でもある。

 

 そして最近は、ある出来事をキッカケにしてやんごとない血筋に連なり夜陰神の寵愛篤い尼僧でもあるツェツィーリア嬢が、愛しのエーリヒ君の交友関係に加わってしまい、恋のライバルが増えてしまったのを憂えていたりもする。

 しかもその『ある出来事』── ツェツィーリア嬢の御家騒動── を通じて、ミカ君やエリザちゃんはエーリヒ君との絆を深めたのに、ヘルガはそれに加わることも出来なかったので、なおさら凹んでいるらしい。

 

 というのもヘルガから聞いたところによると、どうやらエーリヒ君とミカ君は、ツェツィーリア嬢が『望まぬ結婚を強いられている』と明かした直後に、私の従者である巨蟹鬼セバスティアンヌ(スティー)が追手として立ちはだかったために、なんとツェツィーリア嬢の(推定)婚約者が私だと勝手に思っていたらしいのだ。

 妙なタイミングで事象が重なったために文脈が交通事故を起こしてしまっているな……。

 

 だが流石にそれはありえない。

 彼らはツェツィーリア嬢が三皇統家の一角たるエールストライヒ公爵家の一の姫だと知らないからそんなことを言えるのだ。いくら何でも私と彼女では家格が違いすぎる。

 そもそも結婚というのも比喩であり、そのときツェツィーリア嬢は、玉座に無理やり座らされようとしていたのだ。

 

 だがまあ、そういう邪推が彼らの中にあったため、ミュンヒハウゼン男爵家の家中の者と目されていたヘルガには、エーリヒ君たちからのお声掛かりが無かったということだ。

 悲しいね……。

 

 仕方がないので私はヘルガの恨み言に付き合ってあげたよ。

 まあ、仮初なれども兄として、このくらいはね。

 うんうんそうだね、仲間外れは悲しいよね。うんうん、わかるわかる。

 

 ともあれ、初夏の帝都は霜の半妖精(ライフアールヴ)であるヘルガには辛いのだろう。

 箱馬車の内部を熱交換術式で快適に保っているとはいえ、概念としての夏が、彼女の霜の権能に刺さっていると見える。

 

 

 私が戸籍上の妹である二人に向かって口を開こうとしたとき、馬車が止まった。

 同時に馭者(ぎょしゃ)役をさせていた人造人間(ホムンクルス)が、目的地への到着を知らせてくる。

 

 着いたのだ、目的地── 我ら3人の実家に。

 

 そう、私ことマックスと、極光の半妖精(アウロラ・アールヴ)ターニャ、霜の半妖精(ライフアールヴ)ヘルガの3名を養子として、その自らの家系図に加えてくれた帝国貴族──── ミュンヒハウゼン男爵家の帝都屋敷を訪れることにしたのだ。

 

「……着いたみたいだ。さあ降りようか、御令嬢様がた(フロイラインズ)?」

「はぁい、おかあさま」

「わかりました、マックスお兄様」

 

 

 

§

 

 

 

 ターニャとヘルガをエスコートして馬車から降ろし、ミュンヒハウゼン男爵家の屋敷へと入る。

 もちろん雨に降られないように魔導障壁を使ったので、濡れることはなかった。

 まあ、ターニャとヘルガは、肉体を妖精の相にずらせば雨だろうが馬車の扉だろうがすり抜けられるので、そこまでしなくても良かったのかもしれないが。

 

「それでおかあさま、どうして今日は本邸に? 物理的に館に入れないからといって外で待たせて雨に濡れさせるのも忍びないからって、スティーを置いてきてまで来るほど急な用事がありまして?」

「しかもライゼニッツ卿に許可を取って、私まで同伴させるほどの事態なんでしょうか? まさか昇格祝いの返礼のために足を運んだというわけでもございませんでしょうし」

 

 ターニャとヘルガがミュンヒハウゼン男爵家の応接間に向かう廊下で聞いてくる。

 そういえば話してなかったか。

 

「まあこの場ではちょっと言えないことかなあ」

「なんだかキナ臭いことですの? もう既に面倒そうな気配がしますわ」

「聞かなくて済むなら辞退したいですが、そうもいかないのでしょうね……」

 

