7人目の提督   作:山ウニ

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装備と演習

昨日は予定よりも豪勢な食事になり、良い休日にすることが出来た。

刺身はヒラメの方が美味しかったが、スズキは複数のメニューが出てきて、全員の舌を楽しませた。

だが、それも今日から始める実戦訓練に備えての事だ。全員が朝からソワソワとしている。

 

そして、午前の授業の後の昼食が終わると、横須賀鎮守府の工廠に寄っていた。

装備を借りるそうだが、初めて入る横須賀鎮守府の工廠に緊張していた。

何処か雰囲気が違う。実戦に入っている鎮守府と、訓練と資材回収だけの鎮守府では随分と違うようだ。

そして、装備を納めている倉庫に入る。鷲一の鎮守府では、今まで装備は造ったことが無いが、横須賀では大量の装備が保管されていた。

突然、武器を見ていた満潮が、興奮気味に話しかける。

 

「あれ! あのダダダダダダダダダって出る武器!?」

 

「ダダダダダダダダダじゃなくぅ、ダアアアアアアアアアアアアよ~」

 

「どっちでも良いわよ。あれ使えるの?」

 

鷲一も満潮が指差している場所を見ると、そこには6本の銃身を持ったガトリング砲があった。

満潮だけでなく、現代の対空兵器の主役と言えるM-61機関砲(バルカン砲)の映像を見て、全員が衝撃を受けていたが、あれと同様の攻撃が可能とあれば、航空機に散々苦しめられた日本の艦娘が、興味を抱かないはずがない。

 

「もちろん。対空兵器として、多くの艦娘が使用してるし、対空戦に相性が良い艦娘は、二丁持ちで使うことも出来るの」

 

呉で開発された新装備も、元の艦娘の能力の相性に左右されるそうだ。対空装備一つとっても、元から得意とする艦娘の方が相性が良く使いやすいという評価を得ている。

M-61を小型化したM-134ミニガンという名称の、7.62mm弾を使用するタイプがあるが、それよりも小型で銃のグリップもある。

 

「ただ、あくまで対空兵装だから、駆逐イ級が相手でも倒すのは無理なの」

 

「砲身は細いですが、どれくらいの威力なんですか?」

 

「実寸は4㎜弱だけど、艦娘が使用する際は、M-61機関砲(バルカン砲)の20mm弾と同等の威力よ」

 

「何か寸法的に不自然ですね」

 

「それを言うなら、元から付いている片手で振り回している主砲なんか120mm以上の威力だからね。

 戦車の主砲と同じよ」

 

普段でさえ、見た目が小学生の少女が、戦車の砲を片手で2本も振り回している。

そう言われると、改めて艦娘の存在は、物理法則やらを振り切っていると思う。

オカルトだからと思って無理にでも納得するしかない。

 

「朝潮お姉さん! 何かカッコイイです!」

 

大潮がはしゃぎながら指差した武器は、明らかに色物だった。

大きな箱に杭が飛び出している。

何となく察しがついた。パイルバンカーだろう。

朝潮も、その武器に惹かれたようだ。目の色が違う。

 

「強そうです。これなら戦艦さえ沈められそうな気がします」

 

「……うん。まあ、実際に出来るけど……それ、欠陥装備だよ。

 持ってみれば分かると思うけど……」

 

「お、重いです」

 

威力に関しては申し分が無い。実際に戦艦でさえ一撃で沈めることが可能だ。

だが、異常に重すぎるのだ。使用時には相手を拳で殴るように振りぬくのだが、相手に接近するまでは、両手で保持する必要がある。

おまけに、その間は反撃不能で、とても使えないと、各鎮守府をたらい回しにされて、ここ横須賀でお箱入りとなっている。

 

「なんで、そんな武器が?」

 

「村上提督って、その、何と言うか、趣味が偏っているみたいでね……」

 

「ですが、戦艦を沈める威力は魅力的です」

 

「それなんだけど、同じ使い難いにしても、あっちの方がマシなの」

 

そう言って指を差す方向を見ると、2メートルはある巨大な銃。

 

「何か、ビームでも出そうな武器ですね」

 

アンチマテリアルライフルというより、リアル系ロボットが使用するビームランチャーのような外見だった。

改めて周囲を見渡すと、ソッチ系のデザインが多くみられる。

 

「50mm長距離砲。実質、駆逐艦でも大和型の46cm砲を上回る50㎝相当の威力の砲撃が可能なんだけど、見ての通り、大きい、重いで、駆逐艦の長所を殺すような武器。

 まあ、それでも、パイルバンカーよりはマシかな」

 

