フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~   作:舞 麻浦

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◆前話
魔物に堕ちた吸血鬼と遭遇し、これを撃破。そして捕獲。チームワークの勝利だ!(単にサプリの後ろの方に出てくるようなボスエネミー(きゅうけつき)を、同レベル帯のエネミー(巨蟹鬼(セバスティアンヌ)上位妖精(ターニャ)神官兼業魔導師(マックス))の連合で撃破しただけでは??)
一方地下では巨大な魔蟲によるトンネル掘進が行われており──

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※今回は大陸横断地下道を掘るのに巻き込まれたアヌーク・フォン・クライスト同期聴講生(オリキャラ)の視点からです。
 


23/n 沙漠(まで/から)愛をこめて-4(穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター) 幹線掘進用試製シュド=メル級による東西横断トンネル)

 

 地下とは過酷な空間だ、と、私ことアヌーク・フォン・クライストは思う。

 魔導院地下に工房を納めている巨大空間を築いたかつての先達も同じ苦労をしたのだろうか。

 閉鎖空間の圧迫感、息苦しさ、埃っぽさ、前方から響き渡る破砕音と後方からの換気のための騒音、限られた光源により手元に落ちる影の鬱陶しさ。そしてヌメヌメとした壁面と、立ち上る生物的な異臭── は、この現場特有のものだろうけれど。

 

 ここは帝国の東、衛星国家群の領域からさらに東へと進んだ地域の、地下だ。

 トンネルの先から轟轟と響く音は魔導生物である穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)の巨大個体、幹線掘進用試製シュド=メル級*1が、その城塞を呑み込んでも余りある巨大な胴体を蠕動(ぜんどう)させながら岩盤を掘り進めている音である。

 

 この広大で来し方も見通せぬほどに長大な地下空間は、東方との交易に当たって衛星諸国その他を介さない直通ルートを開拓する、というお題目を掲げて、私の同期にして出世頭であるマックス・フォン・ミュンヒハウゼン魔導副伯が主催する物流ネットワーク研究会が帝国政府に提案したものであり、ほぼそのマックス・フォン・ミュンヒハウゼン魔導副伯の私費で施工されているものになる。

 帝国政府が出したのは数枚の工事免状と任命書だけ、というお得プラン(※財務当局にとって)だ。

 その代わりに大陸を東西に横断する地下幹線が完成した暁には、それはマックス(敬称略)と物流ネットワーク研究会の持ち物になる予定なのだとか。

 

 つまり物流ネットワーク研究会── 落日派魔導師で魔導副伯のマックスと、中天派聴講生の私と、黎明派聴講生のミカと……最近あと一人落日派のメンバーが増えたのだがそれは後ほど言及しよう── の4名で所有権やら利益やら何やらを分け合うことになるわけだ。

 もちろん出資割合というか貢献割合によって権限や利益の割合も異なる── マックスは『株式会社方式』とかなんとか言っていた── ため、綺麗に四等分というわけではないが。まあ、むしろその方が有難い、私はマックスと同等の貢献を為したなどとは自惚れていないからな。

 それでも完成したときに生み出される利益を考えれば、何十分の一でも分配されるだけでも莫大な利権になるだろうことは想像に難くない。

 

 ……いや、そんな巨大利権がいきなり懐に転がり込んできても困るんだが??