 そりゃね。

 聞かせずに済むなら最初から連れてきてないし。

 

 ちなみに顔なじみのミュンヒハウゼン本邸の侍従は素知らぬ顔でスルーして私たちを案内してくれている。

 隔意があるわけでもないが、完全な身内として認められているわけでもない。そんな微妙な距離感。

 まあ、半分官職売買みたいな経緯で養子になったからね。

 

 とはいえライン三重帝国の国是として、開闢帝 曰くの『初代は皆どこぞの馬の骨よ』というポリシーがあるから、実力さえ示せば風当りはそこまで強くない。

 巨大海蛇竜(ヨルムンガンド)殺しに、新品種の種苗ビジネスを通じた農業同業者組合との繋がりに、一年足らずで魔導師を名乗るまでの成果を見せた魔導院での活躍などなど。

 自分で言うのも何だが、私ことマックス・フォン・ミュンヒハウゼンは、ミュンヒハウゼン男爵家の威名を高めるのに貢献していると思う。

 

 それでもどこか、この本邸の者たちから余所余所しさを感じるのは、私たち三兄妹が滅多にここに寄り付かなかったから……という理由だけでもないだろう。

 先代がホラ吹き男爵として有名だった反動で、身の丈に合った堅実路線で御家を守るのが今のミュンヒハウゼン男爵家の方針であり、そのため、過剰な栄達は望んではいないのだ。

 それに、もともと自分たち(ミュンヒハウゼン男爵家)は名義貸しに過ぎず、私たち養子組が己の腕一本で爵位をもぎ取ることが出来るようになるまでの繋ぎ── フミダイなのだという意識もあるのだろう。

 

 

 …………まあ、貴族社会の(シガラミ)というやつは、分家なりが独立した程度で縁を切らせてくれるほど甘くはないわけだが。

 

「マックス様、こちらで旦那様がお待ちです」

「ああ。案内ご苦労」

 

 本邸の侍従が応接間の扉を開き、私たちを招いた。

 

 私はミュンヒハウゼン男爵が待つというその部屋の扉を潜る。

 ターニャとヘルガもその後に続く。

 荷物持ちとして極力気配を消していた私側のホムンクルスの付き人もさらにその後に続いた。

 

 

 

§

 

 

 

「失礼、閣下。ご容赦を」

 

 応接間に入るやいなや、私は男爵に形式上だけ断ると、有無を言わせずに魔法を行使した。

 

 

 窃視盗聴術式破壊秘匿維持術式(セキュリティ ガバガバなのは イカンでしょ)

 

 

 だって色んな()が付いてるんだもんよ~。

 こんな中じゃ秘密の話なんかできないよー。

 だから窃視系、盗聴系の術式を全部破壊して叩き返し、改めて情報が漏れないように因果撹乱も含めた魔法的処理を加えてやった。

 

 己の仕事に満足げに頷いた私を見て、先に座って待っていた壮年の男が、深くため息をついた。

 

「……そんなに色々と仕込まれていたか?」

 

 彼こそがミュンヒハウゼン男爵。

 アグリッピナ女史から貧乏(くじ)を引かされた哀れなひとである。

 

「ええ、それはもうたーっぷりと。ターニャとヘルガも見えただろう?」

「ざっと29くらいありましたわよね? ヘルガはどう見えましたか?」

「私も同じく29の情報収集系の術式が見えましたわ。でもまあ、マックスお兄様の呪詛返しで砕かれましたし、きっと今はあちこちでてんやわんやになっているのではないでしょうか」

 

 私は本邸(ここ)に来た時のある種の恒例行事ともなった諜報系術式の一掃をこなすと、目線で促されて男爵の正面に座った。

 ローテーブルを挟んで男爵と向き合うと、そこそこ上等なソファが私を受け止め、身体が少し沈む。

 ターニャとヘルガは私の両脇に座った。

 

「はぁ、我が家がこんなに()()になるとはね」

「使用人や出入りの業者を洗った方がいいのではないですか? 閣下」

「それは既に洗ってある。だから掃除してもらったのは、ここで応対したお客人たちの悪戯の分だろうさ」

 