駆逐艦が強大すぎる発射の衝撃に耐えれるよう、砲撃のショックを緩和するため、砲身を包むようにショックアブソーバーが覆っている。そのショックアブソーバーが、未来的なデザインというか、ビーム兵器っぽい外見にしている原因だった。

だが、長距離砲撃の砲門が必要な場合は使えるし、戦艦に憧れる、とある駆逐艦には好評らしい。

同じような重い武器を持って殴ることが可能な距離まで近づく必要があるパイルバンカーより、よほど有効な武器と言える。

 

「でも、前に見た映像では、近接武器を持った艦娘もいましたが?」

 

「この辺の武器よね。駆逐艦は、ダガーナイフが適しているの。戦艦なら戦斧を使ったりするけど、基本的に重量に合わせた武器が合ってるかな」

 

何でも、この辺りの武器は、一種の体当たりと同等の効果を狙った武器であるそうだ。

普通、体当たりをしようものなら、自分もダメージを受けるが、それを武器に代替わりさせるために、近接武器を使用する。

 

「体当たりって、何だか原始的ですね」

 

「そうね。体当たりに関しては、後で詳しく説明するとして、あの子達には、先ず基本の武器を持たせないと」

 

そう言って、興味深そうに色んな武器を品定めしている朝潮たちを集合させる。

そして、鹿島が取り出した武器はアサルトライフルと言えば聞こえが良いが、これも、やはり某アニメで使われるビームの小銃に見える。

 

「これが、日米の駆逐艦娘の間で使用されている基本的な装備。正式名称は18式複合砲5型」

 

アメリカで重すぎて開発が中止になった、XM-29のように、銃身が上下に2つある。

だが、やはり見た目はビームが出そうなライフルだ。長さはカービンが主流になる前の、Ⅿ-16くらいの長さがある。それにXM-29は上部が20mm炸裂弾で、下部が5.56㎜小銃になるが、こちらは逆で、上部が細く下部が太い。それに弾倉(マガジン)が前方に一つあるだけだ。中身は弾薬。弾丸のサイズに合わせた弾倉(マガジン)は不要で、そこから供給されるエネルギーで、それぞれのサイズの弾を発射する。

 

「上部が.5インチ(12.7mm)機関銃で、下が5インチ(12.7cm)砲と同等の火力が発射されるの」

 

「それで5型?」

 

「正解。ちなみに6型と8型もあるの。そっちは軽巡と重巡用」

 

それぞれ、一回りずつ大きくなる。

だが、元から装備している武器と同じ威力なのに、何故、小銃型にしたのかが分からない。

それを質問する前に、霞も気になったのか、先を越される。

 

「何でわざわざ、こんなの作ったの? あっちの威力が強くなるって言うなら分かるけど」

 

「使ってみれば分かるよ。じゃあ、外に行こうか」

 

朝潮たち全員に同じ銃を持たせて、鹿島は何に使うのか、三脚を持って外へと向かう。

演習エリアへ移動すると、鷲一には双眼鏡が渡された。

 

「基本的な射撃訓練を始めるね。全員で海上に出る前に、ここで射撃をしてもらうから。

 目標はあそこに見えるブイ」

 

そう言いながら、三脚に銃を置けるようにする。

気軽に言ってくれるが、鷲一には、双眼鏡を使わなければ、標的のブイなど見えはしない。

だが、朝潮たちは平然としている。どうやら標的が見えているようだ。

 

「じゃあ、気になってるようだから、霞ちゃんから行くね。銃を構えて」

 

「これ何、邪魔なんだけど?」

 

ストックに頬を付けて、照準を覗くようにすると、正面に見えるモニターに対し、霞が不満の声を上げる。

だが、鹿島は不満の声を無視して、銃の説明を始める。

 

「ここにあるのが切り替え(セレクター)。真ん中が安全装置で、上が機銃、下が大砲ね。

 今日、使うのは大砲だから」

 

Ⅿ-16やⅯ-4アサルトライフルの、単発と連射の切り替えと同じ位置に、切り替え(セレクター)がある。

機銃は連射で、大砲は単発で固定されている。

 

「こう?……って、何!?」

 

霞が邪魔扱いしていたモニターに、大きく標的のブイが表示された。

予想が付いていた鷲一と違い、霞の驚きようは激しかった。

 

「まずは、撃ってみようか。モニターに映っている十字の中心に標的を合わせて発射して」

 

「了解」

 

霞が引き金を引くと轟音が轟き、遠くで水しぶきが上がった。

 

「え?」

 

「気付いたみたいね。今、映っている位置が変わったよね?

