白雪聖女様と7人のオーク   作:槍刀拳

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下編 『レジスタンスの巣窟』

「こんにちは。以前、こちらに物資交換でお伺いいたしましたオーク分隊です。地表にて難民がブレインフレーヤーに襲撃されているのを発見しまして救助活動にあたったのですが……現場はサキュラ、ハンター、感染者、生存者の混戦となっており助けられたのは混戦から逃れられた身寄りのない彼女だけでした。私達が遭遇したときには足を負傷していたため、簡易感染チェックは行いましたが、念のため監視房の手配とこれを機に私達も基地への入設を許可していただきたいのですが……よろしくお願いできますでしょうか?」

 

 瓦礫で囲まれ、人の手が入っていない茂みや線路を抜け、崩落したビルの地下、停止したエレベーター等を更に下って最深部へと脚を運んだ先に、私が知らなかった初めて見る生存者の基地があった。

 私が真っ先に意外だと思ったのは、見張りに立っている兵士の姿だった。てっきり、オークが来た拠点のことだから、きっと見張りもオークだと思っていたのだが……。それは明らかな人の姿をしていた。

 OB色の戦闘服を身に纏い、両耳にはヘッドホン状のインカムを付けている。腹部にはベージュ色の弾薬ポーチをいくつも付けており、両手には日本……世界がこうなる前。米連の軍隊が採用していた最新式のアサルトライフルを手に持っていた。

 向こうは負傷したという私や見るや否や露骨に嫌そうな顔、私を見た後にオークには蔑んだかのような……厄介者が現れたと言いたげな様子でこちらを見ていた。しかし先頭で話を付けている奴隷商人オークは愛想のよい、にこやかな様子で事のあらましの報告及び、私が収容される独房の手配を済ませてくれる。

 

あ、あの……

「テメーは黙ってナ」

「次余計なことを言ったら、オメーの唇を俺のナイフでそぎ落とすぞ?

「……」

 

 見張りの兵士たちがインカムを使い、何処かに連絡しているのが見え辺りがドタバタと騒がしくなる。見張りを行っていた兵士たちは、オーク達よりも私の事を何度も横目で確認し、私には聞こえないような声ではあるが、それでも小声で何かを話していることがこちらも分かるような様子でボソボソと連絡を取り合っている。

 まるで、私はここに居ることがとても面倒なような……そんな素振りだった。恐らく、オークに巻かれた布切れ1枚の性奴隷らしい服装から垣間見えた足の怪我が感染者にやられたものだと思われているのかもしれない。

 そう思って、オーク達に囲まれながらも見張りの兵士の方に、足に出来た傷の事を説明するために一歩前へ進もうとすると左右の肩を私の背後にいたフレイムオークとハイオークが押さえつけてきた。ハイオークに至っては私の口元に切れ味の悪そうな分厚いナイフを当て、ペチペチと頬を叩いてくる。

 

「おいおいおい、お前等。このお嬢は商品だと思って丁重に扱えよ。クールだ。常にクールになることを忘れんなよ。…………悪りぃな、ハイオークってのは血気盛んでさ」

「だがこの場では黙っているの正解だぞ、小娘。お前が余計なことをして殺されそうになっても、オレの斧が弁明のためにお前の頭を叩き割るよりも先に、あいつ等のチャチな銃がオレ達の眉間を貫く方が素早いからな」

「……とにかく。うちの大将と総大将に任せておけば、“吊るし屋” だって黙らせられるんだから安心しな」

 

 思わず口を紡ぎ、体を強張らせる私に馴れ馴れしく2連ショットガンを背負いおどけた口調で接してきたカウボーイハットを被ったオーク傭兵と、オーク達の中で最も大きな斧を持った羅刹オークが厳格な口調で警告しながら私の両脇を固めてくる。

