フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
感想ありがとうございます! いただいた感想に影響を受けてライブ感で書いてますが、やっぱり自分以外の方の意見をいただけるのはありがたいぜ……! 小ネタを拾ってもらえるのも嬉しいです! そして原作者様のツイッターでも前々話などまたご紹介いただいていて感激!
◆前話
(薄暮の丘からの生還までのイメージは「三枚のお札」(三枚どころではない)。または
※マックス君の薄暮の丘からの生還条件(想定)
・人間的な思考を理解し尊重してくれる妖精=半妖精が帰還に協力してくれること
・妖精(現象の化身、概念存在)相手に時間稼ぎ以上をできる程度の能力やアイテム
・妖精に惑わされない強い意思力(術式による外付け可)
※薄暮の丘からの生還を一つの尺度としてみた場合の
・妖精狩りのエリザ(原作小説2巻ヘンダーソンスケール1.0 ver0.2)の場合
自身が半妖精かつ幻想種特攻持ちなので、薄暮の丘に正規にアクセスした上で攫われた子供たちの奪還までやってのける。
・
パトロンしてる
・対して現時点の
手持ちのリソースを蕩尽してぎりぎり生還できる程度。子供の救出なんてとてもとても。でも将来的には救出までできるようになるかも……?
……というイメージです。
では本編の不幸な人探索判定の結果をどうぞー。なお薄暮の丘に行って
果たして占見術式に引っかかった『不幸な人』とは……?
困ってる人を探して三千里~、とね。
「ここが占見術式で示されたあたりか」
周囲を見渡し目星をつける。
これは私の中の異世界人の魂の癖でもあるようだ。
これはどこかの街道脇、といったところだろうか。
時間は夜。
このような場所で困った事態に陥っているとすれば、群盗山賊の類に襲われた者でも居るのであろうか。
更なる情報収集のために探査術式を広げようとした私の隣に、即座に転移の後を追って虹色の極光と化したターニャが飛んできた。
「やっと追いつきましたわ、おかあさま」
彼女は既に受肉して基底現実に縛られているため、かつてのように世界に遍在する“現象の化身”として、一瞬で姿を消して別の場所に現れるというようなことはできなくなっている。
私が構築した虚空の箱庭経由の転移も、高濃度の魔素と相性が悪いのか入りたがらず、専ら
……ふむ、彼女のために虚空の箱庭にも魔素的にクリーンな空間を用意することも考えてみるか。
それにいつまでも魔種を放り込んだ途端に発狂させて魔物に落としてしまう環境をそのままにするのも芸がないしな。魔種を魔種のまま研究対象にすることもあろうし。
あと今後もしも、
あるいはそれは、
やがて来たるネットの海を支配する
パッと思いついただけだが、結構いいんじゃないか? 並列思考を割いて検討させよう。
それはさておき。
ターニャの到着と同時に探査術式を広げる。
おそらくはターニャの方も電探のように感覚を飛ばしてくれているはずだ。
<
「見つけた」 「見つけましたわ」
果たして異常は直ぐに見つかった。
私はターニャと念話―― ターニャは念話術式(送信)を習得していないのでターニャの電子の権能による出力を私の側に増設融合した受信装置で受け取る……これじゃ魔法というよりほぼ無線通信だ―― を交わす。
お互いの感覚器官や得意術式の違いを生かし、得た情報を統合して複層的な分析を行うためだ。
『やたらと凝った豪奢な馬車が襲われているようだ』
『馬車内に空間拡張術式を検知』
『持ち主は魔導師か、相当な財を持つ貴族と思われる。報酬に期待が持てるかも』
『襲撃者は妖精……のような何か。素体は
『首に大きな切創。致命傷のはずだけど動いてる。妖精の相にかなり振れている』
『襲撃者側は霜柱の人形を多数形成し使役』
『馬車側の防御は1名。
『それに助力する高位妖精2体。権能はおそらく風と夜闇』
『馬車の中には少女1名……いやこっちも半妖精。護衛対象か』
…………この馬車の中の半妖精と、護衛の
「まさかここで因縁がつながるとは……」
ケーニヒスなんたら……ああ、思い出した、ケーニヒスシュトゥール荘の子供たちだ。
この肉体の元の持ち主が、それはもう多大な迷惑をかけた相手だ。
