フミダイ・リサイクル ~ヘンダーソン氏の福音を 二次創作~ 作:舞 麻浦
ヘンダーソンスケール1.5=『PCの意図による全滅』
アルビノ
ルゥルアちゃん「蠍の神の眷属の末裔たるギルタブルルは、死んだら極楽に行き蠍の神の御許に迎えられることこそが幸せなのです」(ガチ信仰者並感)
ルゥルアちゃん「…………そうに決まっているのです」(ただし葛藤が無いわけではない)
“大陸中央の熱砂の地を統べる新たな帝国が興った” らしい────。
その情報が
その噂に曰く、向こうの新帝国の首都は天空に浮かぶ巨大な浮遊都市なのだという。
荒唐無稽だ。
他にも事情を知らぬ者が聞けば眉に唾をつけるような噂が多い。
……まあ、この私ことケーニヒスシュトゥールのエーリヒは、恐らくそれらの荒唐無稽な噂のほとんどが事実であろうと思っているのだが。
その熱砂の新帝国は、かつてライン三重帝国から流れた魔導師が興した国で、その縁もあり、
向こうの帝王──
その帝王は、天を支配し、雨を自在に降らせ、河を作り、緑の麦畑を広げ、道を敷き、大きな魔法の工房を至る所に造って国を豊かにしたとか。
新帝国については他にもいろいろと噂話が百花繚乱といった具合だ。
それらの噂話とともに向こうの帝国から流れてきた豊かで高品質な商品を携える商人たちによれば、地の底のトンネルを走る列車により、その熱砂の帝国と、ライン三重帝国は直通しているのだそうだ。
そのトンネルを通じてやってくる、向こうからの輸入品もまた、多様で豊かだ。
非常に多様な魔導具。
大きなガラス鏡や上質な絨毯。
安い規格化された木綿の衣料品。
美味なる農産物。
その美味のままに封じられた携行保存食。
多様な香辛料に調味料。
軽量でカラフルな樹脂成型品。
伸び縮みするゴムなる材料。
万病に対応できる各種の医療品。
商人たちはそういった沢山の商品を携えながら、砂漠の中の緑の帝国のことをしきりに喧伝する。
“いま最も
「となれば行かぬわけにはいくまいて。そう、冒険者として!」
「おい」
冒険者の本懐とは冒険にあり。
エンジョイ&ヒロイックを合言葉にする剣友会頭目として、東行への気炎を上げれば、隣から咎めるようなツッコミの声が入った。
我が剣友会の誇る戦士、“不運にして幸運のジークフリート”である。
「なんだいジークフリート。君は楽しみじゃないのか?」
「俺も楽しみではあるが、あんまり浮かれすぎるなよ。……お前が浮かれると、たいてい碌なことにならねぇんだ」
そうだろうか?
今回などただ単に里帰りするゼイナブ女史に引っ付いて東の新帝国を遊歴するだけの
ちなみにゼイナブ女史というのは、懇意にしている冒険者の一党の魔法使い── マルスハイムの聖者フィデリオの一党の
ゼイナブ女史は占いも修めている凄腕であり、このたび里帰りに当たって我ら剣友会を頼ると吉、と出たとかで、依頼を投げてくだすったのだ。ちなみに聖者フィデリオ氏らは、冒険から帰ってきたばっかりだったりご家庭があったり別件があったりで、残念ながら同行はできないそうな。
そう厄介なことにはなるまいよ、と思っている私に対して、しかしジークはそうは思わなかったらしい。
ジト目をこちらに向けてくる。
「お前の言う “簡単な仕事” でどれだけ酷い目に遭ってきたか、テメェ忘れたとは言わせねえぞ?」
「待て、それは別に私のせいではないだろう」
風評被害だ!
いや仮に事実だとしても不可抗力だ!
私のせいではない!!
