7人目の提督   作:山ウニ

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平和な話が難しい。
気付いてらエロい方向に行って、何度も書き直してしまいまいました。


もう、いっそ18禁に行こうかと本気で考えるくらい。



休日の過ごし方

休日が少ないと思っていた。

しかし、今となっては、休日の意味が分からない。やる事が無いのだ。

午前中はバスケをしたが、ワンパターンな気がする。

あまりにも、まったりとした空気だ。普段なら霞が騒ぎそうだが、その霞は、霰と一緒に艤装の改造に行ってるので、夕方までは帰ってこない。

そして、ふと思いついた。

 

「久しぶりに釣りをするか?」

 

霞と霰が帰って来た時点で、全員の改造が終わり、明日からは訓練を兼ねた実戦的な学習をすることになっている。

そのため、今日はゆっくりするよう言われていたが、折角だから、全員の改造完了を祝福して、少し夕飯を豪勢にしても良いだろう。

 

「釣り?」

 

「良いですね」

 

「久しぶりね。前に1回だけやったきりよ」

 

「許可を貰ってきます」

 

朝潮が荒潮を連れて、吹雪のところへ許可を取りに行く。荒潮を連れて行ったのは、許可が出れば釣り具を持ってくるつもりだろう。

釣りをやったのは、去年のお客さん気分の時までだ。その頃は資材の回収もしていなかったので、本気でバスケくらいしかやる事が無かった。

2日に1回くらいのペースでしていたので、大潮、朝潮、荒潮、満潮の順に経験しているが、満潮は1回しか経験が無く、他のメンバーはやったことさえ無かった。

 

「何処でやるの?」

 

「工廠と工廠の間」

 

朝雲の質問に指を差しながら答える。

工廠は巨大な倉庫のような長方形の建物で、横須賀鎮守府の工廠の隣に、鷲一の工廠が並んでいる。

工廠は、岸より約20mだけ海に突き出しているので、上空から見ると凹のようになっており、間のスペースで釣りをすることになっている。

 

「何で、そんな隙間で?」

 

「周りから見られたくない」

 

鎮守府内で釣りをしている姿は、他所には見せたくないそうだ。

マシになったとは言え、現在でも海は危険地帯である。

しかし、魚は食べたい。そのため、釣りをしたがる人間は多いが、船を出すのは未だに禁止されているし、堤防や岸から釣ったとしても、何かあれば自己責任と言う名の放置が待っている。

 

「でも、鎮守府の近くで釣っている人を見かけるわよ」

 

「鎮守府の側ほど安全な場所は無いからな。でも、釣り人が多くて場荒れしている」

 

人気の釣りスポットは意外と釣れない。釣り人が多いため、魚が学習したり、釣り上げすぎて、魚がいなくなるのだ。

そのため、釣り人は船で沖に出たり、湾内ではなく、外海で釣りをしたがるが、そんな事は危険なため出来ないでいる。

だからこそ、つい望んでしまうのだ。釣りをしたいから、艦娘に護衛をして欲しいと。

 

「いや、何言ってんの?」

 

「確かにそうだが、漁師なんか切実だからな」

 

漁師の場合でも、決められた日時に、艦娘の護衛を付けて漁に出ることが出来る。

だが、決して多いとは言えず、それを増やしたい希望はあるのだ。

 

「それを、お前等も釣りしてるだろうとか言われたら、面倒だろ?」

 

「無視すれば良いよね?」

 

「出来るけど、わざわざ門を立てんでも良いだろ」

 

見つからないようにすれば、何処からも文句は出ないのだ。それなら、そうした方が良い。

それに工廠の建物が大きいので狭く見えるが、実際は50mくらいあり、十分な広さだ。

 

「許可を取って来ました」

 

「道具も借りて来たわ~」

 

「よし、行こうか」

 

全員で連れ立って、釣り場へと向かう。

釣り竿は4本しかないが、交代でやれば良いだろう。

それに朝雲たちは初めての経験だし、満潮は一匹も釣り上げたことが無い。

その所為か、やる気に満ちており、釣り好きになった大潮に次いでテンションが高い。

 