 

 だがまあ、あのマックス何某(なにがし)に巻き込まれたのが運の尽きとはいえ、私だって魔導の道を志した者であるし、帝国を支える藩屏たる貴族の一員である。

 研究予算のために貰えるものは貰っておきたいし(特に不労所得は大歓迎だ!)、造成魔導師を志す者としても、このような歴史に残る巨大構造物に主要人物として関わるのは願ってもないことである。しかもそれが帝国に富と繁栄をもたらすものであるなら貴族としても否やは無い。

 聴講生身分で関わることではないけどな! 絶対に!! そもそもメインが4人は少なすぎる! ホムンクルスとかいう魔法も使える人型魔導生物(これホントに合法なんだろうな!?)が工事に当たって何百と補助に回っているとはいえ、だ。*2

 

 

 まあ人数が少ないことへの愚痴はもういい。

 私はなし崩しに巻き込まれているため逃れられないが、一方で他の海千山千の魔導師がこのプロジェクトの幹部に立候補してこない理由も分かるしな。

 そもそも余人に知られないように秘密裏にことを進めていたせいでもあるが、普通、常識的な人間はこんな計画が上手くいくとは考えないからだ。

 目に見えた地雷を踏む者は居ない。

 

 ──── “東方交易路の先まで地下に巨大トンネルを掘って大陸の東西を横断して貫く鉄道を通すプロジェクト?”

 ──── “へー、できたらいいね。”

 

 普通の反応はこうだ。

 

 博打にすらならない荒唐無稽。

 リターンは大きいが、それはまさしく夢物語。

 本気でそれを目指していると知られれば、正気を疑われるような計画だ。

 

 私やミカだって、最初にそれを聞かされた時は耳を疑った。

 

 だが、あの男、マックス・フォン・ミュンヒハウゼン魔導副伯には勝算があったのだ。

 

 あのどうしようもなく救いようのない狂気(マッド)狂信(カルト)魔導師(マギア)は。

 深海のような昏い蒼の瞳を持つ童顔のあの魔導師(マギア)は。

 大陸を貫く解法(ソリューション)()()()()()のだ。

 

 それがこの穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター) 幹線掘進用試製シュド=メル級と名付けられた魔導生物だ。

 シュド=メル級の名の由来は知らん。が、どうせロクなものでは無いのだろう。

 

 マックスはこいつを造るために遥か北海の巨大海蛇竜(ヨルムンガンド)を討伐してその大型化要素を素体に組み込み。

 無肢竜(ワーム)その他の魔獣や、どこから手に入れたのか使い魔として確立できるほどに魔力に馴染んだミミズの品種も混ぜ合わせ。

 そしてまずは大蛇ほどもある 穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター) の試作品をでっちあげた。

 

 その試作品たちは、魔晶に組み込まれた生得魔導により土を融かし削って進み、残土を空間遷移によりどこかへ転送し、さらに胴体からの分泌物を魔導で固めることで掘進した後の壁面を強固な管にするという、高度にデザインされた生態を持っていた。

 しかも同期操縦する術者の魔力に拒絶反応を示すこともない、使い魔として運用できるレベルの魔力受容体質すら有していた。

 試作時点で基本性能は完成していたのだ。

 

 目標とする『地下道の造成』に用いるためにはそこからさらに数十倍に成長させ胴回りを太らせることが必要だったが、逆に言えば成長にかかる時間()()が問題だった。巨大海蛇竜(ヨルムンガンド)の因子が組み込まれているから目的の大きさまで育つことは確実だったからな。

 それに未熟個体ですら相応の大きさをしている。人間の胴体ほどもある太さの穴を延々とそれなりの速さで掘り進められるのであれば、配管工事の(とも)としての使い道なんて山とある。実績を積みながら成長を待つだけで良いという状況だった。

 

 実際にマックスは帝都近隣の村落において下水や用水のための管工事をコイツの未熟個体に行わせたり、集団運用により運河の底面側面を這わせて開削したりして実績を積んでいった。

 

 さてその間に私ことアヌーク・フォン・クライストと、同じく研究会に所属する造成魔導師志望の聴講生ミカが何をしていたかというと。

 まあ、造成魔導師としての観点から配管や地下水路の設計をしたりだとか、穿地巨蟲からフィードバックされた運用データを整理したりだとかなんだとかを必死にこなしていたのだった。

 