 ()められてるなあ、ミュンヒハウゼン男爵家。

 私は内心で眉をひそめた。

 

「まあ、防諜の件は追々。

 ──── さて、既に閣下のところにも帝城から先触れがあったかと思いますが」

「ああ。こちらにも連絡があった。魔導院における研究員への昇格直後に、君の魔導副伯への就任の打診がね。

 バイカウント……子爵級の役職ということだから、男爵家より上になるわけだ。おめでとう、()()

「まだ賜ったわけではありませんよ、閣下。それに一代限りの官職と継承可能な領地では扱いも違うでしょう」

 

 疲れた口調の男爵に、私は極めて穏当に返答した。

 

「ええっ、おかあさ── ごほん、()()()()()、官職を賜るんですの!?」

「すごいじゃないですか! おめでとうございます!」

 

 両脇に座るターニャとヘルガが寿(ことほ)いでくれる。

 

 そう、私はなんと、魔導副伯という子爵級の役職に就けられることが内定しているのだ。

 この副伯というのは隣国のセーヌ王国に由来する、伯爵を輔弼(ほひつ)する役職なのだとか。向こうでももう使わないような昔の言い回しらしいが、取り込んだ隣国の貴族を迎える際の古い古い規程に名残があったとかでこの度復活させたとのこと。

 私に与えられるだろう魔導副伯は、魔導宮中伯を補佐する役割、ということになるそうだ。

 エールストライヒ公爵家のメヒティルト女史がこっそり詳しく教えてくださった。人脈に感謝だね。

 

 ちなみに、宮中伯は大臣級の役職であり、方伯や辺境伯、侯爵とだいたい同格と思っておけばいいだろう。

 魔導副伯は子爵級なので、そこから二枚くらい格が落ちて、イメージ的には省庁の課室長級の実務レベルの取りまとめ役に当たるだろうか。

 まあそれにしたって、成人したてで魔導師にも成り立ての、しかも戸籍ロンダリングでもしただろって経歴の私みたいな怪しい人間が就けるような役職じゃないはずだ、通常は。

 

 だが、諸々予想される反発を振り切って、内示が出された。

 ライン三重帝国が君主制国家だからこそできる大抜擢であると言えよう。

 ただし、波風立たないとは言ってないので、そこんとこは注意が必要だ。自分の方がふさわしいとか、それなら私の息子にも、とか言い出す輩は多い。

 

「改めておめでとう。めでたいが……そのお陰で我が家も(にわ)かに脚光を浴びる羽目になったよ。正直身に余る」

 

 波風立つとどうなるかって?

 ふっ。帝都は政治の都であり、すなわち暗闘の都でもある。

 つまりそういうことだ。

 

 私の方に直接攻撃が来ることはもちろん、私の周りに襲撃が行くこともあるだろう。

 ターニャは自分で何とでもできるし巨蟹鬼のスティーも居るから問題ない。

 私の本拠地は次元の狭間にあって余人は侵入できない。

 ライゼニッツ卿の庇護下にあるヘルガも心配いらないだろう。

 

 では、ミュンヒハウゼン男爵家の方は?

 少し前まで田舎の男爵家のひとつに過ぎなかったこの家には、当然おかかえの暗部組織なんて居ないし、屈強な私兵も養っていない。

 その一方で私たち魔導師(あるいはその見習い)3兄妹に比べれば、はるかにか弱い令息令嬢は何人も所属している。

 

 こんなもの狙い目のカモでしかない。

 ミュンヒハウゼン男爵家の子息を拉致して主家の筋から私に言うことを聞かせたい輩も多かろうしな。

 だから本音としてはさっさと私には独立してもらって、縁遠くなってほしいのだろうさ、男爵閣下は。

 

「縁を切れればいいのでしょうが、さてはて、今更縁を切ったところで社交界がそれを素直に吞み込んでくれるとは、とてもとても……」

「だろうなぁ……。だからこそ今日はこちらに来たのだろう?」

「そういうことですね。お察し通りです。この屋敷の魔導防御の強化に、護身用の魔導具の貸し出し、自慢の魔導従者タイプのホムンクルスも斡旋(あっせん)しましょうとも」

 