 正面では、私の事を助けてくれたオークと、その更に前には奴隷商人オーク、ハイオークチーフが通路の奥から増えつつある兵士たちの対応をしているのが見えた。

 聞き耳をそばだててみるが、具体的に何の話をしているのかは分からない。それでも辛うじて聞き取れたのはオーク等も避難民として受け入れて欲しいという交渉のようなものをしていることは聞こえてきた。

 

「ヘイ、新兵。お前も彼女に何か安心できることの1つぐらい言ってやれよ。今、お嬢の周りはむさ苦しいオークまみれ、最後尾のハイオークにはナイフを突きつけられ、俺の反対にいる羅刹には脅迫されてんのに。お前の所有物だってガッツを見せてみろよ」

「……」

「…………」

 

 新兵と呼ばれた鎧をまとったオークは何もしゃべらない。それどころか、振り返った瞬間に私と目が合うと、そそくさとすぐに正面へ向き直ってしまった。

 

「やーい、シャイボーイ」

「チェリーボーイ! チェリーボーイ!」

「……これだから童貞(新兵)は……」

「玉無し野郎」

「…………」

「うるせぇぞ!!! テメェ等ッッッ!!!!!」

 

 やいのやいの背後から囃し立てるハイオーク達とオーク達の野次に、奴隷商人オークと共に交渉していたハイオークチーフが振り返り、百獣の王とも呼べるようなビリビリとした咆哮を私達に向けて一喝した。

 私の身体が恐怖でより一層強張るのと同時に、私を囲んでいた4人も口を固く閉ざし、バツが悪そうにそっぽを向いたり、口笛を吹き始めたり、ナイフで爪と指の間の垢でを取り始める。それでも、正面の新兵の彼だけは……やはり何度か私の方を見た後でやっと口を開こうとする素振りが見られて……。時間の有り余っている今、私は顔を見上げて彼の言葉をゆっくりと待つことにした。

 

「……」

「…………」

「……」

「…………ぁ」

「……」

「…………そういえば」

「はい」

「……お前の荷物。返す」

 

 そういって手渡されたのは私が手を滑らせ落とし、このオークが懐にしまったバーボンだった。ひびが入った様子が無ければ、勝手に封を開けられた形跡もない。……そのままの綺麗な状態だった。

 

「あ。ありがとうございます」

「…………」

 

 オークは軽くを挙げて、しまうように私へ促してくる。ふと彼の赤目がこの基地の兵士たちに向いたようなそんな気がした。

 彼の指示通り、私は私の最低限必要な私物が入った荷物の中に、そのバーボンを片付けた。

 

………

……

 

「ほら、お前はこっちだ!」

 

 やがて基地の兵士によって、私が感染者へ転化したときに備えた準備をされる。口には猿轡。頑丈な手錠と足枷が付けられた。足を怪我しているということもあり、このようにガチガチに拘束された状態では満足に歩くこともままならないため、棒と衣類だけで作ることのできる簡易担架に乗せられ、しばらくの間そこで生活することになる監視房へと連行させられる。

 連行される間、同じく基地内部へ入って行くオーク達がこちらを見つめていることに気が付き、私もそちらに目を向けた。

 

「ふふふっ。これからオークだらけのオスクサいタコ部屋に連れ込まれ肉便器調教されるとでも思いましたか? あなたは調教し甲斐がありそうなのと、調教後は高値で売り飛ばせそうですし世界がこうなってしまう前ならば、確かにそうしていたのですが……残念ながら今はそれどころではない世界情勢ですからね。これからあなたは適切な観察時間の後、感染者に転化しなければ、自宅の割り当て及び作業所の紹介が行われるそうです。だから安心してくださいね」

 

「この配布資料曰く……作業割り当ては、得意分野をアピールすることで、その特技に関連した作業に割り当てられやすくなるらしい。お嬢のできること、思いっきりアピールしていけよ」

 

「お前は青臭いチビの小娘にしては可愛いし、その清潔感のある白い肌は充分なウリだ。尻と胸の脂肪も十分にある。おすすめは胸元の開けた服で食堂のウェイトレスが適しているだろう。客もチップを弾んでくれるはずに違いはない。……そのか細い身体じゃ、オレ達のような戦士には向かん。ウェイトレスになっても、勝手に客のメシは抓むな。……独房に入るよりも恐ろしいことが起きるぞ」

