「…………」
「へ、ヘイ。お嬢。総大将から避難用の装備は貰って、隣の新兵の奴に身支度も整えてもらっただろ? お嬢と総大将の予想が的中していているなら、お嬢は戦火に飲まれる前に逃げておいた方がいいんじゃないか?」
座布団を11枚、うち7枚を円陣を組むように並べ、その中央に4枚の座布団を敷く。すべてを敷き終えたのちには、私はオークさんと傭兵さんに挟まれる形でゴツゴツとした地面の上に座る。
『ふうま御一行』を迎え入れるために奴隷商さんが出入口へと向かい、招かれ人達が姿を現わすのを今か今かと待っていると傭兵さんが孟秋に子供達を連れて来ていろいろ御喋りしたときのような口元だけをこちら側へこっそりと近づけて裏口の方を見た。
ふと反対の隣側に座っているオークさんもまた私の方を見つめている。
「……逃げません。逃げるなら、みんなと一緒じゃなきゃ嫌です」
「そ、そうか」
「…………」
「……! ……♥」
私の言葉に身を引いていく傭兵さん。
そんな決意を改めた私に対してオークさんの腕が私の肩を抱き寄せる。私はそんな彼に倒れ込むようにして、彼の膝に頭を寄せる形で身体を預け横になった。
「……おーい、いちゃいちゃするのは構わないが儂等もいることを忘れてない……よな?」
「これで新兵の新兵は新兵なのだから……やはり新兵に足りないものは、オークとしての根性なのか……?」
「He is forever Rookie.」
「新兵、そのアマを大切にしてんのはわかっけどよ。そんなに俺達の目の前で見せつけるようなら奪っても良いってことだよな? 寝取り、寝取られだ! 寝取られ!!! ギャハハハハッ」
傭兵さんとオークさんを除いた正面の4人が好き勝手、言っているが私は特に気にも留めなかった。
しかしオークさんとしては、ガソリンくんの言葉に対して反応を返すようにオークさんはその身を強張らせているのが彼の太ももから伝わってくる。
「——奪えるものなら、奪ってみるといいですよ。ま、ガソリンくん程度では私は堕ちませんけど」
「ウヒッ♥♥♥」
だから私も彼に身体を預けたまま、うっすら目を開けて対面側に座っているガソリンくんに対して、彼が口を開いて反論する前に先に鋭い刺すような口調で反応を返す。……彼は身を震わせて悦んでいるようだ。
現在の席順は、避難所へとつながる出入り口の扉を背面に右端にオークさん、その左隣に私、その隣に傭兵さん、空席、チーフさん、羅刹さん、フレイムさん、ガソリンくんの順で並んでいる。この並び順を見る分に、この座席順は円陣を組んだ際に、その分隊の中で身分の低い者が下座に来るようにして並んでいることが推測できた。
私がオークさんと傭兵さんの間に座り、それを見ても誰も口出しして来ないことから、以前まで私は彼等にとって臨時のゲスト的な存在として何も言われないのだと思っていた。だが、これから行われるであろう臨時の会合に私が出席するにも関わらず、その位置に居ることに関して何も言われないということは、つまり私は彼等から認められているのだろう。現に、初期の頃この家で夕食や朝食を食べて居たときは、私はオークさんと色々と胸やお尻を触ってちょっかいを仕掛けてくるガソリンくんの間で食事を取っていた。それが、訪問回数や奴隷商さんと仕事を重ねていくことで、いつの間にかに食事の際もオークさんと傭兵さんの間で食べるようになっていた。
「お嬢もハイオークの奴に恐れずに物を言うようになったよな」
「最初の頃はオレ達の姿を見てガタガタ震える程だったのにな」
「お゙っ゙♥ お゙っ゙♥。……ヒトの成長は、ほんっと、はえーんだよな……♥」
「よし! 儂の権限で昇格だ。次はハイオークと羅刹の間に座っていいぞ!」
「ありがたい話ですが、私はオークさんと傭兵さんの間、フレイムさんよりも格下がいいので昇格はお断りさせていただきます」