「おかあさまがご存じの方たちですの?」
「兄と呼んでくれ、せめて。
……質問の答えは
私の中の異世界人の魂と、邪神信仰者の魂が、この身の思考を傾ける。
すなわち、
それに異論はない。
どうせ助けるつもりでやってきたのだ。
だが事前の想定以上に完璧に助ける必要があるだろう。
なにせこっちは誘拐犯。中身も外見も変わっているから分かるまいが、万が一ということもある。
バレたときの印象はマイナス方向に振りきっている。
これをプラスに持っていくには、並大抵の贖罪では足りるまい。
それに襲撃者側の半妖精らしきナニカにしても、油断していいわけではない。
ターニャと出会ってからこちら、
漆黒の結晶から飛び出たターニャに障壁を跳び越えられて、脳髄を壊されたことは記憶に新しい。
その二の舞はごめんだ。
死なないためには、出来る限りの情報を収集して挑むべきだ。
「情報を収集する。ターニャの方でも、あの防御側の魔法剣士の
「はぁい、お任せあれ」
<
<
そして私は理解した。
襲撃者――
そして妖精の依頼を受けて、実の父に削られ刻まれ封じられた
エーリヒがここに来るに至るまでの、私が異空間に飛ばされた後の顛末を。
エーリヒの妹である半妖精が、
その間に状況が変化する。
馬車の持ち主である魔導師―― 銀髪に青と緑の瞳の
今までどこにいたのか―― と疑問に思えば、エーリヒの思考を読んだターニャから補足の思念があり、霜の妖精ヘルガを呪縛していた屋敷の隠し部屋を検分していたとのこと。
「チッ、そのままその隠し部屋の術式の解析に掛かりっきりになっていれば良いものを……」
思わず呪詛と舌打ちが洩れる。
このアグリッピナ女史だが、この私の肉体にかつて宿っていた魂の直接の仇でもあり、そのかつて宿っていた魂がそのプライドを粉砕された相手でもある。
……まあ、それは
それはそれとして、恩を売ろうとしているのに
「これはわたくしたちが介入する余地が残りまして?」
そう。アグリッピナ女史が居れば戦力的にはどうとでもなるのだ。
ターニャの口調に呆れが混ざるのも無理はない。
霜の妖精ヘルガが操る霜柱の人形たち―― かつてヘルガ自身の身体を切り刻んだ魔法使いたちを模したのか拷問器具を持ったいびつなローブ姿をした氷と土の人形だ―― はアグリッピナ女史の操る魔法により瞬時に消失した。
もはやエーリヒの勝ちは揺るがないだろう。
「いや、余地はある。断言していい。あの
だがそれは必ずしも、金髪の魔法剣士エーリヒの望む展開になることを意味しない。
だって彼は霜の妖精ヘルガを―― 自分の妹である半妖精のエリザが辿るかもしれなかった可能性の一つを―― 救いたいのだから。
視線の向き的には恐らくは、霜の妖精ヘルガの有り様への言及だろう。
それを聞いた金髪の魔法剣士エーリヒの顔つきが変わる。
――― 覚悟を決めた顔だ。
ああ、だがそのような覚悟はこの場では不要だとも。
そのような――
「ターニャ。あの
「いいえ、ごめんなさい、おかあさま。遮断されていて思念は読めないわ……」
「だろうね。攻性防壁術式による呪詛返しがこちらの結界にぶつかってきている、あの
「はぁい……」
しゅんとしたターニャの頭をそっと撫でる。
実際、この子は良くやってくれている。
望まず不意に受肉したのだろうに、一生懸命にヒトとしての在りように寄り添おうとしてくれている。
この件が終わって、魔導院に入るために帝都へ行ったら、たくさん服を買ってやろう。
魔導を学ぶ
お互いに望んだわけではないとしても、彼女を産み落とした親として。
「さて。あの
おおかた “もう手遅れ” だとでも言ったのだろう。
そして君たち妖精も同意見だと見た」
ターニャの頭から手を離し「じゃあ行ってくる」と転移する。
万が一にもアグリッピナ女史に転移術式を潰されないように、馬車から離れた上空へ顕現。
この身に掛かる重力を強めて落下する。
さらに落日派の得意とするところである賦活術式で全身の肉体強度を上昇。
「まったく以って、
非定命の感性で、定命の心の働きを推し量ろうとして上手くいくものかね。
半妖精の肉体は
そして精神というものを、肉体というものを、真摯に研究してきたのは果たして払暁派だったかい?