 私たちの仕事の一例として挙げた、運用データのフィードバックについて触れよう。

 穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)には土質に応じた最適な掘進魔導出力や、壁面を固める分泌物の最適配合を割り出したりするために、土質その他の情報を得る用の感覚器官が個体前方についている。

 掘進方向の土質を感知するために頭に当たる部分の周りから前方向に植物の()()()のような触手状の感覚器が伸びており、それが土砂岩盤に食い込んで魔導的な探査波も発しながら進行方向の情報を取得するようになっているのだ。

 

 ただしその時点の穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)の脳神経容量では、情報の取得は出来ても精緻な分析まではできなかった。各種魔導の制御に割かれた領域が多すぎるがゆえの容量不足だ。

 それゆえ最初は魔蟲を操る魔導師が、土質に応じた掘進速度や掘削面に並べる魔蟲の()の強化具合や掘削魔導の質と力加減、掘進跡の壁面を固めるための分泌液の組成や分泌量を逐一指示しなければならなかったのだが、それだといかにも手間がかかる。

 だから私やミカは、それらの運用データをまとめて土質ごとのテンプレートに落とし込む作業をやらされていたのだ。

 

 私やミカの努力の甲斐もあって、マックスの作成した魔導生物、穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)の運用は洗練されていった。

 具体的にはマニュアルを読めば、聴講生レベルの魔法使いなら運用できる程度にまで。

 これだけでも正直なところ教授位に登れるほどの功績だと思うのだが(少なくとも共同研究者でしかない私ですら研究員への昇格は堅いだろう)、マックスはそれに飽き足らなかった。より多くの成果を求めた。

 

 それはつまりは穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)のさらなる改造である。

 指示無しでも自律的に土質に応じた施工が可能なように本能にパターンを刻み込むとか。

 あるいは更に巨大化させ、人や馬車が通行可能なトンネルを掘れるレベルにするとか。

 

 要は穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)が成長するまでの時間を待てなかったのだ。

 

 そして、それを何とかするための手段を手に入れてしまった。

 時間の秘密に関する秘術を。

 

 

 魔導師(マギア)という人種は実現できそうだと思ったら、それを我慢できない。

 『やれると思ったから、やった。反省も後悔もしていない。』

 平気でそう宣う人間ばかりである。

 

 そしてマックスが何をやったか。

 彼は大量の穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)の未熟個体たちを解体し、その()()()()()()

 生と死の狭間の瞬間を延々と引き伸ばし、そしてその間に施術することにしたのだ。

 

 どのような施術か。

 それは融合再建施術とでも言うべきものだ。

 時間を止めた穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)を腑分けし、綿密に計算された配置で繋ぎ合わせていくことにより巨大な臓器を再構成し、その臓器に見合った大きさの一つの巨大な個体に統合していくというものだ。

 時には細胞単位でバラバラにしたうえで再結合させたりもしたのだとか。

 

 穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)は量産型であるがゆえに他個体との融合にも拒絶反応を示さない。

 そして何千匹、何万匹もの魔蟲を一つにまとめて、術式と奇跡で調整してから時間停止を解除。

 肉体のみならず、その魂魄も精神魔法で捕獲しつつ時間停止して鮮度を保ったまま融合成形する施術をして、改造融合魂魄を再注入。

 賦活させ、蘇生させる。

 

 そうして生まれたのが、このシュド=メル級の超巨大個体だ。

 

 さらには帝都地下下水道の巨大粘液体(スライム)と同様の術式を組み込むことで、中枢個体に統御された群体としての運用も可能にしている。

 体内には古代文明のアーティファクトなのかどこかからマックスが持ってきた小型高出力の魔導炉が組み込まれており、その巨体を支えている。*3

 分枝による増殖もできるように設計されているため、今後は比較的簡単に数を増やすことが出来るだろう。分枝した個体の太さは自由自在に設定できるからどんな管径にだって対応できる。もちろん卵による増殖も可能だ。

 