「この場デ堂々トそんナコトを言えるノモ、テメーだけだヨ」
「「「がははははははははっ!!!」」」
——コンコンコンッ
そんなフレイムさんの言葉に傭兵さんや羅刹さん、チーフさんまでもが笑い合う中、避難所側に続く扉が軽くノックをされる。恐らくあの会話後に入ってこなかった『ふうま一行』を自ら出向いて迎えに行き、玄関での対応を済ませた奴隷商さんだろう。ノックをされた瞬間に、全員の様子が引き締まる。私も地面へと座り直し、奴隷商さんやオークさん達の顔に泥を塗るまいと その入室してくる一行を待った。
「すみませんね。今日はつい先ほどまでお客様がいらっしゃられている分、賑やかでして——」
「おかまいなく」
扉が開かれ、ふうま一行が入室してくる。
しかしその入ってきた人物を見たとたんに、この部屋の奴隷商さんを除いた誰もが戦慄し咄嗟に体臭が先ほどのリラックスしたものから殺意が籠った戦闘時に発するものへと変貌する。室内に入ってきたのは、ゆきかぜさん、アスカさん、ふうまさん。……そして。
「お初にお目にかかる。オーク分隊の諸君。警戒されるのはもっともだが、私は諸君等の敵ではない。……そして、君が洗濯屋ウォッシャーの店長さんだね? このような場所で会えるとは思いもよらなかったが、今日はお会いできてよかった」
入ってきたのは白いカーテンのような大きな布を手に持った1人の女性のような物体だった。
正確には、今、オークさん達や私の目の前でお辞儀するそれは人間や魔族のような有機生命体ではない。これは無機物の……ブレインフレーヤー製の機械生命体のようだった。
私が1人の女性と言ったのは、彼女はまず女性の体つきをしていた。しかし“彼女”の身体の何処に視点を移しても機械の漢字二文字以外の部位が見当たらない。頭の上に乗っている帽子ですら、本でしか見たことのない海上自衛隊の船員が被っているような帽子の形こそしていたが機械で出来ており、つばの部分には『4』の番号が刻まれている。各部位の関節部は、あの悍ましい固定砲台であるサキュラのように青白い光を放っていた。背中に浮かぶ、6つの忍者が用いる巨大なクナイのような物体はサイコキネシスのように浮かび上がり、その刃先の先端は赤く塗装され鋭利で……。顔はなく、青白く光るカメラのレンズのような穴が私の顔にピントを合わせるように収縮と拡大を繰り返していた。
「……と言っても警戒されるのは無理もないだろう。詳しいことは自己紹介の際に説明するが、そんなに殺気立たないでもらえると助かる」
それだけ告げて彼女は、悠々と歩き私の敷いた中央の4枚の座布団うち1枚に上に腰をかける。
ゆきかぜさんとアスカさんは、なぜ私がここに居るのか少し疑問に思ったようで首を傾げ、オークの群れの中に人間の女性がいることに関してふうまさんは驚いたのかその身をたじろかせ、2人から小声で色々な事情を説明されていた。
「——逃げなかったのですか」
「……すみません。奴隷商さん。新しい避難所の情報と避難先での就職口の推薦状も書いていただいたのに……私はここに居たいんです。皆さんがいる、この場所に」
「……。ひとまず、私達に混じって会合に参加されるのであれば、倉庫から座布団をもう一枚持ってきなさい。そのままでは脚やお尻に悪いですよ」
「ありがとうございます」
奴隷商さんは3人と1機を私が敷いた座布団へと座らせると、まっすぐに空席の上座に……とはいかずに、『ふうま御一行』が何処の席に座るか話し込んでいる間に自然な動きでこちらへとふらりとやってきて、地べたに正座する私を見下ろすように小さく言葉を呟いた。
私も彼の小声に合わせるようにして、小さく頷き小さな声で返事を返す。彼はそんな私に対し諦めたかのような、あきれたかのような溜息を1つきながら黄色く蜂蜜のように輝く瞳を閉じて、言葉を飲み込みながら穏やかな口調で私をしかりつけることも抑えながら彼は手短に言葉を交わし、指示をしてくる。