「てめーのせいじゃなくても、てめーの運の悪さのせいは確実にあるだろうがよ……」
ぐぅの音も出ないとはこのことか。
そう言われては言い返せない。
私の運の悪さは、自分でも承知しているのだから……。
「それで本拠地のマルスハイムを離れて大陸中央くんだりまで行くような依頼をどうして受けたんだよ? なあ、エーリヒよぅ」
「そう絡んでくるなよ。……まあ単純に時機が良かったからさ」
「時機だぁ??」
そう、時機が良かった。
「ゼイナブ氏の依頼だけではないのさ。西から流れてきた “とある物品” を、その新帝国まで届ける仕事が重なった」
「普通に送ればいいだろうがよ、荷物なんざ」
「……………………」
普通に送れるようなものならば苦労はしないさ。
私が無言で諦念を滲ませてニッコリと笑ったのを見て、ジークフリートが「Oh……」と天を仰いだ。
「お前それでよく “厄介なことにはなるまいよ” とか言えたなおい」
「……大丈夫だろう。きっと問題ないはずだ」
「お前……」
ま、まあね?
<空間遷移> の術すら打ち消して受け付けないような厳重な封印に守られた
そのせいで特大の借りを覚悟してアグリッピナ氏の
私も命が惜しいから、こんな厳重な封印がされた匣の中身なんて確かめようとすらしていないが、剣友会の威名を頼って名指しで来ている重要案件だから投げ出すわけにもいかないと来た。
幸いなのは、コレを持って運ぶことになっているのが私たちだとは、おそらく誰にもバレていないだろう、ということくらいか。
同行するゼイナブ氏がモノのついでにと、どこぞの誰ぞに察知されてないか占ってくれた結果は現状 “
だから問題はないのさ。……きっとね。
何せ探知魔導すら寄せ付けないからな、この匣。
物理的に存在しているのに、魔導的には存在しないことになっている匣とかどういう理屈でそうなっているんだか……。
「さらに言えば、だ。また別の案件も重なっている。
……どうも新帝国の帝王をしているのが、私の帝都時代の腐れ縁らしくてな。随分前から祝いの一つも述べに来てはくれないかと催促があっていたんだ……」
「は? おいおい待て待て。何だって? 新帝国の帝王から直々に招待されてるって聞こえたんだが?」
「そうだ。……あの大陸横断トンネル鉄道の切符も貰っているし、流石にそろそろ行かねばな、と」
これなんだが、と取り出してジークフリートに切符を見せる。
魔導によって本人確認や不正利用防止の仕組みが組み込まれたチケットだ。
普通は金貨何百枚積んだって手に入るようなものではない。特別なコネクションがあって初めて手に入るような代物だ。世の中金で買えるようなものばかりじゃない、ということだな。
おそらくはゼイナブ女史の占いで、
これに便乗できれば、旅程を大幅に減らせるからね。
「お、おいおいマジかよ。大陸横断トンネル鉄道の最上級客室の切符じゃねーか! 客車一つ丸ごと貸し切りだと!?」
「ああ。私が乗るときに、わざわざ予約を取らなくていいように、という配慮らしい。いつ来ても良くて、その時に客車一台を追加連結するそうだ」
「そいつは豪儀な話だ。……ってこたぁ、本当に向こうの帝王サマの知り合いってわけかよお前」
そういうわけなのだ。
なかなかマルスハイムを留守にするわけにもいかないからこれまで先送りにしてきたが、ゼイナブ氏の里帰りの護衛同道に、西からの厄介そうな荷物の運搬、そして冒険者的な浪漫が重なれば、まあ行ってみるのも面白いだろう。
剣友会の頼れる御同輩や若手の有望株に、噂の新帝国を見せるのもきっと良い経験になるだろうしな。
あと新帝国とは友好な関係なので、剣友会御一行という武力集団の侵入にも寛容だろうと思われるし。
「……念入りに備えはしとくように、着いてくる全員に言っとくぜ……」
げんなりした顔でジークフリートが去っていった。
ハハハ。
大丈夫大丈夫、きっと大丈夫。
何も起こらないさ……。
何も起こらなければ良かったのになあ……。
熱砂の地に雨と河と緑をもたらした新帝国の首都、巨大浮遊都市にあるテラスから遠くの大地を見て
いやあ、ここに来るまで大変だった。
本当に大変だった。
大陸横断トンネル鉄道では殺人事件が起こって、最終的にあわや列車が暴走しかけるし。