「司令って、ここに来る前から釣りをしてたの?」

 

「川や湖でだけど、やってたな。貴重なタンパク源だ」

 

鷲一の物心ついたときから、肉や魚は高騰していった。

野菜もそうらしいが、肉や魚ほどではない。

そんな環境だ。釣った魚はブラックバスだろうが、ブルーギルだろうが食っていた。

キャッチアンドリリースを推奨していた、釣り人達も同様だ。元々、ブラックバスはリリースしても、鯛を釣ったら食べる連中だ。味に贅沢が言えない今となっては、そんな綺麗ごとは遠く彼方へ投げ出している。

 

「海の底に、岩とかあるだろ? そこの影に魚が隠れてるってイメージしてくれ」

 

「うん」

 

工廠の間に着くと、釣りが可能なポイントの左端から、下を覗き込みながら説明する。

その後、海の底を見ないように注意して、右端まで移動する。

歩きながら、朝雲が気になったのか、覗いてはいけない理由を聞いてきた。

 

「魚が警戒する。覗いた途端に釣れなくなる事もあるぞ……川では」

 

「海は?」

 

「ごめんね~」

 

「いや、タイミング的に荒潮の所為かどうかは分からん」

 

「え? 何があったの?」

 

荒潮が初めて釣りをした日、途中で荒潮が覗いた途端に釣れなくなってしまった事がある。

だが、干潮のタイミングだったので、荒潮が覗いたせいかどうかは分からない。

 

「試しても良いけど、それは十分に釣れた後で良いだろ」

 

「そうね。ところで、どうやって釣るの?」

 

「取りあえず、見本を見せる」

 

そう言って、仕掛けを確認する。

もっとも、仕掛けと言っても、釣り糸に使われているPEラインと結ばれている先端のナイロン糸のキズを見るくらいだ。

 

「で、針にコレを刺す」

 

「虫のオモチャ?」

 

「ワームって言うらしい。ルアーの一種な」

 

「エサじゃ無いんだ」

 

「海じゃ、エサを取るだけで大仕事だぞ」

 

磯の方なら、砂場を掘ったらイソメが出てくる可能性があるが、この周辺は完全に堤防として固められている。

また、オキアミやアミエビも大量に発生しているなら良いが、堤防周辺に発生することは稀であり、いたらいたで釣りにならない。

 

「でも、ルアーってこんなのじゃないの?」

 

朝雲が、仕掛けの箱の中にある魚の形をしたルアーを指差す。

 

「いや、これで釣ったことが無い。いつも狙っているのも小さい奴だし」

 

今から狙うのは、カサゴなど、ロックフィッシュと言われている岩に隠れている魚だ。

 

「え? 大きいのは釣らないの?」

 

「いや、だから周囲に見られたく無いんだって。暗くなったら何回か試すけど、釣れたことが無いな」

 

工廠の周囲も鎮守府の敷地だが、1kmも行かない内に敷地外になり、釣り人がギリギリまで寄って来る。

そんな中を、明るい内に何度もルアーを投げていたら、流石に着水の瞬間を見られるだろう。

そのため、暗くなり始めてから投げれば良いのだが、その時間は夕まずめと言って、一番釣れる時間だ。

カサゴなども当たりが良くなり、つい、仕掛けを変えるのが遅れてしまう。

そして、何度か投げれば真っ暗になり、今度は魚が反応しなくなる。

 

「ちなみに、蛍光のルアーも禁止な。それに真っ暗だと見えないから危ない」

 

夜でも魚が反応するように、ルアーの側に光を発するものを付ける手もあるが、それを付けると周囲に見られる。

だが、それ以上に深夜の釣りは禁止されている。

鷲一は仮にも、多方面から狙われている身だ。艦娘の護衛があるとは言え、暗闇では何があるか分からない。

 

「それじゃあ、コイツを落として……」

 