いったん、席を離籍して私が倉庫から座布団を持って戻って座ったところで話は始まった。
「まず、自己紹介をさせて頂きたい。私はアビゲイル。諸君等の表情を読み取るになぜブレインフレーヤー側の機械生命体がこの場にいるのかと考えているのだろう。繰り返すようだが、まず私は諸君等の敵ではない。君達レジスタンスが、私達を支配するテラセックを破壊してくれたおかげで、あの下賤なタコ野郎から開放され自我を持つことができたのだ。むしろ礼すら告げたいと思っている」
「それで自我を持ったことで彼女は、ブレインフレーヤー側ではなく私たち側に付いたってわけ」
アビゲイルと名乗った機械生命体は淡々と自己紹介を済ませる。残念ながら、私達は機械生命体のように脳での処理能力はずば抜けて高いわけではない。奴隷商さんを除いた私を含めたオーク達は目を白黒させるもの、殺気をにじませて警戒を解かないもの、往々にして首を傾げるものと多種多様な反応をしていた。
そこでアスカさんが、もっとわかりやすく彼女の立ち位置について明確でわかりやすい言葉で説明をしてくれる。
「ああ、その通りだ。私は確かに機械生命体であり、タコ野郎にとってはただの命令に従う道具にしか過ぎないのかもしれないが、私は私だ。自我を持ち、この戦争の顛末を聞いた今、諸君等レジスタンスや生存者に一切の非はなく、ゆえに奴等に従う義理はないと判断した。だから、私は今まで諸君等の基地でレジスタンスの参謀として指揮を執っていた」
彼女の言葉で奴隷商さんとオークさん、それと私以外のオークさん達がどよめく。それはきっと無理もないことだと思う。私ですら、アスカさんのわかりやすい説明を聞いた状態でも、どよめくだけの余裕がないほどに状況の理解に追いついていないのだ。
彼女の話を整理すると……つまり、今の今までこの基地が脅威に晒されても、守り抜いて存続できたのは現場で働いていたレジスタンス達のおかげでもあるが、この参謀を名乗る機械生命体のアビゲイルさんが指揮を執っていたからでもあって……。
……でも今回は、そんないくつもの脅威を退けてきた参謀でも、過去からふうまさんを召喚するほどに危機的な状況で……。
………
……
…
私がいろいろと事態の把握と整理に努めている間に、それぞれ『ふうま御一行』の自己紹介を終え本題に入り始めていた。
「さて、今回私達が、こちらの英雄ふうまを連れてこの場に来た訳を話さなければならないな」
『…………』
「今、私達の基地はいまだかつてないほどの脅威に晒されている。以前、この拠点の近くにサキュラが単独で偵察に来ていたことがあり、その時は英雄ふうま、そしてここにいるゆきかぜとアスカによって破壊された。しかし既にその破壊が済んだ時には……サキュラによる索敵によって、この基地の存在を知られてしまっていた。更に悪い話としてこの情報はブレインフレーヤーにも伝達されてしまっている。……結果的に、今ブレインフレーヤーはこの基地を破壊するために数えきれないほどのサキュラとハンターを差し向けてきているという状況な訳だ」
「……なるほど。その危機的情報を伝えるために今日は来ていただいたということですか。なるほど、なるほど。……で。それが我々に何の関係が? これだけのお話であれば、脅威を教えて頂きましたし、我々は荷物を纏めそちらの新兵の隣にいる彼女も連れて新しい新天地に移住するだけなのですが……そちらの英雄の坊ちゃんがいらっしゃられている……ということは、単に『基地が滅亡する』というお話だけではなく、本質的な話として別に話すことがおありなのでしょう?」