トンネルから出た後もゼイナブ女史を送り届ける途中で、ゼイナブ女史が奇癖を発動して「アレ食べたい」と遠目に見つけた巨大モンスターに突撃していって、思わぬ大物狩りになるし。*2
そのあとも、私が運んでいた “匣” を狙った暗殺者集団に襲われるし。
しかも襲ってきた奴らをとっちめて得た情報によればあの匣の中身はあのトラウマの “
ゼイナブ女史の出身地に着いたら着いたで、彼女がこの新帝国を支える諸王の一員たる
しかも新帝国の繁栄に目がくらんだ一部の老害連中が新帝国乗っ取りのための謀反を企ててるとかで巻き込まれかけるし。
その謀反未遂の制圧のために今私が居るこの巨大浮遊都市から発進してきた、明らかに世界観を間違えている戦闘飛行機械の攻撃に巻き込まれかけるし。*3
……大変だった、本当に。
不幸中の幸いだったのは、随員に一人の欠けも出なかったことか。
怪我は、“匣” の運搬用の支給消耗品として依頼人── この依頼人もここの新帝国の帝王だったらしい。そうだろうな、知ってた。── から付けられていた山盛りの霊薬(使わなかった分は返却という契約)で何とかなったし……。
異常に効果が高い霊薬だったから、“若草の慈愛” カーヤ嬢が解析しようと頑張っていたな。
「やぁやぁやぁ、エーリヒ君! 遠いところをようこそ!! どうだい見事なものだろう、私の帝国は!!
この天空都市だって自慢の出来さ、虚空の箱庭のノウハウをたっぷり注いだからね! やはり後続品の方が出来が良い、そうだろう?」
これまでの旅程を思い出して遠い目をしていた私に後ろから掛けられたのは、聞き覚えのある少年の声だった。
ああ、それはそれでおかしいのか? 私が冒険者として一端になろうというのに、こいつの声は帝都で別れたままの変声期を迎えるかどうかというような調子なのだから。
「ええ、そうですね。それで、ムァックズィー陛下、とお呼びすればよろしいでしょうか?」
気配察知によってこの旧知の男の他に人がいないと思っていた私は、割りかし気安く話しかけてしまった。
思えばこれは失策であった。
その次の瞬間。
「不敬だぞ、貴様。跪かぬか」
と咎める女の声とともに
だが短剣は見えども、未だに敵手の気配は感じられない。
それほどの隠形を為す凄腕というわけか。
私は一歩下がって、何でもない風にそれを避けた。
いかな達人とはいえ、まだ私の方が上手と言えるだろう。
太刀筋から驚くような気配が漏れた。
そして旧知の少年の声が響く。
「
「……はっ。承知しました。また、出過ぎた真似をしまして申し訳ありません、お許しください」
振り返った先を改めて見てみると、3人の人物が居た。
一人は豪奢な服を着て王冠を被った金髪碧眼の少年。深海のような蒼い瞳が印象に残る。
そしてその傍らに寄り添う、ベールに覆われた恐らくは女性。ベールから微かに零れる髪は銀色で、露出した肩からは真珠のような美しい甲殻が見えた。
最後に、
だから私も最初は、金髪碧眼の少年王だけしかこの場に居ないのかと錯覚してしまっていた。
深海の瞳を持つ少年王がズイと前に出る。
「久しぶりだね、エーリヒ君。
「ではそのように。
……しかしまあ随分と偉くなったものだね、マックス」
「ははは、まあ成り行きでね」
かつてのマックス・フォン・ミュンヒハウゼン魔導副伯は、そう言って悪戯げに片目を閉じて見せたのだった。
続かない!
彼女が族長の系譜だというのは独自設定です。実際は不明。
このヘンダーソンスケールは、アルビノ
そして原作WEB版更新されてましたね! → https://ncode.syosetu.com/n4811fg/260/
コールゴッドはなー、扱い難しいですよねー、わかるー。っていうのと、当話の前書き部分でも言及してますように、信仰者PCのロールプレイ上はその道を守るのは重要ですよね、わかるー、って感じです。まあ、
……何を言いたいかというと、前話のラスト部分、マリヤム女史の結末は確定していないのですよね、ということです。皆さんもご存じのはず……創作において末路が描写されなかったキャラの生死は不確定だということを……。
というわけで、当話は、ヘンダーソンスケールでありつつ、
それではまた次回もお読みいただければ幸いです。