見本と称して、早速釣りを始める。

大潮と満潮は、既に始めていた。朝潮と荒潮の二人は見学の構えである。

同じように竿を持った朝雲が見様見真似で、ワームを落とす。

 

「底に着いたら、糸が弛むから、その手前で糸を止める」

 

「うん……こうね」

 

「そうしたら、底をトントンと叩くように動かして、魚にエサだと勘違いさせ……掛かった」

 

魚が食いつき、底に潜ろうとして竿がしなる。

ゆっくりとリールを巻いて、少し上げたところで山雲に竿を渡す。

 

「これが、魚の掛かった感触。こうなったら、リールを巻くだけ」

 

「グングンしてる~!」

 

「え? 私にも持たせて!」

 

交代で持って、やがて釣り上げると狙い通りのカサゴだった。

見た目がグロテクスなため、気味悪がるかと思っていたが、そんな様子は無かった。

そうしている内に、大潮も1匹釣り上げる。

 

「ゲットです」

 

「俺のより大きいな」

 

「来た!」

 

今度は満潮の竿に反応があった。少し小ぶりだが、初めての釣果に満面の笑みを見せる。

朝雲が気合を入れて竿を動かすが、大きく動かし過ぎな気がする。

交代で釣ろうと、竿を山雲に渡し、しばらくは見学の態勢に入った。

 

「それにしても、こんなので騙されるのね~」

 

荒潮がワームを持って、不思議そうに呟く。エビなのかカニなのか分からない、奇妙な形だし、色もピンクだ。

確かに、子供のオモチャの方が、まだ出来が良いような気がする。

 

「でも、アンコウとか、身体に付いている突起で魚を誘うからな。

 アンコウの突起よりはマシだろ」

 

「へ~、誘うんだぁ~……ねえ、大潮ちゃん代わって~」

 

「はい。良いですよ」

 

今まで、やる気が無さそうだったが、何かの琴線に触れたのか、急に興味を持った。

大潮から竿を受け取ると、妖しげな雰囲気で仕掛けを落とす。おまけに身体をくねらせ妙なリズムで誘いをかける。

 

「勝利の女神はここよぉ~♪ 捕まえてごらんなさ~い♪」

 

「いや、そんなんで釣れるわけが…」

 

「あら、捕まっちゃたぁ~♪」

 

満潮のツッコミが終わらない内に、荒潮がリールを巻いてカサゴが現れる。

どちらかと言えば、捕まったではなく、捕まえた方なのだが、荒潮にとっては違うらしい。

 

「はい。満潮ちゃん取って~」

 

「アンタ、実は魚を触りたくなかっただけでしょ」

 

「だって~」

 

「う~、私、まだ釣れてない」

 

少し騒がしい気がする。これでは魚が警戒すると思ったが、注意する気にはなれなかった。

気晴らしを兼ねての事だし、このペースなら人数分は釣れるだろう。それならと、釣果よりも楽しむことを優先することにした。

そして、のんびりとした時間を楽しむ。

 

「ん? 今、通り過ぎたの」

 

「どうかしましたか?」

 

「霞と霰が戻ったみたいだ」

 

「私も見たわ。もう、夕方になったのね。

 ここにいるって伝えるわよ」

 

満潮が通信をして、ここへ来るとの返答を受けた。

 

「戻ったわよ!……って、何してんの?」

 

「見ての通り、釣りだよ……あ!」

 

霞が話しながら海底を覗き込んでいた。

 

「「「 あ 」」」

 

「え? 何? アタシが何かした?」

 

「覗き込んだけど……」

 

「大丈夫かな?」

 

「まあ、ダメでも場所を移動すれば……」

 

移動しようと反対側を見たら、霰が海の底を見ながら、ゆっくりとこちらに向かっていた。

 

「全滅ね」

 

「見られたら、ダメかどうかの証明にはなるわね」

 

時間は夕方で、潮も悪くない。

これで、釣れなくなったら覗くのはダメだという証明になるが、そうなると霞と霰の所為で釣れなくなったということになる。

二人は知らなかったことだし、責める者はいないだろうが、二人とも気にしないでいられる性格では無い。

すでに大量に釣り上げていたのなら、もう良いかで済むが、まだ10尾しか釣れていないので、数が行き渡らなかった。

 