違うだろう?
それは落日派の領分だ。
一方で霜の妖精ヘルガの肉体に走るツギハギにも見える幾つもの傷痕、あの施術をしたのも落日派なのだろう。
貴種たるヘルガの父が、
であればこそ、彼女を救う責任は落日派にあろうよ。
いまだ魔導院にすら所属せぬ若輩なれど、私の中の魔導師の魂がそれに賛同する。
―― 深淵にこそ誉れあれ。
異世界人の魂も共鳴する。
―― 一流の悲劇よりも三流の喜劇を。
邪神信仰者の魂が、信仰者としての慈しみを以って肯定する。
―― かわいそうな幼子に、全ての捨て去られる者たちに、癒しと救いを。
……そうだ。かつて
“もったいないおばけ” が私にそうしてくれたように。
たとえその過程で彼女の苦しみが長引こうとも、私は独善を以ってそうしよう。
地面が近づく。
馬車から出てこようとした
風の妖精と夜闇の妖精がエーリヒらを守ろうと妨害しようとするが、私の金髪碧眼に一瞬気を取られた隙に、
そして私は邪魔されることなく、ヘルガを―― 彼女は身に過ぎた権能の使い過ぎで存在を崩壊させつつあった―― その手にかけようとするエーリヒの前に砲弾のように着地。
「なッ――!?」
驚く
「――― 落日派としては、払暁派の解釈に異議を唱える」
さあ、デウス・エクス・マキナの時間だぜ、エーリヒ君。
◆長命種、メトシェラ
都会派エルフ。種族の基本的な性格としては、高慢なエルフのイメージで大体あってる。生得的なマジックユーザーでもある。
◆払暁派
魔導院における派閥の一つ。技術の社会普及を目指す実践派。新しもの好き。合理主義者にして進歩主義者。
◆魔法チート(詳細は独自設定)
この権能が魔法創造時に参照している術式ライブラリには、おそらく既に失伝した過去のものや、いまだ形なき未来のものが含まれている。現時点で該当する技術が存在しなくても、未来において開発される余地があれば、それを先取りし、オーパーツじみた術式が出力されるのだ。過程を無視して結果だけ持って来るこの権能は、数学者ラマヌジャンの天才性にも似て。
===
高貴な人の馬車が襲撃されてるのを助けるのはテンプレよねという話でした。
……で、原作小説2巻のクライマックスフェイズがまさにそれやん(
そして今回から「原作死亡キャラ生存」タグを付けます……! がんばるぞい!(最強系主人公は我意を通してこそという旨の感想に勇気をもらったので……!)
あと、感想でも言及が多い
「善戦するが千日手」 or
「膠着状態からお互いがワンチャン狙い」 or
「型に嵌まれば確殺できるし、逆に相手もそうできる」
あたりの仕上がりになるのをイメージしてます。
今はまだマックス君は魔導院にも入ってないのでそこまで育ってないですけどね。
ただ、エーリヒ氏が権能の性質上おそらく晩成型なのに対して、マックス君の権能は超早熟型なので現時点でも
世界観的には妖精をはじめとしてまだまだ上には上がいるので、分かりやすいようにタグに「主人公準最強」も付けておきます。