「……あぁ。ここからは俺が話そう。俺達はもちろん、その部隊を迎撃するために過去からやってきた。だがその迎撃作戦にはどうしても『オーク族』の力も必要不可欠なんだ。ブレインフレーヤーの手先であるハンターのみの部隊であれば、確かに俺達やレジスタンスのみで対応できるかもしれない。だがサキュラが敵の部隊編成にいる以上それは不可能なんだ。……そこで――」
この時、私は以前、壊滅した部隊のレジスタンスの生き残りが話していたことを思い出していた。
確か、サキュラは対魔忍や魔族の対策のために特殊な防護壁で守護されているらしい。それは対魔忍にのみ宿る対魔粒子や、魔族に宿る魔力を弱体化させ 与えるダメージを軽減させることができるのだと。
……つまり、なぜふうまさん曰くオーク族の力が必要なのか……それは……。
「——オーク族は魔族でありながらも、その魔力に頼らずに人間や並みの魔族の力を凌駕するほどの怪力が備わっているため、サキュラの特殊な防護壁の影響を受けない。だから迎撃戦に参加して欲しい……そういうことですか? ふうまさん」
私の言葉に、辺りがシン……と静まり返る。
奴隷商さんを除いて、誰もが私が言葉を発するとは思わなかったのだろう。私の発言の直後から何処か誇らしげな顔をしている奴隷商さんを除いた全員の顔が私へと向けられている。
「……その通りだ」
「ふむ……おかしいですねぇ」
「何が?」
私がふうまさんのお株を奪い、肯定的な返事をされた後に奴隷商さんがおどけた口調と少しわざとらしい首の傾げ方をする。それが、ゆきかぜさんの怒りを買ったのかギロリという鋭い目つきと鋭い口調の敵意ある一言が響き渡った。
「怒らないでください、ゆきかぜさん。ただわたくしとしましては、既にこちら側にある情報から、いくつか奇妙な疑問点が浮上したまでですよ」
「それは?」
「英雄の坊ちゃん。あなたは確かアビゲイルさんのお話では、サキュラをそちらの対魔忍であるゆきかぜとアスカさん、そして貴方で倒されたのですよね? どのように倒されたかは存じ上げませんが、我等オーク族などに頼らずとも十分に対処できているではありませんか」
「それは……ふうまがサキュラの弱点を見つけ出してくれたからであって……」
「アスカさん。それだったら、オークさん達に頼らなくても他のレジスタンスの人たちだけでも十分ではないのでしょうか?」
先ほどの流れで総大将さんから咎められることもなく、目配せした際に小さく頷かれた私は発言権があると確信し、奴隷商さんの問いかけに追随するように質問を投げかける。
「貴女……! この迎撃戦が失敗したらレジスタンスだけじゃなくて、大勢の人が死ぬのよ!? それに彼等が参加してくれなければ必要以上に犠牲も出る! 何とも思わないの?!」
しかし、先ほどのやりとりで怒りを募らせたゆきかぜさんが、私の言葉に喰ってかかってくる。
……ゆきかぜさんは確かに夏にオークさんと共に私を助け出してくれた命の恩人だ。それに私はこの基地へ受け入れられたときから、ゆきかぜさんやアスカさんのみならず色々な人に助けられてきた。でもだからと言って、今の言葉は私もカチンとくるものがあって、正座の状態から片膝だけ立てて今にも飛び掛かりそうになりながら立ち上がる。
「……何も思わないわけないじゃないですか……! ここの人たちは私を迎え入れてくれた皆気のいい人たちです! ……ですが、私にとっては、オークさんが、オークさん達が死ぬことも不安で、怖くて、恐ろしくて、嫌なんですッ!!!」
「お、おおおお嬢! 待て待て待て待て! お嬢が逆立ちしたって雷神の対魔忍には勝てねぇって!!!」
「Hey. baby!! Take it easy! Okay, but please settle down first!!!!」
「……泣かないで」
そんな私に右隣で座っていた傭兵さんが咄嗟に私の腕と制服を掴み、左隣に座っていたオークさんが私の声の震えに反応して宥め、対面上にいるフレイムさんが捲し立てるように流暢な英語で何かを喋っている。