 ちなみにこの大工事── サイズ的に手術というよりは工事である── のためにマックスが落日派から陰気な女を物流ネットワーク研究会のメンバーに引き入れている。

 これが4人目のメンバーであり、(かばね)(つくろ)いのシュマイツァー卿の系譜に連なる屍霊術師なのだとか。*4

 まあ腕は良いので助かっているのは事実だがこう、「ふひっ」とか「ぴゃっ」とかふとした瞬間に口から漏れるのは矯正した方が……素は良いのだし…………いや、止めておこう。詳しく事情も知らないのに他人の癖をあまり悪し様に云うものではないからな。

 

 

 

 ──── さておきこういう経緯で完成したシュド=メル級の穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)を運用して、長大なトンネルを掘り進めているのが現在。

 全自動に出来ればいいのだが、村の下水道を掘るのと、大地を掘りぬいて巨大なトンネルを掘るのとでは全く違った困難がある。不測の事態はつきものだ。

 それゆえに、現場で臨機応変に対応するための人間が必要なのだ。それが造成魔導師であればなお良い、たとえ見習いであっても。

 

「……アヌーク様、進行先の岩体の温度が上昇しています」

「大規模な出水の予兆ありです!」

「いえ、これは出水どころでは……高温高圧の蒸気が────」

 

 先頭方向で作業していた周囲のホムンクルスが慌てて退避する。

 彼らも穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)と同調しており、魔蟲の感覚器官から伝わった情報から危険を察知したのだ。

 

「ええい、使い魔同調──── 穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)! 魔導発露、壁面強制形成、発泡断熱層入り!! 壁面外側にバイパス形成! さらに内部薄膜形成、根状錨棒(アンカールート)伸長。崩落阻止施工!」

 

 ホムンクルスたちも魔法を使えるとはいえ、魔導師見習いには劣る程度の実力なため── 製造者のマックス曰く、生命維持に魔法能力の多くを喰われているせいとのこと── 緊急時には私が対処することになっている。

 

 熱源、出水、硬い岩盤、はたまた逆に軟弱地盤に地下大河。

 それらを無事にやり過ごすために、穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)に同調し、内蔵された魔導炉から魔力を汲み出して魔術を使うことが必要なのだ。

 今回は熱された岩体と加圧されて臨界を超えた熱水が流れる経路を突き破ったため、そこから熱水が噴出して即座に蒸気になって充満しそうになったという事故だな……。あやうく蒸し焼きになるところだった。

 

 その対処のために私は穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター)への同調を深めてマニュアル操作で魔導を使い、断熱層を形成させつつ一気に壁面を造成して急場を脱することにしたというわけだ。

 さらにはトンネル外殻をぐるりと回るように熱水のバイパス路を作って元の高温水脈への放出路とする。これで一安心。

 ……そのうち放出路も析出するミネラル分で詰まってしまうだろうから、定期的なメンテナンスが必要な箇所としてマーキングしておかないとな……。

 

 そしてトンネル内側に丈夫な素材の膜を形成させ、その膜を外向きに引っ張って支えるようにアンカーを形成。それを壁面を突き抜けさせて外側の地盤にまで伸ばして食い込ませ、地盤の中でまさしく植物の根のように広げさせる。崩落防止のための構造だ。

 場合によってはその根状錨棒(アンカールート)を大樹のような規模にまで成長させてトンネルを地盤に固定することもある。間違って大規模な軟弱地盤に出てしまったときとかね。

 

 私の仕事は相変わらず運用データの整理である。

 トンネルの規模が変わってもそれは変わらず、色々なアクシデントの度にその対処法を試しては記録し、のちのマニュアルにするためにまとめていく。

 

 後ろの方では雑多な大きな音がしている。武骨なトンネルに吹き付け塗装して補強したり、化粧壁や上げ底や天井や柱を施工したり、その他換気装置や排水装置や動力伝達線や照明を敷設したりしている音が一緒くたに響くため、耳栓が必要だ。