 

「アダミハラ近郊の監獄収監経験のある先輩からアドバイスをくれてやる! よーく耳をかっぽじって聞きやがれ! 独房で流動食の食うときは、男のチンポを名残惜しそうに啜りな! お恵みの飯がたっぷりと食えるって話だぁっ! れろれろれろ じゅるるっ じゅるるぅっ ちゅぱちゅぱ♥♥♥ってな! ついでに釈放後、看守共のチンポもしゃぶれば当分生活には困らねー、観察期間中にオメーのケツから放り出すクソになる予定のメシ代も返済出来て一石二鳥だぜぇえぇぇ?」

 

ソウダ! ソウダ! 釈放後、俺達モトで極太チンポをしゃぶればペットとして飼ってやるヨ! 娼婦が一番稼げるシゴトだからナ! テメーに温かい肉のベッドと栄養価の高いアツアツで貴重ナたんぱく質をプレゼントダ!」

 

「「ギャッハッハッ――痛ッテェ!!!」」

 

「……ワシのバカ共がすまん。……監視房では荷物を預けるな。先ほど汝がオークから受け取った酒を盗もうとしている兵士がいろいろ画策しているのを小耳に挟んだ。儂のように腕っぷしが強いなら、割に合わないツケを支払わせることもできなくはないだろうが……。女が独房に入るとロクな目に遭わない。ここの兵士は儂等より野獣だからな……ヨミハラとほぼ変わらない……いや、魔界や地上への逃げ場が無いことを考えると、ヨミハラよりひどい場所だから覚悟をしておけ」

 

 余程、私が不安そうな目をしていたのだろう。看守に運ばれながらも、私を囲んでこれから何をすればいいのか、小声で、大声で、普通の声で、下品な舌使いを混ぜながらそれぞれ説明をしてくれる。

 視線を合わせたのちに6人のアドバイスに頷き返し、最後に私を感染者から守ってくれたオークにも視線を向ける。他のオーク達も顎や目を使って、私に何か言葉をかけてやれと言いたげな顔をしていた。

 

「……元気で」

 

 やがて、かろうじて絞り出されたような小さく短い言葉が発せられ、彼の周りにいたオーク傭兵とハイオークチーフがそれぞれ、軽く拳と膝蹴りをオークに入れる。

 

カハ、ハハハハハ……オークだけにおおく(・・・)は語らずってかぁ? ウギャッ!

「うんまイ!       (テーレッテレー!) ザブトン1枚! オゴッ

 

 反対側ではハイオーク、フレイムオークが、先ほど殴られたお腹を抑えながら奴隷商人オークと羅刹オークから、強めに頭を叩かれお尻を蹴り飛ばされていた。

 

「ンフっ。オフフフフ……

 

 そんな7人のオークの姿を見て、笑いながら私だけは監視房行の通路へと続く道へ曲がる。

 あのオーク達にお礼を言うだけの時間もなかったが、最後に励まされたような……そんな気がして。

 あんなオークも居るんだと自分の視野の狭さに反省しながらも、感染状況確認の独房から開放されるまでの間。下品なハイオークが最後に言ったギャグを思い出し笑いしながら解放されるのを待つのだった。

 

 




~あとがき~
 次回は18時投稿になります。でも次回だけで、それ以降は12時までに投稿します。
 タイトルを変更しました。やっぱり小説のタイトルはインパクトが大事。
 処女作と今作の真面目なお話を見比べて、そう思いました。

・次回予告。
 作者の処女作である『対魔忍世界へ転移したが、私は一般人枠で人生を謳歌したい。』(現行)を読んだことのある閲覧者兄貴姉貴達はちょっとした考察ポイント(謎解き)があるようにシナリオを組んだので是非とも読んで行って欲しいゾ~。

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