(……作戦の変更が必要だ)

 

これを戦争に例えれば、戦略目的は、全員が改修が終わった記念に、楽しい食事をするだ。

そのため、釣りやすいロックフィッシュを狙って、食事を豪勢にする作戦を取った。

だが、その作戦が、霞と霰によって破綻しかけている。二人は敵では無い。むしろ、楽しみを共有する仲間だ。ここで責任を感じさせたら、完全に戦略を見失ったも同然。

ならば、作戦を変える。賭けの要素が強いが、これで失敗しても、責任は分散される。

 

「なあ、大潮。大物狙わないか?」

 

「良いですね。大潮もそろそろ大物を狙いたいと思っていました」

 

こちらの意図を察してくれたか、それとも同じことを考えたか。大潮が笑顔で同意してくれる。大潮の笑顔は本当に勇気づけられる。

 

「リーダーを変えるから、使うルアーを選んでいて」

 

狙いに合わせて、糸を太いものと付け替える。

大潮の後に、自分の分も付け替えて、ルアーも勘で選ぶ。

湖でのバス狙いと異なり、ピンポイントでの正確なコントロールではなく、遠くへ投げることを意識し、後はリールを巻いて行く。時折、竿を動かして誘いの動作をやるが、海での経験が無いので、正しいかどうかなんて分からない。

そもそも、海での大物狙いなど、釣れないのが当たり前だとも聞く。

だからこそ、根気よく投げ続けた。思いつく限りの誘いをし、誘いなど知らない大潮は愚直に巻き続ける。

 

(……限界かな?)

 

今投げたルアーが着水した場所さえ見えないほど、暗くなっている。

暗い海には、生き物がいる事など信じられない程の静寂に満ちていた。いや、完全な静寂ではない。波の音や風の音がするが、その音が逆に無機質さを感じさせる。

だが、そんな海から、今までにない音が聞こえ始める。生命に満ちた音だ。

隣の大潮を見ると、彼女はリールを巻き終わり、投げる動作に入っていた。

 

「大潮、待って。ナブラだと思う」

 

捕食しようとする魚から逃げる小魚が起こす現象。そこに投げれば釣れる確率が高くなる。

鷲一は投げた直後で、今から回収しても間に合わないだろう。だから大潮に賭ける。

眼を凝らして、その音がする場所を探すと、直ぐに見つかった。海面が不自然に揺れていて、しかも動いている。

 

「あそこ!」

 

「とりゃあぁぁぁぁ!」

 

指を差すと、大潮も気付いて、そこに向かって投げる。

相変わらず、ルアーの着水は見えない。狙い通りに着水したか不安な気持ちで見ていると大潮の竿が大きくしなった。

 

「ヒ、ヒットです!」

 

安堵と同時に羨ましく思いながらリールを巻こうとすると、引っ張られる感覚。

 

「こっちも来た」

 

思わず呆然と呟く。自分が釣るのを諦めた直後だったので、完全に不意打ちだった。

ナブラを指差して巻くのを止めたのが、良い誘いになったのかもしれない。

最後まで気を抜かないで、確実に釣り上げることを意識する。そこまで考えて苦笑を浮かべた。

鹿島の授業が随分と身にに付いてしまっている。遊びで戦略を考えたり、最後まで油断をしないように戒めたりしている。

だが、それも悪くないと思った。

 

「スズキです!」

 

「ヒラメ?」

 

大潮は自分の腰までもある大きなスズキを、苦労して釣り上げた。

一方の鷲一はヒラメだが、30~40cmほどで、大きさは大潮に見劣りするが、高級魚だ。

ふと、周囲を見ると、全員が嬉しそうにしている。

不安な顔をしていた霞と霰も、笑顔になっていた。

釣果以上に、そのことが嬉しい。心の底からそう思えた。

 

 

 

 

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