 ……明らかに帝都でも流通していないような重機類や装置類が使われているんだが、気にしたら負けなんだろうなあ……。

 というか作業員全てが魔法を使える人型魔導生物な時点で大概だしなあ……。

 

 

 だがそれら高度な技術を使っていても問題が全く発生しないなんてことはあり得ない。さっきの熱水の噴出のように。

 最近で印象に残っているのは、岩塩の鉱床を掘り当てて、しかもそこに地下水脈が流れ込んでしまったやつだな……。

 そのままだと岩塩鉱床が溶けてなくなったうえに地下水脈が塩水化して下流地域の森が枯れるって言うんで、ちょっとした河川並の流量があるその水脈の流れを曲げるための水抜き坑を急遽掘って岩塩鉱床を迂回させたのだが、なかなか骨だった……。

 将来的には岩塩鉱床を採掘するための地下都市でもその地点に築くことになるのだろう。

 

 トンネルは重力勾配を考慮して軌道を設計している。

 地上設備を設置するところは比較的浅い地点まで上昇するが、そこからサイクロイドを描くように下降し、また地上設備の設置点に向けて上昇していくようになっているのだ。*5

 まあ他にも魔素勾配を感知して魔素の濃い方へと掘り進めたりもしているから、厳密にサイクロイドを描いているわけでもないが。

 今後地下都市(ジオフロント)を作る際に魔素溜まりからエネルギーを引き出すことを想定しているからこそのルート選定だな。

 

 

 

 そして魔素溜まりを拾うような形でトンネルを伸ばしていけば、自然と厄介ごとにぶち当たるものだ。

 

 不意にシュド=メル級が動きを止めた。

 そしてそれを疑問に思って同調を深めたホムンクルスたちもまた。

 処理落ちしたかのように佇むホムンクルスたちを見て、私は即座に警戒の声を挙げた。

 

「!!?? 同調を切れ!! ()()()()()()()()

 

 ふるり、と動きを止めたシュド=メル級と、同じく動きを止めたホムンクルスたちが身体を震わせ……。

 

 ()()()()

 

 真っ白い()()が全身の肌を、あるいは眼窩を、口腔を食い破って這い出し、子実体(キノコ)を形成したのだ。

 シュド=メル級もホムンクルスたちもそれでもまだ生きているのか、ぴくぴくと痙攣している。

 

「冬虫夏草……!? これは、魔宮(ダンジョン)化した地下空洞に突っ込んだか? (きのこ)のダンジョン!?」

 

 聴講生時代にマックスが攻略した魔宮のうちの一つに、茸の魔宮があったと聞いたことがある。これはその同類にぶち当たったか。

 似た話を聞いたことがあったから気づけたが、そうでなければ侵食されたホムンクルスたちと同様に、使い魔同調経由で私も侵食されていたかもしれない……!

 

「だが同調経路経由でも感染するということは……精神体も侵すのか、このキノコは?!」

 

 そんなものは魔獣の域を超えている。

 あるいは地脈を蚕食されている大地の神が怒って差し向けた使徒か!?

 

「くっ、こんなの手に負える訳ないだろ!」

 

 どうもこの推定 “冬虫夏草の使徒” は、菌糸を張り巡らせたものを乗っ取ってしまう権能を持っているようだ。

 その証拠にキノコを生やしたシュド=メル級とホムンクルスたちから不穏な動きと敵意を感じる……!

 

「緊急事態だ! マックスを呼ぶ!!」

 

 私はもしもの時のためにとマックスに持たされた呼出符に魔力を込めた。

 出てこい、マァックスゥゥッ────!!!