 再度、中心に合わせて発射」

 

「う、うん」

 

もう一度引き金を引くと、標的のブイが破壊される。

 

「こ、これって……」

 

「うん。驚くよね。技術の発達にカルチャーショックを受けると思う。私もそうだったし。

 まあ、見ての通り、自動で照準が修正されるの。風向きや重力なんかも含めて計算されるそうよ」

 

鹿島自身が呆れた口調で説明する。

彼女たちにすれば、21世紀のハイテク兵器との融合は、ある意味、オカルトと変わらないレベルで不思議な能力のようだ。

 

「じゃあ、全員、三脚を使って感覚を掴んで」

 

「了解です!」

 

調整を兼ねて砲撃の感覚を掴んでいく。

全員が驚き、この武器の有効性を認めていた。

 

「それじゃあ海上に出て、動きながらの訓練に入るよ。目標は命中率50%」

 

「ご、50!?」

 

「昔の常識は忘れるように。これは最低限の数値。これだけなら、足手まといだけど、何かの役に立つかっていう評価だからね。

 本格的な機動訓練は後日にするから、今日は動きながら撃つ。それだけを意識して」

 

朝潮たちが緊張した面持ちで海上へと出て行く。

それを見送りながら、鹿島が苦笑を浮かべながら聞いてくる。

 

「命中率50%と聞いて、どう思った?」

 

「正直、今までは命中率を気にしていませんでした。どちらかと言えば、当たるのが当然だって感じで受け取っていました」

 

「だよね。普通はそう思う。今もそうだし、昔も軍人でも無ければ、そう思っていたかな」

 

「実際はどうなんです?」

 

「そうね。日露戦争での日本海海戦。あの戦いでは、日本は10%で、対するロシアは2%ってところ」

 

想像以上の低さに愕然とする。

だが、それで終わりでは無かった。

 

「第二次世界大戦では艦隊決戦が少なかったから、統計を取りにくいのよね。おまけにアメリカはレーザー照準があるし。

 まあ、数少ない艦隊同士の昼間の戦闘で、日本が無様極まりない勝利を得たのがサマール沖海戦。そこで最も活躍したと言われる日本の艦が利根さんだけど、その彼女で2%以下」

 

日本艦隊の終焉をしめすようなレイテ沖海戦。その最後を締めくくったサマール沖海戦は、日本海軍の幻想を打ち破る戦いでもあった。

艦隊決戦をすれば勝てる。日本海軍は、そんな幻想を抱き続けてきた。

日清、日露で勝利を得たから、艦隊決戦なら。日本海軍は、その自信が、なんら根拠が無いものだった事を後世に証明することになる。

大和、長門、金剛、榛名の4戦艦に、羽黒、鳥海、鈴谷、熊野、利根、筑摩の6重巡。更に2水雷戦隊。

対する米国海軍は護衛空母6隻と駆逐艦。

艦隊決戦に飢えていた日本は、その少数の米国艦隊を主力だと勘違いし、猛攻撃を加えた。

結果として勝ちはしたが、その戦いで語られるのは、米国の勇敢さ。サミュエル・B・ロバーツやジョンストンの奮戦。

それに対して、期待されていた大和は、何ら有効な打撃を与えることが出来ず、日本海軍は量だけでなく、質の面でも米国に劣る事を証明してしまった。

 

「2%って、日露戦争の頃より低くなっていますね」

 

「距離が伸びたって理由はあるけどね。日露戦争での東郷ターンと言われているのが、敵から約8㎞。サマール沖海戦では、30㎞から砲撃開始。まあ、嫌な思い出は、今日は良いとして、やはり戸惑ってるね」

 

朝潮たちは、命中率が今一つ上がらないで苦労しているようだ。

 

「目標が遠すぎません?」

 

「そこが、面倒なところの一つなのよね。あの標的までは、約4㎞しかないの」

 

「4㎞って、そんな近く? 水平線と変わらない位置ですよね」

 

双眼鏡で覗いても、標的の上部が見えるだけで、真ん中からは水平線に隠れて見えないブイもある。

明らかに遠いと思うが、先ほど聞いた海戦距離に比べたら、数字だけは目と鼻の先と言える距離だ。

 

「答えは簡単。地球は丸い。水平線までの距離の出し方は、今度教えるけど、人の身長、水面から150㎝くらいの高さからだと4㎞くらいまでしか見えないけど、戦艦大和の艦橋、40m弱だと20㎞先まで見える。

 当然、相手の艦も高さがあるからね。遠くから見る事だ出来たの」

 

「え? じゃあ、朝潮たちは……」

 

「そう。自身や敵のサイズの変化は戦闘距離にも影響する。

 まずは、その違いによる戸惑いを、克服しなくてはならない。

 前に話した艦娘の強さに影響する経験。これを身に付けるのって意外と大変よ」

 

 

 

 

 

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