会話に参加する事はありませんが、夏雲はいるってことで。
なっちゃんは実装されるのか?
時間割
現時刻、4月1日の8時20分。この日この時間から学校が始まる。そう聞いた時は疑問に思った。
鷲一が知る限り、4月1日は登校日ではあるが、本当に登校するだけで、春休みの真っ最中だったはずだ。
間違いではないかと思ったが、最近の駆逐艦の訓練を見ると、何となく思い当たる節がある。
「これから、皆さんの勉強を見る鹿島です。鹿島先生って呼んでくださいね」
担当をするという鹿島という艦娘は、かなりの美人だ。おまけに優しそうな先生である。
その鹿島が教室の壁に、何かを貼っている。
その内容に、悪い予想が膨らんでいく。
「はい。これが時間割です。これに沿って、勉強をしていきますよ」
優しい笑みを浮かべたまま、壁に貼った時間割を指し示す。
月曜から土曜まで、午前中に4つの教科がローテーションを変えながら並んでいた。
一応、いくつか確認したい事があるので、まずは一つ目を質問をする。
「鹿島先生、社会がありません」
4つの教科は、国語、英語、数学、理科という小学生らしくない科目だ。
数学は算数と一緒だと言ってしまえばそれまでだ。むしろ、中学生で習う授業は、数学では無い算数だという人もいる。
そして、国語の授業が無い日があり、その分は理科の授業が多い。
更に社会が無い。確かに、不要だという意見が多い科目だ。歴史も地理も高校受験から除かれることさえある科目だ。その所為で無くしたのだろうか?
「はい、良い質問ですね。
まずは、このお昼ご飯の後の科目を見て下さい」
それは、確認したい事の最大の件だ。
5時限目、6時限目では無く、単に提督学という授業が、一つの教科だが月曜から土曜日まで並んでいる。
ただ、縦に長い。昼食と書かれた月曜から土曜日まで、横に貫通したラインがあるが、それは中央に書かれている。
そして、上半分の4教科は、ほぼ正方形のサイズで書かれているのに対し、下半分の『提督学』というのは、前半の4教科を合計した長さに等しい。これだけで、1時間の授業では無いことが分かる。
「社会という授業は、言ってみれば歴史と地理、そして政治の授業ですが、その内容は、この提督学で勉強するので、不要と判断しました」
「すいません、その提督学というのが分かりません」
「はい。実は私が作った授業なので、そんな言葉はありません。
知らなくて当然ね。まあ、ぶっちゃげると、提督として必要なスキルを学んでもらうって事です。
その中に、用兵に関しての勉強が多いけど、その教材として、過去の戦争を学びます。
そこで質問です。戦争って何ですか?」
「国と国の争い?」
「うん。完全な正解とは言えないけど、今回は良しとしましょう。
戦争って、外交手段の一つと言っても差し支えが無いし、それを学ぶには背景にあるものを知る必要がある。
更に、その戦いが行われた戦場、地形も重要になって来る。
つまり、背景にある国の思惑、民衆感情も含めた政治に国の体制、戦場の地形、それが何時行われたか」
「社会で学ぶことは全部入っていると?」
「うん。おまけに一日一時間程度で学べるほど、少なくないからね。
だから、こんな感じに」
改めて時間割を見る。
午前中の4教科と同じ長さの『提督学』と言う授業。更に、その下に夕食と書かれている。
つまりは、1時半からスタートしたとして、夕食が6時からでも、4時間半は提督学の授業だ。
月曜日から土曜日は、朝から夕飯まで授業があるということだ。
おまけに、夕食の後には、補習とある。
「補習とはなんでしょう?」
「夕食までの授業で、理解が足りないとか、不足している分は補足するの」
まるで、親切でそうやっているという態度だった。
悪気は微塵も無い。
「それに運動もあるよ。提督には体力も必要だからね。
ちゃんと提督学の中に、軍人に必要な基礎体力や、武道とか戦闘術も学んでもらうけど、不足してる分は寝る前に鍛えておけば安心だからね」
ちなみに、不足なしと判断されれば、バスケや好きな事をして良いそうだ。
実に素晴らしい御褒美だと、皮肉を言いたくなる。
だが、それを口にする勇気は無い。別に鹿島が怖い訳では無い。
そっと、左側を見る。
「なるほど。これが学生の生活なのですね」
左隣に座っている朝潮が、興味深そうに聞いている。そんな訳が無いと言いたいが、黙っておく。
続いて右側を見る。
「何だか楽しみになって来ましたぁ」
右隣に座っている大潮はワクワクしている。
同じ年頃の少女が、何も言わないどころか、楽しみにしているのに、厳しすぎるなんて恥ずかしい事は言えない。
日本男児たるもの、そんな情けない事を言えるはずが無かった。
「あ、それと、英語なんだけど、授業でやるのは、書くと読むが中心になるから、英会話の勉強は提督学やるけど、サービスとして、映画もあるから」
「ああ、英語で会話している映画を見て耳で覚えるって奴ですね」
「その通り♪ 勉強で楽しい映画も見れるからね」
父に勧められ一緒にやって来たことだ。
それに、アメリカ製の戦闘機を操るゲームもやった。
そのお蔭で、実は聞き取りくらいなら、ある程度は理解できる。
「甘いんじゃない?」
「でも、霞ちゃん、英会話は重要よ~」
「それは分かってるわよ。ただ、その重要なものを、楽しみながらやるってのが気に食わない」
「でも、楽しみながら勉強になるなら良いんじゃない」
「そうよ。霞ちゃんはサービスって言い方が気に入らないみたいだけど、実際に英会話の勉強になるのは、机の上で紙に向かうより、英会話に触れる事なんだから」
荒潮と朝雲は肯定的だが、霞は甘いと不満そうだ。褒美など不要。そんな思いがヒシヒシと伝わる。
実は気付いていた。彼女らの常識と、自分の常識は違うと。
神通が行っている訓練。あれが彼女らの平常なのだ。
そもそも、週休二日なんて言葉は戦前には無かった。あれは昭和から平成へと変わる頃に出来た文化だ。戦前生まれの彼女らには理解できない文化だろう。
ちなみに、民間では、週休二日は無くても、月休二日ならあったそうだ。月の休みは1日と15日だけ。
こうして、外国から働きアリと呼ばれた古き日本人を、教師と学友に迎えて、学生生活をスタートする事になった。