「……貴女にはまだ会合時の流儀を教えてはいませんでしたね。ひとまずは感情的になるのをやめて、座りなさい。まだ話の途中です」
「で、でも——」
「座りなさい」
「……はい」
感情が爆発した私に奴隷商さんの目がいつにもなくギラリと光る。口調は怒っている様子はなく、いつものように優しげで穏やかなものだったが、その深部には何かこのオークさん達をまとめ上げて、10年以上生き残っているだけの冷酷で頭に冷水を浴びせかけられたような……そんな言葉の迫力があった。ツンとした鼻を一回啜り、うるんだ目を袖で拭い、座りなおす。
そんな私を傭兵さんが背中をさすって、オークさんが頭を撫でてくれる。
「……すみませんね。
「私は気にしていない。……それどころか今の状況は知識として非常に興味深いものがあった」
「ゆきかぜさんも、申し訳ございません」
「……いえ。彼女の気持ちを考えずに感情的になって私も酷いことを言ったわ。……私も大切な人を失う辛さは知っているのにね……ごめんなさい」
「いいえ。こちらこそ、ごめんなさい……」
互いの謝罪を終え、しばらくの沈黙。
しかし、その沈黙を奴隷商さんは、うまく手を
「では、話を本題に戻しましょう。言いたいことを彼女に先に言われてしまいましたが……わたくしと致しまして、奇妙な疑問点に関しましてはまさにその通りです。弱点が判明しているのであればレジスタンスのみでの対応はできないのですか?」
「……あぁ、それができない。とにかく数が多すぎて対応しきれないんだ。でも、わかったこともある。それだけの大部隊を動かすには、そのサキュラを制御している機械生命体がいる。包囲網を突破して、そいつを倒すことができれば
「……ふむ。……ですが、まだ疑問点はありますね。『仮に』英雄の坊ちゃんの作戦でサキュラの侵攻を止められたとしましょう。しかし、こちらの住処は既に割れてしまっています。時間が経てば またブレインフレーヤーは襲撃にやってくると思いますよ。わたくしがブレインフレーヤーならそのようにします。わたくしたちには地上に逃げ場はないのですから、次は我々が参戦したとしても戦局を覆されないほどの戦力を集結させるでしょうね。いえ、もっと残酷な方法……例えば発症の遅い感染者を潜らせて壊滅させに来るかもしれません……この問題はどうされるおつもりですか?」
「そのために、今回の作戦では俺、アビゲイル、ゆきかぜ、アスカ、それと俺と共に過去の時代を生きる仲間達でそのブレインフレーヤーの拠点を叩くつもりだ。恐らく、それだけの兵隊を集結させているということは本丸も手薄になっているはずであって……。敵が次のサキュラを量産するよりも先に俺達が敵拠点を壊滅させる」
「なるほど。……」
「それに今逃げて、無事に逃げられたとしても今度は更に強力になったブレインフレーヤーの兵士が新たな避難所を襲うだけだ。……だから、俺達の作戦に参加して欲しい。この基地や他の生存者を守るためにもお願いだ! どうか力を貸してくれ!」
ふうまさんが私達の目の前で土下座をして見せる。
オークさん達を含め、私もまた奴隷商さんを見る。彼が決定するのだ。私達の未来を。
『………………』
「……残念ですが」
「……!」
「今日のところはお帰り下さい」
奴隷商さんの言葉にふうまさん達は驚き、望みが絶たれたかのような顔をしていた。
私は喜び、他のオークさん達の顔をつぶさに確認していく。皆それぞれの反応を示していた。ガソリンくんは私のように喜びながらも、その喜びを隠しながら戦えないことを悔しがり。フレイムさんは緊張していた糸が途切れるように溜息をつき、オークさんもそっと優しく私の手を握ってきた。顔を見る必要もない。だからこちらも優しく握り返す。
ただ……羅刹さん、傭兵さん、チーフさんは少し俯き複雑な顔をしていて……少しそれだけが心残りだった。