 明らかに見えている脆弱性だからね、この実家は。弱点はきちんと補強しておくに限る。

 それに放置して、養親子間の仲が悪いと── 私と男爵の間に実際は親子の情など無いとしても── 醜聞を喧伝されるのも困る。

 戸籍上の兄弟姉妹や甥姪が危ない目にあうのを見過ごすのも寝覚めが悪いし、守れなければ今度はそれを私の瑕疵にするような噂が流れるのだろうし。

 だから相応に実家を立てる必要はあるのさ、面子を保つためにもね。

 

「あら、そうしたら私とヘルガを連れてきたのは、屋敷の魔導的改装のお手伝いのためですの?」

「それもある。だが、それだけでもない。秘匿度が高いが家中の者には知らせるべきことが他にもあってね。一度に済ませたかったんだ」

「ん? 私が聞いているのは魔導副伯の件だけだが、他にもあるのか?」

 

 男爵の疑問ももっともだ。

 私が知ったのも正式ルートの内示ではなく、ある日私を訪ねてきたメヒティルト女史にくっついて来ていた、長命種(メトシェラ)の侍女見習いの言葉からだった。

 

 あの東雲派の予言者(イミツァ嬢)が、言うにはこうだ。

 

『陛下は貴方に東の砂漠を開墾させるおつもりですよ』

 

 そう囁いて、未来を読んだ長命種(イミツァ嬢)はイタズラげに笑ったのだったな。

 

「それを信じるのですか? マックスお兄様は」

「ああ、その蓋然性は高いと判断した」

 

 自分で言うのも何だが、普通は罰ゲームでしかない砂漠の開墾も、私なら何とかできるメドが立つのだ。そう、魔法チートならね!

 

 私は砂漠を潤すための水を大量に、それこそ全て合わせれば大河を作れるほどに副産出する数十の海水鉱山を秘匿しつつ個人所有しているし(海底魔宮を攻略して地道に増やした)

 その大河並の水量を砂漠の真ん中に継続的に転移させてやれる魔導技術と魔力を持っているからね。

 

 それによって灌漑すれば、砂漠の真ん中にしがらみの無い広大な農地が手に入る。

 完全新規の農地がゆえに、そこではどんな品種も育て放題となるだろう。

 

 そしてオアシスを一定間隔で連ねて新造することで、既存の交易路とは別の、関所のない新たな物流の動脈も構築できる。これも非常に大きい。

 また、恐らくは第二次東方征伐にて豊かな土地を約束して寝返らせた砂漠の弱小部族でもいるのだろうし、それらに与える土地にも事欠かなくなるだろう。砂漠における豊かさとは、水の豊富さであるからして。

 

「砂漠……あー、私は遠慮しておきますね。霜の権能と相性が悪すぎますので」

「ここで話すということは、諸々の妨害や買収その他が来るだろうから覚悟しておけ、ということですわね?」

 

 ターニャ、正解。

 

「もうひとつの東方交易路を作る……? そして砂漠を広大な農地に……?? それをうち出身の魔導師が主導する……?? あ、アイタタタ、胃が……!!」

 

 巨大利権に付随する気苦労を思った男爵閣下の胃が限界を迎えたが、私は悪くない。

 全部あの無血帝(マルティン先生)が悪いんだ!!!!

 




 
原作小説5巻のエーリヒ君側のヒロインは百足娘のナケイシャ嬢なので、その対比としてマックス君側にはサソリ系の許嫁オリキャラが生えてきます(予定は未定)。第二次東方征伐の際に周辺部族を裏切って帝国側に着いた弱小サソリ部族から妻を娶って、有り余る水を背景に部族の後ろ盾になって人の住まない砂漠を帝国領土に編入しつつ襲い来る遊牧民を返り討ちにして交易路も増やして、砂漠を緑の草原にしようず。
次回は帝都にマックス君が構える工房「マックスのアトリエ」の話になるかと。それから叙爵の式典についてかなあ。
 

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