 

 

 

「待たせたな、アヌーク。状況は理解している。── ここはこの私、マックス・フォン・ミュンヒハウゼンに任せてくれたまえよ」

 

 

 

 空間を切り裂いて、頼れる同期のお出ましだ。

 

*1
穿地巨蟲(ヴュラ・ダォンター) 幹線掘進用試製シュド=メル級:某あいとゆうきのおとぎばなしの母艦級とか、タイタスクロウサーガやクトゥルフ神話TRPGにて言及されるクトーニアンの親玉とかそんなん。超絶でっかいミミズみたいなもの。生きた巨大シールドマシン(直径30m)、感覚器官(しょくしゅ)付き。

*2
人型魔導生物:元暗殺者やその他巡検で群盗山賊を潰し回って回収した輩を素体にしたホムンクルスを作業者にしているのの他に、物資調達などには裏組織の多頭竜(ヒュドラ)の構成員に成り代わったスワンプマンを市民としての表の顔を生かして参画させている。アヌーク、ミカの両名はホムンクルスについては知らされているものの、妙に物分かりの良い商会の者ら(成り変られた表の顔)であるスワンプマンの存在までは知らされていない。怪しんではいるが。

*3
高出力の小型魔導炉:マックス君謹製だが、対外的には古代文明のアーティファクトという触れ込みにしている。

*4
屍霊術師系の聴講生の少女(シュマイツァー卿の弟子):原作WEB版の屍戯卿たるシュマイツァー卿の末の妹弟子を想定。https://ncode.syosetu.com/n4811fg/192/ 参照。なお今後書籍版などで掘り下げられた結果キャラが全然違ってたら、当SSの世界線では末の妹弟子は二人いたことになります(※予防線を張る)。

*5
サイクロイド:円を転がしたときにその円の一点によって描かれる軌跡。




 
◆マックス君 VS. シュド=メル級 with 冬虫夏草の使徒
呼出符から飛んできた信号を辿って空間遷移で駆け付けたマックス君を襲うキノコに覆われた巨大魔蟲。だが魔蟲は完全には死んでいなかった! マックス君は魔蟲の免疫を賦活させ、同時に冬虫夏草の使徒を弱体化させることで、逆にシュド=メル級に使徒を吸収させ共存させることを試み、それを成功させる(なおマックス君にも感染して残機が減ったが「覚えたぞ!」して克服した。)。取り込まれた冬虫夏草の使徒はマックス君の手により “もったいないおばけ” の祝福を受け、も教の使徒として再定義されて共生菌にされてしまった(マックス君も共生菌として獲得し、肉体強度が上昇している)。


◆冬虫夏草の使徒(独自設定)
長い間地中深く封じられて消滅寸前だった腐朽を司る異教の神が創り出した使徒。封印が魔宮化しているところを物理的にシュド=メル級にゴリっと削られて封印が綻んだ瞬間、これが最期のチャンスとばかりになけなしのエネルギーで使徒をこさえて侵蝕させた。寄生と増殖に特化した使徒は初期投資が少ない割に嵌まれば強いが、残念ながら魔法チート転生者のバフを受けた魔蟲の生命力と適応力に負けてしまった。そのため頼みの使徒は、今ではシュド=メル級の共生菌に成り下がってしまった。消滅しかけの腐朽の神の方はマックス君が “もったいないおばけ” に請願した終焉の権能でR.I.P.(安らかに眠れ)させられた模様。多分、もったいないおばけに回収された後に再始の権能によりマックス君みたいにどっかで転生させられてると思われる。

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◆ダイレクトマーケティング
原作漫画版第三話更新されてますね! → https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM19203286010000_68/
エリザが可愛い、細っこい! 酔いどれマルギット可愛い! そして巨鬼ローレン女史おっきい! このスケール感よ! 巨女いいよね……。

そして原作者様による一連の解説tweetはこちら → https://twitter.com/schuld3157/status/1580955782341722118

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天の牡牛(ヨーロッパバイソン系)とか猪とか大蛇とかそういう真っ当な使徒は次の機会に。
 

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